88 吸血鬼の城 殲滅篇
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[安定の良すぎるほどに確保されていた躯が、不意に宙に投げ出される。 軍馬に振り落とされるにも似て。
遠心力を使って腰を捻ると、ヒューはそれこそ猫のように軽やかに足から着地した。 人であった頃よりはるかに高い身体能力。]
(56) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[軽く腰を落としたままの姿勢からヘクターを振り仰ぐ。
自分がこの男に何を捧げ、何を奪われたか── 疼きにも似た感情が響むままに、今は剣すら失った拳を、肌と温度を同じくする大理石へと触れる。]
我が君──、 血盟騎士《ブラッドナイト》、ヒュー・ガルデンは御前にあり。
(57) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[カランカランとした音を立てて、長剣が石造りの床を転がる>>38 せめてもの意地でヘクターを睨みつけると、声が降った>>40]
――…………っ
[自分の弱さを言い当てられたように、悔しげに唇を噛む。 師に対して彼がどのような興味を抱いたのかはわからない。 だが、彼が口にした言葉は、間違いなく師の教えのうちのひとつ。
わかっていて怯んだのだ。 堂々たる偉丈夫の男の首に手を伸ばして届くだろうかと]
違う……。師は素晴らしい方だった。
[気合で辛うじて立ち上がると、崩れ落ちぬように壁に凭れ掛かった]
(58) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[騎士の目覚めを目の当たりにし、驚きに軽く目を見開いたが、当たり前のように吸血鬼に臣下の礼を取るのを見て、胸に暗い感情が湧き上がる。 ひび割れたレンズの奥、細められた眸が嫉妬に似たいろを湛えて強く輝く。]
(59) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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[と同時に、今の動きから冷徹に身体能力を測ることもしていた。 元々手練れの戦士ではあったが、先ほど大広間で戦った時よりも遥かに速く、そして力強い。
ヘクターに比べればまだ、人の目で追えるだけましなのだろうが……階上で待つ“子”も、同程度の能力を持っていると考えたほうが良い、と苦い事実を噛み締める。]
(60) 2012/05/02(Wed) 11時半頃
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良し。
[望んだ通りの言葉を口にした己の騎士に頷き、 浄化の光に灼かれたのとは逆の手を伸ばす。
掌からどろりと溢れた闇が剣の形を模し、 先程の儀式を再現して、騎士の首に刃が振り下ろされた。 しかし、先とは違って刃が肉を裂くことはなく]
これよりおまえの力と命はすべてオレのものだ。 オレの期待に応えるよう、励め。
[首筋に薄い傷を残して、剣は再び掌に戻った。]
(61) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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[主の言葉ととにも首筋に走る熱。]
…御意。
[自分の足で立って振り向けば、そこは城の大広間と知れた。 燃えるバリケードに大きく突破口が開けられていることを除けば、状況にさほどの変化はない。 むしろ、変容を遂げたのは自分の方だった。]
(62) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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[視覚とは別の感覚が伝えてくる。 それぞれに大きさは違えど命の脈動をもつ討伐隊の3人の男。 レオナルドがまだ生きていたことを別段の感慨もなく把握した。
いずれも生かしては帰さぬと決めた相手。 今は、そこに別の必然も混じる。
その血が必要だ。 力を得るため、そして、クラリッサを甦らせるため。]
(63) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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[人間を見やる琥珀の双眸の奥に、獰猛な緋が潜む。]
(64) 2012/05/02(Wed) 12時頃
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それじゃ、あとは任せた。
[機嫌良く手を振って階段をのぼりかけ、 やはり途中で足をとめて振り返る。]
そうだ、ヒュー・ガルデン そこの眼鏡の奴は通せ。別の約束がある。
あとの二人は好きにして良いぞ。
[申し伝えたあとは、もう振り返らなかった。]
(65) 2012/05/02(Wed) 12時半頃
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──委細承知。
[去り行くヘクターに応じるは、ただ一言。]
(66) 2012/05/02(Wed) 13時頃
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負傷兵 ヒューは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 13時頃
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[吸血鬼の王の言葉に答えることも口を挟むこともなく、階段まで一歩ずつ床を踏みしめて歩く。 今や吸血鬼の眷属となった騎士の傍らを、燠の如く静かに燃え立つ一瞥をくれて通り過ぎる。 ムパムピスとジェフリーの顔を見ることは敢えてしなかった。]
(67) 2012/05/02(Wed) 13時頃
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――その男は。 竜牙兵を呼び出すことができます。 ……気をつけて。
[そうふたりに告げると、ゆっくりと階段を上り始めた。*]
(68) 2012/05/02(Wed) 13時半頃
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ー大広間ー
……そうして、次に貴方の姿を見ることがあるならば、忌まわしき魔物の姿で…と、いうことですか? ―レオナルド・ディエンティ。
[この状況になりながら、自分達の命を気遣う言葉を見せる錬金術師>>50…その乾いた血がこびりついた顔を真っ直ぐに睨み付けた。]
奴等の血は、至上の主が造りし生命の神秘を明かすものには決してなり得ない。 呪われた存在からは、呪われた魔物しか生まれない。
貴方が命をかけて追い求めようとするのは、見せかけの甘い香りを放つ禁断の果実。 ―蛇の造りし知恵の実に他ならないのに…!
(69) 2012/05/02(Wed) 14時半頃
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[錬金術師は、目を合わすこともなく、魔物の言葉に惑わされ死地へ赴こうとしている。
先が見えているのに止められない無力さに、強く奥歯を噛みしめた**]
(70) 2012/05/02(Wed) 14時半頃
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─二階 宴会場の窓際─
(──良い子で帰ってきたら) (褒美) (きっと気に入る) (手負いの、餌)
[壁に凭れ、窓から外を眺めながら、 あの男の『声』を反芻する]
(命令) (──衝動を、殺すな)
(71) 2012/05/02(Wed) 17時半頃
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……。痛ぅ、…
[無意識に傷口の上を握り締めていた。 ぬるりとした感触と痛みに、顔を顰める。
骨が見える程に抉られた其れは、 ひとならば意識を失う位の激痛を齎していただろうか]
(72) 2012/05/02(Wed) 17時半頃
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[ぼんやりと紅に見蕩れた。 己の内を蝕む渇き。 目覚めて此方、自らを苛む其れ。 嫌だ、と悲鳴をあげつづける声がある。 褒めてくれるんだろ?と笑う自分がいる。 いいこと尽くしじゃねえか。 あの薔薇色の水に手をのばせば、 何もかも楽になれる。知っている。 ──それでも、]
(73) 2012/05/02(Wed) 18時頃
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……?
[大階段から上るふたつの気配に気づく。 ゆっくりと身を起こし、其方に目を向けた**]
(74) 2012/05/02(Wed) 18時頃
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[修道士の糾弾>>69に答える言葉はなかった。 まるで耳に入っていないかのように、省みることなく階段を上っていく。]
(75) 2012/05/02(Wed) 18時半頃
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ドナルドは、ヘクターに話の続きを促した。
2012/05/02(Wed) 19時半頃
捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/05/02(Wed) 20時半頃
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狙えるかじゃない。 ……狙うしかないな。
[身体をぶつけた余波をまだ若干感じながら、 手をつき壁に凭れかかったまま、ムパムピス>>41にそう答えた]
(76) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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待て!
[階段を昇ろうとするレオナルド>>50を 引きとめようと叫んだ]
我々は……。 君が、堕ちようとしているのを、黙って見逃すわけにはいかない。 だが、人間である君を殺したくもない。 ――ならば、この城内の吸血鬼を全員倒すしかない。
[静かにそう言い切った]
(77) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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[ムパムピスに視線を合わせると、彼に語りかけた]
……ムパムピス。 私の意志は今の通りだ。 そして、残念だが、君の言うことは正しい。 私一人では到底あの男に太刀打ちできないだろう。
(78) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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── 大階段 ──
[レオナルドが暗い情熱をたたえた視線を投げて、ヘクターの後を追う。 まだ目覚める前だったから、ここでどんな交渉がなされたのかは知らない。 だが、手出しは無用と命じられた。]
……。
[階下へと振り返り、大広間に残るふたりを見やる。 金髪の剣士、修道士。
彼らを階上へは行かせない、と立ちふさがる。]
(79) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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[一度言葉を切って、大きく息を吸い込むと]
――私には君が必要なんだ。 私が必ず君を護ってみせるから。
私が生きて。 ジェフリー・ハリソンでいられる限り。
ムパムピス。 私と共に……在って欲しい。
(80) 2012/05/02(Wed) 20時半頃
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[ようやく、吹き飛ばされた時の衝撃から立ち直りつつあった。 凭れていた身体を起こすと、足元まで投げられた剣を手にとった。
ヘクターとレオナルドが消えた大階段は 騎士が護るように立ちふさがっている]
……そこをどいてもらおうか。
[そう告げたところで、彼はどきはしないだろう。
目覚めた彼の動き>>56は目で追っていた。 クラリッサを護っていた時は怪我をしていたこともあるのだろうが、 その時とは比べ物にならない、軽やかな身のこなし
さらにレオナルドからの情報もある>>68 一筋縄ではいかないのは明らかだった。 慎重に間合いを詰めながら、隙を伺う]
(81) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[「私が必ず君を護ってみせる」と、傍らの修道士に約束する金髪の男の姿に、ふつふつと苛立ちを掻き立てられる。
それは、自分が果たせなかったこと。 側にいながら、むざむざとクラリッサを死なせてしまった。 その苦しみが狂おしいほどに満ちてくる。
ならば。
この男に与えるべき絶望は──定まった。]
(82) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[心臓の位置まで裂けてぶら下がる鎧が邪魔だと、血に染まったシャツごと手で掴んで引き剥ぐ。 そのまま壁際に投げ捨てた。
外気に晒された肌は寒さを覚えることもなく、どこか鉱石めいて無機質に白い。 自分の躯ではないように感じたが、いずれ慣れるだろうと漠然と思った。]
(83) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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…剣を。
[呟きながら右の手首に指爪を添え、鋭利なそのエッジで細く脈を開いて血を導く。 先ほどヘクターがそうするのを見た、その模倣だが、使ったのは闇ではなく血。 ヒューの躯に注がれた、闇の力をふんだんに含んだヴァンパイア・ロードの血はヒューの意志のままに武器を形づくる。 ガーネットにも似た深紅の波刃剣が、しっくりと手に馴染んだ。
それを心地よいと感じたのは剣士としてか、魔としての性か。]
(84) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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[戦いの支度を整え、まずは小手調べとばかりに、「竜の牙」を握り込んで血を与え、大広間へとバラ蒔く。
地に触れるや生じるのは、レオナルドが警告したとおり骨の兵士たち。 だが、その色は風雨にさらされた骨の色ではなく──澱む紅をしている。 強く魔の気を帯びた血塗れの竜牙兵だった。
死者のレギオンは生ける者を弑さんと突進する。*]
(85) 2012/05/02(Wed) 21時頃
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