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【人】 奏者 セシル ホレーショーは貴方のことをどう思うのか。 (38) 2014/12/13(Sat) 10時半頃 |
[血を流しながら喚く料理人を、獣の力が床に縫い付ける
大きく開いた口と、光る牙は血に染まっていて。
濁った目がそれを捉えた途端、まるで観念したように、ふっと暴れるのをやめた。
一瞬、体から力が抜けた後。
キヒッ。
[倒され、肩を押さえられた体勢から、無理矢理腕を動かす。
バネ仕掛けのような腕は、ほぼ予備動作なしで斧を振り。
盲滅法な動きは、しかし至近距離の相手から大きく外れることはなかった。
遠心力が足りなかったせいか、斧から伝わる感触は浅い。
それでも、首から上を狙った斧は、ヴェラへ致命傷を与えただろうと思いつつ。
ヘクター。
[なついてる相手の姿へ手を伸ばして。
立ち上がろうとして、べしょりと崩れ落ちる]
……うぁ?
[少し飲みすぎただろうか。
うまく力が入らなくて、不思議を表して瞬きする。
その間にも、どす黒い血が厨房の床を汚して。
酔眼で、それをとろんと眺めていた]
ヒヒッ、ヒ、
[笑いながら、ヘクターの足に少々じゃれつき。
蒼白な顔で、ひとつ、欠伸をする。
なんだか眠たくて、起き上がるのを諦めて
ぺたりと床に寝そべった]
ヘクター、へーくーたー。ふくせんちょお。
[重い瞼をなんとか開きながら、いつもみたいに。
誉めて欲しそうな声で、足に血をつけながら彼の呼称を連呼する。
喋るたび、びゅうびゅうと風のように喉から空気が漏れた。
声がみるみるうちにか細くなっていく理由を、本人だけは分からずに、笑い。
酔った頭は、痛みも恐怖も拒絶したまま。
やがて、まるでちょっと昼寝でも始めるような顔で、目を閉じる。
きっと昼前には起こされるだろうなあって、そんな顔で]
……バカじゃないもん。
[一言。
それっきりだった*]
― 9号室
[キティにグレッグを任せると、ホレーショーは部屋を後にした。
兄貴は、危険な場所にこの灰色猫を連れていくことはない。焦燥感が強まった]
……おまえのせいッスよ。グレッグ。
[ホレーショーによって身なりを整えられた自分の死体に話しかける。単に眠ってるだけのようにも見えた]
死ぬだなんて。この役たたずの。使えないやつめ。
[ぎりり、と歯を噛みしめて。
灰色猫がこちらに、みゃーおと擦り寄ってきた。
案外本当に俺のことが見えているのかもしれない、と思いながら]
慰めてくれてるんスか?
キティに心配されるだなんて俺も終わりッスね。
[実際、もう終わっているのだ。
グレッグにできることは、ただ見守ることだけ]
[背後から聞こえた音に、声に振り向いたのは、ニコラスの身を床に強く縫い付けた直後。
普段であれば、獲物を仕留めている最中、他の物音を警戒することはあれ気を取られるなどということはありえない。
そも、背後をとられることなどがない。
今この船は、あまりの多くの血を流しすぎた。
あまりにも多くの死を見過ぎた。
暗殺者としての理性より、獣の本能が前に出る。]
……ヴヴ……ル!
[唸り、真紅の双眸を向けた先には、ヘクターとリーの姿があった。
獲物から目を離すなどという、普段ならありえない失態。
その頭に、手斧が振り下ろされる。]
───!
[そして、間髪入れず、とどめとなる重い一撃
[悲鳴も咆哮もなく。
それどころか、表情に驚愕も恐怖も浮かべることもしないまま、頭を潰され、息絶える。
リーからの問いかけ
…………。
[己の死を理解したのは、命を落としてすぐのこと。
頭を潰されて息絶えた、半人半獣の化け物を、男は、無表情に見下ろした。
その頭には獣の耳、臀部からは獣の尻尾が垂れ下がり、確かに、彼がこの化け物であったことを、現しているのだが。]
……荒いな。
[そこの潰れた化け物の骸が、たとえ自分であったとしても。
やはり、漏らすのはいつもと同じ言葉。]
[兄貴はどこへ行ったんだろう。
ふらふら船内を漂っていると、医務室の様子が見えた]
――ミナカ。
[必死になってギリアンを助けようと治療を行う医者の姿。
ミナカのことが分からなくなる。
怪我をした時は、必死になって治療してくれた。
ガキ扱いしてくるもんだから、いつもむくれて対抗していた。
けれど、なんだかんだで良い奴だと思っていた]
でも。化け物だ。
[吐き捨てるように言いながら。
それでもこの医者の事を嫌いにはなれない自分がいた。
あのとき。もしも、自分がいきなり襲いかからなければ。もしも、ミナカから事情を聞いていたならば。あるいは。俺も。ギリアンも]
……たられば、を考えても仕方ないッスね。
[嘆息してから。ギリアンの回復と、ミナカの治療の成功を祈った]
[ふと見れば、喉笛に穴を空けた獲物が、血塗れでヘクターの足にじゃれついている。
もはや、興味の失せた獲物だ。
ただ……]
ああ、馬鹿ではないな。
[それが、酒に侵された脳のせいなのか、彼本来の能力だったのか、知りようもないが。
襲われながらもこちらに背を向けず、手斧を離すこともなく。
迂闊にも見せた隙に、反撃の手を振り下ろしてきた。
その行動に、男なりの賞賛を漏らした。]
メモを貼った。
[厨房に残る者達は、はたして気付くだろうか。
斃れた時は、まだそれなりにヒトらしかった、半人半獣の化け物の姿が、徐々にその本来の姿に戻りつつあることを。
衣服に包まれ、頭も潰れた状態ではあるが、覗く手足が明らかに獣となっていることを。
もし、物好きが、血に塗れたヴェラの着衣を剥いだなら、そこにあらわれるのは、ヒトよりも圧倒的に獣に近い躰かもしれない。*]
[厨房に徐々に人が増えてくる。
そのたび、獣の耳がぴくんと揺れた。
グレッグがミナカに喧嘩を売り、結果、ギリアンに傷を負わせ、船長の怒りを買って殺された、という話を聞いた時もまたしかり。
表情は相変わらずだが、耳だけが時折動く。
つまりこの男、感情がなかったわけではなく。
比較的感情の分かりやすく出る箇所……耳と尻尾が、普段、隠れていただけのことなのだ。
とはいっても、やはり、常人よりだいぶ薄くはあるのだが。]
― ―
[目覚めは、いつもよりもよかった。
二日酔いの頭痛もなく、脳を揺らす素晴らしく気分の悪い酔いもない。
怪我したはずの肩や脇腹の痛みもなく、ただ体は軽かった。
穏やかな正気を感じながら、ゆるりと目を開ける。
久しぶりに頭が楽だ。
ああ、そろそろ昼か夕方か、それくらいの時間なんじゃないかと思って。
起き上がりながら、鍋へ手を伸ばす]
……ん?
[すか、と空ぶって。
同時に、自分の手が透けていることに気が付いて、まじまじと手を見つめた]
[酔いつぶれて、起きた朝のように。
なにが起きたか、を必死に思い出そうとする。
とんとん、と頭を叩いてみたけども、よく思い出せなくて。
なんとなく視線を床にやったら、死体が二体転がっていてぎょっとする。
そのうち一体は、自分の顔をしていた。
もう一体、ヴェラの装飾を身に着けた半獣を怪訝そうに見て。
触ろうとしてみたが、半透明の手は触れることは出来ない。
手を光に透かしてみて、向こう側が見えるのをもう一度確認してから。
あ゛ー、と気の抜けたような声を漏らした]
あー……。
あれだ。
死んでる、これ。
[なんで死んだのか思い出せないというていたらく。
状況的に、急性アル中で死んだとかではないとは思う。
食い破られた喉と、普段持ち歩いてる斧が半獣へ刺さっているのを確認してから。
まだ酔いが浅かった頃に聞いた、人狼という単語を繋げて、大体のことを把握。
がしがしと頭を掻いて、ため息をついた]
……fuckin'
[感じたのは、悲痛や慟哭というよりも、とうとう死んだか、という気分に近い。
いつかは死ぬと思っていた。ただ、今だとは思わなかった。
仕方ないな、と口にしようとして。
なんか無性に泣きたくなったから、やめた]
……なんか。
いいことあった人生だったっけ。
[自分へ向けて尋ねてみるが、死体は語らない。
酔っててなんも覚えてないなあ。
なんて、へらへら笑いそうな顔だと思った]
― 第二甲板 ―
[ふよふよと船内を漂っていると、やがてホレーショーの姿
――首刎ねられちまった。
そんな声が兄貴から漏れ聞こえて。
ああ、自分のことを話していたんだ、と合点がいった]
……肝心な所で抜けてて悪かったッスねー。
[口を尖らせつつ、ふわりと空中から2人のやりとりを見つめる。
やがて副船長
……ニコ。
[厨房を覗いて。惨たらしい死体を2つ、目にするだろう]
……ばか。なにしんでるんスか。
[小さく呟いた。その言葉は死体ではなく、自分と同じく身体の透けたニコラス
[ヘクターが去り、ホレーショーも去る。
今度は、モンドが厨房を覗きに来ていた。
男はその一部始終を、己だった骸の傍らに立って、何するでもなく、ただ見つめていた。
時折、尾がゆるやかに揺れる。]
───。
[ニコラスが目覚めたのはどの時か。
生前のあの騒がしさはない、いいこといだ。
また少し尻尾が揺れた。]
[辺りを見回せば、何人か人がいる。
去っていくヘクターを見れば、あー、と声が漏れた。
よく覚えてない。
だから、並んでぼんやりして]
……あー。
グレッグ?
[
ぐしりと目を擦り、今日は視界がぼやけないなあと思う]
……そっちこそ、死んでるよ。
[なんだか奇妙な会話だった]
うん。死んでるッス。
だから俺も、おおばかもの。
[へにゃり、と顔を歪めて。
近くにやはり半透明のヴェラの姿
なんで……ニコを。
[低い声で唸ってから。
死人同士で言い争っても無駄か、と首を振った]
メモを貼った。
[静かなのはいいことだ。
この料理人が、普段からこうだったなら、おそらくこんな事態にはならなかったろう。
だが、後悔があるかといえば、ない。
そも浮かびすらしない。
話しかけられなければ、黙ったまま。]
[そのうち、グレッグが姿を見せた。
彼も死者だということは、ホレーショー達の会話から知っていたし、そうでなくても匂いで分かる。
だからと、特別な感情が浮かぶこともない。
紅味帯びた、無機質な双眸を向けるだけ。]
何故……?
[唸るような声に、不思議そうに耳が動く。]
煩かったから、静かにさせようとした。
『煩かったから、静かにさせようとした』
[瞬間、頭にカッと血が上って]
こいつ……!
[ガラにもなく顔を赤くさせて、
ヴェラに向かって拳を振り上げ――]
……っち。
[すんでのところで、その動作をやめた。
ぷるぷると震える右拳を、左手で押さえて。
ああ、死人でも怒りは沸くんだな、と冷静に考える自分がいて。
それでも、沸き上がる怒りは抑えきれず]
この。化け物め……。
[らしくない口調で、唾棄するように言い捨てて。
瞬間、はっと我に返り]
……申し訳ないッス。ちょっと頭冷やしてくる。
[震える声で、ニコラスに視線を送り。厨房を後にした]
【人】 奏者 セシル そう……。 (123) 2014/12/13(Sat) 20時頃 |
生きてさえいれば、大人になれたのに。ほんとバカだな。
[
いつまでたっても少年としか思えない彼が低く下手人に声をかけて。
グレッグ、ぐれーっぐ。やめとけよ。
[怒りに顔を歪ませて、拳を握る彼へ困った顔で笑う。
癖のように、しゃがみこんで。
まどろんだように死ぬ自分の死骸を、間近で眺めた]
……どうせろくな死に方しないとは思ってたさ。
金のために人殺ししまくってたんだから。
[出来れば生きていたかったけども、と諦めのため息をついて。
ヴェラを見上げ、眉を歪ませて笑う]
できればもう少しましな理由で殺されたかったけど。
……そんなにうるさかった?
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