25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[線香くゆる其の先に、
冬が憧れた先の花がひとつ]
……名乗る礼儀は、無きや?
[消え入りそうな問いに
返す複雑そうな声音]
|
なに云うて、隣に人おったやろ?
[手妻を操る花は、このときばかりは逆にキツネに包まれたような表情を浮かべた。 けれど、その使用人が嘘を謂っている様子は見えない。 最近よくこういうことがあるのだと、追加で聴く。
例えば、珈琲を1つ多く頼まれる……などと。
聴いた言葉に対して、深く考え込む華月の耳には、何かを護るような笛の音は聴こえないままだったか。そして、食堂を離れたのは、その笛の主が茶を取りに来る前のこと。 投票用紙は、食堂を離れて直ぐのところで、センターの息の音かかった使用人かに回収され、騒動の何もしらぬまま、高嶺の部屋へと戻り、物思いに耽る。
鵠は、席を外していた。 もしかすれば、そのとき、もう……―――。]
(137) 2010/08/07(Sat) 12時頃
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[沈黙。
知っている声だった。]
……鵠。
[ぽつり、と呟くように名が落ちる]
種を。
それは、困りましたね。
身をもたぬここでは、些か感情が出やすいのかも知れぬ。
お前だが誰ぞと契ってきたなど。
私の身に宿して欲しかった。
[見下ろす眼に僅か燃ゆる嫉妬。
死した身ではそれは叶わぬことだと、思えばそれもやがて鎮まる]
…ですが。
お前の生きた証が残るのなら、私はそれでも良いと、思う。
鵠。
やはりか。
何故、貴方がここに。
疑いでも向けられましたか。
[冬を抱いていた腕を解く。けれども肩に手は乗せたままで]
もう、言うても遅いことか。
私が居らずとも
私の子が
次の代へ、其の次へ
望みはひとつ
願いはひとつ
肉を喰らって血を啜り
人の身に種を植え付けて
――――幾日かけても
幾年かけても
必ず果たす
不条理なこの世を壊す為
[主の瞳に灯ったいろ。
見詰めた花が満足気に笑みを浮かべて、詠った]
……主さまの背がもう少し低ければ
私にも襲えたやも。
主さまは
現世に残すもの有りや?
[擁かれていた腕が解かれ、それでも傍は離れない。
肩に乗った手に首傾けて、名乗った方へと名を告げる]
私はイビセラ、ロビン
ひとつ目論見叶ったと謂うてみよう
主さま居らねば
喰らうは高嶺の華ひとつと
……そう謂う案もあった故
現世に残すもの…
残さずとも良いと、思っていたから。
何も。
背など、横になれば関係ないように思うのですが。
[花を見下ろして、少しばかり考える。
肩に置いた手で、首筋へと触れる。
目論見を語る言葉に触れた指に少し力が篭る]
その案が通らず、良かったと。
――ロビン。
[欲しているのは自分かと、裡に篭る思いに片方の手を自身の胸に当てた]
…――――白鳥は、
伝承から
逃れられなかった、らしい。
[さらり、と
黒髪が流れ俯いた。
言葉少なだった鵠はしかし
――イビセラの言葉に目を見開き、紫苑色で、睨む]
そう、――睨まれますな。
それが病からか本心ゆえかは別として。
いま現には高嶺様は生きていらっしゃるのだから。
それよりも。
いまだ残る獣にかからぬかの方が心配でしょう。
何も……?
血の繋がりもあったでしょうに
……背は、そうやもしれません
実の所
唆しも後押ししていましたが。
[首筋触れた指、促されたように顔を上げた。
それから、白い鳥に視線を流し]
案はどの道先送り
先ずは忌わしき使者の片割れをと
……謂うてあったのを
二人に独断で
私が主さまを。
高嶺さまには、
選んだ花の一輪散ったさまを
見せ付けて
そう煽ったのはかの人
私は其れに乗っただけ
其の後どうする気かまでは知らねども
嗚呼、元は花故に
人を誘い捕らえる術は
芽吹いたばかりの私とは、比べようも無い
今も
……声が
|
―日明けし朝・高嶺の部屋―
[それは夢か現の狭間。
りん――浅い眠りからその狭間へ誘う音は、鈴の。
振り返り見ると、そこに広がる世界は、空の青と海のあを。
りぃん――また、どこからか鈴の音が聴こえた。
青とあをの狭間を、白い鳥が翔けて逝く。]
鵠っ……――!!
[思わず彼の人の名を呼んだ。 伸ばした手は届かずに、空を掻いた。
――去来する感情の名は 哀しい 。]
(150) 2010/08/07(Sat) 13時頃
|
…―――――
[睨んでいた眼が、
一瞬、揺れた]
霞月夜
か
それは……―――
[りん、と鈴が鳴る]
……髪を同じに結えば良いと
かの人に。
[鈴の音にそうと取れる答え]
ボクの、巣箱から
雛鳥を浚っていった月は
私の花開くを待っていてくれたひと
真意は知らぬが
彼も、彼も
望みは望んだ数だけ
願いは願った数だけ
手に入れる
血など。
今の世にはさほど重要ではありはせぬ。
それに、どちらにしても残せなかったのですから。
[父はどうであろうか。
自分が亡くなれば、又新しい子を作るのかも知れずと]
元は花、霞の方か。
あの方は――。
[夢で契った相手。夢と思えばこそ。あれはただ一度だけのもの]
|
―日明けし朝・高嶺の部屋―
っ……―――
[飛び起きる。 耳に残る、鈴の音の残響。けれど、鵠の姿は見えず。 ざわりとした虫の予感に、頭を掻いた。
その次の瞬間に、本来の部屋の主が姿を見せた。]
すません。ちと、うとうとしとっ……え?
[高嶺が部屋へと戻ってくれたのは、おそらく姿見えぬ双璧の花の片割れに、事実を伝えんが為。 事の次第を聴いた華月の苔色は、一瞬見開かれる。 けれど、次には瞼が常まで落ちる。]
(162) 2010/08/07(Sat) 13時頃
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|
[まま、彼の人の遺言だとは知らぬまま、同じを淡々と告げる感想。 背を凛と伸ばすは、主の前では花であろうとするからか。
と、虚勢を張り切れなくなったのか、上がる両手。 表情を隠すように顔を覆った。]
もし、叶うんやったら……。 朧様の最初の花は、双璧だと未だ云って貰えるんやったら 鵠さんの形見に、鈴を、わてに譲ってもらえませんやろか。
[願いを震える声で紡いだ後、落とした手の下にあるかんばせは、息を呑むほどの微笑。 さて、願いは叶ったか、否か*]
(163) 2010/08/07(Sat) 13時頃
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手妻師 華月斎は、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 13時半頃
嗚呼、そうだ
ひとはもう
血を受け継ぐものでは、ありませんでしたね。
今の世ならばこそ
私の血は必ず、後へ残さねば
[霞の。
主の口から出た言葉に、淡い笑みを浮かべた。
冷たい色の瞳が見上げる]
……その霞の方が
良い体つきと、褒めていらっしゃいましたよ?
[そう謂って、視線を外す]
手妻師 華月斎は、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 13時半頃
知って、いらしましたか。
褒めてくださったのならそれは嬉しいことでしょう。
花は花主だけのものですが、花主は、一人の花のものではなく。
けれど今は。
私にはお前しか映らぬと言うのに。
[はずされた視線を追う]
何故、…そんなことを。
[怪訝そうに
ロビン、を、イビセラを、見た。
髪結いを叱られた、なのに]
もう
届かない
[唇を噛んで、俯いた。]
――――、朧様…
…かげつ…
[自分を抱くようにしながら、俯いた。]
手妻師 華月斎は、メモを貼った。
2010/08/07(Sat) 13時半頃
誑かしてはと、煽ってくれたものですから。
ただ
私は未だ、人食いの花としては未熟もの
すっかり主さまのもと根付いてしまいました。
……花主は一人の花のものでなく
けれど今は、主さまには私だけ
[外した視線は白い鳥に]
もう、届かない?
これまでも
届いていたとでも、思うの?
さあ……何故そんな事をしたのか
総てはあの方の手の内やも
[風が運ぶ囀り]
ボクは、
[戀は糸と言うと心で出来ているのだと
柔らかくも切ないその言葉に
憧れていた遠い記憶]
失せもの探して
声を裂く
いとしや、いとし
我が吾子は
――…そら、其処にいるよ。
[登る声は拾えども
冬の声は届かない]
[――――りん。
微かな鈴の音を立てて
顔を上げる。]
…―――届いていたなどと
思っては、いない。
死しては
手、伸ばすも 叶わぬ …
執事見習い ロビンのただ傍に立ち、あちらを*見やる*
望みはひとつ
願いはひとつ
二つ心抱いたなら――
[薄い唇から、うたを零すは主持つ花]
ふぅん
飛ぶ白鳥すら
あの高い嶺には届かないんだ。
[複雑な色帯びて呟くのは冬の蕾]
誰なら、届いたんだろうね。
[傍らにある法泉の
手を取り指を絡めて寄り添う。
遠く、現世を見遣る瞳は雪空の色
何時しか、気付けば其処にあるべきレンズが無かった**]
……わからない。
……死者にはもう、遠いことだ。
[俯いて、思うは何か。]
――――― …
[言葉は、少なく。
もののためしか、
高い位置で自分の髪を結い上げる。
鈴が、鳴る]
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