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― 少し前・グロリアの部屋 ―
……アンタはよく分からんのにこんな酔狂をしでかしたのか
[
嫌がらせ、と言葉が続けば]
ああ、そう
そりゃー効果覿面だよ、どーもありがとうございました
[吐き捨てて。
しかしどうも腑に落ちない。
明らかに周囲の女性たちの目は鋭くなっているし、単なる嫌がらせにしても……]
……捨て身すぎるだろ
[呟いた言葉は恐らく誰の耳にも入らなかっただろうが]
― 少し先・??? ―
[ぼんやりと。
意識が覚醒する。痛覚も何もない。
此処は一体何処だろう。胡乱に視線を動かした先にあったのは、かつて自分だった物]
……ああ、死んだのか
[死後の世界など信じた事はなかったが、いざその身になってみると驚くほど腑に落ちた。
自分がどうやって死んだのか。そこにある『自分だった物』がどんな状態なのか。
思い出せず、上手く見えないのは死んだばかりで何かが安定していないのか、それとも永劫このままなのか。
既に重力の影響を受けない筈のその身体は、鉛のように重かった。
二度とこの島から逃がさない、とでも言っているように]
[先にこちらへ来ている筈の淑女の姿は、ない]
……?
[違和感を覚えて首を傾げた。
グロリアがいない事実に、ではなく、自分の精神、心の在りように]
……ああ、そうか
[抜けている。
ダンピールをダンピールたらしめる能力と、衝動が。
恐らく、それらは現世に置いてきた身体にあるのだろう。
あの衝動が、あの能力が血の中にあるのなら。
血の流れぬ身体にそれらがないのは道理だ]
……死後なんてモンがあるなら
俺は間違いなく地獄行きだと思ってたけど――
[なるほど、これは確かに――どうしようもない地獄だ**]
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【人】 薬屋 サイラス
(48) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[疵痕のある場所に、縋るように顔を埋める。 (49) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス―過去― (50) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス
(51) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[まだ少年の時分に両親を喪い、 (52) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[彼にとって「人」は渇きを癒す存在であり、 (53) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[独り立ちをした後も、 (54) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[ダンピール全てがそういう傾向があるかはわからない。 (55) 2013/12/07(Sat) 03時頃 |
【人】 薬屋 サイラス[喪失感を憶えても、男は同じ過ちを重ねた。 (57) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
【人】 薬屋 サイラス[ダンピールの存在は稀少で、 (58) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
【人】 薬屋 サイラス[ある女吸血鬼は、子を持ちたがっていた。 (59) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
【人】 薬屋 サイラス―現在/リビング― (60) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
【人】 薬屋 サイラス[床に押し倒し、マドカの上に乗って見下ろした。 (64) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
【人】 薬屋 サイラス[口を吸った後、何事か唱えた瞬間――。 (66) 2013/12/07(Sat) 03時半頃 |
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─どこか─
[背中が痛む。
覚えのある背中の痛みに、男の身体の重みを受けて身じろぎ出来ない自分の身体。
記憶の中の目覚めなのか、それとも二度目の最期の感触なのか判らないまま、自分に起きた事を思い返そうと霞の様に朧で、けれどもきちんと思い出せる記憶を手繰る**]
― 現在・どこか ―
…………
[周囲の彼らの言葉を聞く限り、自分が彼らに殺された事に間違いはないと思うのだが。
やはり死の間際の光景は思い出せない。
サミュエルの奇行を咎めた自分の言葉。そこで記憶が途切れている。
自分の遺体――依然よく見えないが、多分――に向かうサミュエルの呟きに
誰に理解されるとも思ってない、って言ったじゃん
それに――今の俺はもう感覚も思い出せないよ
[ダンピールを構成する要素が抜け落ちた今、その感情は恐らく彼らが感じたように不気味で業の深いものに思えた]
……?
[ふと声が聞こえた気がして、振り返った。
リビングの方向。確かに同類である彼の声だと思ったのだが、そこに彼の姿はない。
同じ方向にある彼の気配と、吸血鬼の気配。
それの一つが失せた。
それと同時に、願うような彼の声も聞こえる]
幸せ、に……?
[その方向には二人分の気配しかない。
そもそも、この島にいる面子はあの二人を除いて全て此処に揃っている。
ならば、彼が幸せを祈った先にいるのは。
――驚いた。
其処に至るまでにどんな道があったのか知らないが、彼は殺される側の為に殺していたのか。
ただ自分の為に灰の山を作り上げたフィリップとは異なる価値観。
同種の生き物であっても、個体ごとに考え方は異なる。
そんな当たり前の事を、フィリップは死んでしまってから知ったのだ]
[羨ましかった。
彼に――というか、誰かに幸福を祈られながら死んだマドカが。
自分がこんな結末を辿ったのはどう考えても自業自得だと、痛いほど理解していても。
続くサイラスの言葉には、届く筈もない返答を]
……ほんとにね
アンタともっと話しておけば良かったよ
誰が殺してたっていいさ、サイラスさんが生きていくのには関係のない事だよ
……俺もよく覚えてないし
[今更会話を重ねたところで何の意味もないのだが。
他にする事もないし、一人遊びを続ける事に――
したのだが、続く言葉はあまりに衝撃的で。
孤独の色と安堵に混じった『お前』は、自分を指す言葉なのかと狼狽えた。
他の思い出深き存在の事かもしれないが、聞き返そうにも声が届かない]
……そりゃ、俺たちが行き着く先は同じだろうけどさ
アンタはまだこっち、来なくていいよ
この身体動きにくくてしょうがねェや
[人の身であったなら、まだ涙も零せただろうに]
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[死んだ場所に、自分の魂はあった。
ならばあの世話焼きの、少女のような女性が目覚めるならあちらか。
重い足を動かす。言葉を交わせる存在に会いたかった**]
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