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[こくり、と。肯定の頷きを
残して行った人々の思いを考えれば、
心に少し痛みを感じる。
みょんこは気さくな人だから、余計に。
あなたの死で、悲しかった人は多いだろうと。
だけれど、此処で穏やかに話して
こうしてじゃれて遊んでくれることを思えば
生きている人に伝えたくもある。
みょんこさんは、相変わらずですよ。と。]
[なんでも答えないと言った、その彼女が
はっきりと、躊躇なく本名を告げてくれた。
ちゃんと覚えていて、確かにその名があるのだと
彼女の心を垣間見れば、私の、悲しい気持ちは消えて、
そのエピソードに目を細めた。]
未葉さん。可愛くないことないと思うけどな?
[呼んでみて、一緒にわらって]
未だ葉っぱなら、
いつか花咲くと、そう思って、
つけてくれたのかなって……私は、感じたな。
[彼女のご両親の思いは汲めないし、一つの憶測だ。
確信があるならば、彼女は、その名前が嫌いじゃないということ。]
こちらこそよろしくね。
未葉さん。
[彼女から差し出される手を、ぎゅっと握って
ぶんぶんと、子どものように上下に振る。]
[そんな折にも、ふわり夜空に昇っていく
たましい、が、見える。]
――あぁ、
[虚空を見上げ、悲嘆に変わった小さな声は
どう思われただろう*]
「ねえ !
おれね、大人になったらパイロットになるんだ!」
『 、 ?』
「だってね、うちはたく山いるから車じゃ大へんじゃん
だからひこうきにするの!ひこうきなら、いっぱいのれるし広いから!」
『 。』
「おれがそうじゅうするから、
も もすわってるだけでいいんだよ!」
『 ?』
「うん!」
『ありがとう、優しいのね
冷なら絶対になれるわ。』
[温かい手が頭に触れる感触]
[三月の海に墜ちたぼくは酷く寒さを感じる筈なのに
波に揺られ抱かれながら、随分と安らいだ気持ちでいた。
……これが死ぬってことなのかな?]
[そんな考えが過ぎった時、
はたりと目が開いて。]
[見えた世界は暗闇ではなく、崖の上に座り込んでいた。
海の中にいた筈なのに。
まるで時間が巻き戻ったみたい。]
ぼくは……?
[咄嗟に全てを理解するには至らず
戸惑いを浮かべた表情で、あちこちに視線を巡らせていた。*]
────あ、りゆう。
なのるほうに集中して、
みょんこの理由をいってなかったね。
……いや、別にたいしたことじゃないんだけど。
なんていうか、おそくきた反抗期というか。
ちょっと、すててやろうとしたというか。
[名乗ってから、はっとして付け足したり。
いやはや、急いてしまってだめですね。しかもこれ、理由になっているかどうか。
まあ、いうなれば両親への当てつけのようなものでしたから。自分の恥部をさらす口は、少しおもくなっちゃいますね。
なんかかっこつかないなってなりながら、頭をかいてみせたり]
……そうかな。
うん…そうだね、そうだと…いいな。
[そんな考え方
いやだいやだってそんな風に考えてばっかりで、でも言われてみれば、あたしにも託されたものがあるのかもしれません。
華やいだ姉の名前と同じように、こめられた想いがあるのかも。
そう考えると、情けない表情になってしまいますね。
嬉しいのかな。……うれしいんでしょうね。
そりゃあ、両親の考えなんてあたしにもわかりません。
嫌いな名前の理由を、わざわざ尋ねたこともありませんでした。
でも、捨てなくてよかったとは思えますよ。
欠片だけでも期待していいのなら、あたしはこの名前もすきになれるかもしれません]
……なんかてれるなあ。
みょんこってよんだって、いいんだからね。
[ぶんぶんと振られる手を、こっちからもふり返してみせましょう。
未葉って呼ばれるのはずいぶんと久々で、くすぐったい気分。
ああそれでも、やっぱりわるい気はしませんね。
だからまあ、未葉でもみょんこでも、あいちゃんのいいように]
……なに?
どうかした?
[手をつないだまま、どこかを見つめる彼女に首をかしげます。
視線を追ってみても、あたしにはなにも見えません。
でも、さっきまで笑顔だった彼女の様子が、途端に変わってしまったことはわかります。
だからこまったように、どうしたのってくり返してみせたでしょう。
……ああでも。誰かの声
メモを貼った。
メモを貼った。
反抗期……そっかぁ。
ふふ、なんだか、そのネーミングが面白いなって。
[というか、というか、と言葉を曖昧にするのは
やっぱり言いづらいことなのだろうと思う。
でも、頭を掻く仕草も、お姉さんなはずなのに
可愛いなって思ってしまう。]
みょーん。
[掻くとふわりと揺れるウェーブのかかった髪を
言葉と共に、擽る程度の弱さで引っ張って、くすくすと。]
ありがとうね、話してくれて。
未葉さんにも、歩んできた人生があるのだもの。
恥ずかしがらなくていいのよ。
[旅の恥はかき捨てなんていうけれど、
ここは、もしかしたら人生という旅の終点かしら。]
みょん、って可愛いから
やっぱりみょんこさんにしよう。
でも未葉さんっていう名前も、覚えておく。
[そうして、虚空を見上げた視線は
ゆるゆる、左右を見渡して]
……うん。また誰か死んだんだなって。
私、たましいが浮く感覚が、なんでかわかっちゃうから。
[21グラムの、その小さな動きみたいなもの。
正確に21とは言い切れないけれど、とにかく
それを感覚で察してしまうというのは、人に初めて告げた]
…………冷くん。
[みょんこの後ろに見えていた桜の園の景色は
視線を移ろわせると、崖の景色に変わり、座り込む青年が、見える。ぽつり呟く名前の音が、彼に届いたかどうか。*]
メモを貼った。
[巡る視線は何も見つけられず、海を背にしたままただただ戸惑っていたのだが。
その表情は驚きに塗り変えられる
自分には女性達が急に現れたように見えたからだ。
小柄な女性二人を前に地に座ったまま、目を見開き驚いている姿はきっと間抜けだったのでしょうね。
口をぱくぱくと、中々音が出ない。まるで陸に上げられた魚だ。]
は、……初めまして
[ああ、やっと言えた。安堵してぼくは笑ったのだ。
さて問題無く接することが出来るらしい二人に何から聞いたものか。
名前を呼ばれた気がするんだけど、それよりも。]
ぼく、さっき自殺した筈だったんだけど
気付いたらここにいたんだ。
お姉さん達はどうしてか分かる?
[ほら、そこから飛び降りたんだよって崖の先を指差して
不思議な状況に苦さが混じる笑み、二人を見やり*首を傾げた*]
メモを貼った。
[きょとんと、驚いている様子、
そんな冷に、私も思わずきょとんとして。]
……は、はじめまして?
[疑問形になってしまうのは当然だろう。
つい先日、名前を知っていて互いに呼んだのだから。
けれど笑う彼を見れば、少しほっとして
続いた言葉に、うん、うん、と二つ頷いた。]
自殺。
君は、それに成功してるはず。
私たちと同じだと思うの。こうして話せることが、証拠かな。
だって、私も、みょんこさんも、
[そう隣の女性を示して、少しだけ言いづらいけれど]
――…死んでいるのだもの。
[へにゃ、と眉を下げた。]
温度も、感覚も、眠気も、
全部あるから、信じられないかもだけど。
[実感のなさそうな冷に伝えた後、その反応を伺おうか。
ああ、その前に]
そっか、初めましてね。
うん、私は虹野藍って言うの。君は?
[記憶が欠けているのならば、改めて名前を告げよう。
今度は偽りのない、本当の名前を**]
まあ、みょんこは
がくせい時代のあだななんだけど。
[学生時代って、変なあだ名が流行ったりするじゃないですか。
まああたしとしては、面白い音で結構気に入ってたりするんですけどね。
髪を引っ張られれば、ちょっと驚いてからあたしも笑いました。
だって、彼女って今までそういうことする人じゃなかったかじゃないですか。
でも、嫌じゃないですよ。そうやって笑顔でいるほうが、可愛いですしね]
……きみは、あたしより大人びたことをゆうね。
[そんな風に言ってしまうのは、まあ、てれ隠しです。
もっと生意気なことを言ってやろうとも思いましたが、あたしの口はああだかううだか動くだけ。最後にちょっと、恨みがましげに彼女をにらんでみせましょう]
うん、おぼえてて。
どっちもあたしだからね。
[可愛いからと選ばれる
すきなように呼んでくれたらいいと思います。
ちょっとだけそわつくこころは、彼女の悲嘆めいた声にかき消されます。
なにかを追うように動く視線の意味を教えられて、ふうん、なんて目を丸くしました。
死後の世界みたいな場所にいるんですもの、疑ったりはしませんでしたけど]
……そっか。
なんだろう、かなしいって感じじゃ、ないね。
こうやってお話できるんだもん
しぬのって、そんなわるいことじゃないよね。
[まるで自分に言い聞かせるような言葉でした。
誰かがしぬのは残念ですけど、今までとそう変わらないやり取りができるなら、って。そう思わないと、やってられませんから]
────え。
[れいくん?
ああ、そういえば。あの声は、れいくんのものだったのかもしれません。
あたしの背後に向いたあいちゃんの視線を追って、あたしは振り返りました。
そこには、確かに彼の姿
あたしも驚いていましたけど、彼も驚いてましたね。
来たばっかりだと、そんなもんなんでしょうね。
あたしはそういうもんかなって、あんまり驚きもしませんでしたけど。
れいくん!って。彼を呼んで近づいていこうとするのを、彼の 初めまして に邪魔されます。
初めまして。……はじめまして?あれ、あたしたち、はじめましてでしたか?
あいちゃん
じ、じさつ……はあ!?
[この子は、けろりと何を言いやがるのでしょう。
驚きだとか、怒りだとか、そういう感情がわき起こりましたが、ぐっと飲みこみます。
だってあいちゃんが、彼にさとすように話しかけているんですもの。
あたしはわなわなしたまま、ついと視線を下ろしました。
あたしが見てない間に、なんてことをしてるんですか。
そんなにつらいなら、なんであの時言わないんですか。
……ああ、どうせなにもできなかったくせに、こんなことを言うのは卑怯ですね。
なんにも、言えませんでした。
二度目の初めましてをする彼と彼女を、見守るだけで。
あたしは……あたしは、なんて答えましょう。
おなじように、初めましてをしてもいいんですか?]
あたしは、はじめましてじゃ、ないよ。
[生きているきみになら、わすれられてもよかったかもしれません。
忘れたいほどつらいというのなら、あたしなんて居なかったことにしてくれていいです。
でも、逃げてきたきみに忘れられるのは、ちょっと 許せないですね]
はじめましてじゃないから、名乗らないよ。
おもいだすまで、きみが困るんだからね!
[子供がだだをこねるみたいに言って、ふんとそっぽ向きました。
よばれなくって困るのは、たぶん あたしも*同じなのにね*]
メモを貼った。
[大人びたこと、なんて、
随分と年上だろうお姉さんに言われるのだから
褒め言葉として受け取っておこう。
にらんでしまうのも、恥ずかしいのでしょ?と
そう笑うように肩を揺らした。
おぼえてて、の言葉には勿論とこっくり頷く。
しぬはわるいことじゃない。今は彼女はそう言ったけれど――
冷くんとやり取りするうち
そばで、わなわな、震える姿に気づいてしまったから
……。
[そっぽを向いてしまうみょんこに、
どんな顔をすればいいかわからなかった。
感情の起伏が大きいところ、彼女らしいとも思う。
それがみょんこの魅力だろうとも思う。
どんな思いかはわからないけれど
名前を知っていた仲なのに、忘れられてしまうのは
確かに悲しいから、ね。**]
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
メモを貼った。
本当?
そっか、ちゃんと死ねたんだ。
……良かった。
[成功しているんだって。それはぼくはちゃんと死んだということ。
息を吐いて肩の力を抜いた。
それから彼女達も死んでいると聞いて思わずまじまじと眺めてしまう。
女性には失礼なことかもしれないけれど、他意は無いので許してほしい。
幽霊って本当にいたんだ。そう思っていただけだから。
ここにいる三人が全員死者ならば、
さっき急に現れたように見えた理由も、こうして言葉を交わせる理由も説明がつく。]
死んじゃったのが悲しいの?
[だから実感は確かに無くても納得は出来る。
反応を伺われた時
あんな世界に生きていても仕方ないと思うけどなあ。
彼女を知らないぼくはそんなことしか思わなかったのだ。]
戸川冷です。冷たいって書いて、れい。
宜しくね。虹野藍さんと……みょんこさん?
[あいさんは分かるけれど、みょんこさんは変な名前。
自殺に驚いていたのも
だって毎日人は死ぬの。その方法がたまたま飛び降りだった人がいただけでしょ?]
……初めましてじゃないの?
みょんこさんでもないの?
[でもみょんこさんを呼ぶ時だけ自信無さげになったのは、
彼女に言われた内容とそっぽを向かれてしまったことで
ぼくの眉まで下がってしまう。
だって、分からないもの。
そんな風に接されると、困ってしまうもの。]
……藍さんとみょんこさんじゃないの?
[首を捻る。
藍さんの方にも引っ掛かるものがあった
正しいような、何か違うような。
そう名乗ったのだから彼女は藍さんなのだと思うのに、よく分からない。
それ以上に他称みょんこさんの声を口調を耳にして、何かを思い出そうとしている頭。
腕を組んで幾分か、ハッと目を見開く。]
ああ、そうだ…… あなたの声、聴いたことがあるよ。
ずっと、どこにいても聴こえていた日があった。
生きてるぼくにはいっぱい聲が聴こえていて、あなたの声が一番沢山聴こえた。
ううん、あれは誰が喋っているか分かるものでも無かったんだけど……
[自分の中にだけある常識、明確に説明出来ない原理。
何も伝わってないだろうと自覚すれば、ますます困り顔になる。]
でも、でも。……あなたの口調だったと思う。
[自分でも幻聴ではないと言い切れず、またこれを伝えて何になるのかもよく分からず。
声が小さくなっていくのだけれど。]
妹がいるんでしょ、芽桜さん。
知っているよ。
ぼく、全部聴こえていたもの。
大切だって思ってるの、伝わっていたもの。
いいお姉さんなんだね。
[ね?って問い掛ける。なんだろうね。ぼくは何がしたいのかな。
多分、怒らせてしまったらしいこの人に許してほしいのかもしれない。]
芽桜さん。今、何しているんだろうね。*
メモを貼った。
[ああそういえば、さっきあいちゃんがあたしを呼んでいましたね。
でもだからって、名乗ってないのに呼ぶのってずるいですよ。
そっぽむいて、彼もあいちゃん
大人げないっていうのも、勿論わかってるんですけどね。
そらしたままの顔は、拗ねた表情から気不味げな表情に。一度言ってしまった手前、ここで折れるのも悔しいじゃないですか。
だから繰り返される問いかけ
せいぜい頭を働かせればいいって、腕を組むれいくんを見守ります。
ハッとした様子には、すこしだけ期待したんですが、どうやら、思ったのとは随分ちがう話のようです]
そりゃ、声はきいたことあるだろうけどさ…
[声を聞いたことあるって言われて、最初はちょっとしぶい顔で相槌を打ちます。
だけど、困り顔の彼の話は、嘘ではないんだろうなって思いました。
だって妹の話
れいくんはほんとうに、めるとあたしのやり取りを知っているのでしょう。
このさい、それがどういう理由だとかは、どうでもいいです。
聞こえたというのなら、そうなんでしょう。
あたしにとって重要なのは、彼にいいお姉さんなんだねって、認めてもらえたこと。
誰かに向けた問いかけの答えを、今、もらえたような気がして]
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