179 仮想現実人狼―Avalon―
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結論言うと、俺は『生きたい。』
だけど犠牲は出したくないってのも
理解できるし俺もそこは同意出来る。
だから――どこまで出来るか解んないけど、
出来るところまで問題棚上げってか、
とりあえずは狼陣営としてやる事をとことんやってから…
じゃ駄目かね。
だって今どっちも両立できる、
いい方法なんて見つかってねぇんだし。
だったら、出来る事を、出来る所まで足掻きたい。
最終的にどっちに転ぶかは解らんけど…
何もしないまま諦めるのは、嫌だ。
[そこに固い意志はあるものの、
結局自分の立場から、言える事はこんな半端な物だった。]
んで、あとさー、俺そっちのの事情は良くわからんが…
もうちょっと二人とも、生存欲持った方がよくね?
よっぽどの悪人とかでない限り、
死んだら泣く奴は居るって、絶対。
俺は少なくとも、一緒にゲームしてた奴らが
急にいなくなるのは寂しいなーって思うぞ?泣くよ?
……まぁリアル事情良くわかんない奴だから適当こいてるって、流してくれてもいいけどさ。
[最後はさらっと、添え物程度にそう言っておいた*]
[怒気を露わにしたグレッグに、
少年は何も言わなかった。
否、言えなかった。
それは、自分の身に起きたそれへの脅えであると共に、
陣営との離別を表明した様に聴こえる彼に、
今、何をどう告げるべきなのかが――解らなかった為だ]
[クシャミの聲に、安堵を覚え深く息を吐く。
躰の気怠さは未だ消えていなかったが、辛うじて言葉を返した]
うん……。だいじょ、ぶ。
ありがと、クシャミ。
[少なくともクシャミは自分と同じ『人狼』。
ゲームを続ける為には、否応なくこの暗黒なるスキルを背負わされる者だ。
二人の様子からするに、少年のサイモン襲撃の仔細はスキルを通しても伝わって居らぬ様子で。
クシャミにその事を告げるべきか一瞬逡巡するが]
……、……。
[結局は言わずに口を閉ざす。
スキルの発動は人に依って異なるかもしれない――という希望的な気持ちと、
どのみちこの宿命的な役割からは逃れられず、
であれば、彼自身がその詳細をやがて知る事になるのだろう――という絶望的な確信があったから]
[クシャミのサラっと言う台詞が、何故か心に染みた。
アヴァロンで普通に遊んでいた頃、何度か似た台詞を言われた事があったが、心に響いた事はなかったのに]
……うん。
そう、だよね。
[両親の顔が浮かび、頷き掛けた刹那。
つい数時間前に見た、驚愕に打ち震えたサイモンの顔が、それを掻き消した。
上がる血飛沫、――仮想空間とはいえ、止めた息の音。
そんな自分に『生きたい』と願う事は赦されるのか?
言葉にならぬ懊悩を抱え、少年は唇を引き結ぶ]
[シロガネの言葉を思い出す]
この流れだと、俺、
もしかしたら処刑に選ばれるかもしれないな。
サイモンにーちゃんを襲った時……、
俺、……俺は、自分が獣になったと思った。
だから、処刑されるのは、ほんとは怖くないんだ。
むしろ、……―――
[この、狂い掛けた思考から、欲望から、
自分を責め苛む夢から逃れる事が出来るならば。
そう、浮かぶ言葉は潜め]
ただ、クシャとグレッグを残して、早々に逝ってしまうのは申し訳ない気がしてる。
今のうちに、俺に出来る事とかってある、かな……?
[そう言えば、今夜の襲撃や占い先はどうするのだろう、と。
次第に眠気で重くなる頭を軽く振り]
[そう、今まさに目の前で
少人数側ゆえにチアキに切り捨てられて
(チアキはそのつもりはないのだろうけど)
そこに、少しの憤りも感じない程度には。]
[俺はトニーの回答とクシャミの生きたい理由を聞く
その間黙ってそれを聞いていた。]
…………正直言うと
俺自身も、じゃあどうするかまではわからん。
ただ、知らんままは動けん。
少なくても俺は、もし俺が村側で
クシャミの事情を知らずに
ただ、システムに沿ってゲームを展開して
勝ったら…………
ーーーーー到底自分を許せはしないだろう。
そこだけははっきりとわかる。
うーん、トニーが真っ先に吊られたら…どうなんだろ。
霊能者が一人だけだし…。
シロガネを襲撃しとかないとまずい、のかな?
[未だに手数についてはいまいち解っていないので、首をひねる。昨日も頭が痛かったが、今日は更に痛かった。]
あーあと俺占い先…うがー、
頭痛いなこれ。
[諦めるつもりはないが、心底頭が痛い。]
ん…………なに?
[俺はチアキと話した後
しばらくうつらうつらしていたが
トニーの声で目が覚める。]
って、はぁああ!?
投票?あ、これか、システムのこれか
つか、どういう流れなんだよ!
ちょっと待て、今行く!
ーサイモン襲撃前ー
[クシャミの言葉には俺はただ無言で
頭を一つかいた。
それは、音声だけの世界では伝わらないだろうけど。]
消滅が本当に消滅なら
誰かの周りでそれが、おこるんだよな……
[と、俺にはそれしか言えず。
トニーの心にはしみたそれも
俺はただぼんやりと受け流した。]
[食堂で、少年は死期を悟る]
御免、……俺が不甲斐ない所為で、
二人に負担掛けちゃうな。
俺とクシャが繋がってるって、多分、
そんな手掛かりはないんじゃないかな……?
俺の事は捨て置いて、クシャが生き残れる方法を取って欲しい。
グレッグにも、重荷背負わせて御免ね。
[急ぎ、聲だけを届け]
[頭が煮えていたせいか、トニーのセリフの表面に返事しただけで、残りの部分を改めて反芻していると、その意味の重さにぎくりとぎくりと手が止まった。]
獣…。
[人狼スキル、の意味の一旦、自分でも体感した飢えに、空恐ろしい物を感じる。
だが何となしトニーが弱気な声で「やってほしいこと」など言うとこれにもまた少し考える。]
やってほしい事って…
うーんそうだなぁ、
正直イキロ!なんだが…
[こっちはこっちで、死期を悟ったなんて知らないからそんな風に言った。]
おー、グレッグ
えーと今は…広間来て記録聞いた方が早いぜ。
シロガネって子が仕切って色々言ってくれたおかげで俺頭痛ぇ。
[思考がぐるんぐるんしていて気力薄だ。]
あの子すげー殺る気だわ…
[そういや今どこだっけ、とは少し周囲を見回したり。]
て言うか、トニーはどこよーーー!?
[システムが示すトニーの位置は宿
とりあえず広間に転がり込んだが
俺は目的の姿がいなくて右往左往]
って…おいトニー
何があった?
[最初は理解できなかった台詞が、何だか遺言めいてきたので、脳みそぐるぐる状態から覚醒する。
何か言う前にグレッグの悲鳴めいた声に]
確かさっき食堂に…っておい!?
シロガネ…………
[妹とよく似たアバターの
けれど…………
俺はクシャミの口から言葉を聞けば顔をしかめて。]
…………頭痛か、なんか、トニーも不穏なこと言ってっし
トニーが処刑されるなら、
シロガネ襲撃、かね?
霊能者だっけ? あれでばれんだろ?
よくわかんねーけど。
ありがとう、グレッグ、クシャ。
俺、……もう、運命を受け入れる。
サイモンにーちゃんを殺した幻影が、消えないんだ。
だから、これは当然の報いだ。
俺が人狼だって事は、バレても良いよ。
襲撃は、クシャが生き残れる確率が高い方が良い。
[では誰が妥当か、という所までは
すぐに思考が回らないが]
グレッグも、クシャも、俺を助けに来ちゃ駄目だ。
もし、シロガネが明日生きてたら、俺が人狼だって解ったら、
庇いに来た人が疑われる。
だから、俺の事は――見殺しに、してくれ。
[少年は瞼を閉ざし、聲を送った]
ーーー見殺しって…………
俺は!疑われても占われても
人間しか出ねーから!!
[意識が途切れる間際、少年は最後の聲を飛ばす]
クシャ… グレッグ…
俺、……少しの間、だったけど……
二人と、話せて……良かっ、……た、……。
[荒い息遣いが緩慢になり、やがて途切れ、
以後――少年のスキルは消滅しただろうと**]
ああ!くそ!諦めんな、馬鹿!!
[次第に弱くなる声
かわりに聞こえてくる息遣い
間に合わない?もう間に合わないのか?
俺は、何処かでさとりながらもそう声をかけ]
トニー!?
お前何言っ…
[焦るも、他人と話している最中にその焦りは十分に出せずに。
押し殺しすぎた感情が、潰されそうで気持ち悪い。
助けられない事がもどかしい。]
っ……馬鹿、俺占い師って言ってんだぞ?
そんなに長い事生きられるわけねぇだろ!
[諦めるなと、言いたかったけれど。
それは喉から出なかった。]
…………間に合わなかった…………
[そんな予感はしてた。
けれど、それでもどうにかしたかった。
けれどどうにもならなくて。
俺はクシャミに知らせるために
そう、一つ言葉を落とした。]
っ…………。
[占いスキル操作をするフリをしながら、襲撃対象をシロガネに変更する。狩人の懸念はあるが、今はここしか考えられなかった。]
[クシャミの息を飲む音が聞こえる。
俺は目の前の様子を見ながら
できるだけ冷静に状況を口にする。]
…………食堂で、どうやらシロガネがトニーを殺した。
今、カリュクスがシロガネを
トニーはワンダががそれぞれ抱えている。
…………、そ、っか。
[操作前、グレッグの連絡に、落胆したような声が落ちる。
もっと声をかけられれば、少しは何か変わったのだろうか。
胸中でずいぶんと後悔しながら、ため息が落ちた。]
こんな早くトニーが…とは、思わなかったからなぁ。
と、悪い、俺もそっち行く。
[そう言いながら、胸中に燻る暗い感情を押し殺していた。]
うん、そうっか…、あの子が…。
[殺る気満々と言ったが、やっぱり殺ったのかと思うと同時に、俺たちは敵陣営なんだから仕方がないとか当たり前なんだとか、そう思おうとしてもやっぱり憎むような感覚が浮かび上がっては消してゆく。]
じゃやっぱり、
今日は彼女を襲うっきゃねーなぁ…。
[と、こちらもスキルを設定したことを、グレッグに告げる。]
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