194 花籠遊里
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[見せる事の出来ない自身の背中が映っていただろう。それは、酷く、醜く。
深く接した所からくぐもった声>>196が漏れれば、もっと出せと舌を相手の舌に塗り込めて催促する。
呼応して背中に回る腕。眉を顰めて瞳に熱を灯す。 下半身へと伸びた手は、前戯も労わりも忘れてまだ慣らしてもいない小さな窄まりへと伸びる。疾くと、耳朶を刺激する感触が伝われば、その通りにズブズブと指を埋め込んだ。 中で二本指をバラバラに動かす。 血が出ても、泣いても、止まる事は無いだろう。 恐らくそれは、鏡に映った自身を見ながらの行為。]
痛かったら、泣いてもいい。
[唇から離れたくちから耳元で囁く声は、相反して優しく響いただろう。]
(203) 2014/09/19(Fri) 01時半頃
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―牢を出た後―
[行為を済ませた後の倦怠感を引き摺りながら時計を見る。もうすぐ夜の盛りだ。 これを過ぎれば、後は。
考えるよりも先に向かっていたのは自力で見つけた花と蝶>>188>>190の元。
蝶であろう端麗な青年を組敷く様子はまるで]
よォ、邪魔するぜ。"蝶"。
[行為の最中であっただろうか。それとも事後のことであろうか。
どちらにせよ、返事を聞く前に蝶を組み敷く丁に歩み寄り、痛い程の力で顔だけ此方に向かせただろう。]
四日後に答えを聞くと言ったな。 –––––––やめだ。
今、嘘でもいい。 あの金で、いつか男を買うと……言え。
(204) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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[それは、花という立場で多くの男を相手にする丁への揶揄であり、同時に、これから地に落ちる己に対しての…ほんの少しの救いであり。
言葉を聞いたのなら、何とも言えない笑みを浮かべて何事も言わぬまま檻を後にするだろう。
組み敷かれた蝶には、心にも思っていない軽い謝罪と数枚の金を放り投げて。*]
(205) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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[蛾に毒された月を、男は果たしてどう取るだろうか――
櫻と話すその横、近くの牢。
冷たい籠の中にて咲く月は毒に侵され犯されて。
月の口から紡がれる言葉はどんなものか、気にはなるけれど耳は届かず。
先の蝶声にて囁かれた挑発には、思わずに大きく顔を瑜伽め口先から厭味に似た負けず口を、「――月は誰にでも優しい」と、優美な銀月を想って只々口先を切る。
そう。花は誰にでも蜜を遣る。
されとて月も、拒む術無く誰彼を照らす。
ただ其の事実を櫻の唄を通して解ったならば――胸に燻らせる思いは、そう。怒りなどでは無い。妬みなどでも到底無い。
ただ銀月を手中に収め切れずに居た自分への恥と、――僅かな寂寥。]
…明日は蛾でも、愛でてみようかな。
[ぺろり。口端に舌が這った。*]
可愛い、可愛い吾が子達。
今宵も大層疲れただろう。
部屋でゆっくりと休むがいい。
[男は今日も地下牢へとやって来ては、吹雪を降らせて花々を見下ろす。
優しげな面持ちで、或いは非道な笑みで。
一輪、一輪、狂気を含んだ声が撫で付けた。]
丁よ。
お前は屈折していて可愛らしい。
吾が子に相応しき、素直な焔花。
亀よ。
お前は夢見がちで悩ましい。
銀月映す、儚き水面花。
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―夜明け近く・館前―
[残り数本になった煙草に火を灯しながら、夢の終わりを告げる鐘の下を潜る。 ふぅ、と吐き出した煙の向こう側にいたのは豪奢で四角い、人を運ぶ箱。その傍らには厳つい背格好をした男がチラホラ。
此れで夢は終いらしい。 蝶は最後まで蝶らしく飛ぶ事は出来ないまま地に落ちる。]
お迎えご苦労さァん。
[あっけらかんとして述べた言葉はまぁるい煙と共に宙に消えた。
車に乗る少し前。 館を見上げる。
蝶は土に還って花になるが、花が蝶になるには如何するか。浮かんだのはそんな疑問。 しかし、彼奴は蒲公英である。綿毛を飛ばしてふわふわと、其処彼処に根差して手当たり次第に種を飛ばす。 –––––願わくば、その黄色の花が此処まで届くよう。*]
(207) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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櫻よ。
お前は頑なでいて微笑ましい。
散るを知らぬ、咲かない櫻花。
朧よ。
お前は動じぬ姿が誇らしい。
陰る貌こそ、艶かしい月花。
藤よ。
お前は磨かれた心が、美しい。
割れれば綺羅綺羅、光はなつ鏡花。
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[パタン。 閉まった黒い扉からは、煙すらも燻らない。*]
(209) 2014/09/19(Fri) 02時頃
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明日も甘い毒抱きて、蝶を誘い惑わせるがいい。
愛しい“罅割れぬ”花たちよ。
[口許に三日月を浮かべて嗤い、男は消え行く。
一輪切り捨てることを、暗にして。]
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