25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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―廊下―
[――ちり、と 熱が 燈るようだった。]
…っ
[茶器が高く、音を鳴らす。 息が止まっていたことに漸く気づく。 離れて、怯えたような苔色が見えた。]
かげつ、――
[駄目だ、と拒否のような、抑えるような声。 紫苑色がごく珍しく、微かに揺れた。]
否、――己は、…
[何故ずっと迷って、戸惑っていたのかと、届きそうになっている、気が。手を、伸ばしかけた]
(271) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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―廊下―
…、……
[困らせる。届くかどうか分からないのに 何を謂おうとしているか。 唇の端が 熱い。 手を、退きかける]
…己は、……蝶を、 ……追って、 おまえの、
[言いよどみ、口元を手で覆い 、眼を逸らす。 ――己は花だ。何を、と。]
(284) 2010/08/05(Thu) 21時半頃
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―廊下―
…、――え?
[瞬きを、一つして 視線を戻せば背が見える。]
知ってもらうとは、…何を、
[答えはなく、華月は歩き出す。 紫苑色を瞬かせ、躊躇ったのはほんの僅か。 ――りん、と 鈴の音鳴らして華月の後を追った。]
(295) 2010/08/05(Thu) 22時頃
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―高嶺の部屋前―
[華月の三歩ほど後ろを、 鈴の音と共に歩いてくる。]
…、――
[冬色が、高嶺と相対していた。 あのときのほうけたような表情が思い出され、 高嶺を、見て。 此方に気づくようなら、夫々に向けて丁寧に礼をする。]
(306) 2010/08/05(Thu) 22時頃
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――高嶺様
[憂い含みの安堵の表情が見え、 探し回っていたとき、聞こうと思っていたことを 俄かに思い出す。けれど]
――はい。
[呼ばれれば頷いて、 顔色を変えた冬色を一度だけ流し見て ――りん、と。 鈴の音残して入るを許された部屋へと足を向けた。]
(315) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―高嶺の部屋―
[色の失せた冬色の表情、 後ろ髪引かれながらも部屋に入り。]
…そうですね。 今宵、佳き月で――
[困ったような微笑を見て、言葉を一度、切った。 胸元に手をやり、髪結い紐を出すかは ――逡巡している。]
…、……私は、… お話も、したく思っておりましたが 華月が――
[華月の言葉に、頷く。 紫苑色は苔色を、――少し、思わしげに見て]
(328) 2010/08/05(Thu) 23時頃
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―高嶺の部屋ー
[高嶺に、聞きたかった。 貴方は何故、憂いているのかと。 思うのは、何かと。けれど今は]
…、――
[知らず、行儀よく合わせた手をきつく握った。]
かげ …、っ――、…
[息を飲む。 紫苑色を大きく見開く。]
…すり、こみ?
[何があったというのだろうか。 ――嗚呼、自分は本当にかれのことを、 何も知らないのだと、思い]
(341) 2010/08/05(Thu) 23時半頃
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―高嶺の部屋―
[伸ばしかけた手は、 やはり、少しだけ遠くて 高嶺の手を見ればりん、と鈴を鳴らして降ろしてしまう。]
…――、かげつ、おまえ
[それでも、拒否するでなく少し近づく。 高嶺の手が、とても優しいものだったから ほんの少し、安堵したような息を吐く。]
別の、理由とは… ……伺っても、構いませんか。
(350) 2010/08/06(Fri) 00時頃
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―高嶺の部屋―
――……
[問いに答えなかった花。 今問いに答えない花主。]
…然様、ですか。 いえそれは、自然なこと か。
[一度目を閉じて、それから、開く。 黒壇を見る、紫苑色。 その言葉一つ一つに、真摯な表情を向ける。 少しだけ眼を伏せ見る。 懐に触れ、手にする、髪結い紐――檳榔子染の。]
考えておりました、ずっと。 ……
[手にした其れを、高嶺に向け差し伸べる。]
(368) 2010/08/06(Fri) 00時半頃
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呉服問屋 藤之助は、――窓から、月の光が淡く落ちるのを見る。
2010/08/06(Fri) 00時半頃
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―高嶺の部屋―
[――高嶺の唇は、声を紡がない。 苦笑のような表情の真意も分からないままだが]
…はい
[呼ばれ、返事をする。 華月はどうだったか、流し見遣り。 さらりと流れ、落ちる黒檀の髪。 霞月夜の顔と驚くほどに重なる。 けれど、決定的に、違う。]
承知いたしました。
[恭しく頭を下げれば、――りん、と 鈴が鳴る。髪結い紐を手にし、 形よく、慣れた手つきで結い上げ支度を整え――大広間へ。]
(381) 2010/08/06(Fri) 01時頃
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―大広間― [華月の伏せられた瞼を見ることはなく。 ――選べ、と謂われたこと。 ――共に飛ぶ、と謂われたこと。
紫苑色で流し見た苔色は、 どのような思いを孕んでいたのか。]
…、…イアン?
[宴、という空気ではない。 怪訝そうに柳眉を顰め、――続いた言葉に眼を見開く]
(389) 2010/08/06(Fri) 01時頃
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な――、 ん
[言葉にならぬ、とはこのことか。 りん、と鈴が小さく鳴る。]
…人狼病は…駆逐されたのでは なかったのか…?
[遠い遠い、昔の“おそろしいやまい” その程度の認識しか、なかった。 混乱の滲む空気が場に満ちる。 ――“白き鳥は、 混沌の最中贄の如く翼を捥がれて死す” 重なった、己の舞う物語のひとつ。 奇妙な予感として、裡を満たし、冷やした。]
(394) 2010/08/06(Fri) 01時頃
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…、――主を、亡くした…?
[歪む赤。 其れを見て――漸く、 目隠しの理由が分かった、気がした。 飛び散った緋色が、此れは現実だと まざまざと見せ付けてくる。
白い手、握り締めなお白く。
表情は出来うる限り押さえようとして うまくいっていたかどうかは、分からない。 何処かで、がたりと椅子が鳴る音がした。]
(411) 2010/08/06(Fri) 01時半頃
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[華月の呟きは、よく聞き取れなかった。 意識が、彼の声の方に向いていたせいで]
抹殺…、 …
[眩暈がするようだった。眉を寄せる。]
選択の余地などない…、 死にたくなければ探せと、謂う か。
(429) 2010/08/06(Fri) 02時頃
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呉服問屋 藤之助は、“豚”の連れ去られた方を見た。睨むように。
2010/08/06(Fri) 02時頃
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[視線を戻し、イアンを見る眼は、 矢張り睨むようではある。]
――、… …謂いたいことは、分かった。 だが、納得など……
[見るのは、
個と個を求めた主と 蝶――華月。]
(441) 2010/08/06(Fri) 02時頃
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――、…
[――華月は離れる。其方を一度見遣ってから 鵠は忠臣のように主の傍を離れない。]
…――、分かっている。
[イアンへ答える声は、常より少し低い。]
……分かっているとも。
[自分に言い聞かせるようだった。]
(449) 2010/08/06(Fri) 02時頃
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――、た 、――…主様
[謂いかけて、謂い直す。 口慣れない言葉。]
…、……――
[ほんの僅か、憂いが見えて躊躇う。]
…――主様が 、 …仰るのであれば……
[そうして、虎鉄と、華月の方を、見て]
(459) 2010/08/06(Fri) 02時半頃
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呉服問屋 藤之助は、虎鉄が倒れるのをが視界に入り 足を其方に向け
2010/08/06(Fri) 02時半頃
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…、華月、
[まず、苔色に声をかけそれから 虎鉄の方へ。彼を助け起こそうとする 本郷の表情を見て怪訝そうに]
…本郷様、…? どうか、されましたか。
[謂って、手を貸そうとした手。 あまりに冷たくて、言葉を失う。]
(468) 2010/08/06(Fri) 02時半頃
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呉服問屋 藤之助は、懐刀 朧が本郷へ向けた言葉には、少し、眼を丸くした。
2010/08/06(Fri) 02時半頃
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[華月が虎鉄へと駆け寄る、 その手が伸びるならば、自分の手は退いてしまう。 本郷へは視線を合わせて頷いた。]
…一体、 ……どうなって…こんな。
[手に残る、冷たい冷たい感覚。 華月も気づくだろう、視線を交わす。 俯けば――りん、と鈴が鳴った。 ――高嶺の、主の方へと視線を向ける。 朧と霞、重なれば月を思わせるふたりが在る。
言葉かけるもためらわれ 虎鉄を休ませることができる場所へ運ぼうとするか。
*強く握りすぎて、白くなった手はさながら鳥の羽のようで*]
(495) 2010/08/06(Fri) 03時半頃
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―大広間→部屋へ>>516― ――――…、はい
[高嶺の言葉に、 できうる限りしっかりした声で 答えようと努めた。]
た、…… …主様が願うのでありましたら。
[華月の方を―――気遣わしげな色も含め、見る。 彼が、特に反対しなければ 高嶺の部屋へと運ぼうと謂う。
先程触れた 生者にあり得ない冷たさが―――染み入り、体を凍てつかせそうになる。 幻視する、翼もがれる贄の鳥。 首を横に振れば鈴が鳴り。
―――りん]
(525) 2010/08/06(Fri) 09時頃
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呉服問屋 藤之助は、記者 イアンの、現状の説明を反芻して唇を噛み―――
2010/08/06(Fri) 09時頃
呉服問屋 藤之助は、執事見習い ロビンと法泉の会話などはざわめきの中、聞き取れもしなかったろう。
2010/08/06(Fri) 09時頃
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―大広間→高嶺の部屋へ>>553―
……、… では、高嶺様…?
[戻した、が。 そういう問題ではないのだろうか。 自分の体温を確かめるように手を握りしめた。]
――、…
[高嶺の視線に気づけば]
どう、か されましたか
[喉に声が少し引っかかって掠れた。 自分で驚いたか、喉元に手を触れて 申し訳ありません、と詫びる]
(558) 2010/08/06(Fri) 11時頃
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―→高嶺の部屋へ― [瞬いた。そうか。そう、なるのだ、と。 高嶺の見せた笑みが「面の皮が厚い」という 本郷の言葉や印象を覆すもので、 暫し主を見つめたままになった]
… 失礼を、いたしました。 …――朧、さま。
[ごく丁寧に、なぞるように名前を呼ぶ。 続く言葉には、一度唇を引き結んで]
…… ――恐れは あります
[小さな声だった。 黒檀のひとみと、それから苔色のひとみを見て 少しうつむく。]
(570) 2010/08/06(Fri) 12時頃
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―→高嶺の部屋へ―
[高嶺の部屋に辿りつけば 虎鉄は寝かしつけられるだろう。 館の空気は重い。 恐れ、にかかる語りは、もう一つ。]
白い鳥の舞に纏わる…… “生贄”の話を思い出したのもあります。
[首をまた横に振った。 小さく――鈴が鳴る。]
(575) 2010/08/06(Fri) 12時頃
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呉服問屋 藤之助は、否、ただの――ものがたりだ、とも呟いた。
2010/08/06(Fri) 12時頃
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―高嶺の部屋―
[華月はどう、していたろう。 鵠は あの告白と傷を見ても距離は変わらず、寧ろ――]
分からない、…です、か。
[高嶺を見て、ゆるやかに瞬く。 きつく眼を閉じる主へ、 気遣わしげな視線を向ける。]
感情が付いてこないことも、ある。
[それから、促されるまま、口にしたのは]
(584) 2010/08/06(Fri) 12時半頃
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…私の 舞う 白き鳥の舞 あれは生贄の舞であるとも謂われているのです。
染まらぬ白き鳥は悪意を受け止めやすい。 混沌極まれば、羽をもがれて落とされる。 渦中に己が居なくても、 物語に擬えて、奪われる。
そんな、……話が。
[――小さく息を吐いた]
伝承です、…もう、随分と古い。 どうして急に、思い出したのだか。
(585) 2010/08/06(Fri) 12時半頃
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―高嶺の部屋― [――華月は、己が話すときはいつも黙る。 そうして、笑んでいる。今は?]
…――?
[不思議そうに呟く高嶺に ほんの少し、首を傾ぐ。]
そう、ですね。悪いことでは、…ない
[幽霊の正体見たり枯れ尾花――ともいう。 尤も此度、相手は“人狼病”だから 枯れ尾花とはいかないが。 伝承を語り終え気づく。 知らず手を握り締めていたらしい。]
…、…はい、そう ですね。 申し訳ありません、…つまらない 話を。
(599) 2010/08/06(Fri) 13時頃
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―高嶺の部屋― …、――
[華月の言葉に机を見た。 自分の喉元に触れる。 少し掠れていた自分の声。
できれば欲しい、と 小さく頷いた]
(602) 2010/08/06(Fri) 13時半頃
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―高嶺の部屋―
[贄の話をしたときに、ほんの少し、華月は反応した。 何を思うてだろうか。聞こうとして、結局聞けない。]
…、―― そうならば よいのですが。
[>>607やはり少し申し訳なさそうに答え。 背に触れる華月の手には彼の方を流し見た。
ふと、高嶺から躊躇いがちに伸ばされた手を 紫苑色の双眸が追う。ひとつ、瞬いた。 拒むことはなく]
朧様… …?
[少し、眼を丸くした。 ふわりと、茶の良い香りが漂う中。]
(612) 2010/08/06(Fri) 13時半頃
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―高嶺の部屋― [華月に伸びる手も、目で追い 触れられた当たりの髪に自分で触れて 苔色と顔を見あわせたりも、したか。]
…然様、ですか。
[慣れないせいか何とはなしに気恥ずかしい。 黒檀を見つめ、紫苑色は瞬く。]
…――はい。
[命令を受け止める表情は真摯。 肯けば、鈴もまた鳴る。 ありがとう、と華月にひとこと礼を謂ってから、茶器を手にした。]
(630) 2010/08/06(Fri) 14時半頃
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―高嶺の部屋― [顔を見合わすタイミングが合って、 華月の笑う顔に紫苑色を細める。 穏やかな常の笑み。それが崩れたのを見たのは僅か。 窓際での―― ふと、指先で己の唇の端に触れた。]
…―― …え。
[高嶺の言葉に、瞬きをひとつ。]
楽しそう――ですか?
[楽しいことを、したろうか。 憂いを滲ませて、紙細工の蓮の花を手にした主。 華月を見る。]
(643) 2010/08/06(Fri) 15時頃
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