103 善と悪の果実
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[見開かれた瞳は、やがて力を失った]
………姉様、とても柔らかかった
あたたかかった
…今は きっと 冷たくなってしまったのね
[諦めたように呟いた後、
意思を確認しようと顔を見たがる。
少女は蛇の意図を知らず、それでもまだ、無防備なままだった]
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―栄光の消えた寝室―
[部屋に充満した匂いは、鮮明に記憶を呼び寄せる。 塵や煙、薬品の、焼け焦げた、血の匂い。
―――霞む、煙草。
嗚呼、僕の中の均衡は崩れはじめている。]
………信じるはずないじゃないか。 僕があそこで造られた玩具だなんて。
[彼が問う言葉に、僕は返さなかった。 呟く部屋は死体と二人。
義手や義足をより向上させる為の研究施設。 そこに人として生を受け、人として扱われず そして人ならざる身体になった僕。 身体のあちこちが機械に満ちた、撥条。 この街の技術の産物だなんて。]
(196) 2012/09/28(Fri) 01時頃
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[適当な紙を探し、まだあたたかな右手で綴る。 禁断の果実を探しても自分のものになるわけじゃないと言った、あの人へ。 そのつもりで、認めた。]
【木は森に。 果実は果実に。】
[盗んだものの場所を示す紙をポケットにしまい込んだ。 その時か、背後に気配が訪れたのは。]
(200) 2012/09/28(Fri) 01時頃
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やぁ、ジョセフ殿。 そんな青白い顔でこのような場所に、いかがしました?
[僕を見詰める眸。 それは怯え、恐怖、畏れ。 そして隠しきれぬ…――殺意。]
怖いですか? 殺人鬼がこの屋敷の中にいることが。 外堀を狂犬に囲まれていることが。 不相応の場所に落ち着きなく在ることが。
それとも――…
[背に手を翳す。 昨夜盗んだ果物ナイフが、抜かれる。]
(202) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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こ の 、 僕 が ?
[ギラリと刃は煌めく。 まるでその輝きは、失われた林檎のように。]
その眸、やめてほしいなぁ。 僕を気持ち悪い生き物みたいに。
…――大嫌いなんですよね、そういう眸。
だから僕の為に、死んでくれません? ……“狼に噛まれた”とでも思って下さい――ッ!!!
(204) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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[駆け出す小さな身体。 濡れた烏の眸を見開いて。
ナイフは確実に喉元を狙う。 飛び上がり、突き付け。
三階からの騒音は階下へ届くのだろうか。
握りしめた銀が貫いたのは―――……**]
(205) 2012/09/28(Fri) 01時半頃
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靴磨き トニーは、メモを貼った。
2012/09/28(Fri) 01時半頃
[赤い意思。
殺戮の匂い。
突き付けるのは、異端者を見る眸。
重ねるのは。
重ねるのは。
僕を知った人の眸。
僕を造った人の眸。]
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は兄にでもなりましょう。
このような、下賤な浅黒い肌でも許されるのならば。
…貴女様が望んでくださるのならば、
私は。
―――――…御守りしましょう。
レディ・ポーチュラカ。
兄様………?
[手の中の蝶は、同じ血を吸うことはない。
震える手は、震える唇は]
[小さな呟きは、鈍く光る銀色の運命を絶つ。
赤の殺意をもってして。
どちらかの命をもってして。
濡れた烏の、
塗り潰された黒の、
重ねた血の、
背負う罪の、
眸を開ける頃、世界は“楽園”に変わっているだろうか―――……**]
……ええ
[守られることになれた少女は、花のように笑う。
家族を失い壊れた少女は
けして取り戻せない欠片の幻影にすがる他ないのだ――**]
[本質は、望まれるままに]
[共にも]
[男にも]
[女にも]
[兄にですら]
[脱皮を繰り返す蛇は、己というものがまるでないように]
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