25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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[聞こえた言葉に、こくり、と頷く]
……けれど、あの病は…いえ、それ故か
繁殖を欲する病
例え知っていても、種の本能に従い
孕み、孕ませようとする…
[それが、満月の晩に発症し、人殺しと化すとする。
そうしないためには、
その人物を存在しないことにするか、
それとも、存在しても害のない者にするか。]
――……
………どうか、されましたか……?
[普段はいらないことまで話す刷衛の沈黙に
通信機越し、緩く首をかしげた]
ああ、そうだな。
[男は頷いて、そして、考える。
なぜ、男が管理センターにいるのか。
答えはそう難しくない。
なぜなら、男は、そういう出生を持って生まれ、
そうならぬよう、虚勢(管理)されたものだからだ。]
うんにゃ。なんでもないさ。
[それでも、全くそういう欲がないわけではないが、
それは従来のものをかなり希釈して衝動だろう。
ゆえに、悩むこともあったが、
男は幸せなことに、己の天職を見つけ、今に至る。]
……なら、いいのですが……
[宴直前の連絡まで相棒の名さえ知らなかった青年は
当然相棒の出生と管理処理までは知らされていない。
……復讐と獣への嫌悪から事前に相棒を知って、
何らかの切欠でそれらを知ること内容にと言う
センター側の配慮だったのかどうか……
何も知らない青年はただ、言われた言葉に
不思議そうにしながらもそう返した]
いや、俺の顔はあらためて、酷いよなぁって話だ。
[今回の相棒が徹底して人狼病を憎み、それゆえの教鞭な姿勢をすること、やはり知ってはいなかった。
チャールズのことは知ってはいたが、その花までは。
なぜ、この組み合わせをセンターが選んだかは知らぬ。
されど、男もわかっている。
虚勢、不妊という処置をとれるのは、本当に幼少時のみ。覚醒し、その行いをしてしまった者は、病気といえども罪だ。
その罰はたいていの場合、処刑となる。]
…先日も思ったのですが
随分顔、気にされますよね……
[突然顔の話しになって、ああ、誤魔化されたなと
感じながらも、言いたくないのならしょうがないと
顔を気にすることと、誤魔化されたこと
二つに溜息一つ]
……そちらの様子はどうでしょうか?
人手が必要なら向かいます
ああ、顔か。
[とそのとき、すんごく深いため息をつかれた。
つかれたんで、ふと、考える。]
知ってるか?
管理センターのスタッフで、
たまにひでぇ顔の奴がいる。
いや、顔だけじゃなく、体格が異様に太っていたり、痩せていたり。
異常な鮫肌だったり、骨格が異様に太かったり。
だからといってそれが病気なわけではない。
ああ、あれだ。センター副長のギリアン
あいつも片目がないしな。
[そんなヒント。
そう、虚勢、不妊処理をさせたものはバランスが一時崩れる。
結果、決して美形とはいえない容姿や身体つき、衰弱した部分が出るものもいる。]
……?ええ、存じておりますが…
[むしろ、センターに所属しているからこそ
色んな顔があり、人がいるのを見ているからこそ
同じようにセンター所属の刷衛がきにすることに
首を傾げていたこともあり頷く]
それぞれの、個性、ですよね?
センターには……検査を含め足を運んでおりますので
ギリアン殿も良く存じ上げております。
ロミオ研究医殿も、あれで40代だとか伺っておりますし
[どうして突然そんなことを話しはじめたのか
見当もつかず、ぽかん、と声を返した]
個性にしては、並ぶと、化け物展覧会だと思ったことはないか?
というか、俺は実はヨアヒムを殺すな、と言った。
それは、もしかすると、奴が孕んでいる可能性もみたからだ。
本人は罪を犯しているが、
もし、そこに繁殖の結果がでたとして、
その子は罪を持っていると思うか?
……化け物博覧会などと……ギリアン殿に
頭突きされて、ザック殿のメスで切り裂かれますよ?
[何と言う言い草だと、叱るような声を出して
ただ、続く言葉には……まるまるとした豚狼
確かにその可能性はなくはないと]
…………
[理屈では、否だ。
けれど、感情がそうと答えることを許せなくて
青年は言葉が返せない]
[沈黙に言葉を続ける。]
お前のやり方は、狼たるものを殺すためなら、そこら殲滅タイプだったかもしれん。
実際、酷い事態であるならば、それは仕方ないこととして認められているしな。
だが、すべてが死なずとも、狼ではない者が狼の子を孕むケース、逆に狼がそうでないものの子を孕むケースは経験しているだろう?
その後彼らがどうなってるかは?
[知っているか?ときいてから、]
[無言でいたならば……言葉が続けられる。
……青年は何か、凄くいやな予感がして
動悸が激しくなりつつあるのを自覚する。]
……しり、ません………
[かろうじて、それだけ絞りだした。
これ以上、聞いてはいけない
そう思いながらも手が強張って
通信機器を外すことさえままならない]
そうか。知らないか。
そう、知れば、また心痛めるものもいるしな。
今回、お前と俺を組ませたのは、そろそろお前も知っておくべきだからだろう。
復讐として、どれほど殺した?
それでも、まだ、終わらぬのだろう?
だったら、知れ。
そういう奴等は、管理センターで管理されている。
人狼病から起きる繁殖行動を抑えるために、虚勢や不妊と言った手術をするんだ。
結果、害の及ぶ人間ではなくなる、ただし、副作用として、身体のバランスが崩れ、さまざまな病気もちになたり、身体や顔のどこかを欠損していたりする。
共通するのは酷い顔だ。
――……それは
[耳を塞ぎたい。けれどできない。
出来ないままに言葉が流し込まれて。
言葉の意味を理解したくないと、一度強く頭をふった]
―――………っ
[去勢と不妊][それ以外は獣の遺伝子を持つ]
[100年前はそうではなく排除だったではないか]
[―――………どうして]
[言葉は紡げず、ただ、通信機の先で
青ざめた青年は床を凝視してた]
……腹が空いた
[種植え付けた身が
本能的に血肉を求めている。
きょろきょろと
獲物を探すような視線]
――……。
[通信の声があきらかに動揺している。
なので、あえて、黙っていたが。]
ロビンが可能性が高いのだよな。
ならば、俺はロビンに投票しよう。
ロビンがもしそうなら、セシルは繁殖の繭にされたかもしれぬな。
[仕事だと割り切る形で話をする。]
…………
[耳に声が届いて。身を竦ませ耳を塞ぐ]
[仕事の話に移っても動悸は治まらず
なぜなら今話している は 。
そう ならば殺さなければ。
けれど、 は 。]
[返事が返ってこない。
やはり早かったのかと悟った。]
一つ、付け加えよう。
お前の主だったチャールズ。
彼は命を大事にした。
もちろん、この管理についても、知っている。
[だから、どうだったとまでは云わない。]
あの人のことを語るな!!
………が……っ け……が………
…………………っ
[咄嗟に怒鳴る。けれど続く言葉
通信先を指す言葉。青年は声が出ない]
[言えない?][言いたくない?]
…………っ
[2〜3度頭を強く振って。
振るたびに畳みに、袴に雫が落ちる]
そうか。悪かった。
[呂律もままならぬ様子に、さすがにもう名にも言えず。]
[そのまま、通信は切る。]
[思うのは、イアンの心が狼にならねばよい、と。]
…………っ
[言葉が耳に脳に届くのを拒否するように
何度も何度も頭を振る。]
[肯定しても、否定しても何かが壊れる]
[そして、どちらをと言う取捨選択が出てること
それ自体もまた何かを壊していく。]
[だから、只ひたすら外界から逃避した]
[通信先の願いも知らぬまま……]
……すまぬ
[短い謝罪。
若し己が喰らうとすれば
法泉以外に無い。
短な間、毒孕む花は随分変わった
他の者が喰らうなら、其れを止めはしないけれど]
今宵研ぎ師喰らうは、二人で。
私はもう
喰らう相手はひとつでいい**
[己が選んで喰らうのは、再び躰を重ねた夜に。
幼き毒花が法師を喰らうとしても、力添えはすれども自ら喰おうとする気は無いか。]
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[夢現 ゆめうつつ 聞こえる声は数多あれど 微笑む先は冬の色 腹に植えられた種の所為か 桜の花の歪んだ念いか 願わくば彼の意思のままに 紙に記すその名に 同じく桜が在ろうとするか そんな夢の中から まどろみ見た、景色]
………ある、けるよ。
[運ぼうと謂う刷衛と 可憐な可憐な、細い花 互いを見て]
(823) 2010/08/07(Sat) 01時頃
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