254 東京村U
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[件の動画だって、スマホをいじっているうち目に入った噂話のひとつにすぎない。動画だって幾人かのTwitterユーザーにRTされて出回っていたものだ。 それを見ていただけで怒られる所以なんてあるだろうか?]
かとりー、さっきのって声聞こえるってホント? アタシどこだか全然わかんなかったよー。 は?耳とかめちゃくちゃいいし。
あはは!わー、霊感とか言い出しちゃった?きっも。
[耳の良し悪しを揶揄われ、友達の香取里奈を揶揄い返す。 すこし思い込みがつよいところがあるもんね、なんて入間は思う。 その体型でポッチャリを自称するのはちょっと無理がある。]
(58) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[人が死んでいるから、笑ってしまったのが、フキンシンだっただろうか? だったら怒られるべきは笑わせてきた出演者だろう。 もしかして一二三はIKB32のファンなのだろうか? 転校してきて以来皆に知られていなかっただけで、彼の正体とはキモいタイプのアイドルオタクだったのだろうか。 転校生という物珍しさも相まって、お調子者の彼がちょっと気になっている友達のことも知っているので、もしそうだったら……]
(そうだったら……だったら、うーん、笑えるかも?)
(59) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[珍しく話を切り出しにくそうにしている照子(>>37)の様子を眺めていたら、じわじわと冷や汗が出てきた。 いつものように執筆の依頼であれば、こんな風に言い澱む必要はないだろう。 嫌な想像が脳裏をよぎる。 縁切り、作家としての戦力外通告をされるのではないかと。 動き出したネガティブな思考は、この状況に似つかわしくない『♪らぶらぶにゃんにゃん、らぶにゃんにゃん』というフレーズのBGMと共にどんどん回転数を上げいく。 前に出した『妄執の誓い』も売れなかったもんなぁとか、ああ俺一発屋で終わるのかなぁとか、とか田舎に帰るから契約できなくなりましたと自分と同じ名前の不動産屋に謝らなきゃなぁとか盛大に思考の空回りをしていると、テーブルの上に一冊の本が乗せられた]
(60) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[一限目の若い男性教師の英語の授業が始まり、自分なりの気持ちの落ち着けどころも見つかって、一二三の様子に関してを、入間は一度すっかり忘れた。 英語教師の安井の顔は、顎周りと額の広さを除けば、まあまあ嫌いじゃない。 背が高いおかけでスタイルがよく見えるのが良い。 おかげで英語は苦手でも話を聞く気がおきやすかった。]
(61) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[本とともに照子の口から語られた言葉。それはどうやら執筆依頼であるらしい。 ならば何故言い澱む必要があるのだろうか。書いてくださいと言われれば、二つ返事で受けるのだけれど。 どうやら、執筆する内容に大きな問題があるようだ。そして、それはこのテーブルの上に差し出されたものに関連があるようだ。 目の前に置かれた本の表紙に*目を落とした*]
(62) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[意識は暫くの間男性教師に向いていた。 だから余計に、気が抜けていて、はっとさせられたのだろう。 一二三がむくりとその体を起こした。 視界に入った動くものに、何の気なしに入間は視線を向けた。 斜め後ろから見る一二三の頬に、涙がつたって見えた。 見てはいけないものを見た気がして、入間は声には出さずに口のなかで「えぇー…」とつぶやく。]
(そ、そんなに?泣くほど?)
[勿論、さっきのことで泣いてるとも限らないが……]
(63) 2016/09/27(Tue) 12時頃
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[午前の授業が終了する。 昼休み、購買で買ったパンやお弁当をそれぞれもって、椅子を引き寄せ合って友達で輪を作る。 輪の真ん中には、三つくっ付けた机。 机には、化粧直し中の友達のコスメグッズ、友達の一人が朝買った音楽雑誌が広げられ、友達のスマホがMVを流しながら置きっぱなしにされていた。 雑誌には、あるインディーズバンドのライブ時の写真と、それに関する記事が載っていた。]
午後はぁ〜、スズキの授業かぁ。だっる……。
[なんとなしに、授業中不意に視界に飛び込んできた同級生の涙で、モヤモヤを引きずっていた入間は、髪の毛の先をいじりながら呟いた。]
アタシ午後いいやぁ。帰ろっかな。 電車すいてるし。
[なんで朝から親の喧嘩を聞かされて、昼まで他人のことでモヤモヤしていなきゃならないのだろう。 学校もつまらないなら、遊びに行く他ないなと考え、入間は午後の授業をサボることに決める。]
(64) 2016/09/27(Tue) 12時半頃
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[そこに置いてあったのは、ふた月ほど前の話題作。さまざまな考察を呼んだ、落ちのない匿名の怪奇譚。 黒地の表紙には、割れた林檎と砕けた鏡。 旬を少しばかり過ぎたその食材の題名を、人差し指でつるりと撫でる。 そこには、こう書かれていた。]
(65) 2016/09/27(Tue) 13時半頃
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『東京村』
(66) 2016/09/27(Tue) 13時半頃
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[……本を伝うピンクのネイルが、濡れたように光を返す。]
うちの作家さんで書ける人を、探してるの。 匿名になっちゃうけど……話題作りに、さ……
……どうかな?
(67) 2016/09/27(Tue) 13時半頃
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―新宿駅南口―
えっ······
[期待に反するそっけない返事(>>27)に、一瞬呆気にとられ、それから萎むように肩を落とした]
そ、そう····· そっか、そうだよね なんか、立ち止まったから、てっきり、その······ なにか知ってるのかなって。
あぁー、やっちゃった······
[最後は独り言のような小声になり、両手で押し潰したキャップを口許に当てる。足を止めたのは他のまったく別のなにかに気をとられたから。自分の早合点だ]
(68) 2016/09/27(Tue) 14時半頃
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うん······いっつも駅で騒いでた、あの変な人。 知り合いっていうか、友達っていうか······ 向こうがどう思ってるか知らないけど。 急にいなくなったから、心配で······ その、ごめん
あ、じゃなくて······ お邪魔して、ご、ごめんなさい
······でした。
[うわずった声で、ばつが悪そうに目を伏せ、ちいさく頭をさげた]
(69) 2016/09/27(Tue) 14時半頃
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えっ、や······ち、ちが······っ
[不意に苗字を呼ばれ(>>28)、反射的に首を振ってしまった。顔が強ばっていくのが自分でもわかる。キャノバファンか、客にとった一人か、組織の人間か······地元函館の人間、それも両親と所縁ある人間なら、それこそ最悪だ。]
······あっ······あれ?
[そのとき、ふっと思い出した。以前もこうして、地元に知らされる心配をしながら、押し問答をしたことがある。さほど前のことではない。細縞が織り込まれた細身のスーツ。目が大きく見開かれたこの顔、この表情]
(70) 2016/09/27(Tue) 15時頃
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─ 回想:半年よりも前・新宿不動産(>>31) ─
親は······死にました。その、事故で······ 家を追い出されて、寝る場所がなくて····· あ、あの、お金なら、 アルバイト、なんでもするから! 月2万ぐらいなら、きっとなんとか······ だから、その、警察だけは、やめてください。
あ、ほら、ここ この部屋、空いてるんだよね? なんとかならないかな? あ······な、なりませんか? おねがいします!おねがいします!
[担当者の東蓮寺が形式的に広げた物件ファイル。そこの載っていた上野の上野中下アパートの間取り図を指差しながら、ジリヤはしつこく食い下がった。
結局物件を紹介してらもらえず、その後、その部屋には他の住人が住むことになる**]
(71) 2016/09/27(Tue) 15時頃
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―新宿駅南口―
あの······違ったら、ごめんだけど、前にどっかで······? 不動産······とか?
[東蓮寺の反応をみてから、小さく頷き、雪野瀬であることを認める。服装の雰囲気はあの頃と変わらず、ただ衣服は清潔で真新しく、顔の血色もいくぶんよくなっているように見えるだろう。
『あれ、ジリヤじゃね?』
行き交う人混みの中から声が聞こえると、慌てて髪を整えてから無造作に黒いキャップをかぶり直した。**]
(72) 2016/09/27(Tue) 16時半頃
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― 清瀬駅 ―
[学生鞄を肩にかけて、清瀬駅から電車に乗った。 白茶けたシートに腰かけた。 電車が発車する。]
………。
[髪の毛の先をなんとなしにいじる。]
……。 …………。
[入間はさっとスマホを手にとって、ラインを一二三に送った。 『さっきウチらなんかした?😓💦』**]
(73) 2016/09/27(Tue) 17時頃
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イルマは、リーに話の続きを促した。
2016/09/27(Tue) 17時頃
イルマは、ドリベルに話の続きを促した。
2016/09/27(Tue) 17時半頃
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[その本(>>65)の表紙には見覚えがあった。 何故ならはその本は家の本棚に収められているから。 その本が発売されてすぐ、界隈では話題になった。 陰謀論ではなく使い古されたものでもない、そんな都市伝説風の怪異譚がまとめられた本は貴重であり、皆飢えていたのである。 内容もさることながら筆者が匿名であることや意味深な表紙も相まって、噂が憶測が飛び交い、その本自体が都市伝説と化したのだった。 木露自身も考察を行い、その騒ぎの環に加わっていたりもする]
(74) 2016/09/27(Tue) 17時半頃
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[そんな本の執筆を依頼されている。 だけれど、いつものように即座に頷くことはできなかった。 まず、匿名であることが引っ掛かる。 取らぬ狸のなんとやらだが、もし本がヒットしたとしても自身の評判に影響を与える事がない。 本がヒットした後に、実は私が書きましたなんて事をしたら興ざめであるし、そんな見苦しい真似は絶対にやりたくない。 文章にも細心の注意を払わなければならないだろう。自分の色を極力出さないように。 個性なんて出そうものなら、即座に特定されて話題作りの計画は破綻する。 それに、他の人間が書いたものの続編というのも問題だ。 全てが前作と比べられる。筆力も構成力も売上も。 はっきりと自分が劣っていると見せつけられてしまえば、その時は――]
(75) 2016/09/27(Tue) 18時頃
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[照子の問いかけに、長い沈黙を返す。 気がつけばカップを伝う水滴を睨みつけていた。 そこには辛気臭い顔が映っている。 それが自分の現状だ。 売れたいならば、売れるものを書かなければならない。 これは一つのきっかけになるのかもしれない。 自分の何かを変えてくれる、そんなきっかけに。 水滴はテーブルへと落ち、揺れる]
……やらせてください。
[絞り出すような声には、まだ*迷いが混じっていたが*]
(76) 2016/09/27(Tue) 18時頃
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みょんこは、イルマから受け取ったアンケート入れた紙袋をオフィスのロッカーに入れた。
2016/09/27(Tue) 20時半頃
みょんこは、リー…ン、リリリリーン!と電話が鳴っているオフィスに顔を出した。
2016/09/27(Tue) 20時半頃
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─ 朝、新宿不動産株式会社オフィス ─ [呼び出されて向かった不動産のオフィスは、電話の音と書類のかさついた音と、PCのキーを打つ音と人の声が入り交ざっている。春あたりの繁忙期に比べればいくらかはマシだが閑古鳥が鳴くということもなくそれなりに忙しい。]
遅くなりまして。 上野中下マンションの担当の鈴里と申します。
[上野中下の契約書のファイルをもって顔を出す。]
──ああ、小津さんでしたか お疲れ様です
[と、パーテンションで仕切った一角にやってきていたのは警察の人間のうち、ひとりは知った顔だった。涼しい顔をした刑事とは対照的に、挨拶をする鈴里の顔は笑っている。]
(77) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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[警察の人間と顔を合わせる機会は、存外に多かった。新宿不動産が手広くやっているのもあるが、曰くつきの物件をすすんで扱っているからという面が影響しているのは否めない。]
身元の確認ですね? 調査書は。ああ、はい。ありがとうございます
こちらがお名前と、緊急時の連絡先で ──はい
[そうして、幾度か繰り返せば慣れも出てくる。やりとりは小一時間もかからず、来客は帰っていった。]
(78) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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[刑事たちをオフィスの入っているビルの玄関まで見送った後、書類と荷物を取りに戻る。と、待ち構えていたのか同僚の一人が顔を見せた。]
『みよ子さん、みよ子さんお話し終わった? これから出るのよね? ……どうだった?』
……そうですねえ
[噂好きの同僚のひとりが顔を見せるのに、困ったように眉を下げてみせた。頬に手を添える。同僚とはいえ、あまり話を広めていいものでもない。どうするかと黙っている間に、『自殺?それとも他殺かしら?やだ、怖いわねえ……夜のお仕事してたとかなんでしょ?やっぱりねえ』と、向こうから話が続いた。こちらの様子をちらちらと伺いつつも、よくないわよねえ。と仮定に顔をしかめる彼女の中には、彼女なりのストーリーがすでにあるように見える。 ただ、それならそれで、わざわざ夢を壊さなくていい気もした。笑みを浮かべたまま相槌をいくつか打つ間にも、話は勝手に転がっていく。]
(79) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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[痴情のもつれの怨恨殺害の話から、治安の話題になりかわったあたりで、そういえば。と思い出したように手が叩かれた。半年くらい前に家出した少女が訪ねてきたし、ああいうのもねえ。と大げさに同僚は表情を曇らせた。]
……ありましたねえ
[困ったような笑みは東蓮寺に呼ばれて、オフィスに来ていた雪野瀬という少女から話を聞いたときに浮かべたのと同じものだ。]
(80) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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─ 回想:半年よりも前・新宿不動産(>>31>>71) ─
[テーブルの上には物件のファイルがひらきっぱなしになっている。そのひとつに指をおいている少女の側へお茶がおかれる。鈴里は半ば縋りつかれるように食い下がられてる東蓮寺と彼女を見比べながら、頬に手を当てた。]
そうねえ……。連絡先もだけれど、 未成年となると保証人がいないとどうしてもねえ……
頼れるようなおじさんかおばさんかはいない?
[東蓮寺のどうします?という視線に規定上の話をしながら、少女の対面のソファに座って体を前に倒す。視線の高さを同じにして見やった少女の日本人離れした容貌が目につく。]
うーん、追い出されちゃったのが本当なら、 わたしも助けてあげたいけれど…… お仕事だと、難しい部分もあるのよねえ……
[のべられる手があるなら。とは思えど、仕事のきまりを一社員が飛び越えるわけにもいかない。上野の上野中下アパートが彼女の目に止まったらしいのに、ふーっと眉を寄せて息を吐いた。苦笑が浮かぶ。]
(81) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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ああ、ううん。そうねえ、そこは……
[示された格安物件に言葉を濁す。しばらく間取り図に視線を落とした後、必死さが勝ってみえる少女を、眼鏡の奥から少し間をおいて見つめた。 気づいたのか偶然か視線が合ったタイミングで、目じりの筋肉を下げて笑う。眉は少し寄せられたままだった。]
… 怖いのは、へいき?
[示唆と心配を半々に、呼ばれた不動産屋の女は、 少女にそんなことを尋ねた。]
(82) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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困ってるみたいだし、どうにかと思うけれど、 …… いろいろあったりしたところだから……
[眼鏡の奥で目が閉ざされる。困った顔には、あまり切迫した真実味がないまま、口元が四つ指で隠された。危惧を口にして戸を立てるようなしぐさと裏腹に、その隙間からこぼした言葉は奥の隠し事を匂わせるものだったけれど*。]
(83) 2016/09/27(Tue) 20時半頃
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─ 現在、午前:新宿不動産オフィス ─
[ひっぱりこまれた休憩室で、急須から湯呑みにお茶を注ぐ。机の上には言い訳のタネとしてこの前の社員旅行で、広告部の部長がとった写真が並べられていた。焼き増ししてほしいものがあれば選んでほしいとのことだった。 なおフィルムなのは部長の趣味が写真だからだ。広告用の写真などもときどき彼が自ら撮っていることもある。上手いといえるほど目が肥えているわけでもないが、ブレやピンボケは少ない。]
結局、上から許可が下りなかったんですけどねえ
[せめて紹介だけでもどうかという奏上は、残念ながら家出を疑った上司の手で却下された。上司の一言がなければ、あるいは──今日の刑事たちの調査はもっと難航していたかもしれない。]
一応、名刺と電話番号だけは、 お渡ししたんですけど
[結果として頼りにはならなかった大人の情報を、彼女がどうしているかはわからない。]
(84) 2016/09/27(Tue) 21時頃
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[『悪いことになってないといいわねぇー』と、その言葉に何度目か、「そうですねえ」と同調よりに繰り返した。『ほんとうもう治安が悪くって、ねえー』と、話が締めくくられる。どちらかといえばそれが彼女の言いたかった不満だったのか、満足したのか、話題がそこで切り替わった。]
『引き止めちゃってごめんなさいねえ。 私は、もうちょっとここで写真の整理してるから』
いえいえ。
『みよ子さんは26番と31番でいいのね?』
はい、それで。 じゃあ出てきますね
[じゃあまたねー。と見送られて、休憩室を出る。 『あら?』と疑問符のついた声が扉から聞こえた。] 『みよ子さんが写ってる写真──』
(85) 2016/09/27(Tue) 21時頃
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みょんこは、ぱたん。と出入り口の戸を閉めた*
2016/09/27(Tue) 21時頃
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─ 回想:半年よりも前・新宿不動産 ─
事故で?それは……、お気の毒に。
[他に言いようもなく、未だ幼さの残る少女を見遣る。 困りきった様子は、眉下げる様を見るまでもなく容易に見て取れたろう。
警察に連れていき、保護者──もしくは養護施設なりへとバトンを渡す。それが正しい対応だろうと知りながら、必死に訴える少女の様子にそれを躊躇ったのは、]
( … 田舎には、帰りたくない。)
[訴える彼女の姿>>71が、己に被ったが為でもある。]
(86) 2016/09/27(Tue) 21時頃
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あ、ちょっと待って。 そのファイルは───…
[一応、形式的には持っていった物件ファイル。 適当に持ち出したその中に、鈴里の担当ファイルも紛れていた。 鈴里の担当。即ち───事故物件ファイル>>4]
いや、だからね。そういう問題じゃなく…
[パラパラとめくられたファイルの中に、上野中下アパートの名があった。 バイトでもなんでもする、と。 言い募る少女の様子に、頭を抱えた。]
(87) 2016/09/27(Tue) 21時頃
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