194 花籠遊里
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はしたない、淫らな“ちょう”よ。
十分喜んでいるというのに、足らんと言うかい?
欲張りなものだねえ。
[嬌声滲ませ揺れ動く体。
痴態を晒す、焔花。
中を犯すは人の熱でなく、
無機質で冷ややかな万年筆。
男はゆらりと立ち上がる。
蝶が花を買い付けに訪れたなら
その秘所晒すように言いつけよう。
時には指先で溢れる蜜を掬い上げ。
喚く口の中へと運んでやろう。]
[知っている。
重ねる色が違うこと。
知っている。
造花の振りを望むこと。
―――“私”と“お前”は背中合わせ。
向かい合うことなど在りはしない。
あってはならない。
“ちょう”になりたい男と。
“花主”たる男なのだから。]
―――おいで、丁助。
[おいでと言いながら。
圧し入る熱は硬く。
初日花開かせたのと同じよう。
否、それよりも荒さは増そう。]
丁助。
[耳に落とす冷たい声。
氷の微笑は、歪んだ想い。]
“ちょう”。
[重ね合わせてすり合わせ。
穿ち貫いては、内へと爆ぜる。]
[雁字搦めの錆びた楔。
幾度も打ちつけ。
花を *手折る*]
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[斜陽が落ちれば浮かぶは満ちた月。 鈴虫が奏でる柔らかな音色と共に預けた背はあの日を思わせる闇色。
囁きは甘い蜜のように芳しい香りを漂わせては、足の爪先から脳の芯までを痺れさせていく。
肉の皮一枚を隔てたそこが溶けるように同じ温もりになれば、青年は唇を緩める。
揺れる空気の中穏やかな時間はゆっくりと陰を落とし、二人を包む茜色は紺色へと姿を移ろわせる。]
…月は満ち欠けを繰り返すのだとか。
[月が綺麗だと口にする彼にそっと青年は、捻くれた言葉を繰り出す。 悪戯めいた笑いは、咽喉を小さく震わせただろう。]
…でも不思議だ。 貴方といるといつまでも時が止まったように。 それこそ、月の光を浴びて若返ったような…、そんな錯覚を覚えてしまうくらい、一向に欠けることが無いのです。
[蔵書にも台本にも記載されていない台詞を、二枚目でも三枚目でもない役者は唄う。]
(165) minamiki 2014/09/27(Sat) 01時頃
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……おかしいなぁ。
満ち足りすぎて、少し…怖い、なんて、……、
…それでも、貴方との幸せを望むのだから、手に負えない。
[諦めたように呟いた言葉は陽が落ちた小部屋にて小さく響いていく。 やがて、月が姿を現し星々が煌めくまで視線を空へと向けて青年は笑う。]
……ええ、きっと。 明日も、明後日も。
*月は綺麗なまま夜に咲くのでしょうね*
(166) minamiki 2014/09/27(Sat) 01時頃
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あゝ。
煩わしさなんて、滅相もありません。
『花』でいられると謂うのなら。
僕はなんでもいたしましょう。
[その時の僕はどんな顔をしていたのでしょう。]
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