256 【突発RP村】胡蝶の夢
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「むかぁしむかし、
これはこの修道院であった本当のお話」
眠りにつく前にきいたあの声は、
あの日アップルパイを焼いた修道女のそれと同じ響き。
「私たちが此処に居たことを思い出して。
あなたたちが幸せに暮らす今を教えて」
御伽噺の終わりに、そんな呟きを落として、
家族に向けると同じ笑顔を眠りゆくものへとおくる。
あなたたちが目覚める頃、
懐かしい修道女の姿は其処にはなかった。**
(#0) 2016/11/18(Fri) 01時半頃
[数々の村で、人を食べては捜査をして、証拠を握り潰し、あるいは別の犯人を仕立て上げ。
仲間と共に村人を食いつくしたこともあった。
人は人の死を一大事だと叫びながら、牛を食い鶏を絞め鹿を撃つ。
ジェフに理解できなかったのは、たまに本当に、自分たちがしたのではない殺人のあること。
食べるためでもなく、ただただ感情のままに。
何かを命を奪って平気な顔で。
むしろ自慢げになる者すらいた。
殺すために殺すくせに、牛や鶏や鹿を悼まないくせに。
なぜ人狼を悪とし、憎むのか。
自分たちにとって人は、君たちの牛や鶏や鹿なのに。]
[その時だった。
ふつりと糸が途切れるように、
大切なものが途絶えたのを、俺は確かに感じた。
それは声ならぬ声で繋がる同胞であったからなのか、
理の通じない霊魂だからなのか。
貴男に迷惑をかけた未熟な若い狼には、分からなかったけれど。]
ジェフ……!!
[今や赤い囁きを耳にすることが出来た彼女にも、
命を絶やしてしまった貴男にも届かない声で。
俺は、確かに貴男の名を呼んだ。]
[ヒトの乙女の腕で涙を流した俺は
その瞬間だけは確かに
貴男の仲間であった、一匹の人狼として。
……貴男の死を嘆き、哀しんだのだ。]
(……よかった。)
[その足で立ち、息を吸い、誰かと会話する生者として当たり前の姿。
それが嬉しく感じるのです。心の奥で俺が、笑うのです。]
[——その次のページは、赤黒い何かに染まっていて、
辛うじて読み取れる走り書きが、ちらほらと散らばる。]
やっぱり、上手くできなかったみたい。
もっと練習しなきゃ、ダメなのかな。
お父さんとお母さんを混ぜ合わせてみたのに、弟も妹もできない。
どうすればいいんだろう。
私、嘘つきじゃない。人殺しでもない。
教えてくれたことを信じていたのに、何がいけなかったのかな。
ローズさんなら教えてくれるかな。
知るのが、こわい な
[それから、花屋で笑っていた看板娘は忽然とその姿を消す。
行方を知る者は、果たしていたのかどうか。
今となってはもう分からない。]
[それと、少しの後悔と、安堵。
なぜか、彼がいてくれることが、自分の願いだったように感じてしまう。
そう。
昔、思っていたのに助けられなかった友達が、元気に過ごしているのを聞いたような―――]
[彼女が、ずっとそばにいて、彼女を守る“仲間”を見つけますように、見つけていますように。
いつか自分が感じた、アイリスへの“仲間意識”を、誰かが彼女に感じて、自分ができなかったことを、彼女にしてあげられますように。]
[私は“彼女”ではないから、分からないけれど。
少なくとも、自分を人間ではない土塊だと思っていた彼女にとっては、はじめて。
はじめて、役に立てる同胞だと思えた人たちだった。
自分や周囲がはっきりとそれを認識していたかはともかく、
狂いに狂った彼女の人生において、それは少なからず救いであったのではないかと、思う。]
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