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[蜜のように光を失くしていた眸に、ふっと何かが戻る。
琥珀の中に閉じ込められた蟲のような、瞳孔が目の前の人を映した。]
テッド、それは……―――
[聴こえた名を口の中で転がす。
名を得て、個を取り戻せば、目の前の人の名もまた取り戻す。]
俺の、呼び名ですね……セシル…先輩。
[まだ、呼び捨てるには戸惑いがあるのか、はにかんだ表情で相手の名を紡ぐ。]
俺で、いいんですか?
[残った理由。自分でない誰かを演じた訳。
それは、全ては……―――。
きっと、目の前の人を知りたかったから。
尋ねながらも、拒否の言葉は望まないように、
繋いだ手で引き寄せて、その身を抱きしめた。]
[伸びてくる茨を厭わずに、ゆるゆると、晒した熱に指を絡ませる。
誘う色を青磁に乗せて、空色の眸の傍らに一つ、唇を落とした。]
……あまり急くな、……っ
[茨と肌との間に差しいれられる手に、心の奥がきしりと痛む。
追い詰める様に、手の動きを早めて。
ノックスが果てれば、精の絡んだ指を後孔に伸ばすだろう。*]
メモを貼った。
メモを貼った。
[全身を捕らえ、蹂躙していた蔦が緩む。
相手の腕に抱きとめられれば、その胸に顔を埋め。
弱弱しく首を振り]
……君が、いい。
もう、テッドじゃないと、駄目なの。
[空白の心はとても脆く。
何かに依存しなければ保てず。
だからこれは保身の為。
そんな卑怯な、愛情だけれど]
お願い……傍にいて……
俺の事を、離さないで。
[濡れた瞳で、見つめる]
[自分だけ……と、囁かれる声。
緩く抱きとめた人の温もりに、壊れるのは倫理観という枷。
彼が、心の中で思っていること、それは判らないけれど。
けれど、卑怯なのは、少年も同じこと。]
――……俺は、貴方の為って思わないと何もできないし
貴方の所為って思って狂うのかもしれない
それでも?
[親によってかせられた枷がなければ、
自分は男にも腰を振れる淫売かもしれないと……
実はどこかで知っていたのかもしれない。
その枷を外すのも、
かせる理由にするのも貴方にしていいのかと。
濡れた眸を、じっと見つめる。
彼の願い通り、視線は離さない。]
や…だって、だって……ぁ……
[ルーカスの前に曝け出された熱に、頼りなげに頭を振る。
そこに指が絡めば、喉を引き攣らせ、小さく声を漏らした。]
ふっ、くっ…ん…、あっ、あ、
[頬に赤を増し、動きが早まれば声を抑えられなくなり。
縋るようにルーカスに抱きついて]
や、ああっ……!
[やがて白濁を放ち、かくりと項垂れて力が抜ける。
己が汚した指が、後孔へと入ってくるのを感じれば、ひくりと体がまた動き。]
ん……
[思わずルーカスを抱きしめた。]
いいよ……君の、全部が、欲しいから。
俺も、全部を君にあげるから。
私の、全てを君にあげるから。
[視線を外さぬまま。外せぬまま。
言葉を紡ぐその唇を、寄せる。
吐息の触れる間近まで。
奪いたい。
奪って欲しい。
全てを]
[言葉を紡ぐ唇と唇が寄る。寄せる。]
――……じゃあ、俺の全部は貴方のもので
貴方の全ては俺のものだ。
[重なる言葉と、唇と。
奪ったのはどちらか。奪われたのはどちらか。
契約を結ぶように、
吐息も何もかも奪い奪われるような接吻けを。
ぐちゅぐちゅと立つ水音も、
もうどちらの口腔の中での音かも判らない。]
[他者を受け入れるのはまだ二度目。
けれど、精を欲しがる体は、やはりすんなりとほぐれていく。
慣れていないのは、完全には消えてくれない羞恥心。]
う、んっ……
[指の数が増えていくのに、耐えられなくなって腰を揺らめかせた。誘うように中は蠢き、熱を帯びていく。
完全に受け入れる準備が出来た頃には、空色も蕩けていた。*]
――うれ、し…い……
[交わされる契り。
重なる唇。
飢えた獣が貪るように。
舌を絡め、歯列をなぞり。
混ざり合う唾液を零しながら。
全てを奪うかのように。
背に回した腕は髪を梳き。
時節擽るように耳朶に触れる。
その間も唇を離そうとはせず。
漏れる声すら、飲み込んでいく]
[初めての時、まねるだけだった接吻けは、今は少し違う。
時折、タイミングを外すように、舌を吸い、軽く歯を立てるのは、
身体を交えた2人のどちらから学んだものだろう。
その経験さえも上塗りするように、セシルが奪うなら、
彼の経験も上塗りしようと、指先は蠢く。
片手は柔らかな髪を湛える後頭部を抱き、交わりを深め。
もう片方の手は、腰を抱き、下肢を擦り合わせて。]
…んっ、ふぅっ、ぁ
[接吻に、指の動きに、あげる声はきっと2つ。
それに混じり、どこか遠く、脳裏に走る声がある。
――……そう、誰でも良かった。
なにもいらない。
唯、ピースにはまったのが彼で。
けれど、それが唯一ならば、恋といっていい。
そして、その彼が手に入るなら、他にはなにも……――。
このまま身体中の酸素を奪い尽くされて死んだとしても。
この命さえも、いらない――そのような、狂気ごと与えて、奪う。]
[きっと、何でもいいんだと思う。
居心地さえよければ、そこに心なんかなくとも。
ただの逃避だと。
このまま逃げてしまえば後は衰弱死するだけだとも、分かっては居るけれど。
寄りかかる楽さを知ってしまったから、もう一人でたてそうにない。]
このまま、何もかも忘れて…お前の腕の中で消えてしまえたら…
[あの時、苦しくても死のうなんて思わなかったのは、
そこで終わればずっと苦しいから。
今は苦しくないから、終わっちゃってもいいかな、なんて。]
んっ……!?
ぅ、っふ、ン……――!!
[重ねたままの唇から漏れる嬌声。
つい先日とは、まるで違うそれ。
煽られるように、溺れるように。
肌を擦り合わせて。
求めて。
知らぬ間に得た経験ごと、求めて。
呼吸すら奪い合いながら。
熱を望む]
[やがて、熱を持って張り詰めた物を宛がわれれば、後孔は中へと導くようにひくつく。]
んぁっ……入ってく、、る、
あ…つっ………ぅ、ん、あっ、
[待ちきれずに腰を動かし、侵入を手伝う。
より深い所で繋がれるように。首に回した腕にも力が入って]
ァディ… せん ぱ、
ふっ、あっ、ひああっ…
[名を呼びかけた舌は、揺さぶられる動きに縺れた。
目尻に浮かんだ生理的な涙が頬を伝う。
体の中心の熱が透明な蜜を零し、そしてまた白濁した熱を放てば、相手をきゅっと締め上げた。]
………は、ぁ、
はあ、はあ……
[そして。
腕に絡まる蔦から、何かが少しずつ吸われていく感覚を、ルーカスも感じることが出来ただろうか。黒い茨は、息を荒げる少年の腕にも食い込み、白い肌に赤い雫を残していた*]
[束の間、はふっと音立てて唇と唇に隙間が開く時が出来る。
それでも、距離が開くのを厭うように、唇と唇は銀の糸で繋がったまま。
額と額は、隙間なく合わさって。]
――……どうしたい、ですか。
抱かれたい?それとも
他の男を知った俺を抱いて、奪いたい?
[口角をうっすらあげれば、銀の糸は切れかけるから。
チロリと舌を出し、糸を絡め取りつつ、答えを促すように相手の唇の形をなどった。]
もし、貴方が誰も抱いた事がないなら、
貴方の初めてを俺は奪いたい。
[指先は、まるで蔦の動きをまねるように、
卑猥にセシルの慾に絡ませた。]
[ゆるゆると髪を梳く手は止めないままぼんやりしていたが、呟きにははたと思考が戻り]
消えるのは、ダメですよ。
「二人で一緒に」幸せになるんですから。
[先輩がこのまま消えてしまいそうな気がして、背中をトントン叩く。
もしこのまま途絶えてしまいそうになるのなら、無理にでも引き戻さねば。
薔薇の香に囚われている場合ではない]
っふ、ぁ……!
[薔薇の毒に、蜜に浸されて。
口付けに溺れて。
唇から伝う銀糸は、そのままだらしなく垂れる]
あ……ま、って……
……えと、その、俺……
――……
[燻る熱。
煽られながらも、どこか視線を泳がせる]
[――ずっと、“女”の代用品として使われてきた。
だから性経験が多くても。
それは、男としてではなく]
……俺の、最初を。
奪って、くれる?
……俺は君を、男を知ったその体を、奪うから……
[それでも求める。
少したどたどしい手つき。
首を、背を、腰をなぞり降りていく]
メモを貼った。
メモを貼った。
――……俺の最初も、貴方が奪ったから
それで、一緒だね。
[相手が初めてだとしれば、誘うような笑みを浮かべる。
たどたどしい手つきは、まるで自分の初めての鏡映し。
彼がそうであったように、彼が動きやすいように、身をまかせながら]
頂戴、貴方が、欲しい。
[貰って嬉しかった言葉をなどる。
着衣は、夢の世界なら、思いを乗せるように存在を失くす。
相手の素肌に触れるは、攻めとしてでなく、受け手として。
ひたり、掌が相手の心臓の上を押すようにして止まった。]
メモを貼った。
……うん。
俺も、君が欲しい。
[胸に押し当てられた掌。
高鳴る鼓動が伝わるのが、何処か気恥ずかしい。
紅潮した頬を寄せ、唇を頬に。耳に。首筋に這わせる
手はするりと双丘を割り。
後孔を指でくるり、なぞる]
もう……此処は、男を知ってるんですね。
俺以外の誰かを、咥え込んだ……
いやらしい、穴。
[つぷり。
人差し指を差し入れる。
自分でする時よりも若干ゆっくりと、慣らすように]
……だぁれ?
[くすくすと笑い声が聞こえる。とても怖いことを言っている気がする。]
……君は、悪い妖精なの?
[怖くて怖くて。びくびくと怯えるのは、以前と同じ表情。
けれどその肢体には荊が絡み。その身体は快楽を知り。消えぬ罪は魂に残っている。]
[白濁を後孔に塗り込め、ゆっくりと指を埋めていく。
容易には受け入れてくれない其処を傷付けないように、慎重に。
――― 薔薇の香がそうさせたのか、其れとも此処が夢の中だからか。
一本を受け入れた其処は、すんなりと二本目の侵入を許す。
指を増やし、ある程度滑らかに、抜き差しが可能になった頃、ずるりと中に埋めていた指を抜く。]
……平気か?
[蕩けた空色の瞼に一つ、口付けを落として。
空いた手でゆるく、其の頭を抱き寄せた。]
[指とは明らかに違う、自身をそっと其処に宛がう。
待ちきれない様に動くノックスの腰に手を添え、壊さないよう、慎重に腰を進めて。]
……っ、は、ぁ……
[根元まで埋めれば、一つ息を吐く。
幾分か指で慣らしたとはいえ、狭く熱い其処は、じっとしているだけで達してしまいそうになって。]
動く、ぞ?……いい、か……?
[耳元で尋ね、ゆるゆると腰を動かす。
次第に、叩きつけるような動きへと変わり、名を呼ぼうとするその声を耳で受けて。]
[空色から零れる涙を、舌先でそっと掬う。
快感に溺れる頭の中、隙間を埋めるように漂うのは白い薔薇の香り。
手を伸ばし、透明な先走りを零すノックスの熱を扱きながら、何度も、何度も、突き上げて。]
……はぁ、っ……ぁ――――ッ!
[その最奥に、精を注ぎ込む様に達する。
視界の端に移るのは、蠢き、白い其の腕に棘を食い込ませようとする、黒い茨。
達した余韻に浸る間もなく、す、と脳の奥が醒める。]
―――――……待、……!
[聊か乱暴に、その腕から黒い茨を剥がそうと手を伸ばした。]
此れは、……此れは、僕の、……僕が、背負うものだ。
……だから、ロイルを……傷付ける必要は、ない……ッ!
[引き剥がそうともがく体に、黒い薔薇は更に蔦を伸ばす。
“また傷つけてしまったのだろうか”と。
そう、思ってしまった心を喰らおうと、その棘のついた蔦を、伸ばす。]
……全部、僕が、……引き受けるから。
だから……!
[涙声交じりで、懇願するように。
白い薔薇の呪いの影響を、感じる間もないほどに、伸びるその蔦に手を伸ばして、引き千切って。
そうしていれば、黒い茨を、其の腕から引き剥がす事はできただろうか。*]
メモを貼った。
[トクリと掌に伝う音に、眼を細めた。
皮膚一枚越せば、握りつぶせる位置にある。
そのようなイメージが、妙に身体を熱くさせる。]
ふぁっ……、そう、
貴方以外の形を覚えてる、いやらしい孔なんだよ。
だから、早く、貴方の形に変えてっ――っあぁっ
[熱くなった身体は、囁かな愛撫に簡単に反応し、
後孔をなでられれば、男を知っているからこそひくつく。
彼の細い指が、埋められる。
首を反らし、喜悦に歪んだ顔で空を見た。
現実ではないから、そこに白濁はない筈なのに。
受け入れたそれがかきだされていくイメージを持つ。
それを喜ぶように、ゆるく動く指先をくっと締めつければ、
彼の存在をより感じられ、悦を含んだ吐息が漏れた。]
……いいのに。ちょっとくらい。
このくらい、平気です〜。
[瞳は気だるそうだったけれど、口調はいつもの調子を取り戻していて。絡まる黒い茨を引っ張るその手の上に、右手を乗せた。]
ん………
[顔を顰めながら、その茨を自分でも引っ張り、千切る。
引き剥がされれば、ぱた、と赤が散って。]
……先輩、血。
[あー、と口を開けて、傷ついた指を含んだ。
獣がするように、傷を舐める。]
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