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イテッ、
[額を小突かれて、溜まっていた涙がぼろりと落ちる。
それでも変わらない彼へ、泣き笑いして]
……元々俺には向いてなかったんだよお。海賊。
[ホレーショーが涙を隠すのと対照的に、べそをかくのを隠そうともしないまま。
からかわれてるホレーショーを指差して、ヒヒッと声をたてた。
未来がぶつりと途切れた存在ばかりだけども、今だけは穏やかで。
それが複雑な気分で、少しだけ酒を飲みたくて笑う]
……兄貴が。よわっちい。ひよっこ?
[とても想像できそうになかった。
むう、と唸る。やっぱり副船長はすごい人なんだ。
ちびっこい身体、という部分は少し引っかかったけれど。
大したもんだと褒められれば
ねえ。いま、聞いたッスか。
副船長に褒められた! 俺、褒められたッス!
[ホレーショーとニコに、ぶいぶいとピ―スして見せた。
調子に乗る所が、グレッグの悪い所である]
雪辱。……うん、雪辱。
[こくり、と頷いて。
やっぱり。どうあがいても、ミナカを自分は殺せなかったんだろうなあ、と思う。本性を現したミナカは、副船長でもあんなに苦戦するくらい強くて。
まあ、つまり。自分と戦っていた時のミナカは。
本気を出していなかったのだろう]
(もしかして。最期までガキ扱いされてたんスねえ、俺)
[何だか少し。悔しかった]
【人】 奏者 セシル そんなことは思っていないです。 (35) 2014/12/16(Tue) 20時頃 |
[ごん、と小突くとニコラスの方はぼろぼろと涙を零した。
こっちはこっちで何がおかしいんだか、
泣きながら笑う彼の頭をがしがし掻き乱して]
はん、とっくに知ってるってんだよ。
全く運が悪かったなァ、俺なんぞに拾われて。
酒とクスリに狂って海賊やって、挙句の果てに獣の餌だ。
いっそあの時死んだ方がマシだったぇってんなら
いつでも海に放り込んでやったんだぜ?
[悪びれずにそう吐き捨てて口の端をあげる。
彼が死んでからずっと、まるで守護霊か何かのように自分に憑いて回っていたのは知っているから、口とは裏腹に触る手はいつもより幾分か柔らかかったけれど。
そう言えば生前の聲でも何となく感じていたが、
今のニコラスに酒に狂った時の騒がしさは無い。
こうして命を落とした事で本来の姿に戻ったのか。
そのせいもあってか、こうして皆で騒ぐ今の状況が
妙に穏やかに感じた]
[――この男には、語るべき過去などない。]
[娼婦の息子として生まれ、
ろくでもないことしかしてこなかった。
そしてこの船に――絶望に辿りついた。
ただそれだけだ。]
[手先が器用な方だった為、船大工になった。
船を修理する代わりに、船での居場所を手に入れた。
船を直し。
いずれそれが絶望の重さに耐えかねて沈むまで、と。]
[酒を浴びせた
怯んだ隙に、間合いをつめようとした。
懐に入ってしまえば、
その銃を持つ手を切りつけることが出来る。
伊達にのこぎりや金槌などという
武器ですらない工具で戦ってきたわけではない。
銃相手でも、何度も戦ってきた。
近接に持ち込めば、こちらが有利。
それは変わらない。]
[狭い厨房。
戦い方は分かる。
のこぎりを下から上に切り上げ、手首を狙う。
武器さえ奪えば、あとは足を切りつけ、
足の腱を削げば逃げることも出来なくなる。
いっそ、指を一本一本ノミで切り落としてやろうか。
滅多にやらないくらい、丁寧に解体してやろう。]
[そう思っていたのに。]
[ニコラスとヴェラーヴァルが戦った時に出来たのだろう。
床板が捲れていた。
そこに足を、取られた。
バランスが崩れる。
視界を奪えたというのに
距離を詰めるどころか隙を与えてしまった。]
[銃口が此方を向く
一発目は、肩を外れ腕を貫通してくれた。
丁度、ギリアンの腕を切り落とした位置と同じなのは
偶然だとしか思わないが。
二発目は、右の鎖骨を砕いた。
三発目。
足を狙った弾は、崩れた身体の腹に当たった。]
[馴れ合うことは殆どと言って良いほどなかった。
その必要も感じたことはなかったし、
だからこそ、その方法も知ろうとはしなかった。
同室のモンドですら、気が合わない
船を直し、日々が過ぎていくのを眺めているだけ。
生きていることを感じるのは、]
あああ?
クソが。痛いな?ああ、痛いな。
[痛みを感じるときだけだった。]
【人】 奏者 セシル 人狼も人間も、 (36) 2014/12/16(Tue) 20時頃 |
[文句を言いたいというのに、口から息が漏れる。
それ以上に、血が溢れる。
痛い。
苦しい。
痛い。
生きている。
まだ。]
[痛い熱い痛い痛い痛い。
指先が動かない。
大事なのこぎりは落としてしまった。
痛い痛い。
この痛みをくれたフランクにも返してやりたい。
それができないのは残念だ。
痛い痛い痛い。]
[痛い痛い。
死に方など、選べるなんて思っていなかったが
叶うなら。
ああ、畜生、
……いた、い、**]
― 回想 ―
じゃーん、ミナカ。新作ー。
新しい調合試したッス。
[なんて言って、グレッグは“試作品”を手に。
医務室を出入りするようになっていった。
反比例するように、怪我をして医務室に行く回数は減っていく。
迷惑そうな顔をしながらも、ミナカは調合の基礎を教えてくれた。
――下らねえ怪我とかしてねえよな。
やがて、グレッグが怪我をすることがほとんどなくなっても。
戦闘の後には、この船医にこう問われるのが常であった。
昔の印象をひきずっているのか、と少し不満だった]
[いつの間にか船医に名前で呼ばれることが増えた。
大人として認めてもらえたのか、と。少しだけ満足した。
それでも『おねしょは直ったのか』
実のところ、腸が煮えくりかえるほどムカついていた。
いっそ試作品をこいつで試してやろうかと思ったこともあったが。
調合の先生がいなくなると自分が困るから。やめた。
どうすればこの船医を見返してやれるだろうと、考える]
ガキじゃねーッスよ。
[むくれて返す言葉には、いつか大人と認めさせてやるという。
グレッグの矜持があって。
それでも結局、最期の最期まで。ガキ扱いのままだった*]
─ 第三甲板 ─
[甲板での賑やかな再会劇を背に聞きながら、再び獣の姿に戻ると、ひといきに階段を飛び降りて、階下へ向かう。
ここもまた、夥しい血のにおい。
最早この船で、血臭のない場所などないのだろう。
ただ以前のように、本能をいたずらに刺激されることがないのは、やはり、魂だけの存在となったからだろうか。
医務室の前、シャルルとギリアンの姿を見つけ、足を止める。
シャルルが今まで見せたことのないような表情をギリアンに向けたとしても。
セシルが姿を見せたとしても。
見つめる獣の瞳は、無機質な紅。]
[と、ヴェラが一言残してその場を去って行く。
曖昧な返事でその場に座ったままのホレーショーを見て。
彼に倣うように甲板のセシルとジェレミーに視線を移した。
ずるりとジェレミーが自分の遺体を引きずり、布をかける
一言彼が呟くのを聞いて。]
ああ。最後までここで見届けるさ。
テメェも精々足掻くんだな。
[ジェレミーのことは軍人上がりの胡散臭い奴だと思っていたが。
セシルと相対した際、真摯に自分を説得する彼を見て、
きっと彼にも彼の護りたいものや見据えるものがあるのだろうと思った。
決意じみたその言葉に、じっとジェレミーを見て静かに頷く。]
[彼らが、そしてあの道化がどんな結末を迎えるにせよ、
自分は最後までそれを見届けよう。
連中がどうなろうと既に命を落とした己にとっては
関係ないと言えばないが、まあそれこそ乗り掛かった船だ。
結構な年月付き合ったこの海賊団の行く末を
絶望号の副船長として。**]
た、 うわわっ、
[
相変わらず蛇口が壊れたように泣きながら、いつもよりも幾分やさしめの手に抵抗はせずに]
ほんっといいことない人生だったよ
いっそ海に放り込まれた方が幾らかマシだったかも。
[悪びれずに言われることに全面同意。
生きてさえいればいいことがある、なんて口癖のように言って願っていたのに、結局なにもなかった。
ヒヒ、と引きつった笑いをこぼして]
それでも、死ぬのもヘクターのそばから離れるのも嫌だったんだから仕方ないなあ。
[ふぁっきん!俺の神様!]
ばらすな……
[兄貴の兄貴というグレッグの言葉に、ヘクターが肯定しているのを聞いて呻く。
そう制している時点で、事実だと認めているのだが。
弟分と、後輩(ヘクターの拾い物的な意味で)の前で弱みを見せまいと、一応頑張って「兄貴」であろうとしているのに、からかわれまくりで何だかちっともいい所がない。グレッグには泣いている所見られてたようだし。
悔しいから、たとえ自分が死んでも、グレッグが遺してくれた物をヘクターが引き継いでくれると信じていたなんて、本音は口に出してやらない。]
……船長は、強いからなぁ。
俺だってかすり傷が精一杯だったしな。
[不思議と道化を恨む気持ちがわかないのは、全力でぶつかりに行けたからだろうか。怒りは湧いていたが、今は結構すっきりしている。多分、この時間のおかげもあるのだろう。]
いや……
酒飲んでる時のお前は、本家海賊が引くくらい凄かった、ぞ。
[ぽそっと、海賊に向いてないと言うニコラスへと、思わず口にしていた。
詳細は聞かない方が幸せかもなあと思いながらも。]
……おおー。
[なんだか兄貴が気まずそうにしているのが新鮮で
きしし、とグレッグは笑った。なんだか兄貴らしくない。
副船長の前には、兄貴も形無しなんだなあと。
船長は強い、の言葉には頷いて]
かすり傷どころか。
俺は抵抗する間もなく一瞬だったッスねえ。
[やられる、と思った瞬間には世界が回っていたなあ。なんて。
気楽に呟いた。
自分の死を客観的に見ていることに、少し驚く]
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