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【人】 ビール配り フローラ[朝、目が覚めて。 (3) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[パパたちの寝室の扉を開いた。] (4) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[玄関の扉の前までやってくると、外から微かに荒い息息づかいが聞こえた。 (5) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ
(6) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[涙があとからあとから流れてきて止まらない。] (7) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[ガタンッ、と何かが落ちる音がすると、ママの荒い息が一層強く聞こえた。] (8) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[わたしは、扉を開けて外へ飛び出した。] (10) 2020/10/24(Sat) 11時頃 |
【人】 ビール配り フローラ[パパはいつもニコニコしてて、わたしのわがままは何でも聞いてくれた。 (11) 2020/10/24(Sat) 11時半頃 |
【人】 ビール配り フローラ[涙で地面き水溜まりを作りそうだった。 (12) 2020/10/24(Sat) 11時半頃 |
【人】 ビール配り フローラ[何日か経って。 (13) 2020/10/24(Sat) 11時半頃 |
[ あれは恐ろしい夜だった。]
[ ずいぶんと長いこと、
重いものが門扉にぶつかるような音が続いた。
どん、どんと音がすると、
どうしても犬たちが反応してしまうのね。
わたしがリビングに戻ったころには、
お隣の奥さんがヒステリー気味に、
お願いだからあれをやめさせて!≠ニ、
髪を掻き毟り、耳を塞ぐように蹲っていた。
目を覚ましたゾーイのことを、
弟さんとお嫁さんがあやしてくれていたわ。
電気もつけていないリビングルームに、
みんなで肩を寄せ合って夜を過ごしたの。
お隣のご主人は銃を握りしめていたわ。
オッドがくるると威嚇の声を上げていた。]
[ ジャーディンが落ち着かなさそうに、
ちいさな声でわたしに話しかけてきた。
わたしのスマートフォンを貸してと言うのね。
街に探索に出たときに自分のを壊してしまったと。]
それならおばあちゃんの使って。
そこのテーブルの上よ。
あなたが持っていてくれていいわ。
[ だって、あの子のほうがうまく扱えるわ。
わたしは自分の端末を譲るつもりで、
置きっぱなしにしていた場所を伝えたのね。
ジャーディンはこくんとうなずいたわ。
またちょっぴり瞼が赤く腫れぼったかった。]
[ どこかコソコソとしたふうに、
ジャーディンは周囲を窺うようだった。
そして、ささやくような声で言ったの。
あれは、仕方のないことだった?
ほかに誰にも聞かれたくないかのように、
わたしの目を不安げに覗き込んでくるのね。]
・・・
今は、ああするのがふつうなの?
[ わたしは言葉に詰まってしまった。
咄嗟に、そうよとは言えなかったの。
わたしにひどい仕打ちにも見えたし、
一方でああするべきだったと言われれば、
真っ向から反論する手立ても思いつかなかった。
すると、低い声が代わりに答えたわ。
声を抑えたって、皆で集まっているんだから、
内緒話なんてとてもできそうにないわね。。
そうだよ、普通のことだ。
生きるためには仕方がなかった。
同じ状況なら誰だってそうするさ
お隣のご主人だった。
どこか思いつめたような、暗く重い声だったわ。]
[ けれど、本当に?
生きるためなら何をしてもいいの?
わたしはご主人の言葉に動揺していた。
その通りだと同調するには躊躇いがあったわ。
けれど、もしかするとそうしたほうが、
目の前で起きた出来事を肯定するほうが、
子どもたちは安心するのかしら。わからない。]
[ あなたたちはどう思う?]
[ わたしの動揺が目に見えたんでしょう。
ジャーディンはそうっと立ち上がって、
テーブルのほうへと歩いて行ったわ。
お隣のご主人がどうかしたのかと聞いたけど、
あの子はなんでもないとすぐに戻ってきた。
そしてまた控えめな声でわたしに言ったの。
ないよ
そんなはずがないと思ったわ。
昼間、絵本を取りに行く前にそこに置いて、
それきり触っていなかったんだもの。]
[ けれど、わたしももうこんな年ですから、
記憶違いだったのかもしれない。
絶対にテーブルの上に置いたと思っていたのに、
ないと言われるとなんだか不安になってきたのね。
そうこうしていたらお隣の息子さんが、
何かしたいことがあったのかと尋ねたわ。
ジャーディンは少し考える素振りを見せて、
近所の情報が出てないかと思って≠ニ言った。
そんなのとっくに探してるよ≠ニいうのが、
お隣の息子さんからの返事だった。
聡明なジャーディンだって、
本当はそんなことわかっていたと思うわ。]
[ とにかくまだ他の場所も探してみると、
わたしはジャーディンにそう伝えたわ。
それから皆でこれからのことを話し合った。
まだ断続的に不穏な音がする中で、
顔を寄せ合ってひそひそ話をするようにね。
ひとまず物音がおさまったら、
ノーリーンの亡骸だけでも中に運ぼうと、
それに関してはすぐに決まったわ。
それから、街にはもう探し回るあてもないと、
ご主人は疲れ切った表情で言った。
わたしやお隣の奥さんも、
もうあと数日分しか食糧がもたないと伝えた。]
[ いっそこの家を出て、
別の町に移動してみてはどうか。
そんな意見も出たけれど、
ガスがもうそれほど残っていなくて、
全員が車で逃げることはできないと言うのね。
もう手詰まりだと思ったけれど、
でも、あと少しくらいは≠ニ誰かが言った。
もうしばらくなら? 耐えられるというの?
食べるものももうほとんど残っていないのに?
ご主人も難しい顔をしたままうなずいた。
少しずつ、家の外は静かになっていった。
子どもたちは力尽きたように眠っていた。]
[ まだ日ものぼりきらない早朝に、
わたしたちはそうっと静かに、
玄関ポーチに伏した亡骸を家に入れた。
噛まれたんであろう脚の傷よりも、
顔にいくつかあいた穴が痛々しくて、
わたしたちは彼女の顔に布をかぶせたわ。
ねえ、大丈夫なのよね?
お隣の奥さんが念を押すように言ったわ。
大丈夫だろ、そのために、
ああなる前に義兄さんが殺してくれたんだから……
亡骸を整えてあげることもできないけれど、
せめてスティーブンさんが迎えにきてくれるまでは、
今のままの状態で帰りを待たせてあげたかったの。]
[ わたしたちは静かに祈りを捧げた。
自らの手によって殺めたノーリーンに。]
[ あなたたちにはこれが正常に見えるのかしら。]
[ 世界に向けて尋ねてみようにも、
その手段はもうここにはないのね。]
[ ここにいるのは9人ぽっちの人間と、
イエスもノーも言わない7匹の犬だけ。*]
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