25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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…――
いつの間にか 天上の囀りを虜とされましたか。 ――選定の、思い切りの良いことだ。
[似ているのだろうか。そこも。 霞月夜を見て、それから襖の向こう側へ眼をやる。]
(163) 2010/08/05(Thu) 12時頃
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[会話が途切れるを見計らい]
――…ではこれにて失礼いたします。
[頭を下げてその場を辞す。 りん、と鈴が鳴った。 行くは高嶺の去ったという方へ。 イアンとは向かう方向が違うだろう。]
(171) 2010/08/05(Thu) 12時半頃
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―渡り廊下― [歩きまわって探したが、 どうにも高嶺は捕まらぬ。 は、と息を吐く。]
…――逃げているのではなかろうな。
[むすりとし頬杖ついて遠くを見やる。 風音、木々を渡る。 ――りん、と鈴の鳴る音。 月はまだ顔を出さない。 今宵は満月だという。]
(187) 2010/08/05(Thu) 13時頃
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―渡り廊下窓際―
……――
[窓縁に腕を乗せて凭れかかっていると ふと先ほどの蝶がひらりひらと飛んできた。 蝶が人に慣れるなど話は聞いたことはないが 逃げもせずに傍に止まった。]
…華月はもう、 茶を運んだろうか。
[顔を傾けて呟く。 蝶に答える口はない。]
――…。
[細く、長く息を吐いた。]
(193) 2010/08/05(Thu) 13時頃
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呉服問屋 藤之助は、小僧 カルヴィンが霞月夜の傍に侍る様子を思い出し、よくわからないとも呟いた。
2010/08/05(Thu) 13時半頃
[そして、そんな恩を売ってまで、己の心を買おうとした男は…
哀れこの手に引き裂かれ、産まれる子の肥やしにされたという。]
呉服問屋 藤之助は、ランタン職人 ヴェスパタインのことを語る「しらとり」のことを思い出しながら、庭を見た。傍らに蝶。
2010/08/05(Thu) 14時頃
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―渡り廊下窓際― [からん、と下駄の音がする。 ひとつ瞬き、もたれていた身体を起こす。 りん、と鈴の音が鳴った。]
… 霞月夜 さま か。
[花を伴っていないのを 少しだけ不思議に思いながら 礼を向けた。]
(204) 2010/08/05(Thu) 14時頃
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―渡り廊下―
[似た顔に問われるというのは 奇妙な心地だ]
…、―― 、…そのように見えましたか。
[黒髪を指で梳いた。 霞月夜の艶含む白い美貌に 嗚呼、しらとりのことばどおりだと胸中でふと呟く。]
すれ違ってばかりのようでして。 少々休憩していただけなのですが。
[――先達の在りし日を思い出させているとは思わず。]
(210) 2010/08/05(Thu) 14時半頃
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―渡り廊下窓側―
――、…
[少しだけ、意外そうに紫苑色は瞬く。 近くでこんなふうに話したことはなく 又聞きしかしたことのなかった「霞月夜」。 それは、存外に――]
……満ちれば逢えますか。 急いても仕方のないこと…と。
[行儀よく立ち、自身の両の手指を絡めた。]
何分…主を持つかもしれぬ状況が 初めてでありまして。…お恥ずかしながら。
[すまし顔はそのまま、眼だけを伏せた。]
満ちる――……嗚呼、今宵は、満月 でございますね。
(217) 2010/08/05(Thu) 15時頃
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―廊下窓側― …――、大切な人、とは… いえ、…出過ぎたことを聞きました。
[失礼を、と先に詫びる。佳人の眸に過ぎる色に、言葉を重ねることを よしとしなかったのだ。]
――…、…はい。
[ゆらり、と離れていく下駄の音。 そちらを見ずに、開いた口は紡ぐ]
「白鳥」は。
……私に芸を伝えてくれた先達は ずっと貴方のことを話していました。 届かない月に、手を伸ばすように、ずっと――
……――。 …それだけです。引き止めて、申し訳ありません。
(227) 2010/08/05(Thu) 15時半頃
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―廊下・窓際― [遠ざかる足音。 また誰もいなくなる。
窓の向こう、鳥が見えた。 彼方の蒼。遥かな白。]
――ぁ
[傍にまだとまっていた蝶が羽ばたいた。 思わずといった態で少し身を乗り出して 空へと手を]
(236) 2010/08/05(Thu) 16時半頃
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……。
[届かない。 緩やかに、手は戻る。 なにもない、自分の掌を見て]
――… なにを…してるんだか
[呟いた。火傷の痕はもう微か。]
(237) 2010/08/05(Thu) 16時半頃
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―廊下・窓際― [風が吹いて、りん、と鈴が鳴る。]
…、――
[掌から視線を上げて 歩き出そうとしたその先]
…華月、
[その苔色を見てから、手にしている茶器に視線を移した。]
(241) 2010/08/05(Thu) 17時頃
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[揶揄るような調子に眉寄せて]
…、……別に、
[なんでもない、と言いかけてから 視線を苔色に戻し それから窓の外の方を見た。]
…蝶がいたから。
(243) 2010/08/05(Thu) 17時頃
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―廊下・窓際― …――、?
[瞬き、ひとつ。悪戯な馴染みの顔。 彼が見る先に視線を流すと白い蝶が止まり。 紫苑色の眼を丸くする。]
――…。
[ふと、変わる声色に 蝶に伸ばした指先を止める。 肩の白から、笑み浮かべる華月へ視線を戻し 少し、間があく。]
…捕まえる。
[蝶に指先を触れる。 生きている。生きていない――生きて。]
花は、…咲かないと
(246) 2010/08/05(Thu) 18時頃
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呉服問屋 藤之助は、記者 イアンらが庭にいた事などは、つゆ知らず。
2010/08/05(Thu) 18時頃
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―廊下・窓側―
…――、…
[蝶は、ふわりと花に変わり、咲く。 紫苑色の双眸は、一度驚きに見開かれた後、 緩やかに細められた。
視線は華月に移り、指先と指先は 触れるか触れないか。 躊躇い、華に唇寄せた。]
…ん。そう、…だな。
[それから、尋ねる声にはこう答え。]
花も、蝶も、好きだ。
(248) 2010/08/05(Thu) 18時半頃
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―庭先・窓側―
…、…――華月?
[ひとつ、瞬く。 そらされた苔色に少し戸惑ったように。 手には彼の手妻の――蓮の花。]
…、――
[行くといい、とも謂えずに そらされた顔を見たまま 手を、伸ばしかけて―― 躊躇って、]
(250) 2010/08/05(Thu) 19時頃
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[降りた沈黙。 視線交わして、動けずに。
囚われて、]
…―――
[言葉を見つけられずに、 常よりは、もっと近く――触れるか触れずかまで、伸ばして]
(254) 2010/08/05(Thu) 20時頃
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―廊下・窓側―
[指先が、触れた。]
―――、ッ…
[近づく。 保っていた距離より尚近く。 其処から逃げることはなく、 唇の端に触れる唇。
息を詰めた。]
(258) 2010/08/05(Thu) 20時半頃
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―廊下―
[――ちり、と 熱が 燈るようだった。]
…っ
[茶器が高く、音を鳴らす。 息が止まっていたことに漸く気づく。 離れて、怯えたような苔色が見えた。]
かげつ、――
[駄目だ、と拒否のような、抑えるような声。 紫苑色がごく珍しく、微かに揺れた。]
否、――己は、…
[何故ずっと迷って、戸惑っていたのかと、届きそうになっている、気が。手を、伸ばしかけた]
(271) 2010/08/05(Thu) 21時頃
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――望みはひとつ
願いはひとつ――
種植え付けて
腐らせる
この世の理
幾年もいくねんも
血を継いで
肉を喰らい
種を植える
二つ心は要らぬ
惑うては
いのちとり
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―廊下―
…、……
[困らせる。届くかどうか分からないのに 何を謂おうとしているか。 唇の端が 熱い。 手を、退きかける]
…己は、……蝶を、 ……追って、 おまえの、
[言いよどみ、口元を手で覆い 、眼を逸らす。 ――己は花だ。何を、と。]
(284) 2010/08/05(Thu) 21時半頃
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―廊下―
…、――え?
[瞬きを、一つして 視線を戻せば背が見える。]
知ってもらうとは、…何を、
[答えはなく、華月は歩き出す。 紫苑色を瞬かせ、躊躇ったのはほんの僅か。 ――りん、と 鈴の音鳴らして華月の後を追った。]
(295) 2010/08/05(Thu) 22時頃
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―高嶺の部屋前―
[華月の三歩ほど後ろを、 鈴の音と共に歩いてくる。]
…、――
[冬色が、高嶺と相対していた。 あのときのほうけたような表情が思い出され、 高嶺を、見て。 此方に気づくようなら、夫々に向けて丁寧に礼をする。]
(306) 2010/08/05(Thu) 22時頃
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――高嶺様
[憂い含みの安堵の表情が見え、 探し回っていたとき、聞こうと思っていたことを 俄かに思い出す。けれど]
――はい。
[呼ばれれば頷いて、 顔色を変えた冬色を一度だけ流し見て ――りん、と。 鈴の音残して入るを許された部屋へと足を向けた。]
(315) 2010/08/05(Thu) 22時半頃
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―高嶺の部屋―
[色の失せた冬色の表情、 後ろ髪引かれながらも部屋に入り。]
…そうですね。 今宵、佳き月で――
[困ったような微笑を見て、言葉を一度、切った。 胸元に手をやり、髪結い紐を出すかは ――逡巡している。]
…、……私は、… お話も、したく思っておりましたが 華月が――
[華月の言葉に、頷く。 紫苑色は苔色を、――少し、思わしげに見て]
(328) 2010/08/05(Thu) 23時頃
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すまん、ちょっと遅れるかもしれぬ。
[行かねばならぬが、動こうとしない花。
仕方なく、小さくそれだけ囁いた。]
……?はい、わかりました……
大丈夫です、やり遂げて見せます。
舞い手の花なのですから。
[聞こえた声にきょとんと。その後淡く笑んで。
ただ、通信が入ったついでに
暫く口篭って…言うとおりにしてくれれば
どうせばれること。意を決し話す]
……本郷殿に宴前に逃げるよう勧めました。
彼は人を殺そうとしても殺せない人。
多分獣ではないかと思いまして。
けれど、職務違反です。
この件のセンターからの罰は私が受けますので…
御報告までに
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