23 きらきら夕日と、なかまたち
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ゆりー。
きこえてっぞ。のこしとけー、くうからな!
[うれしそうなこえが、きこえただろうか]
― 回想 ―
[雷門の所に置いてもらっていたで自転車を回収。
カゴに白猫、後ろに勝丸を乗せて]
菊さんさ、許してくれるよなァ?
ちゃんと昨日はメシあげたんだぜ、今朝はあげてねーけどよ。
[そんな話をしながら、公民館まで2人と一匹が走る。
道中にある、ひまわり畑が風で揺れた]
[お日様が頂上にいる頃。
菊へ子猫を返せば、少し怒られるが]
「お食べ」
[焼きとうもろこしを出してもらって、二人で食べる]
そーいや、腹へったなァ。勝丸、弁当わけてやっから、食おうぜ!
公民館なら涼しいし、皆が戻ってくる時にもわかるから、そこでいっか。
[自転車を止めて、公民館へ入る途中でが聞こえた]
― 回想終了 ⇒ ―
[ゆりのこえを、きき]
んだよ。こっちは、こうみんかんの、くーらーで、かいてきなんだぜ!すずしーぞ。
えんそくなら、げんぞうがいるから、だいじょうぶだろ?
[それから、すこしだけ、まがあいて]
ゆり。
ひゃくねんすぎに、いきたいってなら、いつでもつきあうからさ。
そんなかおしてんじゃねーよ。
[ぶっきらぼうに、ぶつんときれた]
[公民館の畳部屋。
座布団を取ってきて、机に弁当箱を置く]
勝丸の分は、源蔵が持ったままなんかァ?
[がばっと開ければ、中身は。
蓋に自分の分を少しだけ取れば、ガツガツと食べて。
無造作に拭いた箸を勝丸に差し出す]
[当然、食べ盛りの2人。
持ってきた分を食べたとしても、足りないくらいなのに、分ければなおさらの事]
……。
[ぐきゅーっと腹が、足りないコールをした]
[とらんしーばーにむかって]
おおめに、のこしとけよおおおおお。
[と、ほかのひとにもきこえるような、おおごえでいった]
ひなたか。おまえや、ゆうがおは、べんとうばこを、たきにおとしたり、しそうだろぉが。
そんなことになったら、たつにーちゃん、ないちゃうかんな!
[なにをしんぱいしてるのか、びみょうないいかたになっている]
[トランシーバーから聞こえた、ゆりの声]
おい?何かあったのか?
[それでも、ゆりからは返事が無くて]
………うーん?
[頬をかいて、少し考えたけれど、よくわからなくて。
ただ、なんとなく自転車の鍵を、自分のポケットに入れた]
[公民館の机にトランシーバーを載せれば。
自分の顎を机にひっつけて、それをじっと見る]
なんだよ…。どうすりゃいいんだよ。
[ぼそりと呟いたそれは、誰にも聞こえなかっただろう]
[トランシーバーから聞こえてきた、囁くような声に、はっとする。
ポケットから自転車の鍵を取り出し、ぎゅっと握り締めれば]
勝丸!
俺、ちょっと出てくる。
スグ戻るから、アイスでも食って待ってろ。
[財布から100円玉を取り出して、勝丸に投げれば、トランシーバーを引っつかんで外へ]
[夏の暑い日ざしが、村を、公民館を包む。
むわっとした熱気が足元からも伝わってくる。
一度、空を見上げ、帽子を被りなおして]
ゆり。
そこにいろ、絶対みつける。
[百年杉。
いや、森に向かって、自転車で猛ダッシュしはじめた]
……おう。
[辰次の傍に居たせいか
トランシーバーから漏れる音は其れなりに耳に届いていた。
投げられた百円玉をキャッチして緩い頷き。]
辰次、気をつけろよ。
[自転車で走り行く姿を見送った。]
アイス、だってよ。
[手の中の百円玉へ視線を落として苦笑い。]
みんな頑張ってる中で一人だけ
そんな思いできねえよなあ…
[別れる前の源蔵や日向を初め、
みんなの表情を思い出して、百円玉を握りしめた。]
[手持ち無沙汰に百円玉を宙へ投げる。
トランシーバーは此処には無いから
みんなの『音』は届かない。]
…
[百円玉が掌に戻る音が響けば響くほど、
この場所に独りなのだという事を実感した。]
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