261 甘き死よ、来たれ
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あたし、いいおねえちゃんだったんだ。
[ぽつり、ほんの小さな声で、彼の言葉をはんすうします。
なんとなく、ふに落ちてはいませんが、今はそれでいいことにしましょう。
言ってやりたいことってまだありますけど、それはまた、後で。
あたしは、かすかに聞こえてきた声に顔をあげました]
……よんでる。
あたし、ちょっといかなくっちゃ。
[どこに、だとか。そーゆーのもよくわかってないですけど、慌てて走り出しました。
……ああでも、その前にいっこだけ]
あたし、みょんこだよ。
次会うときまでに、ちゃんとおもいだしてよ!
でないとまた、れいれい れいれいゆうからね!
[格好つかない捨て台詞をはいて、あたしはべえっと舌を出しました。
向かうのは、たったひとりの妹の*居場所*]
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[雪は夜明け前に雨へと変わる。 父とみょんこが眠る桜の木のともへ
静かに眠るみょんこは、昨日と何も変わらない様に見える。 みょんこに被せていた上着を羽織り、みょんこの上に覆い被さる。
最期の力を振り絞って雪の中を、その後の雨に濡れて歩いてきた。]
ひとりに、したくなかったから。
[それが、最期に語りかけた言葉。 強烈な睡魔に襲われるように意識を失う。 そしてそのまま……]
(7) 2016/12/18(Sun) 20時頃
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[
雨が上がった後には、秋桜の花が咲く。
花びらから雫が一粒
みょんこの体に
こぼれ落ちた………**
]
(8) 2016/12/18(Sun) 20時頃
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逃亡者 メルヤは、メモを貼った。
2016/12/18(Sun) 20時頃
[ぼくと彼女が初めましてではないのなら
確かに声を聞いたことがあるのだろうでも違う、言いたいことはそうではなくて。
困りながら、声が小さくなりながら。懸命に自分が聴いていた事実を伝えようとした。
もしかしたら、他称みょんこさんだとはっきり認識はしていなかったから聲だけは覚えているのかもしれない。
反芻される呟き、駆け出す姿
誰かの元に行くんだろう。
それが芽桜さんとはこの人を覚えていないぼくには確信出来ない。
けれど、大切な人の元に行くのだろう。それだけ分かればいい。]
さようなら。
[笑って手を振った。引き留めようとはしなかった。
空っぽなぼく、大切があるあなた。
お互い死んでいるからと何も無理してこんな人を忘れる奴と関わることはないのだ。
そういえば誰かを想う意思が伝わる聲を聴いていた時も、自分と比べてなんとも空虚な気持ちになった気がする。]
……え。
[思わずぽかんとまた間抜けな顔。
てっきりやはり許してくれないのだと思っていたから、教えてもらえて驚いた
他称みょんこさんはやっぱり自称みょんこさんでもあるんだってさ。]
ふふ、
……変な人。
[彼女が走り出したその背を目に、ぼくはくすくす笑うのだ。
大人なのに舌を出す姿が子供みたいだった。
れいれいだって。別に嫌ではないけれど、なんだかくすぐったい。
また会えたらその時までにこちらも変わった呼び方を考えてみよう。
何がいいかな。幽霊に時間なんて関係ない、締め切りはきっと、成仏するまで。*]
[そして漸く立ち上がったぼくは藍さんがまだそこにいたのなら、彼女へ視線を向ける筈。
そしてまた質問をしよう。]
あなたは、探しに行きたい人はいないの?
あと、ね。
なんでかな……名前を聞いたのに、何故か、すっきりしないというか。
[違和感があるのだと、戸川は眉をひそめただろう。
“彼女”との最期のやり取りを思い出せないまま、別の名前を聞き素直にそれを受け入れた感覚だけが残っているらしく。*]
[名乗りを上げるみょんこと
ぽかんとしたあと、笑みを浮かべる冷と。
少しだけ気持ちが和む。
それから、質問を投げかけられて]
ん、探す人はいないわ。
だって、ここにいるんだもの。
[探しに行きたい、という感情で言えば
生きている時に"探した"。
その結果が死であったから、私は悲しかったのだろうか。
ああ、そうだ。……悲しかったんだ。
けれどようやく、ここで追いつけたという
充足感に満ちた笑みで、周りを見渡そう。
景色が流転していたし、春の姿は近くにあったかどうか。
見失っていたなら、改めて探そうかとも思い]
……なまえ。
[視線は冷に戻る。
そして、すこしだけ嬉しくて、すこしだけ寂しくて]
……覚えてるのね。
頭で覚えていなくても、心で覚えているのかな。
そうね、私も貴方とは初めましてじゃあ、ないの。
[違和感に対して、肯定の頷き。]
覚えてないかもしれないけど、
私は、君と会った時、メリーと名乗ったわ。
話すと長くなってしまうのだけど……
端的に言うと、あの時はそう思い込んでいたから。
でも、虹野藍が本当の名前。
だからそう呼んでね。
[私は、今の冷くんを否定することはない。
否定というと大げさだけれど、自殺したことも、記憶がないことも、彼自身の選択なのだろうと思うから。]
改めて、宜しくね、冷くん。
[ここにいられるのは短い期間か、終焉まで見届けるのか、或いは希望を見出すのか。生きる人びとを遠く思うことしかできないけれど、その間よろしくと、微笑みかけた*]
……うん。
きみはやさしい子だね。
[視線の先には、あたしにかぶさる彼女の姿。
きっともう、ながくはないんでしょうね。
でもやっぱり、悲しいとかじゃないんですよ。
謝らなくたっていいんです。きみが頑張ってきたことは、あたしもよぅく知っています。
ぱら ぱら。
降りしきる雨もかまわず、あたしはずっと見ていました。
視線の先は、やがて彼女ではなくなるのでしょう。
それはきっと、きれいなきれいな秋桜の花。
あたしはずっと見ています。
だってあたしも、彼女をひとりにしたくなかったから]
…ありがとう、芽桜。
[秋桜の花から落ちた雫が、むこうのあたしの指先をぬらします。
なんででしょう。…なんででしょうね。
その感触が、こっちのあたしにもつたわってくるみたい。
それは手をつなぐようにあたたかな*雫でした*]
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