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華月斎殿…
連れて行ってください。
あなたの―…里へ
[華月斎の目を真っ直ぐに見つめる]
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[夜が明けるまでに幾度か果てただろうか、二つが混じり重なって上へ下へ。
朧に匂いが移る頃には疲れ果ててそのまま寝てしまう]
これは流石に布団を洗わねばな……
[里に増える二つの気配に気づけば顔を上げるが、それよりもまだ隣の存在を愛でるのが先。
抱き寄せて口付けの痕を増やし、止められる前にもう一度繋がろう**]
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[これほど、一夜に幾度も情を交わしたことはない。
最初のうちは僅かばかり残っていた理性も、いつの間にか消え去って、ただ愛欲に身を任せる。
己のものであることを主張するかのように、身体中に紅の痕を刻み、刻まれ。 肌を伝う体液は、既に、どちらのものなのか分からぬほどに混ざり合い]
藤……っ、藤………。
……あぁッ!
藤……。
愛し、て……はゥッ……!
[その夜は果たして、何度、愛しい者の名を呼んだろうか……]
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[意識を手放すように眠りについた頃には、空はもう白んでいただろうか。
夢の中にあっても、藤之助の姿は消えず]
……藤之……。
[陽がとうに高く上った頃、抱き寄せられる感覚に眸を開けば、やはりそこにも藤之助の姿がある。
まだひどく気怠さが残っているのに、それでも欲してしまうのは、仕方のないこと―――]
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─藤之助の家の寝所─
んっ、ふ……。
……藤……。
……───?
[不意に頭の中に流れ込んできた、ふたつの気配。
憶えがあるような、無いような。
けれどそれが何なのか、アヤカシになったばかりの朧は識らず。
──そも、考えている余裕などないのだが]
[墓へと手を合わせる一平太を、一歩後ろから見詰めていた。
家族、使命、どちらも男が持たぬ物。
口を開きかける。「良かったのか」、と、問いかけようとして、止めた。
自分の選んだ道だと、一平太の声が聴こえた。
だから。]
――… ありがとう。
[微笑んで、ただ一言。]
[連れて行ってください、と
その言葉が 酷く、嬉しい。
誰かと共に在る事が出来る、その幸福感が
寂しさを埋めるようで。]
[思い起こせば、
男が誰かを必要とした事が。
共に在ってほしいと口にした事が。
男には、無かった。
独りきりだと、気付かぬうちに諦めていたのだと思い知る。]
[真っ直ぐにこちらを見詰める眸に、
ひらりひらりと、鮮やかな蝶が誘われる]
―― 里への路が開く ――
[ゆらり揺れる陽炎の中、
誘うように、一平太へと右手を差し出した]
[気だるいが朧の体を抱き寄せるとそんな気も何処かへ消え、際限なく求めてしまうのは身も心も溺れきってしまった証しだろう。
明るい陽が差し込む部屋でも飽きず求める事を止められない、遠慮は無しと愛しい鳴き声を聞くためあれやこれやと手を尽くす。
空腹は気にならない、それ以上に体が朧を求め交わる事で長い間抱えていた飢えが癒やされてゆく気がした]
不思議な男だな、朧は……愛している。
[どれぐらい時間が流れたのか熱が落ち着いてくれば、流石に辺りの惨状にこのままでいるのも不味いかとひとつ提案]
確か冬の方に雪見の露天風呂が有った筈。そう遠くも無い、行ってみないか。
[常春の住処よりやや寒い場所には温泉が湧いているという話を思い出した。
疲れも回復しそうだし、誰かアヤカシに会うなら朧を紹介したい気持ちもある]
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不思、議……?
……っ。
[言葉の意味が分からず、熱に浮かされたような面のままで首を傾げる]
私もだ。
……愛している。
[ゆらりと腕を擡げ、抱きしめて]
[漸く熱が引いたのは、鳴きすぎて、喉にちりちりとした痛みを感じはじめた頃だろうか。
身を起こす力もなく、くったりと横たわったまま辺りを見れば、それはひどい状態で]
……そう、だな。
流石に、このままでいるわけにはいかんだろう。
[里の案内はさて置くとしても、今夜寝る場所すら危うい室内を見回して布団の替えはあったかと押し入れの中がやや心配になる]
浴衣なら有った筈、丈は少々短いが我慢しろ。
[替えの着物を探し出すと、もう一つ提案]
歩けないなら、昨日の様に抱いて行こうか。
……暫し、待て……。
[せめて身を起こせる程度、体力が戻るのを待つ。
それなりに早い回復は、やはり、人ならざる者となった為だろうか。
ふらりと半身を起こすと、渡された浴衣に袖を通し、帯を緩く締める]
………いや、歩こう……。
[僅かに視線を逸らし、そう言うが。
おそらくは、抱えていってもらうことになるだろう]
[男の家は、"春"と"冬"との、間辺りに。
裏に小川の流れる場所。
庭に植わる一本の柘榴の樹木が目印のように赤い花弁と果実を魅せていた]
[一平太と手を繋ぐ、その感触を楽しみながら、
ゆっくりと、村を案内しながら男の家までと辿り付くつもりで]
[動けないなら仕方ないと説き伏せて半ば無理やり抱き上げる。
暴れられなければ抱いての移動は苦に成らないのは鬼の力か、降りると言う前に目的の場所に到着すれば時間が早いらしく先客はまだ誰もいない]
貸し切りだな、ゆっくりできそうだ。
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う、っ……。
[結局、抱きかかえられることになり、身体を重ねるのとはまた違った気恥ずかしさに、朱に染まった顔を藤之助の肩口に押し当てるようにして隠す。
そこではたと、首筋に残る痕に気付き]
ま、待て……!
こんなものを、誰かに見られることがあれば……!
[狼狽するが、幸いそこにはまだ誰もおらず、ホッと胸を撫で下ろした]
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[華月斎に差し出された右手…
何かに操られるように左手を差し出し手を“握る”]
…あっ……
[今まですり抜けるだけだった華月斎の手をつかむことができて…
一平太の頬を涙が傳う]
触れて…いる…
[涙が零れている事に気づいた一平太は、慌てて言った]
…華月斎殿に触れられたことが…嬉しいのです。
[そいうと笑い、掴んだ手に力を込め…歩を進めた]
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[繋いだ手はそのままに、華月斎の家に向かう
村のあちこちを案内してくれる華月斎は優しく
一緒にいて本当に飽きない
ようやく手に入れたぬくもりを離すまいとそっと力をいれてみる
…華月斎はその感触を愉しむように微笑み、
やはりそっと握り返してくる
…やがて、柘榴の木が植えてある家が見えるだろうか]
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─温泉─
[藤之助にぴたりと寄り添ったままで湯に浸かると、疲れが溶け出し、癒されてゆくような感じがした。
戯れに、立ち上る湯気に両手を伸ばすが、当然掴める筈などなく。
可笑しくて、ついククッと笑ってしまう]
やはり好いな、触れ合えるというのは……。
[そんなことを呟きながら、藤之助の顔を覗き込み。
避けられぬのなら、此方から唇を重ねてみようか**]
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[色々な物を流し湯に浸かると疲れまで融けて流れ出てゆくようでほっと息を吐く。
朧からの口付けを拒む事無く抱き寄せると軽めに啄み、自分なりに抑えてはいるものの我慢できなくなれば手を腰へ下ろしねだるだろう]
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……こら、藤ッ……!
[滑る掌に、びくりと腰を震わせて。
口では「止せ」というものの、どうにも体は正直なもので]
少しだけ、だからな……。
[ゆるりと藤之助に向かい合い、躊躇いがちに膝を跨ぐ]
少し、な。
[湯にのぼせているのか朧になのかはわからないが、もとより少ない理性や自制心はどこかに行ってしまったようだ。
膝に乗せ向かい合わせに抱き合うと見上げてまた口付ける。
我慢を知らない子供に返ってしまうがこればかりは仕方ない]
[しばらくして風呂から出たら、手土産と共に華月斎の家に寄ってみようか。
あちらも到着したばかり、二人の邪魔になるようならその時はその時で……]
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[頬を伝った涙
一平太の告げる理由を聞けば、困ったように、それでも嬉しそうに微笑んで、その頬を繋いでない手の指先でそうと拭った]
[共に居る時間は穏やかで、暖かく。
自宅へと辿り付くのも、ゆるやかな速度だったはずなのに、あっという間。
歩く途中に、握った一平太の手の込めた力を、きゅっと握り返す。
一平太がここに居るのだと感じさせてくれる感触が嬉しい]
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[男の暮らす家、
作業場は足の踏み場も無いほどだけれど。
あちこちに紙やら糸やらと置いたままになっているものの、それ以外は大して散らかる風でもなく]
[男の作ったものは、全て仕舞われている。
見た目には少々寂しげでもあったか]
[この場合の「少し」がどの程度なのかは、各々の想像に任せるとして。
結局は、藤之助に身を委ねてしまうが、それは厭だと思わない……寧ろ心地良いとさえ思ってしまう]
……ッは。
………?
[ふと湯面を見れば、ゆらゆらと漂う鳥の羽根が6枚。
褐色のそれは、そういえば、藤之助とともに朝……いや、昼を迎えた時にも、布団の上に落ちていた。
枕か掛け布団に詰められていたものが零れ出て、身体に付いていたのだろうか]
[一平太に家の中を見せ、最後に庭へと出て。
男は柘榴の花を眺めながら問いかけた]
なあ、一平太。
この里はお前から見て、どうだった?
うまくやっていけそうか。
[自分が連れてきたのだからと、
そこにあったのは使命感のようなものだったのかもしれない]
[湯にいる間、幸いにも、他に誰も現れなかった。
いやもしかしたら、淫蕩に耽っていて、他者の気配に気付けなかっただけかもしれないが]
[さて。
湯から上がったところで、華月斎の家が此処から近い事を聞かされるが。
しかし、華月斎とは誰だろう。
藤之助に問いかけると、どうも、篝火の前で言葉を交わした人物
彼もアヤカシだったのかと、今更知った]
……ん?
ならば華月斎は、藤之助が私を連れてきたように、誰か人間を浚……連れて帰ってきたということか?
[一体、どのような人間を連れてきたのだろう。
自分のように自ら望んだ人間なのか、それとも無理矢理なのか……やはり、そこが気に掛かる]
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[アヤカシの村がどのようなものか見当もつかなかったが、
華月斎に案内されていくうちにいい所だと思うようになっていた。
華月斎にうまくやれそうかと聞かれ]
えぇ、すごくいいところですね。
うまくやっていけそうです。
[一平太は*微笑んだ*]
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