人狼議事


233 逢魔時の喫茶店

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―夢―

―――、……

 [黒い獏から、遠くを歩く男女の背に顔を向けた。遠い、とおいな。親友(あいつ)は、何にも知らないのだ。しあわせそう。
唇を引き結ぶ。
なんだろう。
なんと、言おう。]

……大切だけど、
悪夢でもある、か な

……俺の中で、だけ。


[ぱたん、ぱたん、左右に揺れる尾は
おれの意思と関係なく揺れるので、始末に悪い。

夕陽が落とす影の下。
立ち上がるのが億劫なわけではない――― が
起き上がらず、のったり
5M近い高さからリツを見下ろす。]

 うん………

[よいしょ、まあるく腰を折り曲げる。
短い足の裏を、ぽふん、リツの頭にタッチ。]

 届いた。

[しかし、バランスが取り辛い、全体的に震えている。]


[夕陽に向かって歩く二人の影は
遠いのに、距離は開くはずなのに、消えない。
此処は夢のなかだから。

しあわせそうな様子は、背中を見ても、分かる。]

 遠くに行ってしまうから、?
 それとも、一緒に居られないからか。
 …… ああいう、風に。

[どちらが、その大切な背中なのか。
確かめるように、黒い目は、まるまる、眺めて。]

 うん。

 でも、大切な悪夢なら、あの日に食わなくて良かった。


[ぽふ、と触れた足の裏、
頭を撫でるように触れてくる]

……転げるなよ?

[そ、と。撫でてみる。
うん、なかなかの毛並み。

――店で、エフは聞く、と
言ってくれたから。
俺は、いままでろくに開いたことのない思い出の蓋をじわじわと、開けた]


……俺、 仲いいやつがいて
……そいつに、彼女ができた

そのときのこと、夢に見てる


[掌、と呼ぶより、前足と呼んだ方が良い。
重心を傾けるのも難しくて
ぽん、ぽん、二度リツに触れて、離れた。

身体を起こすとそのまま引っ繰り返りそうだ。]

 ………

[転びそうなので返事をしない、素直なおれなので。
撫でる指が心地よくて
バランスも取れなくて、前後にゆらゆら揺れる。

――― それから、身体に比べれば小さな耳を
ぴくぴく揺らして、彼のはなしに耳を傾けた。]

 うん。
 …… 何時のはなしから、繰り返し、見てる?

 あんたは、寂しくてああいう顔をしていたのか。
 


[返事がない。大丈夫じゃないのか。
ゆらゆらゆれる。そっと支えるように
手を添えたまま。]


――、そう  だな

遠くに、 行かれたみたいな。
気持ちに、なった

半年―――いや、もう、ちょっと前か。

[自分の頬に片手を当て、それから胸の前に滑らせて、服を握り締める。]


……情けない顔、してたか

[じわじわと、喉の奥が痛むような感覚。]

さみしい――くるしい。

なんか、どうしようも、なくて。
いまだに、こうして夢に見る。

[俯く。ああ、バーじゃ耐えたのに、泣きそうだ。]

……食べなくて、よかった、っていったけど
あんたに食べてもらえたら、
見なくて、すむようになるのかな……


[前後する身体を腕に支えられて
巨体のくせに、体重を、感じさせない、夢だから。

何処か首だか分からない首を傾ぎ
リツに目を落とす。辛そうにも見える、仕草。
眇めた視界に見えるのは、主に頭上だ。]

 そういう感覚は、おれも、分かる。
 寂しい……… ような気持ちだな。 うん。

[頷き、]

 半年。
 …… も、ずっと、見てたのか、あんたは。

[人間の半年は短くもない、と、分かるので
すこしおれまで寂しくなって、表情を歪めた。
分かり辛い。]


 
 してた。

[隠れていたから、背中ばかり見ていたが。
夢に生きる以上、なんとなく、理解る。
――― そういうもんだ。]

 いまも、苦しい?

[尋ねる声は、囁くくらいの、温度。
鼻先を額の辺り、狙って、押し付ける。
泣きそうな気がして、撫でるんだか、そんな、ぐりぐり。]

 これは、リツの夢だから、なあ。
 あんたが辛いままだったら
 食っても、…… 夢を見たことを忘れる、だけだな。

 おれは、あんたが辛くなくなれば良いと、おもう。
 



……ん


[わかる、と言ってくれることに
変な話、安心する。
大きいのに、夢の中だからか
ふわふわと、雲のように軽いおおきな獏]

みてた

――最初のころより、随分、ましになったけど

[仰ぎ見る獏は
わかりづらいながらも
つらそうな顔をしているように見えた。]

……もう過ぎたことなのに
俺が女々しいだけなんだ


[黄昏の向こう、親友に向けてたのは
こい、だったのだきっと。
気づいたときには何もかも手遅れの。]

――そか

[はっきり言ってくれるから、
いっそ、たすかる。
ぐりぐりと寄せられる鼻先、夢の中だからと言い訳して自分も摺り寄せた。震えた息と一緒に、目じりから涙が伝ったのが、わかる]

……――、忘れるだけか
それじゃ、いみ、ないな

[ごく微か、苦笑気味。小さく、息を吸う。]


[店内はいつもより隙間があった。

優しい悪魔が、新米魔術師のために。
或いは親交の厚い店員の、特別な一夜の為に。

早速、無償で働いてくれたお陰、
だとは気づかぬまま。

これくらいなら、休んで問題なかったかと。
密かに安堵の息を吐く。]*


――つらくなくなる、……か

[額に押し付けられる鼻先、撫でながら
意を決するまでの
長い間のあと]

……、――あんたと、いると
……うれしい


[ぽつりと、俺は。
正直なきもちを、
告げる]

たぶん、
つらいことも、
少しずつ、忘れられる、気がする くらい


[人間の感覚と差異があれど
理解は出来る、と言う感覚は、伝わったか。

短いいらえに安堵を覚えて
ゆら、ゆら、揺れて、リツに支えられる獏。
瞬きは、ゆるい、未知ではない感覚よりも
彼が辛そうにしている方が、苦く、感じて。]

 過ぎたことでも、それも、大切だったんだろ。
 あんた、悪夢でも、大切だったって、言ったな。
 その、……… 友達のこと。

 忘れたら、あんたじゃなくなる、と、思う。
 



なん、だけど


その

[そこまで言って 恥ずかしくなった。俯いたまま顔を上げられない]


 
 だから、覚えていれば、良い。
 ……… どっちにしろ、おれにそれは、食えない。

[黄昏の向こう側に進んでいく背中。
相変わらず消えない背中を
隠すみたく、ずんぐり、姿勢を、傾けた。

影が、深く、長く、伸びる。]

 その上で、

[視界で、涙が零れた。
夢でも、確かにそれは、黄昏色を映して
きらきら光るその筋に、鼻先を押し付ける。
拭う、溢した苦笑いごと。]


 
 おれの方、見てろ。

[喫茶店で、そう、口にしたのはトレイルだったか。
ことばの矛先もまるで違うけれど
此処で借りるのは、ズルじゃあないと、良い。

うれしい
そう告げるリツに、重ねるかたち。]

 うん。

[正直なことばが、羞恥心か、何か
消えそうになるまで、小さな耳で、聞いて。]


 
 そりゃあ

 嬉しいが増える方が、良いねえ。

[ふ、は、洩れる、笑み声、獏から。
苦くした表情が緩むのを、感じた。]

 おれも、あんたと居ると、楽しい。
 辛そうに見えるのは、辛い。

 ……… だから、おれの方を見ていれば、良いな。

[そう、ことばを重ねて、しかし
獏の身体は矢張り、腕が短くで、リツの顔
上げさせるには、至らないのだった。]


[獏は、身体を擡げて、リツの身体に身を寄せた。

腕は届かないが、―――口も、ことばも届くから
良いか、と、うれしく、笑い声を溢して。
起きるまで、起きても、このままで居る心算で**]


メモを貼った。


  
[夏の空は、冬より低い位置に、蒼が広がる。
率直な問いは、湖水を閉じ込めた彼の瞼を振動
隣に居る彼まで影を伸ばし、意向を待つ最中


―――…
一向に返事が来ないと
僅かばかりの驚愕に、彼を盗み見る

それを大義名分に
ずっと、指を繋いだ侭と、申した筈
悩ませる意地の悪い質問だった自覚在れ]



[ただ瞳に映した
曰く初心を見せる横顔に、間を置いた。

離す理由の欠如した指から伝わる
上がり始めた彼の体温は
昼間で知った温いものより、肌に馴染み]



   ―――何時か離すのが、 惜しい…な。


[それに今宵は少し危険な薫りが、孕んだ空気。
トレイルに不和無く、此処で出逢う夢夜を呉れた
満月の悪魔に、宛ら心中で礼を述べ

ふ、と息を付き強弱見せる彼の指を愉しむ
何時人が訪れるとも知れぬ、路地裏で勤しむ密事]



[肉球或る猫の足音より
静かに歩むは、時間稼ぎ

本末転倒に。新鮮な笑みを見せる彼を
このまま浚う事も、一瞬浮かんでいた故
目的地に誘えば、離そうとした手を引き止めたのは
黒髪を掴む彼の指]


   ――― …………、


[
何方かを出は無く、自分自身を
求めて貰えることが、受け入れられることが。
 こんなに喜ばしいなんて、初めて識れた。
それから]




   ――……名前 、
   奥の席でも、読んでくれる?

   
[トレイルの弱々しい声に、隠れた主張に弦月を描く唇。
彼の恥辱を理解しながらも、繋げた瞳は誘う色。
己の稚気を受け入れるよう、捏ねる駄々は稚く。

離れていく指を追うよう
頭部から毛先まで、銀色が髪上を走った]


[開いた夜の扉、トレイルの後に続いて侵入
近くに店員、または店主が居れば、簡素に]


   とりあえず酒に合う つまみ。
   トレイルも口にできるモノを。


[寝癖の残った彼の襟元を見つめて銀糸を揺らし
着いた奥のテーブルに腰かける前に
指を名残惜しく離そうとしながら]


   仕事以外で、此処に来ることは稀だろう
   ……… 緊張するものか


[スーツケースを机下に仕舞い
漆黒に似た双眸は、ジッと、間近から彼の顔貌を覗いていた。]


メモを貼った。


―夢―
……、――

[ゆらゆら、ゆれる獏。
なんだか、揺りかごみたいだ。
手のひらでゆっくり撫でる]

――、ん。

[大切だった。
そう、大切。きっと今も。]

……うん

[ 涙声になるのがわかる。
黒くて長い獏の鼻顔を埋めるような、ありさま]


[長く長く伸びる影。
 包まれる心地がして、
ほっと、する。あたたかい。]


―――、エフ……


[見てろ、なんて、
ずるい。涙が溢れてしまう。]



――……――っ

[ 促され、少しのためらい。
そろりと、見上げる。
つぶらな目が俺をみている。
押し付けられた鼻先、抱きしめた。]


……、見る。
―――あんたの方、……だから


[あんたも。見ててほしい。
小さいわがままは、抱きしめた鼻先に行きと一緒にとけた。
気づくのが遅すぎた知られざる恋は、顧みられることなく朽ちたから。]


―自室

[――どれくらいか。
夢の中の黄昏のゆるやかに、
明けるころ。

現実の、ベッドの上でも、
泣いていた。]

……ぁ、…

[ぼんやりと目を開いたとき。
エフの腕を強く抱きしめていたのに気づいて、幾度目かの羞恥におそわれたのだった**]


メモを貼った。


[身体の一部を繋ぎ、
歩く足並みは微妙にそろわない。
ずれる度に揃えようとして、次第と速度を落とす。

最後にこうして歩いた相手は養父で、
その時のトレイルは今よりずっと小さかった。

庇護を受けるのでなく。導かれるのでもなく。
少しでも近くで、触れたい衝動。
触れたら、離れがたくなる願望。
混ざる体温に、感情も共有されたのだろうか。
囁きに頷くかわり、指先に力を込める。

いつかの、エフとリツの姿が重なった。
彼らもこんな気持ちだったのかもしれない。]


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