3 ビー玉坂〜卒業式の前に視るその場所は…
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……そうじゃない。
[――気を紛らわすため、とか。
――それに痛みは丁度いい、と思っていた]
……、
…――ただの癖だ
[だめ、と謂う声には、困ったような、
きまり悪そうな気配が、あった。]
…… 癖 。
[そう、と、小さく。]
でも 気をつけな よ?
お人よしが、多いから さ。
[ばつの悪そうな、そして見える姿に、苦笑を漏らした。]
――……、
……、知ってる。
[そうして、一度ドナルドの方を見た。
伏せた眼は、複雑な色だった。]
…、何で今になって。
[今だからこそ、なのかもしれないが。
わからない、と呟いた。]
……そんなにあぶなっかしいかなあ
[拗ねたような声がぽそり]
…… そうだね。
[吸血衝動に襲われていた時も、そう言っていた。]
な、踏み込まれるの
厭なの ?
[少し、だけ、踏み込む。
踏み込んでしまったのは 何故 だろう。]
え。
[拗ねた声色に、割合と本気で驚いたような声を返した。]
…… 言った、と思うけど。
[くすり。小さく 笑った。生徒の、笑い。]
気にしないで、きみたちは青春の話をしてなさい。
私、聞いてないふりしてるから。
――あ、笑ったわね、もう。
そんなこと言うの君くらいだと思ってたのに。
…… いや、生徒の大半はそう思ってると思う よ?
[くす。また笑う。
今は失ってしまったあの日常のような会話が。
ひどく懐かしくて。 恋しい。]
[だから、か。
踏み込んでしまったことを誤魔化すためか。
目前の彼にも冗句を口にする。]
――、…
[踏み込まれるの]
[厭なの。]
……――、それは、
[僅か、うろたえたような気配。]
…関係、ないだろう。
……――
…、――
[ぼんやりと、遠い日常を思う。
青春、と 彼女は言う。]
別に、そんなんじゃ、ない。
[顔を背けるような。気配。]
―― …… そうだね。
[関係ない。 そうだ。如何して、訊いた のか。
ごめん、と謝ろう、として。]
本当は 嬉しい のかなって。
[呟きのように小さな声で ぽつり と。
狭い視界に、見えてしまったのは――泣きそうな 貌。]
違う
[―――刻むような言葉が、落ちた。]
…ちがう。
……――
…… そ っか。
ごめん、変なこと 訊いた。
[否定の言葉 本心かはともかく。
それが返れば、これ以上、踏み込みは、しない し。
*出来な かった*]
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―南棟― [グロリアとすれ違ったことは、わからなかった。 記憶が戻ったことで、音は増し、ノイズが頭の中で鳴り響いている。 姿が見えれば、そこに意識は集中できたけれど]
せめて耳が聞こえなくなれば、もう少し楽なのでしょうか。 いえ、この音は、耳は関係ない。
[気づくと頭に浮かぶのは、死ぬことへの羨望のような、感覚。 死んでしまえれば。
――まだだと、言い聞かせる。
階段を昇り始めた]
(616) 2010/03/02(Tue) 03時頃
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[弱った体に階段は酷く苦しかった。
――誰もいない校舎。
あの時と同じだと北棟にいたときのことを思い出す。
あの時、自分はなにを思ったのだったろう。 図書室で。
思い出せない。思い出せるはずもない。
もうないのだから]
――…。
[3階。横の音楽室を見た。置かれたピアノはあるだろうか、まだ。 中に入ると、ピアノのほうへ歩いていく。 椅子にたどり着けず、足に凭れて膝を折った]
(617) 2010/03/02(Tue) 03時頃
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――べつに
[背中で答える、奇妙な感覚]
[この手ではピアノは弾けない]
[この手ではつかめない]
[この手では]
(でも、欲しければ手を伸ばし続けるしかないのよ)
…… …――わからない。
[呟きは闇に、後には、紙を捲る音が響く*ばかり*]
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まだです……。まだ、。 鬼を、連れて行くまでは死ねない。
[残った思いはいやな物だらけで、それもその一つだったけれど、でもそれは、なくなる前でよかったと思った]
それが、教師の務め。 ずいぶんと、大きなことを言いましたね、私は。
それが出来なくて、教師を辞めようとしていたのに。
[目を伏せた]
(620) 2010/03/02(Tue) 03時頃
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[死にたい、死ねない。 何故死にたいと思うのか。 何故死にたくないと思うのか。
その悲観はどこから来るのか。
体の痛みはない。ただ、疲れて動けないだけで。 ただ、心の中が空虚になってしまっただけで。
――ピアノをやめた日に似ている。
あの子が生まれた日に似ている。 言うことなどなかった。 ただ自分は、見ていただけだった。 その人が幸せであれば、良かった。
なのに生まれたのは、闇]
(621) 2010/03/02(Tue) 03時頃
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[自分に、説く資格などない。 そう思っていたのに。
今までと同じ。 なのに、何故]
少し、痛むようです。痛いのは、どこでしょうね。
[首筋に残る痕をなぞった。 痛い。傷口から、内部へ痛みが浸透する。 傷の痛みではない、痛み。 いやな思いとして残る記憶の一つ。 それをどうしていやだと思ったのか。
苦笑を漏らして、それから頭を垂れた。
のそりと立ち上がって、ピアノの椅子に座る。 指は動く。
感情のないピアノの音が、*鳴り響いた*]
(622) 2010/03/02(Tue) 03時半頃
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[奏でる音は、調律がいいのだろう、綺麗な音だった。 音 だけは。 繋がればそこに、色はない。
ただ。 その曲が終わるころには、それはとても悲しい音に*変わる*]
(624) 2010/03/02(Tue) 03時半頃
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命狙ってくる相手さんときゃっきゃうふふ出来るほど、
心臓に毛は生えてないんだよねえ。
[まだ、あの時の事は忘れていない。]
じゃあ、覚えてたら気にしない。
[出生の秘密に、何を言えば良いのか分からなかったけれど]
生まれる前の事は、自分じゃどうにも出来ないさ。
肝心なのは、その後。
今のあんたは何所に出たって恥ずかしくない好青年じゃないか、
いらん事したお父さんだって見返してやれるとも。
[今度はふざける様子もなく、思ったままを告げて]
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[ピアノは、数分に渡って奏でられた。 最後は、曲の途中で終る。
音は震えて、止まった]
……先を、思い出せないとはだめですね。 これもなくなった一つでしょうか。
[呟いて目を伏せる。どこまで音が響いているのかは、わからない。伸ばしていた背筋は、折れた]
(637) 2010/03/02(Tue) 08時頃
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[襲ってくる頭痛と吐き気。ノイズ。 死者たちの呻き。哂う声。――寂しそうな声]
ケイト……?
[すぐに消える。バランスを崩して、頭を抱えたまま椅子から落ちて床に転がった。 ピアノを弾いても、あの時の空虚さしか思い出せない。 楽しかったときのことを、思い出せない。
その場で暫し、*蹲った*]
(640) 2010/03/02(Tue) 08時頃
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