73 ─深夜、薔薇の木の下で。
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慾だけなら、ほかの誰かでもいいはずだよ。
ノックスじゃなきゃ、俺の思いは満たされない。
[エリアスに触れても得られなかったもの]
酷いって、どうして?
俺はそう思わないし、他の誰がそう言ってもノックスを好きな気持ちは変わらないよ。
[両手の落ちた顔、現れたアイスブルーを見つめて、近づく。
体は別にあるのに、心音が煩く聞こえて。鎮めようとその頬に唇で触れた]
[零した言の葉は、ジェフへの嫉妬と、
ベネットを想うからこそ彼の未来を憂いてのもの。
なのに、どこかベネットの答えは少しずれていて。
なのに、だからかノックスの琴線に触れるのだ
――……いつも。]
ぎゅって、するだけじゃ、もう済まないよ。
[頬に接吻け受けたまま喋る。
脇に垂らした腕が、今一度あがり、ベネットの肩に触れる。
そして、身体と身体を少し離した。]
ねぇ、他の誰かと何かしたから、此処にいるの?
だから、俺がいいと思ったの?
[近い距離、薄く冷たい筈の青が、裡に焔を燈して翠を見る。]
もし、そうだったら、そうでなくても
俺は、確かめる為にきっと……―――
[その身を暴いて翠を焼いてしまうよ……と。
誰かを上書きするように、もう何処にも逃さないように。
逃げるなら、今だよと、思いながら、
逃がさぬというように、唇に唇を近付ける。
逃げぬなら、噛みつくような、接吻けを。]
俺からキスしたいって言ったのに、そんなこと、…嬉しいだけだよ。
[体が離れて、体温が遠ざかる。
かけられた声に思わずうつむいて]
……最後までしたのかは覚えてないけど。
薔薇の精に、抗えなかった。ほら、薔薇の蔓の痕。
[首を示す]
ごめん。
[自身でも、泣きそうな声になっているのがわかった。
逃げるつもりなどあるはずもなく、唇が近づいてくれば、自ら寄せて、目を伏せる]
[ベネットの懺悔に眉根を寄せて。
その言葉に覚えた感情を発露させるように、
唇が合わされば何もかも奪い尽くすごとく貪る。
あわいをこじ開けるように、舌を差し込んで。
口腔の中のどこも触れない個所がないように。
酸素すら奪う傍ら、唇の端から零れた唾液が、
彼の首筋を伝って薔薇の刻印を濡らす。]
――……薔薇ちゃんか
[その唾液を追うように、首筋へ落ちる舌。
思い出すのは、自分の隣にベネットの身を横たえた姿。
お節介な部分と、誰でもいいといった風な精霊の
どちらの部分が勝ったのかは、今は判らないけれど……。
薔薇の刻印に、まるで吸血鬼のように歯を立てる。
そのまま、抵抗なければキツク吸いあげて、血が滲むほど。]
[意識だけのはずなのに、合わせた唇から感じる熱さは、体が有るときと大差なく、むしろより強く感じて。
入り込んでくる舌に自らも絡めて、端から唾液が零れる]
んん、…ノ、ク…ス。
[首筋を舐められると肌が泡立つ。痛みに小さく悲鳴を上げた]
ずるい、俺も触りたいのに。
[金糸に口付けて抱き寄せる。耳朶に唇で触れて、小さく噛んだ。
薔薇にあてられた時とは違って、直ぐに事に及ぶよりも、彼をより感じられるように、ゆっくりと]
んっ……―――
[首筋に埋めたが故に無防備な耳朶に、歯をあてられて。
痛みを耐えるようなくぐもった声を上げ、
つぅっと銀を引きながら紅を刻んだ箇所から、
唇を離す。]
先輩、痛いよ。
[自分がしたことは棚上げにして、眉を八の字に。
指先で濡れた自分の耳朶を撫でて、甘い息を吐いた。]
痛かった、お返し。
[いたずらっ子のような笑みを見せて、見上げてきたノックスに触れるだけの口づけを]
……もっと、していいよ?
痛くても我慢するっていうか、嬉しいし。
俺ももっと、触りたいし。
[鼻の頭に触れて、にっこり笑った]
痛いのが嬉しいの?
[触れるだけの接吻けを受けた後、じっと翠を見詰める。
先輩って、Мなのかなぁ……と、心の中で思うも
伝えたら触れられた鼻を摘まれそうなので言葉にはしない。]
とりあえず、部屋に行きましょーよ。
[きっと今の姿は、誰にも見られることはないと思うのだけれど。
照れ隠しもあるのか、そう提案する。
自分の頬を掻いて、その手を差し出した。
受け入れられたなら、部屋に向かって歩きだすけれど、
その途中で、ジェフの姿を見つけることがあったなら、
縄張りを荒らされた猫のように
ふしゃーっと毛を逆立てるかもしれない*]
痛いのが嬉しい訳じゃなくて、触れられるのが嬉しいんだって。
[少しむくれて。
けれど差し出された手に頷いて右手を乗せる。
温かく感じるのは、おそらく気のせいではなくて、心の温かさだろうと思いながら**]
[寮内のように見えるが少し違う気もする廊下を歩く。
二人で歩いている姿を見て、野良猫が毛を逆立てても軽いため息をついてみせるだけ。
これからは、私にじゃれついてくることも減るのではないだろうか。そう願っているよ。]
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