276 ─五月、薔薇の木の下で。
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―中庭―
[ 東屋から、小さな子供の声(>>125)が聞こえる。 音楽は詳しくないから、そこにのる奏者の苦悩や苦痛や 憧憬や、想いなんて測れるはずもなく。 ただ、ああ、綺麗だなと思う。
キラ、キラ、キラ。 目を閉じれば、浮かぶ木漏れ日。
やがて誰かの足音(>>132)が混ざるなら、そちらに瞳を向けようか。]
(134) 2018/05/22(Tue) 01時半頃
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よう。
[ 薔薇は話しかける。
狂い咲いた赤い薔薇の、天鵞絨の海の――赤い湖の――中
平気で佇めるまでになってしまったらしい男へ。 ]
神から賜ったものは、使う気になれそう?
[ 誰かを連れているならきっと、そういうことなのだろうか。
無粋にも、自分が吸った肌を見やり、息を吐く。 ]
[ この空間でもその恩恵は、俺にはない。
奪いたいほどの衝動があっても、俺は奪えない。
血も、涙も、あいも、―――隣も。
薔薇は根を張り、檻の中。
咲いて香って、枯れて、散る。
自由さえ手にいれる事が出来ない、この指先。 ]*
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あー…、ところで…… だいぶ、しんどい、な。
[ 間引くという名目で、薔薇の蕾をちぎったせいだろう。 一人で立ち上がれない程度には弱っていて。
その中で花なんて咲けば 木の栄養はそちらにばかり注がれて、 体のあちこちが重く、痛く
なんてのは、こっちの話。 ]**
(135) 2018/05/22(Tue) 01時半頃
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─── 神から?
[ 声為らざる声には、 振り向きもせず、
目線を合わせることさえ無い。
…平気で佇んでいるか、は 少々わからない。
そもそも"平気"とは何か と言う状態だ。
いつだってこの男には背中ばかりを見せてきた。
( 其処は似ていないな、 "もうひとり"。 )
自然と反芻した言葉は不遜な疑問系。]
神にはとうに裏切られている。
──── 信じた記憶なんて殆ど無い。
祈った記憶、 も
それならずっと 薔薇からの、
……お前からの賜り物だと、
そういわれる方が使う気になる。
[ 薔薇の 真紅の囁きに、
微かな笑いが混ざる。
喉をならすような、 ……螺の弛んだ其れだ。 ]
[突き放そうとしている癖に
抱き寄せられて、嬉しくて。
本当にどうにかしているんだ。
そうされたいとずっと思っていた日々が
脳裏にどこまでも美しく蘇る。]
[涙(あめ)も雨(なみだ)も降らない乾いた日。
日の光は煩わしい程、それも輝く思い出の一つ
あの時彼はどんな言葉をくれたっけ。
思い出すのが今は苦しくて、止めた。
甘やかしい心地と、手すら伸ばせない苦しみ。
矛盾する感情の名前をとっくに知っていた
臆病者は声にすらせず、心の内に留まったのは。
やっぱり自分勝手で、願いきれなかった想い。
────好きだって、言ってくれたらなぁ。
自分で言わなければ、返るわけがない。
それなのに。]
………… ああ、
[君もそう思ったのかな。
俺は嘘をつくのも上手くなかったみたい。
────本当にばかだなぁ。]
[俺は彼に暴かれたかったのだろうか?
分からない。触れてはならないと思っていたから。
ただ、誰に、というものが無くても
暴かれることを望んでいたのは事実。
そして、同じことを、
二人ともそれが出来なかったのは
手を伸ばし合えなかったということなのだろうか。
きっと気持ちの問題じゃなくて、
どちらも何かに囚われていた。]*
── 独白 ──
嬉しかったけど、
[同じくらいに辛かったけど、と
いつか願いきれなかった想いを浮かばせる。
残酷に叶えられてしまった、それを。]
最後くらい、イアンって呼んでくれても。
[いいじゃないか、と。細やかな恨み言。
それは正常の声、決して対象には届かない響きで
落ち着いた後、ひとりきりで口にした。]
[先輩、会長、いっちゃん。
みんなみんなそうだ、ああ。
“あい”も“こい”も手に入らないと分かっていても、やはり
可愛い女の子でもない寂しがりなんて
────気持ち悪いだけかもね。]*
そうね、カミサマなんていないからね。
悪魔はいるのにおかしなこったよ。
いや、悪魔もそのうち消えてなくなるかな。
[ カミサマがいるんだとしたら。
茨に締め付けられたこの空間を見て嘲笑ってるんだろう。
そういう性格の悪いやつだと、思ってる。
目も合わされず返る声。
届きもしない独り言。
この声は、俺の声は、
どこにいても届く、呪いのような声。 ]
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[ 足音が、声に変わる(>>140>>144)。 ぐり、と首を捻ってそちらを向いた。 ]
こんば、ん? あら、かわいこちゃん連れて。 ケヴィンもやるねぇ。
[ 曖昧な挨拶の途中にからかうような声。 もう、いつものそれと変わらないそれだった。 正しい顔をした、人の子の声が、俺に落ちる。 ]
水かぁ、そうね。 あるにこしたこたねーけど。
[ 欲しいのは、そんなものではなかったけれど。 ]**
(167) 2018/05/22(Tue) 08時頃
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[ 水があれば。 精があれば。
生きることは出来るかもしれないけれど。
一度吸い上げた肌に、まだ淡く残るだろう花弁を。
触れた耳許を。
見つめて。
それでも自分から触れにいかないのは
花が枯れる決意をしたから、なのかもしれない。 ]
──── 一応、 言っておくが、
色々、聞こえてしまっているんだからな。
[ ぽつん、 と 声が降る。
全く、人選ミスだ。 ひとの心の機微なんて、
パンにしか繊細で無い、己に分かろう筈もない。
……でもそう、残念ながら、
一部始終を聞かずとも、
"もうひとり"と"もうひとりだったもの"の間、
薔薇と、"もうひとり"の間の"別れ"
それらを"知る"のは、 只この青年のみで、]
まあ、 ―――― 信じちゃいないが、
何時か、 幼い俺を抱いていた彼の司祭も、
確かに俺を"あい"していたんだろう。
…司祭が体言すべきは"エロス"でなく
"アガペー"であるべきだが。
[ きっとこれだって、"もうひとり"に聞こえてしまう。
呪いの言葉に罪の懺悔を……随分と開き直って乗せて、
"穢い"と言えばこの男も、 神の定義で言えば十分に、
遠い昔に当てはまってしまっている。
薔薇に染まり行く茶は射抜く。 薔薇の真意を計り行き、]
――― "お前が選んだ"んだろう、 俺を。
勝手に選んで、勝手に授けたくせに、
勝手に枯れるな、 阿呆。そのくらいの責任はとれよ。
[ 首もとに花弁を残したからには、 …なんて
めんどうくさいおんなのように、]
"一度振られたぐらいで"
……お前が自分の存在を否定するなら、
また―――― 何を信じていいんだか、わからなくなる
[ ……はじめて、"彼"の欲がわかった。
この"薔薇"の顎を引っ掴み、
"此方を向け"と無理矢理に視線を合わせ、
薄い唇を食めてしまえば、 ……
――― もうひとりに"見えている"場では
随分と薄暗く、 おもたい欲望だ。
嗚呼、でもこれは"あい"じゃあない。
明らかな"害意"が、其処には 有る。]
[口を挟んだのはその一言だけ。
どう取られても、受け取られなくてもいい。
でも、これも中庭で見つけた時と同じ
彼のことを想って行ったこと。
先に何があるのか、そこにいない俺が何かを変えることはない。]
[重なる過去を持ってして、違う人間。
害意なんてものは、一度として彼に抱いたことがない。
それでも、これもまた。
彼に与えられるべきものじゃない
“あい”に育ちきれないまま抱えてきた、未熟者の“こい”]**
[ ─────── 背筋を這い上がる、甘い、甘い 快楽と、]
[ 奪われ行く 精を どこかとおくに感じながら、 ]
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は? あい?あがぺ?
[ それはまだ、甘い接吻の様子を目撃する前(>>177)。 手を引いた片方が寄越した、視線と言葉。
薔薇の香の中に ほんの淡く、小麦の匂いを感じた気がした。 ]
(220) 2018/05/22(Tue) 20時頃
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[ 聞こえてしまっている、と告げる()声が
自らの罪――それを罪と謂うかは知らないが――を()乗せて
射られる、眼孔。
まるで嫉妬のような口振り()をして
でもそこに《あい》も、《こい》もきっとなく。
しかし心地良い、言葉の棘。 ]
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ぶ ―――っはははは!!!!
[ 場違いに、突然笑い出した俺に かわいこちゃん(>>184)は驚いたかもしれない。 下級生の気遣いも知らず。 また、直接問われようとしていたことも同じく。
派手にふきだして。 少しして、変わる二人の空気に口を噤めば 本日は月下のキス日和だそうで。 ]
(221) 2018/05/22(Tue) 20時頃
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[ 本当に、人の子は面白い。
簡単に「枯れるな」、()と謂い。
簡単に「ずっと生きろ」、()なんて謂う。 ]
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