258 【突発誰歓】鬼渡し弐
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―――― 彼岸花。
その花を表す言葉の一つに『 悲しい思い出 』がある。
御門という姓は曼珠村ではよく知られていた姓だった。
子どもは知らない、苗字の意味。
…誰かその血筋の者が結婚すると結婚相手の兄弟と
結婚した者の姉妹を結婚させるという村の中での取り決め。
御門の血筋に生まれるのは殆ど男で、相手には事欠かない。
田舎では女より、男のほうが重宝されるから。そんな理由で。
あたしの許嫁は生まれたときから決まっていた。
御門亜珠沙( あたし )には幾つか年の離れた幼馴染がいた。
それはもうすぐ、夫になる予定のひとだった。
…そう、都会に出て、可愛い後輩まで作って、
そうして婚約の報せを寄越してきた…あの人。
家で決められた婚約なんて受け容れがたいって
…… 村を飛び出していったのは随分と前になる。
嫌いなわけじゃないんだって、彼はあたしに言った。
でもね、許嫁としては見られないって言った。
お互い気心知れた仲で、小さな頃からずっと一緒にいて
そのまま生涯一緒なんだって思っていたのにね。
応援してくれって手紙には書いてあった。
…応援、出来ると思う?
って、ひねくれた返事すら返せなかった。
返事は書けないまま、あたしは手紙を仕舞いこんで今に至る。
彼の婚約者には会ったことがある。
彼の生まれ故郷を観たいって言ったらしい。
いつかあたしの働いてる旅館に泊まりに来た。
その時に番号を交換したわ。あたしの名前は知っていたって。
それで後で電話をかけた。「元気ですか」って。嫌なあたし。
本当はアンタのことなんかどうだっていいのに。
何度もやめようとしたし、
無駄だってわかっているのに「彼を出して」って。
言いたくなるのをこらえて、幸せなの?って元気?って聞いた。
遠回りに探りを入れたのよ、嫌なあたし。
それなのにあのひとは付き合ってくれた。
時間も遅かったのに嫌そうな素振りもなくて。
幸せなのね。彼は大事にしてくれる?…そう。
気にしていない風に装っていたって落ち込んでるあたし。
あのひと、慰めてくれたわ。
とてもやさしかった。それって彼に愛されているから。
そうでしょう?
電話越しに何でもないようにあたしは何を望んでいるの?
あのひとが彼に飽きられるようにって願っているの?
自分のように?…そう、自分のように。
戻ってくればいいのにって彼に伝えて。
此方で暮らせばいいじゃないって。
望んでいることは言葉にできない。
あのひとはいつまでも電話に付き合ってくれる。
あたしには話したいことなんてないのに。
誘いをかけているだけなの、
話していたら彼の話が出るんじゃないかって。
あいつはどんなものが好きなの?
仕事は何をしているの?…今、幸せそう?
聞きたいことは聞けなくて、
「明日の予定は」なんて聞いたの。馬鹿なあたし。
言いたかったことはひとつだけなのに。
「あいつを電話に出して」やっぱりそれだけなのに。
昼間は気丈なあたし。収穫祭の被り物みたい。
電話をした夜も、しない夜も時々泣いているの。
うらやましくて、うらやましくて。
「あたしのところから逃げていかないで」って泣いているの。
季節外れの赤い赤い華を見つけた時に、
幽霊に浚われて楽になれるならそれでもいいって思ったわ。
そんな都合のいい話、あるわけがなかったのにね?*
かえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえしてかえして
返して返して返して返して返して返して返して返して返して
返して返して返して返して返して返して返して返して返して
返して返して返して返して返して返して返して返して返して
返して返して返して返して返して返して返して返して返して
返して返して返して返して返して返して返して返して返せ返せ
返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ返せ
返せ返せ返返返返返返返返返返返――――――――……
誰だっていい おねがいだから
[ 未練を殘し澱んで固まつた澱。
其の塊とも言ふべきものがかの鬼の面だと誰が思ふだらうか。
器の中に沈んだ感情を、蓋をしてゐる何かを
ソレは無理にでも呼び起こさうとする。
其の結果、表出するのもある意味器自身なのである。 ]
『 あくまで、之は切つ掛けに過ぎぬ物よ。
負の感情を持ち合はせてゐるのはウツワなのだから。 』
[ "あたし"の顏で鬼(あなた)のやうに喋る器は
"あたし"であり"あたし"ではない。
…… 声無き聲で喋るのは"鬼"。
只今は此の姿を借りてゐるに過ぎぬもの。 ]
[ どこか遠くで――或いは近くで
温かな光が彈けるのを見た。
あれはなに?
――"あたし"には關係のないものでせう。 ]
[ …知つてゐるだらう?
分かつてゐるだらう? ]
[ 逃げて往つたものは關係がない。
鬼を渡すべきものはまだ其処此処にいるのだから。* ]
[ 思ひは、すべてに先立ち
すべては 思ひに成る
思ひこそは すべてを統ぶ
穢れたるおもひにて 且つかたり 且つ行なはば
引くものの跡を追ふ かの車輪の如く 苦しみ彼に從はん ]
[ 惡巧みをしようとしてゐるの?
無駄だよつて鬼の貌はけらけらと嗤う。 ]
[ 長い年月の果てに、ありとあらゆる感情が
注ぎ込まれてきた面は 嗤う 嗤う。 ]
逃げれば追ふぞ 逃げねば鬼は渡される
さあ、どちらを選ぶもお好きにおしよ。
[ 嗤い聲は眼前の彼らには聞こえないが、
嗤うやうな哭くような其の表は彼らの目からも見えるだらう。 ]
…何處までもお逃げ。逃げて、逃げて捕まつておくれ。
さうしたら叫び度くなるやうな氣持ちも輕くなるだらうから。
[ 其れは誰の本音だらう。
"あたし"――其れとも、"鬼"? ]
[ ネリエルと云ふ彼、
相手に武器に成るやうなものを渡すとは
お人好しと云ふか優しいと言ふのか ]
まさに足を"掬"はれる事態に成らないといいけれど?
[ 樂しや樂しやと笑ふ鬼。
喋る聲とはまた違ふ聲色を零す。 ]
重し入りの長布、扨てはて引つかからずに驅けられるやら。
[ 足止めの準備は萬端整へた、後は相手の出方次第と。 ]
[ 相手方二人がわざと捕まるやうな場所を選んで
驅けていくことには氣がつかぬ。さう、"鬼"ですらも。 ]
戀人同士でもあるまいに、何か企みでも?
[ 勘繰れども、遙か先を行く二人が
素直に答へて呉れやうはずもない。 ]
…萬一何か謀を考へてゐるとしても、追ふだけ。
捕まえられたなら其れでよいのだから。
[ 但し、結論は一つ。
最後に"鬼"を渡せればよいのだから、
企みごとなど氣にする價値もないものだ。
走る姿を追ふことだけ考へてゐれば。 ]
[ 足を刺す小砂利は痛いが、
逃げるを追ふ躯の胸の底はもつと痛む。
其の理由を"鬼"(あなた)は知らない。
其の理由をあたしは知つてゐる。 ]
逃がさない――逃がさない!もう、逃がさない…!
[ 叫ぶやうな哭くやうな聲の理由は誰も知るまい。
抑もにして聲を屆け度い相手すらいないのだから。
緋色の裾が飜るたびに掠れるほど、叫ぶ。
―― 誰も聽く者のない赤い色の世界の中で。 ]
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