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[
知った所で大人しく祓われる訳も無く、争いは避けられようも無かったろうが]
、っやぁ!
[腕で刃を受け、男の狙いを逸らし構えを崩す。
即座、痛みに増幅した怒りのまま男を弾き飛ばそうと尾を振り上げる。
…、!?
[
例えるなら男を包む繭のようなその風が、尾の勢いを僅か削ぐ。
波打ち際で留まった男の息整える様に今は好機かと思うが、こちらも右腕をざっくりといかれている。
ぎりと歯を噛んで睨み付けたところに聞こえた男の言葉に、微か眉を寄せた]
…あやかし、なんか。
たべて、ない。
[芙蓉に会うまで自分以外の妖がいることも知らなかったから。
つい先程まで食べていた烏も妖だと自覚は無かった]
[芙蓉に会うまで自分以外の妖がいることも知らなかったから。
つい先程まで食べていた烏も妖だと自覚は無かった]
[何から何まで男の言葉の意味が解らず、募る苛立ちが冷静さを奪う。
右腕、傷と呼ぶには生温い斬り口から留まらぬ血、それを止めることすら思い至らない。
むしろ牙を立てて、更に溢れ出た紅見る間に蛇の形を形作り]
……たべるなら、
おまえだ。
[右腕を振るうと同時、十ほどの朱い蛇が男へと向かい牙を剥いた**]
[ふぅー、と長く息を吐く。
痛みは残るものの、このままじっとしているわけにも行かない]
喰ろうとったわぃ。
わしが仕掛けぇ前に喰ろうとった烏、ありゃあ妖じゃ。
[否定する相手
妖を喰らった自覚も無いあまりの知識の欠如に、訝しむように瞳が細まった]
(喰ろうてたもんが妖じゃあ言うんも気付いとらんのけぇ?
おかしなやっちゃな)
[あまりにも幼い印象を受け、知れず小さく唸る。
幼いからと言って見逃す理由にはならないが、不思議な違和感は残った。
そんな思考の間にも相手は次手として己の右腕に牙を立て、宣を余四朗に投げてきた
やれぇもんならやってみぃ。
[余四朗を喰らう。その宣によりこの妖の危険度を高く見る。
ここで祓うべきと言う意識が更に高まった]
[妖の腕が振られ、その血によって作られた朱い蛇が迫り来る]
血ぃ操るんけぇ!
[砂地に突き刺した太刀を抜き、尖兵として迫る二匹を下からの逆袈裟で斬り払った。
左上へと流した太刀を円を描くようにして切先を左へと流し、続けざまに飛びかかってくる四匹を薙ぎ払おうとした刹那]
……───!?
[ふわりと漂う甘い芳香
一閃に備え腹に力を込める際、余四朗はその香りを大きく吸い込んでしまった。
途端、視界に居た四匹の朱蛇が倍の数に分裂する]
っ、らぁあっ!
[構わず太刀を薙いだものの、手応えがあったのはたったの二つ。
仕留め損ねた二匹は刃を擦り抜けて余四朗の右肩と左二の腕へと噛み付いた]
っっ…!
[悲鳴こそ上げなかったものの、鋭い牙による激痛は身を走る。
未だ甘い香りも取り巻いて、余四朗の視界は二重に揺れるようになっていた]
っんだ、こりゃ……!
[視界が揺れるせいで足も覚束無い。
ふらつく間にも残りの朱蛇が余四朗へと迫っていて、それもまた倍の数と認識しながら太刀を握り直そうとした。
それでも対処は遅れ、朱蛇の牙が余四朗の喉元へと迫る]
《─────轟!!》
[朱蛇が余四朗の喉を喰い千切らんとした時。
余四朗に添っていた風が取り巻くものを吹き飛ばさんと荒れた。
荒れたのは数瞬ではあったが、それにより余四朗を取り巻いていた香りが薄くなる]
っは、……だん、な
あんが、てぇ…!
[声を届けるものだと聞いていたが、護りの効果も僅かながらにあったらしい。
接近していた朱蛇も軌道を逸らされ、余四朗の後方へと通り抜けていた]
…くっそ、他ん妖ん干渉されとぉか。
[まだ少し頭がくらりとする。
それでも先程よりは改善し、対峙している妖が二人に見えることはなかった]
ぅらっ!!
[右肩と左腕に噛み付いた朱蛇を毟り取り、血を流しながらそれらを相手へと投げつける。
直後、太刀を右上へと構え、もう一度雷刃を相手へと放った*]
うそ、つき。
あれは、とりだ。
あやかしじゃ、ない。
[
だがここまでの擦違いが、彼の言葉を嘘だと切り捨てる。
沙耶と約束をしておいて居なくなってしまった村の人間への不満も相まって、思考は短絡なものに代わり]
─── いけ。
[自ら広げた傷口から流す血を蛇に変えて、男へと嗾ける。
衝撃を受ければ崩れるそれは、太刀に一掃されて地に血溜まりを作りあげるだけに終わるはず、だったが]
こ、れ…?
[
沙耶にはただ良き香りでしかないが、その香りに気付いた前後から
沙耶自身の牙も突立ててやろうとしゅるり、尾を地に滑らせて距離を縮めたその、刹那]
……、っ…!?
[
それどころか、血を流し過ぎた身体は煽る風に耐え切れず平衡を失い体勢を崩す。
自分の蛇が弾き飛ばされただけでなく鼻を擽っていた香りも薄れたと気付いたのは、分身を投げ返されたと同時で]
…っ、あ、あああ…!!!
[再度放たれた雷、避けようも無く撃ち抜かれて痛みと痺れに叫びを上げる。
耐え切れぬ苦痛にのたうち左右乱雑に振り回す尾は、男の接近を防ぐことが出来るか**]
【人】 座敷守 亀吉─ 神社 → 岬へ続く道 ─ (74) 2015/02/11(Wed) 22時半頃 |
[聞く耳持たぬ様子
祓えば良いだけのこと──と思っていたのだが。
この妖、思いの外手強い]
[放った雷刃は妖に届いたものの、追撃へと移行するには難しかった。
未だ視界が揺れることもさることながら、狙いが定まらないながらに撓り振られる妖の尾が余四朗を近付けない]
ほぃなぁ……こげんしたるぁ!
[狙いを振り回される妖の尾へと変え、上段に構えた太刀を振り下ろす*]
[痛い、いたい、イタイ。
ただでさえ雷は脅威、加えて動き鈍らぬようにと纏わせた湯気が伝導の役割果たし。
余四朗の放った以上痛みを受けた沙耶は、苦しさに身を捩らせる。
きぃ、あ、あああああ!!!!
[周りに気を配る余裕などある訳が無い。
当然、振り下ろされた太刀を避ける事など出来もせず。
刃を受けた尾、脱皮を済ませたばかりの柔い皮が簡単に斬り裂かれる。
更なる痛みに叫びはより高く、大きなものに変わり。
のた打ちは、そのまま害加える相手を振り払う動きへと変わった*]
[振り下ろした太刀は弾かれること無く妖の尾
その手応えは柔く、妖の幼さを際立たせるよう]
っ、
[斬り裂かれて上がる、高く大きな悲鳴。
耳がきぃん、と鳴るようだった。
それに顔を顰めた刹那、尾の動きが変わり、余四朗を弾かんとうねる]
ぐあ!
[予測が出来ぬ動きに対処しきれず、余四朗は左腕と胴を同時に打たれた。
打撃に朱蛇に喰らわれた傷から血が噴出すように飛び散り、辺りを朱に染める。
跳ね飛ばされた先には大岩が一つ。
右側面も打ちつけ、右肩から更に血が散った]
──くっそぁ……
[悪態が口から零れ出る。
打ち付けられた大岩に身を預けるようにしながら、体の向きだけは妖へと直して。
力が入りにくくなってきた腕に力を込めて太刀を握る]
…おらぁ、どげんした。
わしぃ喰ろうたるんじゃあねぇんけぇ?
[目を細め妖を見据えながら、挑発するように言って口端を持ち上げた*]
[右腕だけでなく、尾からも血が溢れ、流れ出る。
鋭い痛みに反射で跳ねた動きが男を打ちつけ、朱が地と空に弧を描く。
…あ、ああ、あ…
[痛みは変わらずあるものの、流れ出る血が徐々に麻痺させていく。
このまま放っておけば失血で動けなくなるも時間の問題、だが男が放っておいてくれる訳もなく。
沙耶もまた、男を放って逃げることなど出来なくなっていた]
[
喰うとは言った、確かに言った。けれど沙耶は、約束をした。
人は食わないと、約束をした相手はいなくなってしまった。沙耶を置いて。
約束したのに、沙耶はずっと、約束を守っていたのに]
やく、そく。
さきに、やぶった。
にんげん、なんか。
しんじなきゃ、よかった。
[対峙している男は村の者じゃない。
それは解っていたはずなのに、元より幼く狭い視野は怒りで更に狭まる]
きが、かわった。
[尾から流す血を硬質に変えながら、男を殺意篭った瞳で見つめ]
おまえ、なんか。
くっても、やるもんか。
[ただ殺すだけ、と。
人すべてへの憎しみを男の頭めがけ、槍のようになった尾の切っ先を鋭く突き立てた*]
……約束?
[たどたどしい言葉
妖が言う言葉から察するに、この妖は人間と何らかの約束をしたらしい。
誰かと関わりを持っていたことは知れたが、それもまた状況を推測するには情報が足りない。
ふーっ、と呼吸を整えている間に相手の気に殺意が宿り、妖の尾の形状がやや変化していった]
はん、喰われぇもやられぇも御免被るき。
[負ける心算などあるはずも無い。
吐き捨てて、柔い手応えがあったはずの妖の尾が余四朗の頭へと迫る
[背には岩、下がることは出来ない。
故に余四朗は敢えて、前方へと足を踏み出した。
身を屈め、鋭い尾先に頬を裂かれながらも速度は落とさず、妖の懐に飛び込まんとする。
狙うのは太刀による一撃ではなく、より近接しての腹部への蹴り付け*]
【人】 座敷守 亀吉 ……紫黒。 (90) 2015/02/11(Wed) 23時半頃 |
[
純粋な殺意と変じた怒りのまま、男の頭を刺し貫かんと血の槍と化した尾が鋭く走る。
岩に阻まれ逃げ場が無い以上、男の命はこれで奪える───
その想定が招いた油断も、恐らくは理由の一つ]
───っ、
[顔のど真ん中を穿つはずだった尾は、頬を掠ったのみ。
仕留め損ねたと理解すると同時、腹部に走った衝撃が身体を浮かせた。
痛みと衝撃、その両方に息が詰まり後方へと身体が崩れる]
[尾の長さもあり、弾き飛ばされるというよりも倒れると言った方が正しいか。
それでも沙耶にとっては致命的に大きな隙を作ったと、冷静な本能が悟る。
即座過ぎるのは、芙蓉の言葉。
実の所、沙耶は祓うという言葉の意味を知らない。
今も正しい意味は解らない。
ただ解るのは、芙蓉が警戒を隠さなかったこと。
それと]
(ここで、さやが、はらわれた、ら)
(つぎ、は── ふよう、だ)
[沙耶を祓うという男を此処で止められなかったら、芙蓉が危ないということ]
───…さ、せ…ない
[腹を蹴られた痛みに、息を凝らしながら。
それでも、初めて知った”おなかま”を守ろうと。
自分自身も援護を受けていたことに気付かぬまま、しゅるり。
眼前の男を締め上げようと尾を波立たせた*]
[蹴りは狙い通りに妖へと届いた
倒れ込む様子に一息ついて、頬から垂れる血を手の甲で拭い取る]
そろそろ、大人しゅう…──!?
[祓われろ、と。
言おうとした言葉は近付こうと動かした足がびくともしないことに驚き止まった。
視線をやれば、余四朗の足を伝って妖の尾が這い上がり、胴まで締め付けようと蠢いている]
ちぃっ!!
[太刀を向けようにも己が身に巻きつくために刃を揮い難い。
ミシミシと、骨をも砕きそうな圧迫が余四朗の身を襲った]
こ、んの……!
[肺腑の中まで押し出されそうな感覚に呼吸がし辛くなる。
腕から力が抜けそうだったが、離さず握っていた太刀を切先が下に向くようにして握った]
……、っ!
[声を出せぬまま、妖の尾目掛けて太刀を振り下ろし身の解放を狙う。
ただ、その切先は揺れ、どこか覚束無いものでもあった*]
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