17 吸血鬼の城
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>>141
[マーゴの紡いだ言葉に、貌に触れた手に 目に熱いものを感じて……。
その微笑がじわりと二重になって……。
出してはいけない、手を出して、彼女を抱きしめる。 華奢な身体、それに毒を注ぎ込んだ。 でも、それでも、笑っているなんて……。]
――……貴女は、
[しばし、抱きしめたあと……また貌を見る。]
貴女は………
[続きが紡げず、でも、吸い込まれるように、その唇に口付けを……。]
(147) 2010/06/23(Wed) 02時半頃
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[そして、口付けを…しようと、もしくはした後、 はっと、また我にかえると……]
――……あ……
[目を拭って、混乱の表情を見せ、たあと]
自分は………。
[身を離し、苦しげに息を吐いて……。 そう、眸が紅に変わるのを感じ、
身を離すと、そのまま、また立ち去っていく……。]
(149) 2010/06/23(Wed) 02時半頃
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薬屋 サイラスは、眸が真紅になる前にと、駆けていった。**
2010/06/23(Wed) 02時半頃
[記者を連れ歩きながら
知人に先立たれ独り生き延びてきた過去を振り返る。
若いうち、未だ人と己の区別がつかなかった頃
幾度求めた手を振り解かれたか
幾度理由も無く虐げられたか
あまりに遠い昔の話は、霞がかってしまって
鮮明なのは、此処数年の出来事]
[未だ、城で宴を催す前の事だった。
食事の度に夜の街を彷徨い
月明かりの下、白薔薇の庭園でひとりの娘を見つける。
儚い夢のような娘だと感じた。
其の理由は直ぐに知れる。
警戒心も無い様子で、語りかける声
ならばと、正体を明かし
其の身に永遠をくれてやろうと誘いかけた。
美しい華が、枯れる前に散るのが惜しいと思う。
珍しいことだと自嘲した]
[喜ぶかと思った娘は、首を縦には振らなかった。
思い通りにならぬ歯痒さ。
彼女もまた私のものにはならぬと言う
拒絶した彼女に
気付けば牙を立てていた。
血を分け与える行為は、微妙な匙加減が必要なもの。
女の血を吸い尽くす手前で止め
命の散りかけた其の身を次は己の血で満たす。
人ならざるものへと変わっていく
其の身で受け止めきれぬほどの快楽が
彼女の記憶を何処かへ飛ばしてしまったのか]
[意識を飛ばした娘を連れて、城へと戻り
熱が出たのか毒を中和すれば良いのかと、
下僕に薬を買いに走らせる。
今思えば愚かなことだ]
……私のローズ。
永遠を生きるもの。
共に――…
[翡翠の瞳を再び見る事が出来た其の時から
刷り込みのように、幾度も繰り返す言葉。
ぴたりと止まった彼女の聲
城主は甘く優しく囁き続ける。
錯覚も永遠に続けば、其れが真実となるだろうから*]
――…うそつき。
[死を望んでいた白薔薇に対する聲は
震えの混じる情けないもの]
――……聲が、
聲が、震えておいでですよ、お嬢様――
[半覚醒のなかで囁きに応じる聲。
常の柔らかな響き、
けれど、どこか硬質な――]
[――新たな聲が聞こえた。
自らが招いた事だというのにそれが怖ろしく哀しい]
――……、
[逡巡するような間が生じた]
貴方の気のせいよ。
[沈む聲がそう答えた]
ああ……
[目覚めの吐息がひとつ]
――気のせい……
左様でございますか、ならば結構、
――お可愛らしいことですね?
[囁くそれは、砂糖菓子のような甘い聲]
[城主の甘く優しい囁きが鼓膜を震わす。
幾度となく繰り返された言葉がじわと染みて]
やはりお兄様にお任せすれば良かった。
[求めた白薔薇の変貌に女の心は追いつかない]
お兄様――…
私はまた、間違えてしまったのでしょうか。
[甘い白薔薇の聲に心が震える]
可愛くなんて、ない……
偽りは、…やめて……
[これは違う。
違うのだと自らに言い聞かせながらも
途惑いは隠せず上擦る音色]
[上ずる声音を聞けば、吐息に笑みが混ざる]
……ああ、ではどんなお言葉でしたら、
信じていただける?
あなたのお望みのままに、
謳って差し上げますよ、お嬢様――……
[その声は耳触りだけは、まろやかでやさしい**]
[ふと、
声が増える
増えた。]
――……セシル?
薬屋 サイラスは、屋敷内を彷徨っていたが、ふと、立ち止まる。
2010/06/23(Wed) 08時頃
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―屋敷内・いずこか― [マーゴに口付けた後、好きだという衝動が
悲しくも、この身は欲望に変換する。 そのままでは、彼女を傷つけてしまう、そう思った時、 もう、逃げるしか、思いつくことはなかった。 どんなに彼女が自分を受け入れる言葉を言ってくれるとしても…… それで、彼女を屠ってしまえば、
もう、自分は完全に、違うものになってしまうような気がしたから。
いや、 もう、黒い衣服をつけ、城主のように生きるのであれば、 きっとそれが、この血に流れる記憶に沿って、生きるための方法…であると、
わかっているのに。]
(186) 2010/06/23(Wed) 08時頃
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[そして、頭を振り、壁に背を当てて座り込む。 やっぱり荒い息遣いなのは、
息吹いた欲望が治まらないから。
同時に、頭に響いてくる声が増えたのも感じていた。]
――…白薔薇が……染まったか……。
[眼は閉じられる。*]
(187) 2010/06/23(Wed) 08時頃
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薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 08時半頃
[声ならぬ聲が混じる。
よく知ったおと
瞼を閉じれば、其の先に
手元に置きたいと思った蒼天は色を変えて]
ふ……ふふ
[吐息の間で笑みを浮かべ、可笑しなことだと囁き零す]
私のローズ
お前の望みは叶っただろう?
……セシル……目覚めたか
[愛しい
そんな感情が魔物に存在するものか。
是は執着
朱に交わり染まる蒼がただ惜しいだけ
胸に渦巻く甘い痛みの説明を
誰も城主に授けてはくれぬ**]
[重なり響く己の名の音]
おはようございます、旦那様――…
嗚呼、心根のかろやかなこと、
―――…私は、今まで何に捕らわれていたのでしょう。
[失われたのは闇にあって尚、善美に焦がれる心
枷なき薔薇は、棘を恥らうこともない]
ふふ……
つまらぬひととしての未練に囚われていたのかどうか
私はお前で無い故に、わからぬが。
良い目覚めを迎えたようだな
私の――…白い薔薇。
[蒼天は地に堕ちた。
胸を鳴らすこれは、其れを惜しいと思う何か。
けれど淫猥に囁く声音に曇りは無く
新たな眷属を歓迎している]
薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 12時半頃
[響く声、
そして、フロレスクは完全に落ちたか。
と、思えど、
それをもう何かいう資格はまるでない。]
――……
[声は出さぬが気配は伝わっただろう。]
はい、目覚めはとても心地よく、
感謝しております、旦那様――……、
[惜しまれたものを省みることはなく、
声はまどろむような甘えを滲ませて]
[何処かで己の名を呟いたような、声に]
――ああ、そうだ。
あなたへの感謝も、まだでしたね……?
きちんとお礼に伺いますよ。
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―テラス―
[そして、宛てなく彷徨いつつ、格子の硝子扉を開ける。 高い位置にあるテラスに出た。]
ああ……
[思わず漏れるため息は、そこに世界は広がっていることを再認識したから。 この城だけではなく、外へ。
そう、幾人のものがここでそれを考えたのだろう。]
(201) 2010/06/23(Wed) 13時頃
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[暗き空を見て、どくり、と身体がうずく。
いや、そこから落ちれば、人ならば命がない場所に
惹かれるのは、なぜか。
いや、違う、飛べるような気がした。
さきほど、飲んだ狩人の血が、
一層力を高めたのだろうか。]
――……ッ
[ふと響いてくる白薔薇の声。
微かに目を見開く。]
感謝?
[テラスで結果佇みながら…白薔薇の妖艶な声に眉を顰めた。]
薬屋 サイラスは、メモを貼った。
2010/06/23(Wed) 13時頃
[物言わぬ気配を感じながら
白薔薇へと微かな笑みを送る]
感謝は、私ではなく……彼等に。
望みを叶えて遣るがいい。
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[裡に、ふと、白薔薇の声が響く。 ああ、彼が、フロレスクなれば、
闇にあっても、落ちぬのが理解できた気もしたが、
それは幻だったか、と思う。
また、そう、考える自分に苦笑い。
なぜ、自分はもう闇なのに、こんなことを考えるのか。]
(203) 2010/06/23(Wed) 13時半頃
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