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っ、 ふ……
[なぞるような動きは、けれど服の上からだ。
なのに身体は小さく跳ねて、
漏れた吐息は耳元の彼のそれと近い熱を含む。
そんな大袈裟な反応をしてしまったのは
熱い声色に背筋を這い上がるものを感じたのは、
きっと、異様な状況と思いもよらなかった言葉の雨に
神経が昂ぶっているせい。
柊真に、大切な人にそんな反応をするなんて
羞恥心で顔が少し熱くなるのを感じた。
駄目だ、駄目だ、許されない。
自分に言い聞かせるように、何度も繰り返す。]
[けれど混雑した脳内は、追いやるべき思考も浮かばせる。
柊真の隣に立つ彼女たちが妬ましかった。
その場所を、返してほしかった。
────これは、望んでいたものではないのか?
嫌われてなどいなかった事実と、
本来恋人の女の子と重ねるべき欲望を向けられている状況は。
……違う、違う、そんな筈は無い。
おれはヒーローのヒロインでは無いのだから。
いつかおれ達は誰かと結婚して、離れることが正しいのだから!
連なる否定が頭を埋め尽くして
どうしようもなく胸がかき乱される。]
駄目だ、 やめてくれ、お願いだから……
[両手の覆いを恐る恐ると外す
僅か頬の血色を良くした顔で、弱々しく首を横に振った。
柊真が同性を好きだなんて、聞いたことは無かった
何よりも、確かに異性と交際していたのに。
何人も言い寄る程人気がある彼に対し、身長も体格も劣っている。
かといって女の子に見えることなど、有り得ない。
何より守られてばかりの逃げてばかりな、情けない人間だ
一体何故、そんな自分なのか。
こんなに強引に求める程に欲を向けられているのか。]
ちゃんと話そう、こんなのは嫌だよ
[呼び掛けながらも、身体は抵抗を示さない
躊躇いながら、視線が彼に向く。
女の子のように組み敷かれるのは、怖いと思う。
だってそんなこと、男ならされると思わないだろう。
でも、それを行っている人はやっぱり怖くない。
ヒーローではなくても、それと地続きの同じ存在。大切な人。
せめて理解したいと願うのは、ただのこの状況からの逃避なのだろうか。
ずっと怖がって逃げていたから
聞かされても、分からないことばかりだ。]**
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ>>80>>81 (84) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ
(85) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
[どうしてやるのがいいのだろう。
どうすれば彼は喜ぶのだろう。
自分を頼りがいのある大人だと、思ってくれるだろう。]
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ[おろおろと心配しているうちに、既にドアノブに手をかけていた。「開けるよ。」そう口を開こうとした瞬間、中から咳と、トイレットペーパーを引き出す音がドア越しに聞こえる。] (86) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ !! (87) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ
(88) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ
(89) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ[驚きと、少しの恐怖と、 (90) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
![]() | 【人】 紅客連盟 イスルギ[状況の割に吐いた勢いでテンションはおかしくなっている反面、体には力が入らないらしく、ぐったりと力の抜けた弱々しい体を支えながら個室を出て、ベッドへ移動するのに付き添う。 (91) 2018/12/01(Sat) 06時半頃 |
……………
[
唇の隙間から溢れる吐息と、声は
熱を帯びながら男の耳に届く。
もっと、と伸ばす手が止まったのは
行き先を失ったそれが、ぎ、と拳を作るように握られたのは
……違う、違う。
こんな事がしたいんじゃない。
彼を、壊しかけていた自分に気付いたから。
彼が幸せになる為に、これ以上はしてはいけない。]
[
僅かに赤みのさす頬を、遠慮がちにすくい、呟く]
………ごめんな。
お前のヒーローになってやるって、言ったのに。
[ヒーローはいない、と男は言ったけれど
おまえだけのヒーローで居ようとしたからこそ
きっと、こんな事になってしまった。
ただ、今溢れるのは
彼の理想のヒーローになれなかった事への、罪悪感。]
なぁ、本当は一人で寂しかったんだ。
だからお前が来てくれて、嬉しかったんだよ。
………他でもないお前が。
俺が一番傍にいて欲しい、って思ったお前がさ。
[ヒーローが守りたかったものは
大勢の人々ではなく、たった一人の幼馴染。
ヒーローに必要だったのは
可愛らしいヒロインではなく、安らぎを与えてくれる居場所。
どちらも、持っていたのは幼馴染ただひとりだった。]
目が覚めたらお前が居て
お前が作った弁当を食べて
くだらねえ事言い合って
そんな日が一生続くわけ、ねえのにな。
………だって俺達は“男同士”だから。
[漏れたのは、僅かばかりの本音。
女であるというだけで
簡単に俺からお前を奪っていく誰かに向けて。]
ずっと一緒に生きて来たのに
お前を幸せにするのは、
俺の知らない奴なのが許せなかった。
………けど、もう良いんだ。
お前のヒーローじゃない俺じゃ、
お前の傍で、お前を守る事なんか出来ねえから。
[隣を奪われたくない。
そんな感情が育てたものは、酷く歪で
恋人に囁くようなそれとは違うのだろう。
それでも、きっと、一言で伝えるのならばそれは]
お前が好きだから
誰よりも、何よりも大切だから
───…… だから、もう俺に近付くな。
[本当は、近くにいて欲しい。
誰よりも近くで、その笑顔を見ていたい。
俺が、俺の手で幸せにしたかった。
けど、それはもう俺の役目じゃない。
何処に居ようと、お前が笑顔でいてくれるのなら十分だと
自分に言い聞かせ、醜い心を押し殺しながら、そう告げた。
その時の男はきっと
平気だと、幼馴染に強がっていた時に似た顔をしていて。]
………なぁ、俺が言ったら、何でもするんだろ?
だったら早く
今日の事は忘れて家に帰れ。
俺が、お前の事 無理矢理奪っちまう前に。
[そうしてくれなきゃ
きっと、止められない。
間違っているのに、こんなにもお前が欲しい。]
…………稜、頼む。
お前を、傷付けたくねえから。
お前には、笑ってて、欲しいんだよ。
─────ッ……げほ、 ゴホ、ゴホッ ゴホッ!!!
[喋り過ぎたせいか、込み上げた咳の予感に
彼の顔を避けて、隣へ顔を埋めながら大きく咳き込んだ。
喉が焼ける痛みを感じながら、卑怯な事をしていると思う。
こんな自身を置いて、幼馴染が帰れる訳がないじゃないか。*]
[方徳さんのもとに戻れば、作業を止めて横になっていた。]
……どうでした?
[すすいだペットボトルに水とポカリを入れて戻るまで5分少々。
体温計が鳴るには充分な時間かと、結果を問いかける。
素直に液晶が表示した数字を聞けば苦い表情をするしかないが、かといって眠れるか、回復するかは当人次第なので、あとは見守るくらいしかできない。
食欲はあるそうだし、薬も飲めているあたりは、不幸中の幸いか。]
何か、他に僕が力になれそうなこと、あります?
[彼が眠ってしまう前に、思い切って聞いてみた。
どうしたらいいやらわからず、思いつくことも尽きたが、本人はもしかしたら要求を抱えているかもしれないと*]
[寝起きの身体で強引に引きずり込まれて
十数年の付き合いの幼馴染は、知らない姿になってしまった。
きっと、沢山言葉を向けなければ駄目だ
こんな風に関係を歪ませたくないと、伝えなければ。
────そう思ったけれど、
ひとつ、彼が息を吐いたのが合図。状況は変わる。
すくう動きはまるで遠慮しているよう。
呟かれた謝罪とその続きには、罪悪感が込められている。
それは、嫌がられて止めた行為と矛盾しない態度。
ふと思う、先程もそうだった。
触れられたのは、少しの間。手はもう伸びなかった。
ただ服の上から触ることが目的で押し倒したのでは無いだろう。
おれは腕も掴まず無抵抗にただ顔を隠していただけなのに。
ああ、そうか。そもそも────
今まで何もせず、ずっと遠ざけていたのだって。]
柊真は、嬉しかった
おれが、一番……?
[唇は拒む言葉を繰り返すのを止めて、柊真の言葉を拾い
内容を解釈し、辿々しく声にする。
動揺は困惑に塗り替わって、
今はそこに理解が広がり始めるようだった。
視覚と聴覚が、至近距離から
「ヒーローではない鳴海柊真」を捉え続ける。]
っ……
[唇を噛み、表情が陰ったのは
自分で言った否定を、彼が口にした時。
傷つけてしまったような気がした。
そして、これはまるで柊真に拒まれた後
自分が感じていたことそのものだったから。]
[少しの胸の痛みを覚えている間にも、話は続く。
やはり、それもまた────許せなかったと言い切られた内容も
おれの抱えたものに、とてもよく似ている。
だから、直感的に過る焦燥
その続きを聞いてはならないような気がした。
けれど今更耳を塞ぐのは、あまりにも遅すぎて。]
……ああ、
[余すことなく、全てを聞き遂げてしまった。
吐いた息と零れた声は、嘆くような泣きたいような響きを持つ。
そんな顔で、あの時の君の姿で、……言わないでくれ。
[ああ、柊真は変わらない。
こんな状況でも、結局ずっと相手の為に行動している。
それなのに何もかもが間違っている。
幼馴染を帰そうとする彼は
そうならなければ、きっと本当におれを……
傷つけたくないという気持ちが、切実に伝わってくる。
さっきよりもずっと胸が痛い。]
ッ、柊真……!
[不意に幼馴染の身体が、動く。次いで傍らから聞こえる咳。
隣に顔が埋まることで、身体と身体はより近くなった。
大きい背に向けて、両手が伸びたのは思考より前の行動
そのまま抱き締めるように腕を回して。]
もういいんだ。
柊真はヒーローじゃなくても、いいんだよ。
一人で抱えるくらいなら、傷つけてくれていいんだよ。
ずっと気づかなくて、ごめんね。
おれ、やっぱり自分ばかり助けられていたんだね。
[撫で続け、決して離さないまま
ぽつりぽつりと語り掛け始める。
身体に負担を掛ける程に伝えてくれた内容に、
思ったことを一つ一つ、声に変えてゆく。]
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