103 善と悪の果実
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捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/09/26(Wed) 21時頃
"――――――…見ていた。"
例えば自室をそっと抜け出した、赤い蝶を携える少女。
例えば人の気配のない大広間、闇夜に紛れた一羽の烏。
"蛇"は警備を誘惑し、甘い甘い毒を盛る。
きっと哀れな被害者は、今朝には何の記憶もない。
舞台さえ整えれば、劇が始まると知っていた。
捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/09/26(Wed) 22時頃
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[その場を去り際、面白げにからかう声が聞こえれば。>>39 無精髭の散らばる顔、はだけた胸に覗く刺青。 無意識のうちに身構えるよう、一瞬身体を固くしたが。
粗野な男は、今は昨夜の喧嘩相手が意中のようだった。 夕闇とすれ違い様に肩を小突き、こちらに構う様子はなく離れていく。
一瞬、こちらに向けられた黒い髪の影の目。>>44 二人の男の背中をいまいましく見送り、小さい舌打ちを落とした。]
(52) 2012/09/26(Wed) 22時半頃
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― →広間へ―
[広間へ向かう脚は、急ぐ必要もないはずだったが普段の男のそれよりも速かった。 途中、何気なしに声をかけてきた様子の黒髪の青年にはちらりと横目を向ける。>>42]
そのようだね。
[歩く内に、胸を乱していた物は収まりつつあったが、言葉少なに応える。 男の答えを待つ時間すら惜しむように、青年もやはり急いでいるようだった。 僅か、目を合わせた後で目礼をし、青年が行き過ぎるのを見送る。
やがて辿り着いた広間には、すでに来客や使用人の姿が溢れていた。
扉の前に立った所で、室内を見渡す。 そして、昨夜、遠くに見た壇上を見上げる。 輝きを落としていた金色の小さな影は、そこには、もう無かった。]
(57) 2012/09/26(Wed) 22時半頃
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[先程、見たばかりの長髪。>>50 そちらからはすぐに目を逸らし。
夕闇の視線の先にあるのは、テラスで逃げるように去って行った男だ。
突然、弾かれたように駆け去って行く少女。 それを追って出て行く女。
見覚えのある顔を幾つか見渡した後。 大人びた言葉を周囲に投げる幼い声に気付き見下ろす。]
…トニー。
[短く息を吐き、その問いには首を横に振って見せた。]
犯人捜しか。 … 気をつけろよ。遊びではないからな。
[彼の外見にとらわれた声をかけただけで、再度、壇上に目をやる。]
(60) 2012/09/26(Wed) 22時半頃
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[密やかなざわめきが引く事の無い広間。 失われた黄金。 この目にしておきたかったと人並みには思いつつ。
ふと、警備の者らしき男と目が合うが、警察署で見たような顔では無い。 興味は薄く目を逸らし。 まだ、手の届く場所に大人びた少年が居れば、その頭を黙ったまま緩やかに撫でてから。 広間を出て行った。]
(77) 2012/09/27(Thu) 00時半頃
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[女主人の遺体が見つかったとも聞いた。 しかし、仕事でもないのであれば、死んでしまった女など見たくも無い。 廊下を歩きながら、ふと思い出したように上着のポケットを探る。 潰れた煙草の箱。 残り少なくなっていた。 通りすがった使用人を呼び止める。] 煙草はあるか? [男の手にある箱を一瞥した後、使用人が頷く。]
後で部屋に届けてくれないか。 もうすぐ切れそうだ。
[使用人は二度頷くと、静かに下がって行った。]
(78) 2012/09/27(Thu) 01時頃
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[行きすがら、廊下の端に見覚えのある不思議な色のブロンドと、並び立つ黒髪の青年の姿が目に映った。 静かに脚を運びながら、横目にその様子を伺う。
何か考えるように視線を宙に走らせた後。 二人に背を向けて廊下を自室へと向かい、進んだ。
途中、刺青の男とすれ違う事もあったかも知れないが。
男は足早に通り過ぎ、やがて辿り着いた自室に入ると煙草に火を点け、窓の外を暫くの間見下ろしていた。**]
(79) 2012/09/27(Thu) 01時頃
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捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/09/27(Thu) 01時頃
だって…姉様はもういないのに
[小さく、小さく零した言葉はトニーの耳に届いただろうか]
―深夜の大広間―
[蝶が舞い、赤の蜜を吸う一方で。
僕は黄金の林檎を手に入れた。
あれはまだ、大広間の中にある。
部屋を彩る植物の飾り。
この屋敷を象徴するかのような黄金の林檎たち。
その中にひとつ、忍ばせた。
木を隠すなら森の中、果実を隠すなら同じくだ。]
もう、いない…?
[届いていた言葉。
蝶のように走り出した少女。
そして栄光の死。
――彼女が、グロリアを?
もし、そうならば。]
[そこには蛇もいたのだろうか。
そして昨夜のように、見ていたのだろうか。
林檎を盗み出す、アダムを。
果実を啄ばもうとする、烏を。]
[少女は秘密を守りきることに無防備だ。
感情を押さえつけることも苦手だ。
欲しいから、奪う。
邪魔だから、壊す。
善も悪も、自覚はしていない。
ただ、欲望に忠実な、心を知らない蝶のような存在。
この狂気が始まったのは何時だったか―――]
[まるでそれは、わざと聞かせているような推理。
撹乱したいのか大広間を外す言葉を用いて。
本当はすぐ傍にある。
ただ誰も、気付いていないだけだ。
足元に転がる林檎のどこかに、“それ”があるだなんて。]
[見られていることにも、聞かれていることにも気づかぬまま]
そうだわ
[人影のない、廊下の途中で手を合わせた]
早く…あの子をつけたいわ
[黒い蝶もいつか羽ばたくのだろうか。
それとも蛇に呑まれてしまうか。
軽やかに少女が廊下を進む頃、
薄紅の褥に眠る蝶は、乾いた血で黒蝶に*成った*]
[左手が凶器に沿う。
ふつふつと湧き上がるこの感情が何なのか、分からない。
不明瞭で、だからこそ、消してしまいたい。
僕は怯えているのだろうか。
あの、おどおどとした彼のように。]
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─回想・廊下にて─
[すれ違い様、再度向けられるからかいの声。 出会う相手に何か弱味でも見当たれば、その傷口に指を入れずには居られない。 そんな男なのかも知れない。 薄い笑みを浮かべる刺青の髭面を一瞥した後。]
── あんたが死んでくれりゃ少しは楽になるんだがな。
[冷ややかに言い捨ててから直ぐ、自分の言い草に驚く。 よほど頭に血が登ると、見境がつかなくなる事もありはしたが。
今、自分は落ち着いていたはずだ。 どんなに疎ましく思う相手であろうと、そんな言葉を吐きかけたりする事は── 、いや。
俺は、いつものままだ。 変わってなんかいやしない。
胸に過ぎった言い知れない不安を掻き消すように否定しながら。 逃げるようにその場を離れた。]
(128) 2012/09/27(Thu) 19時半頃
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─自室─
[広間から追いかけてきたのだろうか。 煙草の火を点けて間もなくしてから、男の部屋を訪れた少年。
第一声掛けてきた言葉には、肩越しに振り向き苦笑いした。]
すまんな。吸いたくない煙ばかり吸わせて。
[先程の刺青とのやり取りでざわついていた胸内は、見知った幼い子供の姿を前にすると、幾らか落ち着いたようだった。
テラスで彼に構う事なく煙草をふかしていた事を思い出しつつ詫びる。 煙草を手元の灰皿に押し付けて消した。]
(129) 2012/09/27(Thu) 19時半頃
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…探したところで、自分のものになる訳でも無いからな。
[肺に残る煙を吐き出しながら、一つ目の問いかけには答え。 二つ目の問いかけには、怪訝に眉を顰めた。
窓を向いていた身体を返し、少年の顔を見詰める。]
…事故?
[問い返す男の脳裏に、蘇る遠い記憶。 あれほど、大規模で凄惨な事故は、前にも後にも無かった。 事故で死者の数さえ確かにはならず、その後の事故処理がどういう経緯を辿ったかまでは、覚えてはいない。
その頃、男は未だ警察官になったばかりだった。
実地検証のために駆り出され、向かった先で見た焼け焦げた瓦礫の山。 そこに散らばる、人間の身体の一部だったもの。 すでに人だとは判別すら難しい遺体も少なくは無かったが。
引きちぎられたように瓦礫の中に転がっていた片足だけを目にした時、当時新米だった自分はその場で嘔吐するのを堪えきれず、他の警官にどやされた覚えがある。]
(130) 2012/09/27(Thu) 19時半頃
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[あの研究所の名称は、今、少年が口にしたものだったろうか。]
十年前か。 大きな爆発事故があったのは覚えているが…、それがどうかしたのか?
[男の問いかけに、少年が答えたかどうか。
林檎を探しに行くと部屋を後にする細い足首に揺れるプレート。 テラスでも、一度目にしたそれ。
だが、その時の男は、プレートに気付く事はなく。 遠い過去に見た記憶が、それ以上蘇る事もないまま。
出て行く小さな後ろ姿を見送った。**]
(131) 2012/09/27(Thu) 19時半頃
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捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/09/27(Thu) 19時半頃
捜査官 ジェフは、メモを貼った。
2012/09/27(Thu) 22時頃
[警官が去った後に大広間へ辿り着いた蛇には、
烏の落とした推理を直接拾う機会はなかったが。
けれどざわめく人々の言葉端より、
彼が話していたことは伝わるだろう。
…あの夜、まさに林檎へてをかけた、
他ならぬ彼の言葉を]
――――――…栄光(グロリア様)へ、永遠のお別れを。
[見開かれた瞳は、やがて力を失った]
………姉様、とても柔らかかった
あたたかかった
…今は きっと 冷たくなってしまったのね
[諦めたように呟いた後、
意思を確認しようと顔を見たがる。
少女は蛇の意図を知らず、それでもまだ、無防備なままだった]
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[ドアを叩く音に、開いていると声をかける。 入ってきたのは、煙草を頼んだ使用人だった。 二つの箱を受け取った後、短く礼を言い背中を向けたが。
背後で使用人が出て行かない気配に、怪訝に振り向き見る。]
なんだ?
「恐れ入ります…。あの―― 、お客様は、夕闇伯とはお知り合いでいらっしゃいますか」
[思いもよらぬ言葉に、数度瞬く。]
何故そんな事を聞く?
[男の促しに、躊躇いがちだった口を堰切るように使用人が話し出す。 どうやら、広間で夕闇と刺青が昨日の続きを始めたらしい。 使用人は、数度短く言葉を交わしただけの男と伯の様子を見かけ、知り合いなのではと期待をしたようだ。
あの目立つ容姿。 少しの行動も目立つのかも知れないが。]
(161) 2012/09/27(Thu) 22時半頃
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生憎だが、知人ではない。 喧嘩なら警備の連中に任せればいいだろう。
[素っ気なく言い、再び背を向ける男に、使用人はまだ暫くまごまごとその場に居たようだったが。 やがて諦めたのか、静かに部屋を出て行った。
―― 喧嘩か。 知人であろうとわざわざ使用人が救いを求めてくるのであれば、派手な喧嘩だろうが。
男は階下の喧噪を思い、鼻を鳴らし笑ってから。 新しい煙草の封を切り、その一本を銜えた。]
(163) 2012/09/27(Thu) 23時頃
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[窓際にもたれ、暫く。 時折、眼下に現れては消えていく狂犬の姿を眺めていたが。 ふと、息を吐き室内に時計を探すが見つからず。
使用人が部屋を辞した後に脱ぎ捨てていた上着を掴む。 身に着けたショルダーホルスターに収めてあるリボルバーを抜き、なんとなしに弾倉の銃弾を確かめた。
この屋敷に呼ばれたからと持ってきた訳ではないが。 借金がかさむうちに身の危険を案じるようになった男は、出来るだけ拳銃を持ち歩くようになっていた。
非番であろうと署内の規則が厳しかろうと、今更、それを守るような身の上で無くなりつつあった男に、銃器の持ち出しに躊躇いは無い。 リボルバーをホルスターに戻す。
上着に腕を通し、拳銃を収めた黒いベルトが再び奥に隠された。]
(187) 2012/09/28(Fri) 00時半頃
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