56 いつか、どこかで――狼と弓のワルツ――
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重荷だなんて考えたことはないからな。
守りたいと思うものがあるから騎士団に入ったんだ。
それにお前はお前で、俺たちの分まで祈ってくれるんだろう?
[精神的に彼を頼っている者もいるだろう。
祈りは力になる。
それは彼から聞いたか、それともトラウマを埋め込んでくれた老神父が言っていたかは覚えてはいない。
しかし、それだけ伝えると。]
……笑っても良いが、誰にも言うなよ。
[少し拗ねたようにそう告げた。]
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― 夜・緑騎士団詰所 ― [結局バーナバスを見送ってから、自室に戻った。 弓を下ろし、枕元へ置くとムパムピス>>0:261が言ったように、祈ろうとしたが、どうにも祈りの文句が出てこなくてそのまま横になり、寝てしまった。
祈りの文句はどういったものが良いのか、今度ムパムピスに直接は無理だが、何かのタイミングで聞いてみようと思いながら、詰所に向かう。 集合時間に僅か遅れたのを、規律に煩い副団長に見られていただろうか。>>118]
(128) 2011/06/30(Thu) 03時半頃
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[団長の告げる言葉に、他の団員たちはざわめいている。 ヴェスパタインの声に静まった中、続けられた団長の言葉。>>120 二人が連れ立って出て行ってから、詰所内が再びざわつきだした。
そんな仲間たちを置いて、作戦の確認をしようと出て行った二人を追おうとしたが――足を止める。]
先に参謀殿に聞いた方が早いか。
[上に立つ二人も休眠命令に従う必要があるのかは分からないが、食事か風呂で会うことも出来るだろう。 彼女が詰所に居たのなら引き返し、居ないのなら彼女の部屋へと向かった。**]
(129) 2011/06/30(Thu) 03時半頃
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>>127―いいですとも!
[去り際の言葉に力強く頷きながら。 もう一度礼をすると足は見張り台への道に。]**
(130) 2011/06/30(Thu) 03時半頃
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[フィリップがその場を去った頃、陽は既に平原の向こう側へと落ちる。 一人立ち残る青年の翠の瞳は、下で焚かれ始めた篝火に揺らぐ]
…不甲斐無いって、怒られるかな。 それとも、呆れられてるかな。
最後の最後まで、こうして引き摺って。 思い切れない僕の事…。
[その独白にも似た問い掛けは、空に融ける様に。 既にこの場所に居ない父に掛けられた言葉か。 独り、狼の心を溢した言葉は、空へと融ける]
(131) 2011/06/30(Thu) 05時頃
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何をやらないとダメなのか。
そんな事位解ってるよ……。
[僕は、騎士団の人間だ。赤の狼だ。
でも、僕はそれ以上に父さんの子で。
それは、僕の様な適任はそう居ないと言う事]
[イアンに…。僕よりもずっと団長として適任に思えてしまう彼の存在に。
甘えてしまっている]
……最低だ……僕……
[もし彼が今この騎士団に居なければ。
僕以外に適任も居ない騎士団で、僕は言えなかったと思う。
『泣き言』を]
[『「弱さ」とは「恐れ」のヴェールに包まれる』。
赤騎士団の僕ですら何度も聞いた、セドリック副団長の言葉をこんな時に思い出す]
……言わなかったのは…。
…父さんが何も言わなかったのは…。
僕の、僕達の事。
信頼してくれていたからだと思うのに。
[それは、『弱さ』が無ければ、『恐れ』も無いと言う事。
―『恐れ』があると言う事そのものが、『弱さ』の証明だと言う事]
――くそっ……!
[見張り台の欄干はギリリ、と軋む。
まるで弱い狼の鳴き声みたいに、軋む音が虚空に融ける]
最低だ…。
[もう解っている。だから僕はそれを認める。
何て事ない。
僕はただ、その重責を恐れて居るだけだ]
[ 守りたい――! ]
[彼方の平原に揺れる、大きく蠢く獣の姿を前に。
この砦を、この騎士団を、この場所を守りたいと心も体も叫んでるのに。
ただ最後に、『弱さ』だけが振り切れない]
[朝を重ねる程に重く響いてくる、父親の偉大さ。
比例する様に高まる、期待と言う団長の重責]
僕が弱いから…!
[そんな時に、父さんを超える程の剣の腕を持っていた『彼』が居て。
いっそ彼に全て任せてしまいたい。重責を受け止めきる自信がない。
だから今も僕は…]
[父さんから、団長から、重責から、恐れから、弱さから――]
逃げてる。
[一粒に零れた涙だけは、同胞に響いてしまったか]
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[重責を恐れて逃げている、狼の弱さは独り零れ落ちて。
その頃、画材道具を持って一人の男はやってきて居ただろうか。 特に彼を咎める事もない青年の表情は、瞳を紅くして酷い事に成っていたかも知れない]
(132) 2011/06/30(Thu) 05時頃
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[やがて狼の咆哮が。同胞の覚悟が響く]
僕が副団長に……?
僕の力が、必要なの……?
[その返答を待っているのは、彼一人だけでは無い。
狼としての同胞皆が、その意志を確かめる様に耳を立てている]
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[ぼやりと平原の向こうを眺める青年に、狼の咆哮が響く。 未だ隣に居るかも知れない男には届かず、それは青年だけに響く咆哮]
――二人で…。 僕達の力で、助け合う…か……。
[ある意味では天啓の様に響いたその咆哮に逡巡して。 やがて、暁と共に放たれる獣と、背後砦に広がる騎士団全てを振りかえり。
精一杯の勇気を振り絞って、青年の声は力強い咆哮になって空に響いた]
(133) 2011/06/30(Thu) 05時頃
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僕は―― **
(134) 2011/06/30(Thu) 05時頃
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[同胞の言葉に、彼が団長に成ると言う言葉に。
受け入れる僕自信を、不甲斐無いと自嘲してしまう。]
…これが今の 僕に出来る精一杯なんだ。
[お互いの足りない部分を補えば。
ただ一人だけの物では無い重責なら。
―やっぱり、僕はイアンに甘えている…]
[それでも、翠の瞳に宿った青年の意志は。
漸く覚悟を決めた、狼としての咆哮となった**]
本屋 ベネットは、メモを貼った。
2011/06/30(Thu) 05時頃
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[仕舞えと言われれば大人しく剣を締まった。自身の勘違いに頬は僅かに赤らんだ。]
あ…すみません。私の勘違いですね。 わかりました。また次の機会にお願いします。
[「次なんてあるのだろうか」と言う不安は拭い去れなかった。 この状況下で次なんて− 敬礼をすると女は男を見送った**]
(135) 2011/06/30(Thu) 08時半頃
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はい。それは、もちろん。
[騎士達が戦に赴く時は、彼らの武運を祈るのが役目だ。
命尽きる者を看取ることもだが、今は脇によけて。
守るために騎士になった、と言うヤニクの毅然さは、
憧れのような感覚で受け止められた]
……大丈夫ですよ。もちろん他言無用ですとも。
[ヤニクさんは公女殿下を敬愛する余り、
思わず逃げ出したくなるほど緊張してしまうそうです。
――仮に人に言っても、そう悪し様には思われない、
寧ろ神父個人の感覚では好ましく思われる気もしたが、
本人の意向のことなので頷いた**]
[びり、と肌を緊張させる様な不穏な空気を震わせる同胞の咆哮。
その咆哮を聞いた狼は、す、と緋色の眼を開いた。]
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[空に響いた咆哮に、オスカーは手にした剣を鞘に納め、ゆっくりと対峙していた男の前へと歩みを進める。
真っ直ぐにそのブラウンの瞳を見据えて。
やがて男の前に立つと、ゆるりとした動作で膝をつき、頭を下げた。]
(136) 2011/06/30(Thu) 12時頃
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ノルドハイム公国、赤騎士団がオスカレア・アンジェ
今この時、この場において、イアン・レッドフィールドに忠誠を誓うと約束する
(137) 2011/06/30(Thu) 12時頃
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[彼女が本名を名乗ったのは、今まででたった二人だけ。 それを明かすのは、忠誠の証として。**]
(138) 2011/06/30(Thu) 12時頃
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― 厩舎 ―
[無性に愛馬に逢いたくなった。この砦には多種多様な馬がいるが全て一人の青年が面倒を見てくれていた。]
アモネス。元気にしてた? 毛並みも顔つきも万全だね。
[アモネスと呼ばれた女の愛馬。古代の言葉で「風」という意味の馬は雪のように真っ白な毛の色。白毛と呼ばれる種類だった。白毛が生まれることは非常に稀。それは騎士団に女性が入団するこの稀な自分と重なりあった。]
フィリップの言うこと訊いてちゃんと良い子にしてた?
[返事をするかのように愛馬は女へ顔をすりよせ甘える仕草。女も応えるように愛馬の顔に自身の額を当てて静かに目を閉じた。]
(139) 2011/06/30(Thu) 16時頃
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[自らの考え、思いを心の中で整理を行う。その心の引き出しは子供が無造作にいれたおもちゃ箱のように汚かった。 ヴェスパタインの言葉が頭を過る。
「逃げるな。」]
(140) 2011/06/30(Thu) 16時頃
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私は知らないうちに逃げていたのかもね。 自分の気持ちにも…戦いの恐怖からも… もうすぐ本格的な戦が始まる。 そのうちお前も私と一緒に出兵だよ。 私はこのままではいけない。変わらなくてはいけない。 ―――――もう逃げない。
[顔を離し、優しい瞳で愛馬を見つめ撫でた。緊張の糸が切れたかのように思いを吐き出し落ち着いたのか、汚かったおもちゃ箱も綺麗に整理された。 思いを告げる女の瞳に迷いはもうない。]
(141) 2011/06/30(Thu) 16時頃
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