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![]() | 【人】 座敷守 亀吉[その指で腰紐を辿ると人差し指を引っ掛けて。 (106) 2014/09/15(Mon) 13時半頃 |
[淡藤は桜の梢と寄り添うように腕を回しただろう。
さすればごく自然な動作でふわりとした花の匂いが近付き
そっと小さくはにかんだでしょう。
漏れた吐息は二輪、同じ頃だったか。
溶け入るように吐き出しながら、そっと流れに沿うように艶やかな射千玉に指先を絡めていただろう。
けれども時間は無情にも過ぎ行くもの。
胸元に香る気配が離れてしまえば、視線で追ってしまいつつも、引き止めることはせず
いいえ、出来ないといった方が正しいでしょうか。
何故なら淡藤の指先も胸元に残る花の香りと同じく、枝葉に過ぎず。
『花』には『花』を引き寄せることも、その場で縫いとめることも、出来ないのだから。]
[淡藤は年の瀬こそ丁助という花と重なるにしても、此処へ訪れたのはきっと、花達の中でも遅咲きであったと記憶しており。
だからこそ多くの方に教えを請うては苦労をかけさせたものの、こうして座敷にて一部屋お借りすることが出来ている。
それもひとえに此処に御座す花籠のお陰。
先に咲いた可憐な一輪の言の葉を耳に頂戴したのなら
綻んだような笑みを向けてみせたでしょう。]
…ええ、貴方達に育てられた『花』ですから。
些か甘い露を啜り過ぎた気も致しますが、きっと。
……、きっと、咲いてみせます。
[するりと、淡藤に戯れなさる指先を拒む筈も無く。
欲張りな花は少しだけ甘えるように頭を下に傾けて。
やがて音も無く唇を落とされたのなら、そっと頬を赤く色付かせたでしょう。]
[顔を上げる頃には頬紅は成りを潜めていたけれど、言葉紡ぎ朗らかに微笑む御方には目元を和らげてみせ]
…いいえ。今日も甘露を頂きましたから。
[櫻色の唇を落とされた髪をゆるりと揺らしながら微笑み。
選ばれ遊ばれた言葉を頂けば]
…月が欠けてしまう前に、必ず。
貴方にお会いしたい。
[針が示す前と同じものを紡いでは、射干玉を凪いだ瞳で見つめ返し、後ろ髪を引かれる思いを断ち切り、見送ったのでした。]*
[聴こえません。
花の声も、蝶の声も。
蜂蜜色へと変わる櫻は、彼の『蝶』だけを見つめているのです。]
[藤之助の声も、他の花の音も。
届かないフリ、聞こえないふり。
――――……そうでなければ朧を保てなくなってしまう。]
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[言葉を売れば戻って来たのは買い言葉>>125 (132) 2014/09/15(Mon) 21時半頃 |
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[月下の元で蝶の望んだ花如く。 (134) 2014/09/15(Mon) 21時半頃 |
[腕を引いてくれと、そう望んだのは他ならぬ自分。
その手にまた触れることが出来た時、確かに左胸は鼓動を大きく揺らしたというのに。
結局、『花』は『花』でしかあらぬのだ。
胸元に残る花の教えを深く、深く刻みつつ。
そっと銀で覆われた縁を歪ませた。]
[見ないで、と声に出さぬまま、口はそう紡いで
目尻には快楽からか――うっすら涙が浮かんでいたろう]
[とうのすけ。
音にはせずに藤色の花を呼ぶ。
頭を撫でてやることも、雫を拭ってやる事もできないこのもどかしさ。
己が『朧』である事を、友である事をこれ程に後悔した事は無い。
関わりが浅い『花』となら、こんな思いをせずに済んだのか。]
[今宵は二輪が共に買われているのかと
心のどこかで、そう思っておりました。
聞こえぬフリをしていても、耳には否にも届くのでございます。
お優しい藤の花が、辱められているのでしょう。
麗しい朧の花が、甚振られているのでしょう。
揺れる焔の花は、遠くに身を委ねているのでしょうか。
綻ぶ淡藤の花は、求められるまま咲いているのでしょうか。
───裡に渦巻くものから眸を逸らし。
僕は金糸雀の唄に、耳を傾けるのです。]
![]() | 【人】 座敷守 亀吉新たに告げられた命>>162には双眸を眇めただろう。苦さの残る瞳を唯々揺らめかしながら。 (169) 2014/09/16(Tue) 00時半頃 |
![]() | 【人】 座敷守 亀吉…濡れてしまいました。 (170) 2014/09/16(Tue) 00時半頃 |
朧、お願い……もう……
[小さく、願う様に囁く声は涙と色に濡れ
彼にこんなことをさせてしまっているのだと自覚すればぱらぱらと汗に混じり雫が頬を伝った]
―――坊やの悪趣味に比べちゃ、俺なんぞ可愛いもんよな。
[喉を震わせた独り言を聞くものは居ない。
ただ、と思案巡らせ、瞳を微かに揺らした。]
あれもつくづく、面白い坊やだ。
[溜息のような感嘆は、男にしては珍しい他者への興味。
花籠の外に向ける視線は、久しく。
過ぎった感覚を自覚すれば、
笑気一つ零して、夜に再び身を浸した。**]
[ごめんなさい、と
唇は涙浮かべた子供の様に震えながら言葉を紡いだ]
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[牢の中。月明かりもあまり届かないこの場所で響くは淫靡な宴。 (192) 2014/09/16(Tue) 02時頃 |
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[狂笑に嘲笑返せば、一度沈黙が訪れたように思えて。 (193) 2014/09/16(Tue) 02時頃 |
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[身体を少しばかり預ければ、拒絶される気配は無かったようで。 (194) 2014/09/16(Tue) 02時頃 |
[隣より聞こえるは、激しさを表す声でありました。
肌の打ち合う音も、粘膜擦れる水音も。
やがては明瞭でない嬌声が、弾ける瞬間を伝えたでしょう
見えぬはずの涙の音が、此方へ届いた気さえします。
他の牢でもきっと、花々は咲き乱れているはずです。
此処はそういう場所なのですから。
そしてそれが僕たち『花』の、『しあわせ』であるはずなのです。]
[僕の戯れのような接吻けに、頬を染めた銀花も
誰ぞ彼の腕の中、咲き誇っているのでしょうか。
丸窓からちらりとだけ、月の端が見えました。
「月が欠ける前に」などという言葉を
不意に僕は思い出し
傾く月を眺めては、彼の『花』の行く末を想うのです。]
あなたは、いま。
『しあわせ』ですか?
[尋ねる事が出来たのは、亀吉さんだけでありました。
丁助さんには、寸でのところで訊くのを躊躇ってしまいました。
朧さんに訊けば、叱られてしまうでしょうか。
藤之助さんに訊けば、困らせてしまうでしょうか。
他の花たちにも、訊きたくとも訊けないでしょう。
どうして、訊けないのでしょう?
何故、訊けないのでしょう?
わからないまま、僕はいつであろうとこう答えるのです。]
僕は『しあわせ』です、───と。
![]() | 【人】 座敷守 亀吉[宵闇が空を覆う頃。格子の中、生けられた花の蜜が蔓延する。 (203) 2014/09/16(Tue) 11時半頃 |
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