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[ そうでもしないと、殺されてしまいそうだから。]
[ たかだか御伽噺に似たような死に方をしたからといって、犯人を炙り出そうとする状況に頭が追いついていなかった。
どうして。
────生まれてからほとんどの日々を共に過ごしていたのに。
どうして。
────そんなに簡単に探そうなんて。
どうして。
────それが、ここにいる誰かの可能性もあるのに。]
……簡単に、殺そうとする。
殺せるんだ、……な。
[ 落ちる言葉は呆気ない。
少し前までは、どうにか分かち合える手段を見つけようなんで、都合の良いことを考えていたけれど、今の状況で同じことを思える筈がなかった。]
………死にたく、ない。
[誰かのために疑われて手にかかって命を終えるなんて。
そんなスリルなんて、いらない。
それくらいなら、]
俺の知ってるままのみんなでいて。
『 さぁ、誰のケツを凍らせる? 』*
【人】 逃亡者 メルヤ ―――にんげんですよ、犯人は、きっと。 (93) 2015/05/27(Wed) 23時半頃 |
──きっと、諦めてしまいたくなる。
[怖い。怖い。
目の前で行われている話し合いの意味よりも、知っている筈の人達が、まるで知らない人みたいで。
異分子を省く為の、算段。
疑わしきものは≠ネんて言葉に、自分が含まれることを想像した事はあるんだろうか。
雪鬼は、人に取り憑くという。
それを止める手段は、火掻き棒で────]
『 殺すんでしょ? 疑わしき$l間を、人間が。 』
[それじゃあ。まるで。
ただの、人殺しじゃないか。]
[金の髪の彼の顔を見た瞬間
その理由が少女には未だ理解出来ない。
叔父の死と自らの思考のエラーが結び付かない彼女には、昨夜まさにこの場所で行われた事を、記憶として正確に認識する事が出来ていなかった。
それでも、勝手に涙が溢れ出すのが彼の瞳の底を見詰めているせいなのだけは、分かっていた。
獣が眠る赤い思考をひたすらに塗り潰す、繰り返し繰り返し溢れる言葉。]
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない。
あなたのせいじゃない、から。
なかないで。
わたしが、いるわ。*
[ 半ば平然と“人が人を殺めようとしている”状況。
これを何と呼べば良いというのだ。
瞳と瞳が交差する瞬間。
馴染み過ぎた声が囁くのだ。]
『 きみは自らの正体を知った。雪男なら……狡猾に振る舞って人間たちを確実に仕留めていかなきゃ。 』
[けらけら。
瞳が笑む。
一瞬。ほんの一瞬だけ、無意識。]
俺たちは、悪く、ない。
[収まらない震えの理由は、どうしたって口に出せなかった。
凄まじい動悸。心臓の音が、二人に聴こえてしまうんではないかって、不安と焦りで胸が詰まる。
断ち切られた電話線を前にして、呆然と立ち竦んでいた。
どうして──どうして自分は、その光景に見覚えがあるのだろう。
甘い囁きが耳の奥でせせら嗤う。
『 君は、自らの正体を、知った 』。
明け方、何か厭な夢を見た。
それは、紛れもなく夢だと思っていた。今だってそう思ってる。なのに。]
(ねえ。どうして──そんな瞳で、わらうの)
[背後の彼の瞳が。
時折、ほんの一瞬、責めるように、嘲笑うように、歪むのだ。
まるで早く目を覚ませと、急かすみたいに。]
[ 殺さなければ、殺される。
ここの人たちと見つけ出して、話を
交えられるのは当然思えなかった。
いつもなら、“いつも通り”ならば、そんなこと否定してやるのに。]
…ケイト、ドロテアさんと先生の話、聞いてて。
[ 直接口にしなくても。
こうやって目と目が合っている状態ならば、胸の内で唱えられることをついぞさっき知った。
自分と同じ声に窘められている時に、何と無くそんな予感がしたからだ。
勿論気のせいかもしれないけれど。
こんな時に自分の知らないことがあることは不安だから。
踵を返す前にそっと、囁いたのだった。]
[どちらにしたって、自分達を追い詰める存在は、]
[ ────殺すしかないのだ。 ]
[『わたしたちが、生き延びるための、方法が。』]
『…ケイト、ドロテアさんと先生の話、聞いてて。』
[音を介さず頭の中に響く声。
立ち去る間際の彼の目が
自分と彼の思考が繋がってしまっている。
それが『どういう』事なのか、少女にはもう分かってしまっていた。
時折脊椎を駆け上がって、強制的に介入する、他人の意識。
それがおそらく「雪鬼に憑かれる」という事なのだろう。
つい先刻まで夢だと思っていた全ては、おそらく曖昧になった記憶の断片で。
認めたくはないけれど、すべて、現実に起こった事なのだ。]
ねえ、……シメオン。
[その場を去った彼に、囁いてみる。届くのかどうかは分からない。
けれど、どうしても、どうしても、不安に思う事があった。
本当は駆け寄って、彼の瞳を見て確かめたい。けれど、そうすることが今の状況を悪くするのが分かっているから。]
あなたは、私の声を聞いてるあなたは、『シメオン』なのよね?
[私が知ってる、私を知ってる、あなたなのよね?
祈るような気持ちのその問いに、果たして答える声はあったのか。]**
【人】 逃亡者 メルヤ― 隅っこ ― (150) 2015/05/28(Thu) 18時頃 |
【人】 逃亡者 メルヤ 殺人鬼――いえ、雪鬼だとすれば (157) 2015/05/28(Thu) 18時半頃 |
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【人】 逃亡者 メルヤ でも誰かを殺さねばならないなら (168) 2015/05/28(Thu) 20時頃 |
[ 殺さなければ。
脅迫概念のように頭に渦巻く一文字を打破する声があった。 ]
俺は、……俺だよ。
[大衆の前で言葉を浴びせながら、胸の内で囁く。
意図などしていないのに掠れた声色は自分の精神状態に影響しているのだろうか。分からない。]
………なぁ。
[ ケイト。
あれ程、馬が合わないと思っていた人物に呼びかける声は情けない。]
お腹が、……空いたんだ。
[何でだろう。
絶望に呟きは溶けていく。
やり切れなさの混ざった囁き。
虚栄心の合間に潜り込む思考は爪先から忍び寄り、嗤った。]
『 キミの聞いた“おはなし”を教えてよ。
今日は誰を仕合わせに仕立ててあげよう? 』*
【人】 逃亡者 メルヤ じゃあ―――貴女は。 (198) 2015/05/28(Thu) 22時半頃 |
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