276 ─五月、薔薇の木の下で。
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――お蔵入りを引き出す――
……ん、そうする。
[会えたら励ましておいて、と言われて、頷く。 落ち込みそうな理由は、予想がついた。 そうすると一刻も早く目覚めたくなるが、そもそも何が起きているのかわからない。 これが夢だとして、夢というのは自分の心理が見せるものではなかったか。 どうしてフェルゼが、自分の知らない物事を知って、伝えに来るのか。]
(80) mmsk 2018/05/25(Fri) 02時頃
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――もしかして、
[自分の聞いていた声と似たようなものなのだろうか。 聞き慣れた声だったこともあって、なんの躊躇いもなくあの声のことは受け入れていたが。 他人と繋がる、という感覚に、近しい物を感じる。]
いや、忘れて。何でもない。
[しかしあれと同じものだったとして、原因も解き方もわからないから、意味がない。 外では宵闇が色づきかけていることも知らず、代わりに聞こえたのは三音>>18。]
(81) mmsk 2018/05/25(Fri) 02時頃
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[その声が呼び水になるかのように、意識は、揺らいで**]
(82) mmsk 2018/05/25(Fri) 02時頃
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[ふわり、ぱちん、と。 それは今度こそシャボンの弾ける音だ。 さざめく波の白泡に、くるくる揺蕩う玉の膜が触れて、壊れる。]
……――、
[けれど、シャボンは消えるわけではない。 弾けた瞬間に石鹸の残滓を落として、確かにそこにある。 穏やかな記憶のひとかけら。抱いたまま、薄く目を開けた。]
(133) mmsk 2018/05/25(Fri) 23時半頃
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[非現実的な事象の詰め合わせに、目覚めたこの瞬間すら現実と認識していいものか迷うけれど。 身動ぎひとつ、まずは目覚めようと、ゆるゆる半身を引き上げた。 寝起きらしく、かし、と頭を掻きながら、周りを見やり。]
……お、はよう。
[とりあえず、傍に見えた一年生に声をかけた。]
(134) mmsk 2018/05/25(Fri) 23時半頃
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……や、うるさくは、ないけど。 おはよ。
[もう一度言う辺り、随分と寝ぼけている。彼らが何をしていたかなんてまるで聞こえちゃいなかったし、認識できていない。 ただ、ピスティオの姿>>142に、彼とは向こうで合わなかったな、と思う。 また新しくやってきたと思うよりは目が覚めて現実と正しく繋がったと思うほうがあり得る気がした。 何より、]
ああ、……
[まだ入学して日の浅い後輩>>149の腕に、解け緩んだ包帯が絡まるのを見れば、残念だと眉を下げた。 その夢は覚めないほうが幾分か良かった。]
(161) mmsk 2018/05/26(Sat) 01時頃
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[ぼんやりと意識のはっきりしないような寝覚めは久し振りだ。 頭の芯が覚めないような心地がして、このままくたりともう一度ベッドに沈みたい気分だった。 フェルゼのことは言えない、と過ぎったところで、そう言えばあれとも向こうで出会ったと、反対の側を振り返る。 白い柔い癖毛が見えて、ようやく自分が遅起きの朝寝坊だったと自覚した。
窓からは薄青い明けの光が差し込んでいる。]
(162) mmsk 2018/05/26(Sat) 01時頃
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[目覚めたなら、夜が明けたなら。 会いたい人がいた。会うべきかどうかは問題じゃない。同室のたっての願いを叶える健気な生徒であるだけだ。 少し重だるい身体をのそのそ動かして、ベッドから降りる。 服は整えられた、あの時のままだ。 そのままひとり、医務室を出ようとして。]
……ヒュー。 ありがとう。
[寸前、振り向いて伝えた。 きっと今までの自分であれば、否定的な言葉を胸のうちに並べて、憮然と返していたかもしれない宝物宣言。 彼が夢のことを覚えていなければ何のことだがわからないかもしれないが、自分が言いたかったから、関係ない。 なぜなら俺はエゴイストだ。]
(163) mmsk 2018/05/26(Sat) 01時頃
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[*ゆっくりと、廊下を歩いていく*]
(164) mmsk 2018/05/26(Sat) 01時半頃
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[会いたいという目的あれど、どこにいるかはわからない。 まだ明けの空、もし眠っているなら起こす訳にもいかない。 起きる寸前気配を感じた気がするけれど、はっきりと見てはいないから、気のせいだって可能性もある。
だから足取りはとかくゆっくりだった。 ああそうだオスカーの部屋に行く約束をしていたな、先に会えたら聞いてしまうか、とか。 マークの毛布を置き去りにしてやいないか、図書室に確認しに行こうか、とか。 特定の場所を目指さない足取りは随分と気ままで、探し人と言うよりは偶然会うまでふらふらしよう、という程度。]
(183) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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[だから、本当に出会したときにはそれなりの時間が経っていた。 廊下の角曲がりばったりと会って、自分は驚き半分悦びをにじませたのに反して、複雑な表情をする>>165になにか拙いことをしたかと訝しんだが、話をしようと持ちかけられれば頷いた。]
はい。
[頷いて、そして、何もしないと補足されるのに少し笑った。 笑っていた。この瞬間は。 何の躊躇いもなく、空いた隣に座る。]
(184) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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[はじめに告げられたのは謝罪だった>>166。 同意があったとはいえ性行為に及んだ。それも同性同士でだ。 ひとつ謝罪があるくらいは仕方のないことかと思っていたが。]
――信じられない? ほんとうに?
[>>167それは、掠れた吐息が漏れる程度の音量でしかなかったが。 歯擦音からはじまるフレーズは、吐息に加速度をもたせた。 聞こえても聞こえていなかったとしても、リコリスを噛み潰したようなしぶい顔をしてから視線を逸らし、一度目を伏せて、開き、向き直る。]
(185) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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先輩。ねえ、先輩。 どうして謝るんですか。
[きっと自分たちは想定している前提が違いすぎる、と思った。 俯いたイアンの側へ、身を乗り出す。]
誘ったのは、先輩の深いところに手を入れたのは、俺でしょう。 俺があんな風に言わなかったら、先輩は本当に何もしなかったんでしょう。
謝るならむしろ俺の方だ。……謝るつもりは、残念ながらないんですけど。
[自分の意思だとはいうけれど、呼び水流し込んだのはこちらの方だ。 自分がそうなるよう仕向けたもので謝られる理由はない。 加えて言えば結果には満足していて、エゴを貫いていいと言われた手前謝る予定もない。]
(186) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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[喜びを告げられても>>168、俯いたままの懺悔では到底受け入れられそうにない。]
……俺が信じない前提で話をしないで。 俺は、先輩なら俺のことを見てくれるって――欲しがってくれるって、思って、それで。
俺のことを話して、先輩が欲しいって言って。 先輩はそれに応えてくれたんだと思った。隠してたところに触れられて、先輩の欲望を引き出せた。 全部受け止めて、嬉しかった、のに。
[繰り返すが、同性愛者になったつもりはない。 けれどあの瞬間は確かに喜ばしいと思った。 薔薇に酔わされたせいかもしれないけれどそうして受け止めるのは、踊らされた心以上に満ちるものを感じていたと、思う。]
(187) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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でも、それは信じられないようなことだったんですか。 思いもかけないことだったんですか。
俺は、その心の、どこにもまだ触れられてなかったんですか。
[唇を噛む。 別に、はじめから全てを手に入れられるなんて、思ってはいなかった。 恋人になるならないというのとも、違うと思っていた。 ただ、隣で、手を伸ばせていたら。寄り添って過ごせたら、いいと思っていた。 俯くのは、今度はこちらの番だった。]
(188) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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[どこか誰かが持つ幸福を探して、手を伸ばし。 凍えた心に火を付けながら、悦びを覚えたはず、なのに。
せつなく、苦しく、再び凍りつきそうな痛みすらも、オペラ歌手は恋と歌うけれど。 一体この身体の中にある感情の名前は何なんだろうか**]
(189) mmsk 2018/05/26(Sat) 04時半頃
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モリスは、ベネットをつんつんつついた。
mmsk 2018/05/27(Sun) 02時頃
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――中庭のベンチ――
[俯く頭の上からもう一度謝罪が降った>>220。 もうそれは、有りもしない罪を悔いる言葉ではないとわかったから、顔を上げる。]
夜は……そう、ですか。 それは、俺もごめんなさい。あれからのことが、わからなくて。 先輩に、手間も負担もかけるつもりじゃなかったんです。 けど俺があそこにいたのは、先輩のおかげ、ですよね。
[夢を見ていた。その間は、眠っていたのだと思う。 図書室で眠ったあと、目を開ければ医務室だった。その間の自分の行動はまるで記憶にない。 なれば手を煩わせたのだろう。視線が少し下がった。 ひとりにさせないために隣を選んだのに、あまりに深く満たされて、夢心地が過ぎて。]
(244) mmsk 2018/05/27(Sun) 02時半頃
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失礼、なんかじゃないですけど。 でも、俺は先輩に謝ってほしくなかった。 それが伝わったなら、よかった。
[>>221事の話を真面目にしたがるのは、きっとこの人に染み付いてしまった表側がそうさせるんだろう。 それは少し悲しくて、暗い笑顔を浮かべるしかない。 言葉の裏側の感情を補足されれば、己の不安は全くの杞憂だったのだと知れる。 まだはじまったばかりの関係は、すれ違いも多そうだ。]
(245) mmsk 2018/05/27(Sun) 02時半頃
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……俺はあの方法でもいいんですよ、なんて言ったら、先輩は困ってしまいますか?
[他の方法を取りたがるのを聞けば、意地悪く皮肉めいて返してみる。 どんな顔をされるか。本当に困ったような委員長らしくない顔が出るか、もしくは自分の身体を軽視するのに怒りを浮かべられるか、想像をしながら。 どうであっても、すぐに笑顔を作る。]
冗談です。 けど、嘘じゃないです。
どうしなきゃいけないとか、どうしていこうとかじゃない。 したいように出来るといい、って思います。
[そうでなくては意味がない。縛られなくていいと手を伸ばしたのだから、そうでなくては。]
そこに必要なら、俺はあなたにまた身体を預けてもいい。
(246) mmsk 2018/05/27(Sun) 02時半頃
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たぶんね、先輩。 俺は、あなたのことを結構好き、なんです。 まあ嫌いな人にこんな事言わないでしょうから、わかってたと思いますけど。
好きな人と繋がるのは、嫌なことじゃないんですよ。
[ただ、きっと。 それをこんなふうに自分から口にしなくてはいけないということは、イアンにとってのこの交わりは、そう思うに足りなかったということだ。 そこに双方向の愛はない。彼の瞳は別の誰かをいずれ見るんだろう。 一度目の失恋をしながら、小さく痛む心を押し隠して笑う。 笑う。]
なんて、したくないことに無理は言わないですけど。 けど、本当の自分でいられる瞬間に、自分を縛るようなことはしないでほしいっていう、だけです。
(247) mmsk 2018/05/27(Sun) 02時半頃
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俺も、先輩と関わっていきたい。 俺はきっと、結構弱いから。先輩の手を貸してほしい。
[先輩の話も聞きたいです、と付け加えつつ。 これからも、と未来を見た言葉>>222が聞こえて、ひとつ安堵する。 失礼だった、すまなかった、ごめんを並べられて、これきりにしようなんて選択肢も、あり得たはずだから。]
あ、でも友達みたいに、は嫌だな…… 親友になりたい、っていうのは、どうです?
[安堵がやってくれば、我が出てくる。現金な性格は、普段ならこれほど素直には表に出さないものだ。 だって友達みたいに、だなんて。 今まで友達ですらなかったみたいで――実質そうではあるのだけれど、認めてしまうみたいで――嫌じゃないか*]
(248) mmsk 2018/05/27(Sun) 02時半頃
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――中庭で――
[昔はいたと語られる親友>>280。 いつかなにかのきっかけで、失われたのだろう。 その過去は今は聞かずにいよう。次か、その次、もう少し心が近くなったら。 今はただ、]
これからは、今もいる、になります?
[その場所に自分がいられればいいと、それだけ思う。 ありがとうとよろしくに返ったのは、悪戯めいた後輩の笑い顔。]
(305) mmsk 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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今、罰点たくさんつきましたからね。 期待してますよ。
[>>281菓子を持ってきてくれると聞けば、今しがた大きなすれ違いがあったことについて絡めて肩を竦めた。 そうして理由付けをしてねだりたい気持ち半分、水に流してしまいたい気持ち半分。 こういう少しずるいやつなんだってことも、知ってほしい。]
(306) mmsk 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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[木細工を教えてほしいと言われれば、頷く。 またひとり、生徒が増えた。]
器用じゃないのは、知ってます。 だから俺の手伝いも今まであれだけあったわけですし?
でも、ちゃんと教えられるように、準備してみます。 フェルゼも聞きたいらしいので、教える練習しないと。
[今までは、自分のためだけに手を動かしていた。 図面の書き方も自己流で、自分がわかればいいだけの乱雑なもの。 それでは何も教えられない。 随分久しぶりに、木彫り作業に前向きになれそうな気がした。]
(307) mmsk 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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色んなこと……俺のことなら、何だって、か。
[その反面、何だって知りたい、と知識欲を全面に出す様子に、ふ、と小さく吐息で笑った。 今この胸にある気持ちを全部出すには、まだ時間が足りない。]
ねえ、先輩。 じゃあはじめに、弱いところ見せる練習、させて。
一度だけ、抱きしめてください。
[自分からは腕を広げなかった。 締め付ける体温を感じられたら、きつく、きつく、震えそうになるのを隠しながら抱きついた。 痛いかもしれないけれど、すぐには離せなかった。 情けなくなりかけた顔を笑顔に戻すまで、少し時間がかかる。]
(308) mmsk 2018/05/27(Sun) 21時半頃
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――それから――
[イアンとはどう別れたのだったか、送ってもらったやもしれない。 何にせよ無人の自室に戻り。それからデスクの歪な鳥を――残されたメモを見た>>267。 ちょうど教えるなんて話をしていたところだから、小さく笑う。]
終わってないよ。
[独り言ち、メモをたたむ。 茶葉を確認して、茶器を揃える。 ついでにナイフで木板に筋を入れて、使いやすいサイズに折り割った。 いっそ茶会にしてしまえばいい。談話室の一角で、紅茶を淹れて言葉交わしながら、のんびりと作業をするのは悪くないじゃないか。 私物を入れているバッグの中身を出して荷物を詰め替える。 いつでも呼ばれていいように、だ。連休はまだ長い*]
(342) mmsk 2018/05/27(Sun) 23時頃
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