78 光環の戦溟 ― bloody searoar wars ―
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あぁ、確かに面倒くさい。
私とて、ここ千年の時間は、千万年の時間を縮めたかの様に余りにも濃密と感じるのだから。
――今を往き、世界の再生《ヨアケ》を待たずに散りゆく『男の華』。
確かに不器用だな。
私の様な、概念の義務感から生じる意志とは対極の不器用だ。
未だ永劫に続く未来。
その一歩先をも見据えぬ生き方など理解できん。
……昔なら。そう言ったろうが。
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――王都――
『いってェ、な! なァにすんだニワトリ女! ってェ、あれ?』
[黒龍の目覚めには、しばらくかかっただろう。痺れ切らされれば、踏みつけは強くなったかもしれない。 やがてがばと起き上がって、叫んだのだが。 望みどおり空高く舞っていたはずの己が地に伏し、ついでにアリィに蹴られ踏まれとくれば、目を白黒した。]
(60) 2012/02/13(Mon) 21時頃
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『……お、おゥ』
[城に戻る、と促されれば、ふらつきながらもアリィに従った。 長身に加え、全身を鎧鱗に包まれ、背に龍翼広げた姿はよく目を引いた。]
『つってもよ、あいつが、旦那を――』
[言いかけて、止まる。 カトリーナにも聞こえているのだろうそれを、今ここで口に出来なかった。 それに、言ってしまえば自分も認めてしまうような、気が、して。]
(61) 2012/02/13(Mon) 21時頃
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[黒龍の墜落のメカニズムは至って簡単。 身体と魂の相違によるコントロール不良と、ウルヴェレアによる"解放"の影響だ。 ナシートの魂はケヴィンの魂と絡み合い一つの身体に入っていた。 片方が死《崩壊》して、もう片方のために身体が残る、というその意識こそが甘さである。 たとえるなら、ロープの結び目を切るようなもの。 絡まったロープの結び目を切り落としても、長い一本のロープには戻らない。二本のばらばらのロープになる。 絡み合った魂のつなぎ目が死《崩壊》して、単独になった魂は今、ケヴィンという存在自体から"解放"されようとしている。 この肉体は"ケヴィン"のものだ。"ナシート"ではいつか、遅かれ早かれ、限界が来る。]
(62) 2012/02/13(Mon) 21時頃
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[まだ、それをこの龍が、気づくに至っていないだけ。]
(63) 2012/02/13(Mon) 21時頃
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[龍は、それからどこぞへ行きたいとはあまり言わなかった。 城に逗留し、中庭、屋根の上、その他諸々城内の敷地で、ただ一心にこの身体を己のものにしようと機動の修練をしていた。
甲斐あってか、墜落の日より先はひどい制御不能に陥ることもなく、全身を龍の鱗でぬらと光らせていた外見も、硬い鱗の鎧を身に纏ったような、黒騎士の姿に整えた。 脱ぐこと叶わぬ鎧のせいで、寝床の確保には困ったかもしれないが。 馬小屋を宛てがわれても構わず喜んで受け入れたろう。
空を駆けるのもずいぶんに慣れた。 翼はやはり良いものだと、時折無闇に飛び回ってはけらけらと笑っている姿も見受けられたかもしれない。
そして、一週間後。]
(65) 2012/02/13(Mon) 21時半頃
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《黒 龍 騎 士》 ――――激誕―――― ドンケルドラグナー
(66) 2012/02/13(Mon) 21時半頃
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テメェ、ここでの用が済んだらさっさと「例の場所」行きな。
俺は決してあいつらに通り道なんて譲らねェ。
だが、万一。万一だ。俺が抜かれるようなことになったら
―……あそこ《EDEN》が最後の決戦の場所だろうな。
――解っている。
"あの場所"こそが、この星《セカイ》を未だ続けさせる元凶。
破壊しないならば。
"あの場所"へと何者も通さないのみ。
……私に限って。
その様な事はなかろうが。
―それは、私が破れる奇跡《カ=オス》が起きた時も又同じことだ。
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[ばさり。 風をはらんだ羽音を立てながら、竜騎士はセヴィアルファ城付近を滞空していた。 その落ち着かない様子に、征華隊として集まった人々は何を思うだろうか。 実際、この竜騎士も己が何故こんなにも、こんなにもざわめいているのか、感覚でしかわからぬ。
だが、空中からは世界がよく見えた。]
『――来る!!』
[象(>>64)だ。土煙上げ、王都に向かい来る。 一度に急降下し、向かうのは城のバルコニー。]
(90) 2012/02/13(Mon) 23時半頃
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――セヴィアルファ城VIPルーム2――
[バルコニーから直接、レティーシャの座す部屋に向かう。 窓から直で入るのが、一番早い。翼があるとはなんと便利なことだろう。 それは、丁度兵士(>>83)の来るタイミングと重なったか。]
『敵襲だ! 王都に向かってる! 勇者サマ、出番だぜェ!!』
[声を張れば、扉の外にも聞こえるだろうか。]
(94) 2012/02/13(Mon) 23時半頃
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ここは俺ら《オリエンタルエクスプレス》だけで十分だぜェ。
―………ヘタに手出しするなよ?巻き込むぜ。
何。少し遊ぶだけさ。
あわよくば、勇者《セイクリッド・レティーシャ》を死に還せばそちらも楽になるだろう?
そちらには手出しはしない。
存分に戦うと良いさ
あァ、俺も木端にゃまるで興味がねェ。
―……大物でも喰わなきゃ収まらねェな。
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『了解、勇者サマァ! 全身全霊ブチ込んでくるぜェ!』
[命(>>115)を受ければ、くるぅりと踵を返し、セヴィアルファ城の上空まで飛び上がる。 空中で背に負った神鉄《アダマース》の剣を抜き去って、征華隊の面々に叫んだ。]
『行くぞォ、お前らァ! 命惜しくねェヤツは、俺っちと来いやァ!』
(119) 2012/02/14(Tue) 01時頃
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[象騎手たちは、柘榴《パイナップル》をひたすらに王都外壁に叩きつけている。 辺りから火の手が上がり、逃げ惑う人々の声が聞こえた。]
『……ヘッ。何だよ、どうにも雑魚ばーっかじゃねェか……物足りねェ』
[笑う。が、徐々にその表情には覇気と余裕が失せ始めていた。 この竜騎士自身も気づいている。気づかざるを得なかった。 龍気は、解放されて強まるどころか、どんどんと拡散、それこそ"解放"されている。 わかる。隊長《アタマ》とやりあっても、足止めすらできない。]
(129) 2012/02/14(Tue) 01時頃
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『お前らなら、一歩足りともこの門くぐらせずに止めてやるぜェェ!!』
[ならば。 雑兵と言えど、確実に止められるものを数多く止めるが今の己の仕事だった。 天に高く神鉄《アダマース》を掲げれば、士気高まったかのように征華隊《仲間》の声が返る。
翼羽ばたき、舞い飛ぶように群集に斬り込んでいく。]
(130) 2012/02/14(Tue) 01時頃
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[戦いの中、黒龍の鎧纏う騎士はきっと、笑みを浮かべていただろう。 脂汗落とし、ついには羽ばたく力すら失い、大地を踏みしめることになっても。 戦うことが、生きることがただ、楽しかった。
振るう剣は星明りを弾いて銀に照った。 人の命の赤を散らして、しかし神鉄の輝き失わず、一閃。
群衆の投擲は止んでいた。 もう弾を投げる役目のものがいない。 もう弾を打ち出すカタパルトがない。 群衆の攻撃は止んでいた。 もう剣を薙ぐ力のあるものがいない。 もう拳を叩く力のあるものがいない。]
(139) 2012/02/14(Tue) 01時頃
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[征華の防衛は終わっていた。 もう、先頭を行く黒の竜騎士もいない。]
(141) 2012/02/14(Tue) 01時頃
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……どうした?
お前なら、こうするだろう?
[裡に沈む少年へと微か愉しそうに語り掛ける>>+439
ただし。少年は、そういう物が大好きでも。
本当に手を出す甲斐性までは無かった事までは量り違えていたが]
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[最後には、身につけていた黒の鎧すら、ぼろぼろと崩れ落ちて。 まだ新しい生成のシャツに、古い革鎧だけをつけた、浅黒い肌の大柄な男が一人、倒れただけだった。
神鉄《アダマース》の大剣ひとつだけ遺して、男は月へ還る*]
(145) 2012/02/14(Tue) 01時半頃
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ばかとはなんだ。
青少年の純粋な欲望だろう?
[少年の絶叫>>+448には言葉少なに応え。
奪うイノチを冷徹に見据え始める]
……どうせ零に還るイノチだ。
ここで、障害はひとつでも摘もうさ
あァ、咲いたぜ。俺は十分咲いた―……そして散るんだァ…。
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