103 善と悪の果実
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[上機嫌な様子で、水晶のカフス釦を眺めると 光へ透かしたり、高名な職人の精緻な細工を確かめた。 蒐集家の夕闇伯が身に着けていた物だ、極上の品に相違無い]
高く売れるのは間違いないな。素晴らしい。
[右手のポケットには真鍮の懐中時計。 左手のポケットには屋敷内で盗んだ宝石類が幾つか。 そして懐には、昨晩分解して整備した、愛用品が収まっている。
撃鉄の先端に燧石が据えられた時代遅れのフリントロック。 撃鉄、当たり金、火皿は色褪せた銅の輝きを保ち 銃把と共に精緻な唐草模様が象嵌されているレトロな物。 少し変わっている部分といえば、銃身が三つあることだろうか。 鉄条を束ねたように 緩く螺旋を描く銃身は、同時に三発の弾を吐き出す。
足音は聞こえない。 ただ、余分な荷物を持っているせいか ちゃらりと響く移動音を立てながら、夜を待った**]
(203) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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[赤い意思。
殺戮の匂い。
突き付けるのは、異端者を見る眸。
重ねるのは。
重ねるのは。
僕を知った人の眸。
僕を造った人の眸。]
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は兄にでもなりましょう。
このような、下賤な浅黒い肌でも許されるのならば。
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は。
―――――…御守りしましょう。
レディ・ポーチュラカ。
兄様………?
[手の中の蝶は、同じ血を吸うことはない。
震える手は、震える唇は]
[小さな呟きは、鈍く光る銀色の運命を絶つ。
赤の殺意をもってして。
どちらかの命をもってして。
濡れた烏の、
塗り潰された黒の、
重ねた血の、
背負う罪の、
眸を開ける頃、世界は“楽園”に変わっているだろうか―――……**]
……ええ
[守られることになれた少女は、花のように笑う。
家族を失い壊れた少女は
けして取り戻せない欠片の幻影にすがる他ないのだ――**]
[本質は、望まれるままに]
[共にも]
[男にも]
[女にも]
[兄にですら]
[脱皮を繰り返す蛇は、己というものがまるでないように]
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