3 ビー玉坂〜卒業式の前に視るその場所は…
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[少女だったモノは悦びに打ち震え、愛しい人に眼差しを向ければ――濃紺から涙がこぼれる]
――なんで、泣くの?
[小さく首を傾げ、問うた
愛しい人の涙が――想いの欠片が、僅かでも自分に向けられてしまったから
彼の全てを手にしたいという、望みを忘れられないから]
[いつか彼がそうしてくたように、涙に濡れた頬に口付けようとして
砕けてしまった蒼が、彼の裡にある薄紫の淡い輝きを映せば]
――……本当に……ばかだなぁ
[今更ながら、それは叶わないことだと知るけれど
奇しくも言葉は愛しい人と重なって
少女だったものの唇に僅かに笑みが浮かんだ]
[彼が最後にもう一度 "蒼" を見上げて去った後も愛しさは消えない
異形に身を委ね、快楽で心を塗り潰そうとしたのに叶わなくて
最後に試すように彼を突き放したのに、それでも約束を果たしに来てくれたのが嬉しくて
――彼を求める心は本物だった
だから、その愛しい手が黒い花を手折らなかったことを悲しく思った
少女に終わりをもたらした闇色の手も、少女自身を求めたものではなくて
誰からも求められることもないまま、最期を迎えたことが今は悲しい]
[募る愛しさは、求められることのなかった寂しさへと変わり
少女だったものの心を悲しく満たせば
胎の中に蒔かれた種が、最後まで黒い花に侵されなかった胸の中心――ぽっかりと空いてしまった穴を侵食する
種は少女だったものを苗床にすると
空に向かって捩れた黒い芽を伸ばし、やがて艶やかな――本物の黒い花をつけた]
[――寂しい ――黒い花は、思う
愛しい人も、友人も、闇色を纏った鬼ですら、ここにはいない
咲かせた花は誰にも省みられることなく、徒に闇の中、ひとりぼっちで散っていくだけ]
[――寂しい
黒い花は寂しさを埋めてくれる誰かを求めて、甘く芳しい香気を闇の中に立ち上らせる。
誰でも良い、今はただ、自分を求めて手折ってくれる手がほしい]
[――寂しい
黒い花は、緋色の少女の想いを知ったような――そんな気がした。
誰かを求める渇望は、やがて黒い花に闇色の実を結ばせる
結ばれた実は寂しさを糧として色づき、やがてぽとりと落ちる
闇色の実はころりと転がり
――かつて "キャロライナ・コールリッジ" と呼ばれた少女の姿になった
そして少女は立ち上がり、異相の "蒼" がぽっかりと抜け落ちた昏い闇色の虚ろで、一度だけ空を見上げると深い闇の中へと消えていった]
[――……少女が去った後、一陣の風が吹いた
滅びの風を受け、苗床となった身体はあっけなく塵となり
最後に異相の左目――砕けた "蒼" だけが残った
やがて "蒼" は ぱきり と音をたてて完全に砕け散り
裡から蒼い蝶が一羽、ひらりと舞い上がる
蒼い蝶はしばらくの間、塵となった苗床のまわりを飛び回り
少女の後を追うように闇の中へと向かった]
わぅん
[かたちはまだ、獣のまま]
……がるるるる?
[だけど、黒い花の変化には、警戒の声を…。]
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−校舎− [休み時間の喧騒を ゆらり 闇 は彷徨う。 どうしたのか、と生徒は尋ねて来る。知らない顔。
彼らには 見えて居ない 。
右腕も、左腕も、首も 僅かを残して 闇 と変わっている姿も。 熱の篭もらない瞳のまま、当たり障りの無い返答を返す。 廊下の窓 から 飼育小屋の在った所に視線を向ける。と。
>>23そこに佇む担任の姿。 口を開いて、何事か 呟く。 それは、音にはならない。]
(81) 2010/03/06(Sat) 20時半頃
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−用務室− [>>@22闇 の中 から 少女の 哂い 声。聴こえて。 寂しそうな 貌。 悲痛な 哭(こえ)。思い出す。]
…… あれ は
[放課後 チャールズ“せんせ”に呼び出されている。 用務室の鍵を先に手に入れれば 思い、用務室へ足を向ける。]
……。
[もうその部屋の主は居ない。 知っている。だから、ノックもせずにその扉を開けて、そこに人影が在るのに
青碧を見開いた。]
(82) 2010/03/06(Sat) 20時半頃
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[そこに、人が居た事。 ―― 居ないと 思っていたから。 そこに、居た人が居ない事。 ―― 知っていた けれど。
そこには、人のいい用務員が 居て。 あの鬱陶しい髪をした 胡散臭さえ感じる 不精髭の 用務員では、なく。 居なくなった席には 新しく 本来の 誰 かが座る。]
……ダレ?
[尋ねれば 彼は薄い頭を?きながら、忘れたのか、と笑う。 ヌマタロウと言っていたような気がするが、もう どうでも良かった。
用具室の鍵を尋ねれば、すでに貸し出した後。舌打つ。 ならばもうここに用は無いと踵を返す。用務室を出る前、一度だけ足を止めて、振り返る。]
……、……結局 ラーメン食べて、ねぇや。
[待ってろ。そう言った嬉しそうな声だけが 今は。]
(83) 2010/03/06(Sat) 20時半頃
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−用務室⇒北棟 東階段踊り場− [まだ何か用かと尋ねて来る、知らない用務員に首を振る。]
ナンデモナイ。
[そして、用務室を出、聞いていた呼び出された場所へと向かう。]
チャールズ“せんせ” も 殺せればいーのになぁ。
[過去に逆戻ったとは 思ってない。思えない。 記憶が塗り替えられているだけだ と思うけれど。]*
(84) 2010/03/06(Sat) 20時半頃
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そうだね。着々と、扉は一つずつ閉じていく。
救いの光は、そこかしこにあるって言うのに。
まるで、それを拒絶するみたいに。
[目の前に広がる光の、過去の光景。
その中であがく友人達。彼らは徐々に闇に染まっていって]
……………。
[だから、黙って目を逸らす。
ピッパと目を合わせて、冗談言って、笑いあう。
手と手をとって、唇合わせた。
囁くように、何度も、何度も]
[それは、死者にはきっと何の意味も無い行為。生者の真似。
生きていた時の、酷く滑稽だったあの倉庫でのやり直し]
[しばしの後、そっと身を離した。だって、ケイトが見ている。
過去の世界の幻影見せて、生前の行動なぞって、それでもこの闇の中、たゆたっている。そんな気がする]
[………それに、そこら辺にきっとサイモンいるし]
[多分、恨みがましい闇を送り出している]
[全力で目を逸らす]
………まいったね。
[でも、どんなに目を逸らしても。
ついつい視線は光に向かう。そこで生きてる人に向かう]
[スケッチブックに手を伸ばす]
…ダメだな、もう。欲しくなる。
描いたら、きっと欲しくて欲しくてしょうがなくなる。
[綺麗なものが。美しいものが。生きてる人が。
欲しくて、見たくて、描きたくて、そちらに行きたくて。
全力で手を伸ばして、そして引きずり込みたくなる]
[そうしたら、彼らのその力強い素敵な光は変質してしまうのに]
[目の奥にきらりと浮かぶのは渇望と葛藤。
変質してしまった己と、ピッパが闇を吸い取ってくれたお陰でかすかに残る理性との戦い。握りこむように、手を下ろした**]
[蒼い蝶は獣と化したバーナバスの鼻先を掠め
眉を顰めるディーンのまわりをしばし ひらひらと舞い
やがてどこかに飛び去った]
[深いモノクロームの景色の中、飛び去るは鮮やかな蒼い蝶。
かなしみのいろだと、ふと思った。]
[寄り添う恋人達の上を
蒼い蝶は ひらり ひらり と飛んで行く]
……ちょうちょ
[鳶色の眸にも蒼い蝶は映るか。
戯れるように手を伸ばし、くるりと身体を回転させた。]
[蒼い蝶は
戯れるように差し述べられた、鳶色の少女の白い指先で
しばし羽を休める]
飼育委員 フィリップは、用具室を目指して歩くが、辿り着けたか、どうか。
2010/03/06(Sat) 22時半頃
ねぇ、君はどこから来たの?
迷い込んじゃったのかな。
[指先に止まる蒼い蝶に言葉をかける。
美しいその色に目を細め、眸を瞬かせた。]
…メアリー?
[感じる気配。蝶と戯れるようにふわりと舞う様に目を細めた。]
|
−移動中− [闇 は 彷徨う。 冷えた 青碧 。映すのは 。
ぴたり、足を止める。]
…… 。
[緋色ではない薄紫。 同じ、薄紫の彼に。 似てる 、 二人。]
俺は 殺すだけ 。
[彼女のことは、彼に任せたから。 携帯を取り出して 今までで一番簡素なメールを打ち込んだ。
いつか視聴覚室で、誰にも送らなかったメールは。 結局、誰にも送られないままそこにある。]
(102) 2010/03/06(Sat) 23時頃
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[鳶色の少女を呼ぶ声が聞こえれば
蒼い蝶は羽ばたき、白い指からふわりと飛び上がる]
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送信者:フィリップ 宛先:ファイルヒェン 題名:無題 本文: 人 殺し
[たった一言のメール。 打ち終えると 口元は 嗤 み の容 に。]
(104) 2010/03/06(Sat) 23時頃
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[響いた声に、髪を揺らして顔を上げる。
赤い絆が、見えた。]
……ディーさん。
ようやく、見つけた。
[よかった、と笑む。
指を離れ、羽ばたいて飛んでいく蒼い蝶の姿を見上げながら
ふわりとディーンの隣へ降りる。]
[蝶の蒼い燐粉が照らす闇。
ほんの僅か重なる映し世が垣間見えるか。]
君は、誰だい?
[見覚えのない鮮やかな蒼。ひそやかに問いかける。]
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