52 薔薇恋獄
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─ 喫茶 ハルシオン ─
───その時、私、鳴瀬先生に「キスして欲しい」って言われたんです。 そうすれば、好きになるって。
[くすっと自嘲し]
ねぇ、甲斐君……。
たとえその人の心が、実際のところ何処にあろうと。 ずっと想いを寄せてきた相手からそんなこと言われたら……選択肢なんて、ないと思いませんか?
[それはつまり、求めに応じた……ということに他ならない。
そして、単刀直入な甲斐の問いかけに、小さな溜息をひとつ落として]
必要ないわけではなかった……なら。 ならばどうして、あなたは、鳴瀬先生を受け容れなかったんですか?
[真っ直ぐに見据える瞳は、常より少し厳しく、寂しいか]
(398) nordwolf 2011/05/29(Sun) 01時頃
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─ 保健室 ─
ぁ、従姉だったんですか……。 道理で……。
[道理で面影があると納得し、麦茶のグラスを机に置くと、丸椅子を出して掛けるように促しながら]
……はい、私も同伴させていただきました……。
その……何のお力にもなれず、申し訳ない…………。
[椅子から身を浮かせ、深く頭を下げる]
はい、そうですね……。 普段の耀君は、幼馴染みの友達2人といることが多かったように思えます。 控え目というか……少し、臆病なくらいで。
[それは多分、彼の過去や家庭事情からくるものだったのだろう。 あの日、あの疵を見て、それを確信した]
(404) nordwolf 2011/05/29(Sun) 01時半頃
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けれど、何て言えば良いんでしょうね……。
吹っ切れた、とでも言うべきでしょうか。 ほんの短い間だったかもしれませんが、彼、とても好い笑顔を浮かべていましたよ。
…………。
[耀は笑っていた。 前を向くことを覚えたのだろうと、自分は思った。
奏音の目から涙が零れているようならば、無言でティッシュの箱を差し出すだろう]
(405) nordwolf 2011/05/29(Sun) 01時半頃
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─ 喫茶 ハルシオン ─ >>409 [珀が近付いてきたことに気が付くと、ふっと、常の穏やかな表情に戻る。 切り替えの早さは、学生時代、自身が同性愛者であることに気付いた頃から身に付いてきた。 さまざまなものを、他者に悟られないために]
えぇ、言いませんよ。 そのかわり、私が今日ここに甲斐君と来たということも、内緒にしておいてくださいね?
[人差指を口元に添え、くすりと笑う。 グラスの水はまだ半分ほどしか減っていないが、折角なので給仕して貰おうか]
(435) nordwolf 2011/05/29(Sun) 10時半頃
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─ 喫茶 ハルシオン ─
[グラスに水が継ぎ足されると、残っていた氷がカラリと揺れて音を立てた。 まるで、当時の自分の心のように]
有難うございます。 あ、でしたら私も、彼と同じおすすめのものを。
[珀にそう言いながら、ちらりと甲斐の表情を見る。 成る程……と、口元が少しだけ微笑ましげに緩んだ。
そして、珀がテーブルの傍を離れたところで、改めて甲斐の紫の瞳を見つめ直し]
あの時、私は。 一瞬ですが、あなたに怒りを覚えました。
それは、鳴瀬先生があなたを好きだと言ったからではなく。 あなたが、鳴瀬先生を泣かせたからです。
もしあの時、あなたが鳴瀬先生の手を取っていてくれたなら、彼はあんなに思い詰めることもなく、好きだと言ったあなたとともに恋獄から抜け出ることが出来たのに……とね。
(448) nordwolf 2011/05/29(Sun) 12時頃
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[静かに、淡々と。 あの時の鳴瀬は、自分からすれば「失ってしまったもの」だったから]
……我が侭なものでしょう?
まぁ、結果的には……あなたに、感謝しなくてはいけないのかもしれませんが。
[自嘲して、冷めかけた紅茶をひといきに飲み干す]
(449) nordwolf 2011/05/29(Sun) 12時頃
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─ 保健室 ─ >>414 えぇ……。 救い、と言って良いものかどうかは、私には分かりませんが……。 けれどおそらく、彼は、あの土壇場でひとまわりもふたまわりも、精神的に成長したのだと思います。
[それだけに、逝ってしまったことを辛く悲しく思うけれど。 今更それを言ったところで、どうなるというものでもない]
……あぁ、はい。
[涙を拭う奏音に声をかけられ、俯きかけていた顔を上げる]
そうですね、他のお子さんと比べると……少し。
はい、それが私の役割ですから。 何かあった時には、どうぞ遠慮なく。
[そして、にこりと人の好い笑みを向けた]
(452) nordwolf 2011/05/29(Sun) 12時半頃
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─ 喫茶 ハルシオン ─
[何を言ったところで。 あの時の自分は、甲斐を失った鳴瀬の心の隙間に付け入った。 それがたとえ、鳴瀬に求められたものだったとしても]
筋違いですか? だとしたら……とりあえず、お互い様ということにしておきましょうか。
[手指で、空になったティーカップを弄ぶ。 口元には、やはり笑みを浮かべたままで]
私が、鳴瀬先生を幸せに───ですか?
さぁ、それはどうでしょう。 それは、鳴瀬先生本人に聞かないと、分からないかもしれませんよ。
けれど…………。
(468) nordwolf 2011/05/29(Sun) 14時頃
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[僅かな間。
浮かべる表情は、保健室で見せるそれよりも更に穏やかな。 愛おしいものを心の中に思い描いた時の表情]
けれど私は、幸せです。 士朗を愛することができて、とても……。
[やがて、珀が「オススメ」の品を運んできてくれるだろうか]
(469) nordwolf 2011/05/29(Sun) 14時頃
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─ 喫茶 ハルシオン ─
[甲斐は、鳴瀬は幸せだと思うと言った。 自分がどんな表情をしているかは分からなかったが……そう思えるような表情を浮かべられていたのなら、やはりそれは、鳴瀬に依るところが大きいのだろう]
人は一人じゃ生きられない───って言いますけど。 あれは、例えじゃなく、本当のことですねぇ。
[ふと甲斐に視線を向ければ、その表情は今まで見たことがないほどに柔らなものに思えて。 少し不思議に思っていると、そこに珀の姿が見えた]
あぁ……。
[納得したように頷いた]
(477) nordwolf 2011/05/29(Sun) 15時頃
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あぁ。 ありがとう御座います。
……?
[怪訝な表情を浮かべる珀に、僅かに首を傾げるが、カップとソーサーに描かれているものを見れば、少し気恥ずかしげな笑みを浮かべた。
カップを手にし、ダージリンの香りに目を細める。 珀がその場に留まっていることに関しては、甲斐がいるのだし、別に何の不思議もないと思っていたが───]
……甲斐君!?
[咳き込む甲斐に驚いて、危うく紅茶を零しそうになった。 そして、それが珀の悪戯だと知れば、自分のソーサーに載せられているクッキーを摘み上げ、じっと見て]
こ、これは大丈夫ですよね……?
[ちょっと不安げに、珀に訊ねた]
(480) nordwolf 2011/05/29(Sun) 15時半頃
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─ 喫茶 ハルシオン ─
[けれど珀は、答えを言わないままで仕事に戻ってしまった 。 クッキーに付いた赤い飾りをじっと見つめ、指先で軽く突っつき……。 大丈夫と確信したところで、それでもやはり少し躊躇いがちに口に運んだ]
ぁ……。
[普通のクッキーだった。 とても美味しかった。 そして改めて甲斐を見ると……なんでか、噴き出してしまった]
……ぁ、っと。 すみません。
[なおもクスクス笑いながら、紅茶を啜る。 あぁ、彼らもまた、良い時を刻んでいるようだ……]
(482) nordwolf 2011/05/29(Sun) 16時頃
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[ここに至るまでに失ったものは、少なくない。
けれど、そんな中で得たものだからこそ、大切にしたい。 なくしたくない]
今度、士朗と一緒に来てみましょうか……。
[さくり、残りのクッキーを囓りながら。 口の中だけで、そう楽しそうに呟いた**]
(483) nordwolf 2011/05/29(Sun) 16時頃
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─ 夏合宿・夜 ─
[もしかしたら、少し酔っているせいかもしれない。 鳴瀬の声が携帯越しに聞こえるだけで、身体中が熱くなる。 特に、雄の部分などは───]
聞かせてください、士朗の……声。
もっと、そう……。
教えて下さいよ。 なに、してるのか……ッは……ぁ。
[携帯を肩と頬の間に挟み、手指で自身の雄を擦る。 緩く目を閉じると、そこに、居ないはずの鳴瀬の姿が見えるようで……]
……ッ。 士ろ、ぅ……。
もう、イきそう……で…………。
(519) nordwolf 2011/05/29(Sun) 22時半頃
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……ぁ、く……。
───……っ!
[その時鳴瀬は、何と言ったのだろうか。 まるで、その声に呼応するかのように、びくりと触れて吐き出される精]
───……はぁっ……。
士朗、愛してますよ……。
[べたべたに汚れた己の掌を、うっとりとした表情で見つめながら。 携帯電話に唇を寄せた。
電波に乗せて、鳴瀬に口付けるように**]
(521) nordwolf 2011/05/29(Sun) 22時半頃
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