82 謝肉祭の聖なる贄
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>>167>>168 [己の与えた余韻だけでなく、もっと深いものから出でた渇望に焦がされているような、 贄の若者のひそやかな囁き。 静かに耳を傾け、焦げ色の瞳の放つ強い輝きを見入ったように見詰め続けた。]
怒りはせぬ。
[低い呟き。]
……なるほど、東風は勁(つよ)い。 容易く死にはすまい。
[沈思する眼は、眼前の贄ではなく遠いどこかを望むよう。]
(2) 2012/03/16(Fri) 00時半頃
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行け。
[短く命じ、捉えていた腰を離す。 そのあいだも、褐色の若者の顔に何かを見出そうとするかの如く飽かず見入っていた。]
(3) 2012/03/16(Fri) 00時半頃
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[褐色が辞して後。 さっきまで褐色の指が触れていた銀灰がさらりと揺れる。 白い貌は硬く、何の感慨も映さぬが。 僅か伏せられ、銀灰が縁取り暫し面隠した。]
――娘。
[呼ばうは、今年の贄では唯一の女性である、豊かな髪の娘か。 祭壇に小さく蹲る娘に、りんと通る冷冽の声を投げた。]
(9) 2012/03/16(Fri) 01時頃
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>>12 [娘が頭を垂れれば、脇に手を差し入れて立たせ、先と同じように正面から双眸を見据える。]
そなた、名は何と言う。
[此度はそれ以上その身体に触れることはせず、娘を仔細に眺める。]
汝はあのように堂々と輩の前で我のものと宣ったのだ。 であれば、我が汝の名を知らぬ訳にはゆくまい。
(15) 2012/03/16(Fri) 01時頃
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[娘はちゃんと名を口にするだろうか。 その名を告げられれば、一度声にせず名を反復した後、]
クラリッサ。 汝は我のものなれば、我の許可なくして他のものにからだを開くことは許さぬ。 輩でもそれは同じ。 拒めぬ時は自死せよ。
それ以外であれば、同輩の命は我の命と同じと思うて従え。 我に恥をかかせるな。 我は汝の主ゆえ。
[屹度言い付く声は淡々と。**]
(18) 2012/03/16(Fri) 01時半頃
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>>30 [しとやかに諾(うべ)なう娘の頬に涙一筋。 瞳に揺らめき伝うものを見定めた後、先だってと同じく滴を舌先で舐め取る。]
汝はよく泣く。 干からびぬと良いが。
[舌先に乗せた滴を、丹念に味わうように唇を舐め]
恐れを隠す必要はない。 ただ恐れをも超えてひたすらに我を望め。 我が汝に求めるはそれのみ。
[約束を与えるようにそっと娘の唇に、温度の低い自らのそれを重ねた。]
(35) 2012/03/16(Fri) 09時頃
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[そうして、唇を離したあとも暫し鼻先が触れる距離で見詰め、娘の内にあるものを量っていたが]
さあ、ゆけ。 我の同胞を饗応せよ。 先の言葉、ゆめ忘れるな。
[小声で囁くと、すいと身を離し、娘に他の大神たちをもてなすようにと身振りで示した。**]
(36) 2012/03/16(Fri) 09時半頃
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[けなげに言いつけどおりに同胞のもとへ向かう娘の後姿を見送った後。>>41 銀灰の狼はおもむろに立ち上がった。
ゆらり、茶の輩とその膝に乗った灰青の輩に歩み寄り。 少し距離をとって傍らに立つと、絡み合う贄ふたりを一瞥した後、物憂げにふたりを見下ろした。]
(54) 2012/03/16(Fri) 16時頃
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>>55 [今気付いたと言うように、平伏する金髪の贄に視線を動かした。 あるかなきかの薄色であった双眸に、今はひといろ足されて深みを増したかのよう。 ひたと金髪の贄に据えられ、僅かに口の端を引く反応を引き出した。]
椅子になるのはどうであった。 辛かったか。
[命じた灰青が傍にいるにも拘らずの問い。 贄に本心など答えられよう筈もないのに、それに頓着した様子はない。]
(56) 2012/03/16(Fri) 17時頃
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>>59 [金髪の贄の言葉に、すいと唇の端を横に引く。 細めた目に、興がる色がさざなみとなって煌めきを与えた。]
旨いことを言う…… 汝の生は椅子となる事にあらず、と言いたいのか。
我らの姿を見ていたいと申したな。 であれば、誰を望む。
[言葉の使い方をひとつ間違えれば大神たちの不興を買い、また贄同士の妬心を煽る問いかけ。 先刻灰青の大神の命を撥ね付けた娘は幸い何の咎めも受けなかったが、此度もうまくいくとは限らず、金髪の若者はあの娘のように特定の大神の所有物と認められてはいない。 それを尋ねる真意は如何に。]
(60) 2012/03/16(Fri) 19時頃
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ヴェスパタインは、サイラスの真っ直ぐな瞳を真っ向から受け止め、そこに映るものを覗き込む。
2012/03/16(Fri) 19時半頃
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>>64 [ゆら、と揺らめくように身体を傾ける。]
理由を。 述べよ。それがあると申すなら。
[抑制の効いた、淡々とした声音ながら、しどけない艶が滲む。]
(67) 2012/03/16(Fri) 20時頃
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[肩から銀灰の長い髪が零れ落ち、白い貌の半面に垂れかかった。]
(68) 2012/03/16(Fri) 20時頃
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>>69
……聞きたければ汝を喰えと?
[ハ、と短い嗤いが洩れた。]
(70) 2012/03/16(Fri) 20時頃
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ヴェスパタインは、エリアスの小さな吐息を背に聞き。
2012/03/16(Fri) 20時半頃
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>>75
いや? 面白いものを見せて貰った。
[口の端の浮かんだ残酷な嗤いは消えることなく残り、]
――……
[ふと何かを思いついたか、 膝をついて控える贄の前に自らも腰を落とし、眼の高さを同じに揃えて向き合う。]
(76) 2012/03/16(Fri) 21時半頃
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[間近に迫れば、銀灰の髪から白い膚から、漂う鋭く甘い香気が、鈍いヒトの嗅覚でも感じられるほど強く薫っているのが分かる筈だ。 小さく贄の姿を映した瞳には銀のさざなみが立ち、その底に熱を秘めていた。
不意に。 両手をさし伸ばし、贄の纏った衣の下へ差し入れて、その素肌をまさぐろうとした。 そうして、唇を開き、贄のそれに重ね――]
(77) 2012/03/16(Fri) 21時半頃
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>>81 [指先をゆっくり丹念に、筋肉の隆起に添って滑らせる。 農作業で鍛えた身体、それは強靭さを感じさせる弾力を備えていたろう。
瞳は閉じず、細まる青を臨み、そこに浮かんだ悦を確認しさざめいた。 仰け反った金の頭を捕らえて深く唇重ね、、贄の舌や口蓋の感触、あまい唾液を味わおうと]
(83) 2012/03/16(Fri) 22時頃
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>>85 [一度唇を離すと、贄の口から蕩けた呻きが洩れる。 ゆると濡れた青を心地よく感じ、贄の開いた口の端から零れた唾液を舐め取る。 二度三度と唇触れたのち、今度はより深く貪ろうと口を大きく開き掛けたところで、
振り向いて、呻くように、或いは威嚇するように喉を鳴らす白金を見上げた。]
(89) 2012/03/16(Fri) 22時半頃
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ヴェスパタインは、ふと笑い、退いた。
2012/03/16(Fri) 22時半頃
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[ゆっくりと後ろに下がり、白金と、金の髪の贄から離れる。 今ふたりはそれに気を払う余裕はあるまいと思われた。
ふと、固唾を呑んでこちらを見守る娘の姿が目に入った。>>95 小さく笑みを見せ、大儀そうに立ち上がった。]
(100) 2012/03/16(Fri) 23時頃
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>>107 [ゆらり立ち上がると、独り取り残された娘を手招く。 唇に張り付いた笑みは消えず。]
(109) 2012/03/16(Fri) 23時半頃
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>>111 [招きに応じ駆けつけた娘を前に、
暫し瞬(まじろ)ぎもせず見詰める。 そして、出し抜けに娘を抱き上げると、その胸に顔を埋めた。]
(117) 2012/03/17(Sat) 00時頃
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>>122 [身動ぎもせずやわらかい肉の狭間に顔を埋めて。 左胸に耳を当てているのは、娘の心音を聞いているのだろうか。
娘がそっと抱き返せば、抱き締める腕にほんの少し力が加わった。 娘を抱き潰さぬ程度に力を加減しているのか、少しきつく感じる程度であろう。 その大神は、呼吸を整えるかの如く、ゆっくりと肩を上下させている。]
(129) 2012/03/17(Sat) 00時半頃
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