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[些細な違和感の正体に気づき、メルヤは自らを抱き込むように両腕をまわした。
体は、凍えたように冷えている。]
[深層心理の奥。
最期にして最初の残酷な白の世界に置き去りにした、幼い自分は――。
おのれ自身の心の一部だった。
《幻》に囚われ切り離された心は
雪がちらつく真冬の空で丸くなって――凍えている。]
道理で。
……今日はほとんど幻見ないと思った。
[ぽつり。呟く声音は無機質なものだった。
ドアが開かれる。
巡回の看護師が現れるのを、感情のない瞳が捉えた*]
![]() | 【人】 双生児 オスカー── よる ── (35) 2015/06/13(Sat) 21時半頃 |
![]() | 【人】 双生児 オスカー[──人の記憶には種類がある。 (36) 2015/06/13(Sat) 21時半頃 |
![]() | 【人】 双生児 オスカー[──覚めない夢。 (37) 2015/06/13(Sat) 21時半頃 |
[トレイルから返事はあったか。若しくは雑談でも交わしたか
...はトレイルにナナオの部屋までの案内をしようと申し出るだろう
″約束″もあるからと
断られたのならば其れはそれで構わない
メルヤにそう報告するまで、で
だが...は共についてきてほしいと願ったがどうだったか
...はどちらにせよナナオに一度会いに行くつもりであった
その″道中″メルヤにあっても問題はないだろう
この2人は自分とタルトとは違い、病気の性質上で合わないのではない
むしろ本人達は楽しそうなのになと...は思っていた
(それがメルヤにとって不本意であるかどうかはこの際置いておく)
車椅子を操作し、廊下を移動するのは酷く腕がつるものだ
脚の軋みはましであるが、今度は腕の関節が辛いと訴える
そんな中、メルヤを見つけたのは巡回の看護師ではなく...であった
メルヤ、入るわよ
[貴方に言われた通り、トレイルに声をかけたと
そう言おうとして扉を開けて――絶句した]
ちょ、ちょっとメルヤ、貴方どうしたの!?
何、その怪我、それに目は……!
[何故か全身打撲の様な格好の彼に
そして私の向こうをみているのではない
何も見ていない様な虚空の瞳に...は息をのむ
そのまま車椅子を操り近づいたが、果たして彼は反応したかどうか]
―自室―
[
あ。ケイト。
[血のついた包帯でも見られたのか。怪我のことに勘付かれて、ばつが悪い顔をした。]
ちょっと…ね。
目? 目がどうかしたのかい?
[不思議そうに問い掛ける。メルヤの様子は普段と変わらない。
ノートを持つ手が、かすかに震えている。]
[幻覚症状で中庭の一番大きな木から落ちたが、打ち付けたのは背中だった。
メルヤが普段鍛えていたおかげか、運動神経の良さが幸いしたか、枝に何度も当たり、体勢を変えようとしたりしたのが功を奏したようだ
手がすり切れたのは、器用な作業が出来そうにない痛手だが、動く分には支障は無さそうだった。
普段から包帯をしているため、部屋を訪れなければ勘付かれなかったかもしれない。普段より幾分、動きは鈍い。]
ケイト…ナナオとトレイルはどうだった?
[幻覚による怪我の原因ではない。
かじかむような手を抑えこむ。ケイトがメルヤに近づいたら勘付いたかもしれない
季節はずれの冬の冷気のような空気が、メルヤの体に纏っているのを*]
―メルヤの自室―
……そう
[何処で怪我をしたのよ。何で何も言わないの?
尋ねる言葉を飲み込み、...は唯、頷く
普段と変わらない様子なのに。今はその虚空が恐ろしい
それでもその中でノートを持つ手が震えている事に気づけば
...は小さく告げた]
トレイルの所には向かったわ。約束ですもの
――それはそれとして。震えてるわよ、手
[よくよく見れば其れが擦り切れているのに気付くだろう
包帯越しにもわかる、普段の彼とは違う動きの鈍さ
...はゆっくり車椅子に近づいた後]
……あなた。なに、それ
寒くないの?
[冷気を纏う姿に...は息をのむ
鱗を纏っている彼から発せられているのだろうか
感覚の鈍った自分にすら感じられる酷く寒い気に、
...は無表情を動かし軽く眉を顰めた]
![]() | 【人】 双生児 オスカー── あさ ── (38) 2015/06/13(Sat) 22時頃 |
![]() | 【人】 双生児 オスカー[起き出して身長を測ろうとすると、そこにメモが一枚貼られている。 (39) 2015/06/13(Sat) 22時頃 |
…怪我のことなら気にしないで、大した怪我じゃないし。
[問い掛けを飲み込んだような気配に、苦く笑う。
ケイトと話している時の、メルヤは普段と打って変わらない。
かすかな変化は、表面上には現れる程ではなく、あくまでも心の”一部”だった。]
手、と。背中もちょっとね。
[そう、誤魔化していた口振りが
――…寒くて仕方ないよ?
幻覚の類だから、どうしようもない。
ケイト、冷えるから。余り近づかない方がいいよ。
[心配そうな瞳の奥を覗けば
必要以上にどうということない振りをする。
シーシャに貰った鎮痛剤が役立っているのだろう。立ち上がれる。]
他のみんなのとこ行こうか?
タルトとトレイルには地図渡してないしね。
[そう口にして、廊下の方へと誘ってみせた*]
[――落ち着いて。
歌を、うたおう。
まだ、
出来損ないの、
未完成な歌を。
タルトちゃんや、トレイルが――。
いま、どうなっているかは分からない。
メルヤが固定具を外してくれたおかげで、たぶん無理をすれば動けるような気がするけれど。
――それをやったら、二人に会う前にあたしが死にそうだ…。と、ナナオはひやりとしていた。
今のは、あぶなかった。
大事な二人が今どうなっているか。分からない。
もし閉鎖区域に来ているなら、相当ひどいのだろう。
それを見たら――。
知っただけでも、あたしは死にそうになるくらい心配だった。
でも――、ここで、なにもできないのは悔しい。
……貴方、それで大した怪我じゃないというなら相当クレイジーね
私からしたら今すぐ治療室にぶち込んでもいい位の怪我と思うんだけど
[苦く笑う彼
細波すらたてぬ(ように、私には見える)心の内
彼の其れに波紋を抱かせるのは自分でないとは、知っている]
背中も?……治療せずに大丈夫なの
軽業を得意とするなら、痛むでしょうに
[そう呟くも、次の彼の言葉
――寒い、の?
ねぇ、それは本当に幻覚なの?
私″も″寒いと感じるのに
[どうという事ないと言った声音と、寒くて仕方ないという言葉の矛盾
...は息をのんだ後、ゆらりと紫苑の瞳を揺らした]
本当に、動いて大丈夫なの?
寒いんでしょう、貴方
[誘いに躊躇するも、移動に否は唱えない
...は暫し考え、頷いて
ならばナナオの部屋に向かいたいと告げたのだった]
[――あの重厚な扉の先まで、この声が届くかは分からないけれど――…。]
…――♪
メモを貼った。
…ほとんど怪我は包帯で隠れてると思うけど
それどころじゃ、ないからね。治療は後で受けるよ
[
タルトのことも、トレイルのことも気掛かりだった。自然にそう思う。
――幼い少年だった自分の聲は、メルヤ自身にかすかに聞こえるのみ。]
治療なんて。後でいいよ。
軽業使わずに歩けば、いいし。鎮痛剤はあるから、さ
[冷たかっただろうか。思案げに、ケイトを見る。]
ケイトが寒いと感じるのは…もしかしたら僕の体のまとわりつく冷気、かな?
冬の夜にろくに着込みもせずにいるような、感覚。
[ケイトの気遣うような、紫の双眸を見つめる。
困ったような鳶色の瞳を、ぶつけた。]
寒いけど、僕が着込んでも仕方ないし…その内、終わるよ。
僕も、ナナオのとこに行こうかな。
タルトのとこに地図とメッセージ置いていくよ。
[そう告げて移動を提案した*]
隠れてるというかかくしてるからこそちょっとした変化がわかるの
[それどころじゃないと告げる声に少しだけ怪訝に思う
メルヤが病棟で暮らす仲間を大切にしていたのは知っていた
されど自分の事を後回しにするほど、なのか
鎮痛剤で抑え込むのなら余程痛いのだろう
わかるわよ。包帯で隠れていても
痛みに耐える人の姿なんて、ずっと見てきたんだから
私の好きな人(キルロイ)はずっと、耐えて我慢して笑うのよ
その姿を見てきたんだもの、気付くにきまってるじゃない
その言葉を、呑み込んで]
……後で必ず治療しなさいよ?
[私は気を害してないと言わんばかりの視線を彼に返した]
纏わりつくってそれまずいんじゃないかしら…
ええ、感覚が鈍磨している私でも肌を刺す位には
[困った様な視線、その内終わると告げる彼に
...は小さく息を零した後]
そう、なら私も耐えられないわけじゃないし
そのまま行きましょうか
[と、告げて彼と共に部屋を後にした]
[道中、...は彼に問いかける]
ねぇ、ここ数日多くないかしら
隔離施設に移送される人
1日に2人ずつとか、異常よ
[いったい何が起きているのかしらね、なんて
...は呟いた]
そっか。でも、そろそろ。ナナオ達の様子見に行きたいから
治療は後回しで…大丈夫、これぐらいは。
[不可解そうなケイトの瞳に、淡く
声もなく告げる、言葉は伝わるかどうかは定かではない。]
(僕は僕よりも……みんなが大事なんだよ?)
[おのれの諦めよりも誰かの望みの方が大事だったように。
痛みは、シーシャの鎮痛剤が余程強力なのか。歩くのに支障はなかった。
笑うことも出来る。むしろ、寒さの方が問題だとも言える。]
……わかった。治療するよ。
[溜め息をひとつ零したのは、メルヤ自身に向けてだった。]
幻覚だから…対処しようがないよ。
その内、収まるから。
[鳶色の双眸を閉じる。
いつまでも。いつまでも。動かずに、冬の夜空で丸くなっている姿が見える。
あの、幼い自分の姿をしたものが《幻》に取り込まれて、引き戻す手段はメルヤには思い至らない。]
[タルトの部屋へといく道中。廊下の道すがら、
少し間を取っているのは、冷気で彼女の体を冷やさないためだった。]
考えらえることは…単に、症状が悪化したひとが重複した
隔離区域の場所が空いたから、入れることにした。
その他…かな。
[つらつら、と並べてみせた。]
……ケイト、これからどうしたい?
[不意の問い掛けは、世間話の延長のようなものだった。]
[少し間をとって彼は歩く
其れは心の距離にも似ているな、なんてぼんやり思考した
冷気は御蔭で当たらないが、何処か心が冷えるような感覚
憶えるのは、何故かしら]
それにしても多いのよね
症状が悪化したナナオは兎も角として
私やゆりは未だ、もう少しくらいは余裕があると思っていた
私達の症状は、他者に害を与えるものでは、ないから
[終末病棟(かくりしせつ)にしてはずいぶん性質が悪い
鍵もなく行き来できる癖に、決して扉は開かない
窓も、ない
つらつら並べられる言葉に、そうだとしたら空き室が多いのは
――何ででしょうねなんて、呟いた後]
……これからどうしたいか?
そうね
[問いかけに思案する
近い未来か、遠い未来か、尋ねているのはどちらか
...は暫し考えた後]
将来的に生きて、隔離病棟を出るのが目標ね
私キルロイにもう一度会うまでは、死ねない
近場での目標はそうね
ナナオとトレイルを会わせたい、かな
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