254 東京村U
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―東村山市・高校―
よっしゃよっしゃ。今日はラッキーかもしれないな。
[なんとかかんとか遅刻せずに登校できた一二三は教室へと歩いていく。 廊下では新宿駅のあたりにいた名物おじさんの話とか、下校中に変なアンケートをしていたカルト宗教みたいな人物がいたとか話しているが、遅刻せずに登校できた一二三にはそうなんだ、程度の興味にしか過ぎず。
一二三は教室のドアを開ける。]
(3) 2016/09/27(Tue) 00時半頃
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おっはようさん! ……って何だよ。人を天然記念物でも見るかのような目で見やがって。オレだってたまには遅刻しないで学校行くの。クソバイトももう辞めてきたし。むしろいいバイト先無いかね?
[クラスメートからの軽口の応酬に応える一二三。 そういえば安い時給の飲食店バイトは先週辞めてきた。 もうそろそろ新しいバイトを探さなくてはいけないな、とも感じつつある。出来れば都心に出られるバイトがいいな、とも。]
(7) 2016/09/27(Tue) 01時頃
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…………ん?
[自分の席に向かう最中、ノートパソコンで動画を見ている集団に目をやる。]
(8) 2016/09/27(Tue) 01時頃
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『人気アイドルグループのメンバー・S、自殺未遂はあのアイドルの死が原因か!?』
[大げさな言い回しで流れる動画。芸能レポーターの身振り手振りがまた、仰々しく。]
『昨年マンションの一室で自殺未遂を図ったアイドルグループのメンバー・S。 地方グループからは異例のセンター抜擢、東京の本体グループへの移籍、出したシングルは大ヒットと大躍進を遂げてきた彼女。そんな絶頂の最中突然の自殺未遂。その謎に迫ります。』
(10) 2016/09/27(Tue) 01時頃
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『いやでもそんな自殺なんかしなくてもいいのにね。 やっぱりあの事務所の彼の報道もあったからなのかね』
『元々は地方グループの目立たない子だったんですよね。 グループのイメージにそぐわないような純朴な子で。』
『男に入れ込んじゃったってヤツだ。まぁ恋愛禁止をうたってるからおおっぴらにも出来ないしね』
『契約違反もあって多額の違約金が発生しているとの噂で。雲隠れしちゃってるモンですから家族にも借金の請求が来てるとか。』
(14) 2016/09/27(Tue) 01時半頃
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『家族も大変だねー』
『どうやら家族も居づらくなったせいか既に地元を離れてしまいまして』
『本当アイドルも大変だ』
[大御所と芸能レポーターとのやり取りをクラスメートはクスクス笑いながら眺めている。]
『そんな災難続きの彼女ではありますが実は不吉な出来事が彼女に起きてまして。 彼女が歌番組に出ていたこのVTRをご覧くださ……』
(16) 2016/09/27(Tue) 01時半頃
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『――――――――ブツッ』
(17) 2016/09/27(Tue) 01時半頃
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あっ、悪ィ悪ィ。コケちゃいました。
[一二三は動画を見ていた女子に手を合わせて謝るポーズ。 ノートパソコンにつながれた電源はコンセントから離れていて。]
(18) 2016/09/27(Tue) 01時半頃
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うっせーな皆勤賞なんか狙ってねーし!!
[コンセントを抜いてしまったのを誤魔化すかのように茶化しに(>>15)大声を上げて反論する。]
やーれーばーでーきーるーんーでーすっ!!
[身を投げ出すかのように乱暴な姿勢で自分の席に着く。]
(19) 2016/09/27(Tue) 01時半頃
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くそったれが……
[微かに聞こえるか聞こえないかの声で呟く。
『この一年』で、『芸能レポーター』と『芸能界』が嫌いな体質にはなっていた。 『彼ら』はすぐに嗅ぎ付ける、触れてほしくない真実に。 靴も脱がず、我が物顔で踏み荒らしていく。 自分達の欲しい情報を得るためには。
『アイドルS』に関する情報は、あの動画で言われていたそのまんまであった。]
(21) 2016/09/27(Tue) 02時頃
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疲れた。寝る。
[一二三は自分の席で突っ伏して寝る体勢をとる。 授業は最悪補習さえ受ければなんとかなるだろう。そこが中堅公立高校の良さである。
『姉』は、未だ音信不通である。恋愛禁止の御触れが厳しいあのグループであのようなスキャンダルが出てしまったのは致命傷である。 そうでなくても、センター抜擢のプレッシャーでナイーブになっていることは多かった。緊張の糸がぷつりと切れてしまっても、不思議では無い。]
(24) 2016/09/27(Tue) 02時頃
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ふあーあ。眠いな。寝てていい?
[一二三の意識は少しづつまどろんでいく。 アルバイトももうすぐ、*探さないといけない*]
(26) 2016/09/27(Tue) 02時頃
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[『姉』は、どこにでもいるような人だった――――]
(42) 2016/09/27(Tue) 06時半頃
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『あたし、東京に行くことにしたから。』
[池袋で活動するアイドルグループ『IKB32』の地方版、とでもいったらいいのだろうか。『IZM32』のメンバーだった姉は、プロデューサーのたっての願いで、『IKB32』本体に移籍することとなった。]
(43) 2016/09/27(Tue) 06時半頃
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『お母さんの夢を叶える、チャンスだから。それにサクラコの為にも…………』
[『姉』はそう言って、口をつくんだ。
『姉』が歌う曲は、本来『姉』が歌う予定ではなく、藤田サクラコが歌う曲であった。]
(44) 2016/09/27(Tue) 06時半頃
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『――――ドスッ。』
[四年前、新宿区四谷。ビルの屋上から藤田サクラコは飛び降り、その短い生涯の幕を下ろした。
その前にも自殺未遂を図っていたというのは、マスコミの言ではあるが。藤田サクラコがグループの掟破りである恋愛で悩んでいたことが、原因とされている。]
(45) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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[一方、『姉』の躍進は著しいものであった。
藤田サクラコの追悼番組で見せた『親友の涙』も功を奏してか、シングルの売上げは久々のダブルミリオンに乗せた。 詞の内容も、藤田サクラコの恋愛を感じさせる内容だったせいか、話題性に関しては事欠かなかった。]
(46) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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[その影で、奇妙な噂がインターネットで流れるようになる――――]
(47) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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『…………す…………て。』
[『姉』がセンターを務めたその曲を歌番組で披露したところ、藤田サクラコの霊が映ったとそのテレビ局に問い合わせが殺到したのである。]
(48) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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『たす…………て…………』
[『姉』が歌っているその後方で、顔面血だらけで立っている女性の姿が映っている、との問い合わせだった。 奇しくも藤田サクラコがビルから飛び降りたときの服装で。
そして、間奏の途中でこう、声が聞こえたのである。]
(49) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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『た す け て』
(50) 2016/09/27(Tue) 07時頃
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――――――――!!!
(51) 2016/09/27(Tue) 07時半頃
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―東村山市・高校の教室―
[気づくとそこはいつもと変わらない教室。
一二三の目から一筋の涙が*伝い落ちた*]
(52) 2016/09/27(Tue) 08時頃
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[ぼんやり、と過ごしていた。]
(92) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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―昼過ぎ・清瀬市の高校―
[嫌な夢を、見た。
うっかり、涙を流してしまうなんて。 手首に消えない傷痕を残した、『姉』だったのか、それとも噂で流れたあのアイドルに恐怖を覚えたのか。
どちらにせよ、情けない話である。誰かに見られていないか、心配なくらいで。]
(93) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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リーは、みょんこみょんこ踊っているダンス部の練習風景を眺めている。チューチュートレイン。
2016/09/27(Tue) 21時半頃
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[――――物思いに耽っている次の瞬間、視界に何か入り込んできた。]
(94) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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ちょっ、ちょっ、なんだいきなり。まさかこれは敵襲か。
[そして、駅で置いてあるようなフリーペーパーが一二三の目の前にぽとり、と落ちた。]
(95) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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『なーに難しい顔してんだよガラでもない!』
[どうやらクラスメートが一二三をからかいにきたらしく。]
うるせーよばーか。オレはお前らと違って何時だって若き青年ウェルテルなの!
[クラスメートに天誅をくわえるため、フリーペーパーを手に取ろうとすると]
(96) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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ん、アルバイト急募……?
[丸めようとしたフリーペーパーに書かれていたのは。 高校生OKの清掃バイトの募集であった。]
(97) 2016/09/27(Tue) 21時半頃
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勤務地は赤坂か。時給は……えっ
[見て驚いた。飲食で働いていた時の倍以上はある。 これはヤバいヤツなんじゃないかと思いつつも連絡先を携帯に記憶させようとする。]
(98) 2016/09/27(Tue) 22時頃
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