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別れは、……
辛い?
あなたは、慈悲を望む――?
[ヴェスパタインにも、傍のセシルにも届かぬ声で囁いた――**]
ねぇ、ヴェス。
私さ、やっぱり。
バカだから、こうするしか、出来ないや。
セシ兄に、甘えてきた分。
ちゃんと、一人で大丈夫だよって。
だから、セシ兄はセシ兄のしたいこと、してって。
そう言うことしか、出来ないんだ。
─…ヴェス、やっぱり私、バカなのかな。
でも。
セシ兄のこと、困らせたく、ないんだ。
――兄貴のしたいこと、ね。
兄貴は、何がしたいんだろうな。
村を出ていって
オルガンで地位を掴むのを諦めて
この村に篭って
時折お前の顔を見て
――それから?
─…わかんない。
わかんない、わかんない、わかんない。
でも、私が、セシ兄のしたいことの、邪魔になるのは、ヤなの。
私が心配かけてばっかりじゃ、きっとセシ兄は、我慢、しちゃうから。
最後だから、最期だから。
セシ兄が、傍にいたい人のところに、行かせてあげたい。
兄貴の行きたいところ。
兄貴の傍にいたい人。
――どこに?
誰と。
――聞くことも出来ない?
だから―― 送り出すフリをするのか?
───……っ
だ、って。
私は、ずっと。甘えてきたんだよ?
セシ兄が優しいから、それに胡坐かいて、ずっと、ずっと。
そんな私が、どうして、どうやって。
聞けるっていうの。
困らせるって解ってて、どうして、聞けるの。
ごめん。
─…ちがう。
私、きっと、まだ。
あのひとのこと、忘れてないって。
セシ兄から、聞くのが。
こわい。
それだけ、なんだ。
――。
二年。
長いようで、短い。
兄貴があのひとのことを忘れるってことは
ないだろうな。
忘れるなんて ありえない。
――そんなことは分かり切ってる。
でも――
だからといって 何を選ぶかは別の話だ。
─…うん。
私、それを聞いたら、きっと。
あのひとのこと、恨んじゃう、から。
ずるいって、思っちゃうから。
あのひとは、優しかったのに。
私にも、セシ兄にも。
それを、憎んでしまいそうで、こわい。
ヴェス、は。
私に、言わせたいの?
セシ兄のこと、好きだって。
ずっと一緒に、傍に居て欲しいって。
そんな我が儘を、セシ兄に。
言った方がいいって、思ってる…?
別にそれ自体には興味がないんだ。
お前が、兄貴とどうしたって。
でも―― 兄貴は
願わなきゃ 動かなきゃ――叶わない
そう言ってたぜ?
背中…?
─…わかんないや。
押して欲しい気もするし、押さないで欲しい気もする。
だって、結局。
決めるのは、私だもん。
願うのも、動くのも…決めるのは、私。
…セシ兄、も?
─…ううん。
わかると、思う。
ごめんね、ヴェス。
愚痴っちゃって。
祈りは
どんなに祈っても
届かず
呟く声は
微かな喧騒に
消える
開幕の合図が響き
繰り返しを踊る
この世界をつづる物語
終末はあなただけのために
ちいさくいのりつづける
「ただ、ただ、しあわせに」
店番 ソフィアは、メモを貼った。
2010/07/06(Tue) 00時半頃
|
―― 大通り ――
[ペラジーを起こさぬよう、静かに雑貨屋を抜け出してきた。 雑貨屋の店番を代わってくれる人はもういない。 だけど――最後の世界まで退屈な店番で終わるのは真っ平だ]
――…
[蒼穹は莫迦みたいに綺麗に澄み渡っていて 自分がちっぽけに思う。 嗚呼、そう言えばセシルとそんな話をしたんだっけ。]
……て ……い ……
[空を見上げ何事かを呟いた。 誰にも伝えられない心の軋み。]
(306) 2010/07/06(Tue) 00時半頃
|
今は、もう少し。
このままで、居たいんだよ。
ヴェス。
…私、頑張る、から。
我が儘でも、なんでも。
─…だから、もう少しだけ。
妹で、いたいんだ。
|
[風が浚う髪をそっと押さえ、耳に掛ける。 吹き抜けた風は何処へ往くのか。
嗚呼、一人なんだな、と。
そう感じた瞬間だった。 家族もいない。 遊んで呉れる男も居ない。]
……〜っ
[流石に、堪えた]
(319) 2010/07/06(Tue) 01時頃
|
[何処からか聞こえる囁き]
ただ、幸せに――…。
この村を覆う死病の果てに苦しみ、絶える前に。
あなたは、慈悲を齎すの?
現世の苦しみから解放された世界へ
そこで、幸せに、苦しまないで、との祈りを乗せて。
―――分からない。
[死んだサイモンが幸福だったかどうかは知らない]
慈悲なんて偽善かもしれない。
[生きることに価値があると、説いた]
此の手は今は未だ、誰にも伸ばせない――
[されど彼女が、苦しみから解き放つ事をするのなら]
……委ねるわ。
そう、偽善、かもしれないわね――…。
生きる事は素晴らしい、もの。
たとえ、時間が限られていたと、しても。
[生きる事に価値があると説く彼女に]
でも、愛する村が悲しみに包まれるのはみたく、ないわ。
今は、誰にも伸ばせない、のね。
私は、メアリーが死病に伏すなら――…。
残された人に共に逝ってもらう心算。
彼女が苦しんでいるのか、否か――…。
私は出会った事がないから分らない、けど……。
[彼女の声を聞きに向かう心算では、いるけど。
委ねるの言葉に――…]
私で、いいの?
あなたの手でなくて――…。
あなたにその力が無いのなら、それをしてもいいけど。
私はあなたが死病に冒されるまで――
それをする心算は、微塵もなくて、よ?
あなたの想いの強さを感じていた、から。
メアリー
[ぽつ、とその名を復唱し、
彼女に執心だった人物を、想う]
彼女を想った彼は――…
[後を追うことを望むか否か。分からない。分からないけれど。]
異議は無い。
――−"彼女"の終わりだけは
委ねません。
[ただ、今はその時ではない、とだけ]
委ねてもらえるようなら、私が――…
メアリーさんにご執心だったあの人に旅立ってもらう事にする、わね。
[そう、ヴェスパタインがそれを望むのか否かは分らないけど。
別れ、残される側は辛いものとの、妄執も女にはあって。]
ラドルフさんも――…
妹のメアリーさんが死病に逝くの知れば、
苦しみそう、ね。
でも、ラドルフさんは誰かをまだ選びきれて、いないわ。
それを見届けてから、とも想っているの。
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