253 『はじまりの むら』
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[気付けば、村の住人全員が口を揃えて騒ぎ立てたあの日から、ひと月近くが流れていた。 人の出入りの限られるこの村に、まだ道半ばの勇者の便りなど届きはせず、魔王の噂さえも何処か遠くの話でしかない。 相も変わらず、この村は平穏を極めていた。
変わらないのは、相変わらずの続く不漁と、相変わらず仕入れをサボって顔を見せない夫と。 変わったのは、洗濯物の乾きが悪い日が増えたことと。
些細な変化は、辺境の地にも確実に影響を及ぼしていた]
(9) 2016/09/17(Sat) 23時頃
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― 夜:酒場 ―
頼りがないのは無事な証拠ったって、ねえ。
[同時刻、全く同じワードが出ているとは露知らず>>3、今日も酒場で茶飲み話ならぬ酒飲み話に花を咲かせていた。 『いつもの』ですっかり通じるようになった麦酒を呷ってから、寄り集まった奥様方と額を突き合わす。 旅立ったオスカーの話題も一時は途絶えたものの、こう連絡もない事を気にした者が声を上げ、再び口の端に上る。 いつものように、内緒話にしては大きな声が酒場の一角を賑わせていた]
…だってさ、まだ小さな子が、だよ。 一部の男どもはさ、筋が良いだの見込みがあるだの言ってるけどさ。あんなんアテになりゃしないよ。 自分がガキの時に出来なかった大冒険の夢を、オスカーに託してるだけでしょ。
[背後のカウンター席でウイスキーを傾けた男が、ビクリと反応した――気がした]
……まあ、何事もなけりゃいいんだけどねえ。 魔王を倒したなんざ良いから、無事な顔さえ見せてくれりゃあね。
[空になった金属ジョッキをテーブルの端に寄せ、溜息を漏らした。**]
(11) 2016/09/17(Sat) 23時頃
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