25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[主の腕が身を包めば、紅石榴を濡らす雨は更に増して]
別れ……なんて、嘘でしょう? 帰ると謂う事は、また行くと謂う事。
だけど、僕にはそれを止める事など出来ない――…。
[振り向き、憂いを帯びた紅い目元に触れて]
僕にお構いめされますな。 元より判っていた事です。
主は主の為すがままに。 僕はいつまでもあなたの帰りを、待っていますから。
(0) 2010/08/07(Sat) 02時半頃
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[落とした命。
ただ、思う。
あの花は、どんな姿をしていたのだろうと。
一度聴いた笛の音。
耳に残る音ではなかったが、笛を聴いたことだけは覚えていたから。
父が摘む花。
今はもう、遠き場所に]
[散った冬色の花を見やる。
最後まで共にあった花を、その爪を病を。
恨むことなどしようか。
自身が望んだのだから]
…ロビン。
[一つ、言葉にして]
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[潤む目元へと口接ける]
謝らないで下さい……。
聞き分けの良い子の振りをして、 あなたに捨てられたくないだけなのだから……。
(6) 2010/08/07(Sat) 02時半頃
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[人を喰らい、血を啜り
種を植えては、また人を喰う
其の身が枯れ果てるまで。
花で有ることに変わり無いと
人食花の、以後を案じる主を見上げて笑む
爪が皮膚を破り肉を引き裂いていく
深く深く
数珠の音がする。
転がる珠が
心臓刳りださんとした其の時に
魔を祓うというその数珠が効を発した]
[崩れ落ちる主の身に爪をたてたまま
花もまた糸が切れたよう。
薄れていく視界に、歓喜のいろを見て
ひとつ
望みが叶った事を知る
人狼病持つ、人食花は散った]
[祓われた魔は、花が持つ
一族の願い
ひとに種植え付けて
望まぬ生を産む
少しずつ、少しずつ
底からこの世を崩してゆく
幾日も、幾年かけても
血を受け継いできたこの花も
願いはひとつであったのだけれども]
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行かないで、と縋っても。 あなたは行ってしまう。もう一つの月の元へ。
[ぎゅっと拳を作る様に握りしめる手。 それがかたかたと震えて]
縋っても尚、引きとめられないのなら。 それは酷く、自分を惨めにするだけです。 ならいっそ、聞きわけの良い振りをする方が、 未だ矜持も護られましょう?
[幼い顔に浮かぶは、笑み。 だけど握りしめた拳からは、その爪先が掌の皮膚を貫いたのか、 ぽたぽたと紅い滴が滴り落ちた]
(9) 2010/08/07(Sat) 03時頃
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[何処とも知れぬ、ふわりと浮かぶ意識
閉じたはずの瞳開けば、変わらぬ姿を目前に]
……主、さま?
[名を呼ばれた。
不思議そうに、首を傾ぐ]
ここは
[届く声。
ああ、意識は落ちたのに、この場所は]
狭間か。彼岸か。どちらでも。
お前がいるのだから。
[傍にある花を手繰り寄せる]
[困惑を顔に浮かべて
手繰り寄せられた相手から視線を逸らす]
ボクは……
私は
[先に散ったのは冬の蕾
後に散らされたのは、病持つ花]
狭間でも、彼岸だとしても
……主さまの傍に、居られるんですね。
[心ふたつ
混じる]
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[腕の中に包まれても、 鳥の顔は強張ったように笑みを張り付けたまま]
寂しい想いなど、しておりません。 僕を可哀そうな子供に、しないで……。
[掌から滴る朱に、酔いそうな主を見て]
僕では……喰らう価値もありませんか。
[ぽつりと呟いた後、 その頬に触れようと紅く濡れた指先を伸ばした]
(21) 2010/08/07(Sat) 03時頃
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今のところは、というところでしょうか。
仏の教えには、彼岸には浄土があると。
そこに逝く為に、僧は徳を積む。
私は、積まずに参ってしまいましたが。
ですから。
ここも一時の場所なのかもしれぬ。
[声が聞こえる。此岸からの。生者の声。
そして混じるは死したものの声]
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清濁併せ持つからこそ、月は美しいと。 前に、申しあげたでしょう?
[伸ばした指が、主へと触れる。 紅く濡れた指が唇をなぞれば、 まるで紅を引いたかのような艶やかさに、一寸見惚れて]
あなたが獣であっても、焦がれる想いは変わりません。 僕は……あなたと謂う魂に、恋をしたのだから。
(28) 2010/08/07(Sat) 03時頃
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私は、浄土まで行けません。
そも人に非ずといわれる身
一時の場所に
何時までも留まっていられたら
[不意に気付く]
声が聞こえる
……セシル、迦陵……
[道は分かたれた
友人二人の声を聞き
はっきりと知る。
学びや同じくした花といえど
花同士であれば
何時か別れは来るもの
寂しいと感じるのは、冬の蕾]
私も行けませんよ。
徳を積めばいける場所ですが…。
私はそも徳を積む事をしなかった。
けれど。お前を地の底に落としたくはない。
ここに留まれるのならば、留まりたいものですが。
[友を呼ぶ声。目を細めた。
契った事は知らぬ。けれども、二人が思い合うことは知っている]
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[気がつけば、華奢な身体は寝台へ。 視線を泳がせれば、皺打つ敷き布が見えて。
紅石榴が見上げるのは、紅引く主の艶麗なかんばせ]
嗚呼……やはり、綺麗……。
[うっとりと呟き、眸を閉じる。 口接けをねだるように、朱に濡れた腕を、 主の首へと回して]
(38) 2010/08/07(Sat) 03時半頃
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そうですね、色狂いの僧では
たどり着けない場所でしょう。
[返す言葉に僅かトゲ交じり
は、と気付いて口を噤んだ]
私は……ふたり留まれるなら何処だって
[頬を染めて身を離す。
居た堪れないのは
接触に慣れぬ冬混じる所為]
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[主から戴いたのは隅々までを嬲る様に、重なる口接け。
呼吸を奪われれば、相手の酸素を求める様に。 より深く、舌を絡めて交わる唾液を交換するか]
…………ねえ、なよたけの君。 お願いがあるのです。
[長い長い口接けの後、 紅石榴はあやしの光を燈して。
少年はその幼い顔に不釣り合いの表情を浮かべ、 霞む月を見上げる]
(49) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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ええ。 僕をずっとお傍に置いて下さると謂うのなら……。
[紅石榴が捉える、薔薇の香油で濡れる主の指。 そんなものはいらないと謂う様に、その指を口に含めば、 水音を響かせて]
いつか、僕の子を……生んで下さい。 それが僕の、願い……。
[唾液に濡れる指を未だ閉じたそこへと導き、 嗚呼……と震える声で一つ啼いた]
(60) 2010/08/07(Sat) 04時頃
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[月が綻ぶように笑めば、鳥もまた。 同じように幼いかんばせを綻ばせる]
僕は死にません。 ずっとずっと…鳥はあなたの傍に。
[身体の奥へと捩じ込まれる熱情の激しさに、 ぎゅっと、血に濡れた指がシーツを握りしめる]
あ、あ…ぁ……。 もっと、深く僕を……もとめ、て……っ。
なよたけの、 き、み……っ。
[高く甘く。 囀る声は、主の心も蕩かすだろうか。 理性の焼き切れた鳥は、ただただ打ちつける強さに啼き喘いで。
紅石榴が零すは、歓喜の涙]
(69) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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失言を。
[先刻のトゲについて、謝罪をひとつ]
主さま……
[応接間の、洋琴に目を止めた。
近づき、鍵盤の蓋を開く]
現世で聞かせられなかった
うたを、聞いてくれませんか
[触れる
指がゆっくりと白と黒の上で踊る。
音符の連なりにあわせて主の為に歌うのは
優しくも物悲しい鎮魂歌
この世ならぬものなれば音は*聴こえるか*]
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[主が自分を求めてくれるのが嬉しくて、 命ぜられるまま、鳥は歌う 愛の交歓に溺れてしまえば、あとはただ。 動けなくなるまで、互いの身体を貪り喰らい合うだけ――**]
(78) 2010/08/07(Sat) 04時半頃
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小僧 カルヴィンは、ランタン職人 ヴェスパタインが筆を取るのを気だるげに見て、。あふ…と欠伸を*一つ*
2010/08/07(Sat) 05時頃
[―― 鳥は。]
……―― 厭だ
[鳥は、青から射落とされる。]
…っ、厭だ――…!
朧様、
――っ
……
[白い鳥が、 啼いたのは]
華月…!!!
[届いたかどうか知れぬ]
[―― りん、 と。
鈴の音が 最期に 啼いた。]
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― 鳥籠 ―
[腰を中心に全身に酷い倦怠感を纏いながら、 身を起こす。
日はもう中天近くまで登っており、 厚く簾の降りた室内にも光が届くか]
……ふふ。 [体中に残る、主より残された赤い花弁。 それを一つ一つ指でなぞっては、齎された熱情の記憶を辿って。 自然と唇から笑みがこぼれおちる]
(96) 2010/08/07(Sat) 09時半頃
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[湯を浴びねばとも思うけれど、 この身に残る主の香りを消すのは忍びなくて。
それでも白露を纏ったままでは何処へも行けぬと、溜息を一つ]
なよたけの君、起きて……。 もう陽があんなに、高い。
[隣で眠る佳人へと声を掛け、 まだ眠っているようなら、血糊の乾いた手で揺さぶるか]
(100) 2010/08/07(Sat) 09時半頃
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[向けられる淡い笑みに、鳥もまた笑みを返して。 おはようございますと告げた後、 眸を閉じて口接けを強請る]
なよたけの君の香りを、消したくない……。
[眸を伏せ、長い睫毛を震わせてそう告げれば、 主はどんな顔をするだろうか。
それでも抱きかかえて貰えば、 嬉しそうにその首へと腕を回すだろう]
(106) 2010/08/07(Sat) 10時頃
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