121 若草の花火ちゃんぷる村
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[鏡花との別れを済ませると、今度こそ広間の扉の前に立つ。 一度名残惜しそうに振り返ると、何人の姿があっただろうか。 短い時間の出来事が走馬灯のように脳裏を駆け巡った。]
ありがと。 また、ね。
[誰にともなく呟くと、ふわり。幸せそうな笑みを浮かべた。 ドアノブを握った手に力を入れ、目を閉じたまま一歩を踏み出す。]
(274) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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―自宅―
「おかえりー」
[はたと気がつけば、いつもの我が家の姿。 先に帰っていた妹と母が出迎えてくれた。]
ただ、いま。
[目が熱い。 暖かな空間、大好きな人たち、そのすべてに包まれれば、不意に涙が零れた。 驚きと慈愛に満ちた笑みを浮かべる家族に、こちらもまた笑みを返す。]
ただいま!
(275) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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―小高い丘の小さな家―
――おしまい。
[路地裏のレンガに腰かけたまま、柔らかく終わりの言葉を告げる。 辺りに座っていた子どもたちがはしゃいだ声をあげる。]
「オスカーのへたれー」 「初恋は実らないのね……」 「魔法使いって本当にいるの?」
[それぞれに優しく声をかけながら、遠い遠い空を見上げる。 あれから26年の時が過ぎた。]
(276) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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「その時の皆とは会えないのかな?」
[近所の小さな女の子が悲しそうに俯く。 小さな頭をわしゃわしゃと撫でると、少女はくすぐったそうに笑った。]
会えるさ。 私はそう、信じているよ。
[胸ポケットからライターを取り出すと、手の中でくるりと回した。 青空はどこまでも澄み渡っている。 今なら、どこへだって飛んで行ける気がした。]
(277) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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―どこかの町―
[ダブルカフスのシャツにジャケットを羽織った姿で、町をのんびりと歩く。 鈍い光を放つ革靴が、小気味いい音を奏でた。]
お、こんな店あったかな。
[街角で見つけたレストランに足を止める。 ふと目を止めたのは偶然などではなく、その店頭に巨大な熊が鎮座していたからだ。]
これ、は……。
(278) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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[木彫りの大きなそれは、あの夢のような時間に目にしたものと寸分違わないもので。 どこか夢見心地で足を動かすと、店の前に立ち尽くす。 息をつめて、そっとドアを開いた。]
――ふふ、信じていれば夢は叶う。 あの魔法使いの言った通りだったな。
[舞い降りた幸福にそっと微笑む。 その幸福は鎖のように連なって、次々と男に降り注ぐのだが、それはまた――別のお話。**]
(279) ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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狙って挟まってるのかい?いいこだね。
[撫でたかった。]
オスカーは、ナンシーを抱きしめた。ナンシーのことじゃないよー、大丈夫だよー。
ico 2013/04/29(Mon) 02時半頃
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