25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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せめて線香くらいは上げさせてもらえぬかな… 共に学び舎で席を並べた者なら兄弟も同じ。
[悲しむ小鳥を気遣って、くしゃりとその金の髪を撫でた。]
(111) 2010/08/07(Sat) 10時半頃
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[触れられぬはずの洋琴。奏でられる音。
唄われる声。
音がやむまで、その傍で聴き続ける。
此岸の声はまだ届かぬ。
楽が終われば花に手を伸ばして、その*腕の中に*]
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…イアン。 [その姿を見るたびに、胸が潰れそうになるほど苦しい。]
今のそなたは、修羅のよう。 それが、痛々しくてならぬ。
(114) 2010/08/07(Sat) 10時半頃
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美しい、なんて
可笑しなひとだ。
[苦笑いは冬色、続くは花の色]
嗚呼、おかしなことは
私欲に主さまを使おうとした、私にも。
…………見る間に咲いた花に色がつくとは
是を美麗と謂うのなら
主さまがつけた色故に他為らぬでしょう
[冬の蕾持つ戸惑い僅か含みながら
冷たい色持つ貌は哀愁含む笑みを浮かべる
応接室の洋琴が鳴り響くを、
たどり着いたセンターの人間は聞くことが出来ぬ。
己が爪でころした
主の為に歌う声も]
[やがて曲を終えて、
褒美のように伸ばされた腕に擁かれた時
聞きなれた鈴の音が
彼方から、此方から
聴こえた]
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えぇ。 知られてしまえば…喰らわれてしまうのではと、恐ろしく。
ロビンは…乾様がそのお命と引き換えに? [二人の訃報に表情を曇らせて…] 北の乾は、知られてしまったのですね…きっと。 して、刷衛様は如何なされた? あの方もそなたと共に人狼を退治しに来たと、下男たちから聞き及びましたが。
(118) 2010/08/07(Sat) 11時頃
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かりょう
[囀りが遠く聴こえ
少年は呟く。
困ったような笑みを浮かべて]
……あの時既に
ボクも、キミも 変わってたんだよ
冬の香は、私が偽ったに過ぎぬと知っても
未だおなじ事を思うかどうか
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…イアン……? [不思議そうに布越しにその目のある場所を見つめて。]
イアン、そなた疲れているのか? 心労はたまに、耳に出るという… 目を塞ぎ、耳まで悪くしては、仕事に差し障るばかりか、背後から刺されても気づけぬぞ?
ただでさえ…、そなたの職務は恨みを買う。 疑いがあったとは言え、処分されたものに縁のあるものは、そなたを恨むことでしか気持ちに折り合いがつけられなくなるやも知れぬ。 そして、おそらく獣の目からも、そなたはきっと目障りだ。
どうか、無理はせずに… 仇討つために散るは、そなたの独りよがりにしかならぬ。 この状況では、一番物を知ってるそなたが頼りなのだから。
(120) 2010/08/07(Sat) 11時頃
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私欲でない願いなどどこにもありはせぬ。
それが人の為であったとしても、回れば己のためであり。
…お前のそれも。
お前だけのものではなく。
[腕の中の花を優しく包む。
聞こえた鈴の音。
こちらだと気づいたのはまだ僧の耳にはあちらの音が届かぬから。
ようやく。
現世の声が耳に届くと、死した姿をじいと見た。
もう届かぬ花。今は腕の中にあるもの。
腕に感じるぬくもりは魂のそれかと、友の名を呟く花を見る]
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えぇ、しらとりは来ていない。
だからおそらく、あの子は無実。 痛ましいことだ。 [伏せる睫毛は憂いを帯びて。]
この中に、幾人潜んでおるのやら…。 盛りも過ぎたわたしはともかく、これからのものが散っていくのは、胸が痛むものだ。
引けぬのは、分かっているけれど… 旧知の仲なのだから、辛いことがあれば…いつでも。
(124) 2010/08/07(Sat) 11時半頃
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……利用されたと謂うのに
怒らない
主さまはやはり、おかしいひと
充たそうといいながら、私は貴方を隠れ蓑にした
冬無き変化を、主得ん為と
其は真となりましたが。
[不思議そうに見上げる眼差し。
聴こえる友のこえに、冬色もまた
応接間に横たわる亡骸と、触れる鳥の姿を見る。
また、鈴の音がした]
――白き鳥の舞は、其の通り同じ結末を?
ランタン職人 ヴェスパタインは、記者 イアンの、首に巻かれた白も気になったが、それに手を伸ばす事はせず。
2010/08/07(Sat) 11時半頃
[泣く音。悲哀を感じるそれは、やはりこちらのもの。
あちらの音は小さく届いていたから]
どなたかが、此方についたのでしょう。
この鈴の音は…。
鵠?
[姿はまだ見えぬ。音がするほうへと眼を向けた]
怒るという思いは、すでに忘れてしまいましたから。
ああ。
お前が誰かに召されていたら――。
それは私の身を包んだかもしれぬ。
[見上げてくる眼差しに触れるか触れないか、唇を寄せて]
利用ならいくらでも、
人に使われることは徳を積むことにも成り得る。
そのようなことでいちいち腹を立てるはずもない。
それに、利用されてなくばお前はここに居ぬかもしれないのだから。
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詳しくは判らぬ…か。 それではいくつ獣を見たからとて、他が全て無実とは言い切れぬなぁ…。 [小さく、嘆きの声。]
彼岸には、乾の法師殿がついておられる。 非業の死を遂げたものも、あの方が極楽へ連れていってくれれば良い…な。
(129) 2010/08/07(Sat) 11時半頃
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…… ―――誰 だ
[―――静かに、
消え入りそうな声がした。]
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…生きている、うちから? それはまことか!?
それが出来るなら…全て調べれば病のものだけを…
[思わず、声も大きくなる。]
して、その彼は信用出来るのか? 情は人の心を狂わせる。…大切なものを庇って嘘をつくことも…。
(134) 2010/08/07(Sat) 12時頃
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……聴こえてるよ、迦陵
ボクは冬の蕾のままだけど、此処はとても暖かい
[秋色撫ぜられた感触は無く
それが少し寂しいと思う
振り払っていた過去を微かに悔いて
ふと、落ちてくる主の唇
小さく困ったような笑みを浮かべた]
でも主さま、私は叱られるようなことをしてきたのです。
ひとつ
望みを叶えてきてしまった
イビセラの、血を受け継ぐ種を……桜の腹に
[線香くゆる其の先に、
冬が憧れた先の花がひとつ]
……名乗る礼儀は、無きや?
[消え入りそうな問いに
返す複雑そうな声音]
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…そなた、が? [部屋へと入ってきた姿を見て、緩くその目を瞬いた。*]
(138) 2010/08/07(Sat) 12時頃
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[沈黙。
知っている声だった。]
……鵠。
[ぽつり、と呟くように名が落ちる]
種を。
それは、困りましたね。
身をもたぬここでは、些か感情が出やすいのかも知れぬ。
お前だが誰ぞと契ってきたなど。
私の身に宿して欲しかった。
[見下ろす眼に僅か燃ゆる嫉妬。
死した身ではそれは叶わぬことだと、思えばそれもやがて鎮まる]
…ですが。
お前の生きた証が残るのなら、私はそれでも良いと、思う。
鵠。
やはりか。
何故、貴方がここに。
疑いでも向けられましたか。
[冬を抱いていた腕を解く。けれども肩に手は乗せたままで]
もう、言うても遅いことか。
私が居らずとも
私の子が
次の代へ、其の次へ
望みはひとつ
願いはひとつ
肉を喰らって血を啜り
人の身に種を植え付けて
――――幾日かけても
幾年かけても
必ず果たす
不条理なこの世を壊す為
[主の瞳に灯ったいろ。
見詰めた花が満足気に笑みを浮かべて、詠った]
……主さまの背がもう少し低ければ
私にも襲えたやも。
主さまは
現世に残すもの有りや?
[擁かれていた腕が解かれ、それでも傍は離れない。
肩に乗った手に首傾けて、名乗った方へと名を告げる]
私はイビセラ、ロビン
ひとつ目論見叶ったと謂うてみよう
主さま居らねば
喰らうは高嶺の華ひとつと
……そう謂う案もあった故
現世に残すもの…
残さずとも良いと、思っていたから。
何も。
背など、横になれば関係ないように思うのですが。
[花を見下ろして、少しばかり考える。
肩に置いた手で、首筋へと触れる。
目論見を語る言葉に触れた指に少し力が篭る]
その案が通らず、良かったと。
――ロビン。
[欲しているのは自分かと、裡に篭る思いに片方の手を自身の胸に当てた]
…――――白鳥は、
伝承から
逃れられなかった、らしい。
[さらり、と
黒髪が流れ俯いた。
言葉少なだった鵠はしかし
――イビセラの言葉に目を見開き、紫苑色で、睨む]
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なるほど、天満月の。 それで合点が行きました。
[一度ここで改まって。]
わたくしも、古い言い伝え故半信半疑で居ましたが、 かつては、奴ら人狼に対抗すべく四つの家が在ったと。
獣祓いの北の乾、見極めの東、看取りの西。 そして南は…既に絶えて久しく。
看取りの西は、高嶺の。 当主が朧は…世間欺くわたくしの影。 同じ血を分けた兄弟ですが、彼には何も知らされておりませぬ。
見極めの東は、天満月家に伝わっていたのですね…。
(144) 2010/08/07(Sat) 12時半頃
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