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っ あ、 っつぅ……!
こなくそ!!
[脇を締めるように左腕を引き、焼ける痛みを堪える。
その間に右手の扇を頭上に翳し、ひらひらと左右に揺らし蝶を巻き込みながら眼前へと下ろして。
扇に蝶を纏わせ左へと流すと、右へと振り抜いて密集した蝶の大群を法泉へと走らせた。
ひらり舞う姿とは対照的な、直線を描く軌道。
法泉の居る位置を駆け抜けさせるようにし、抜けた直後には扇を振り上げて上空へと蝶を逃がした]
さすがに玄人と言うべきか、手妻師の動きには無駄というものが一切無い。
形成す前に燃やしてしまおうとした焔は、出来上がった蝶のいくらかを灼き、手妻師の左腕に僅かな火傷を残しただけに終わる]
焔は熱いに決まっておるわ!
[それでも、手傷は与えたか、と、嵩にかかって再び錫杖を振ろうとするも、一見優雅に扇に纏われた数多の蝶が、艶やかに舞う姿とは裏腹に、蜂の如く鋭い動きで、坊主の目前へと襲い来る]
ち...!
[あれ程速い動きでは、燃やそうとしても焔を我が身に向かわせるだけ、そう判断して、横跳びに避ける]
…つうっ!
[乱舞する蝶の紙の翅は、鋭く薄い刃となって、全てを避けきれなかった坊主の腕や顔を、薄く鋭く切り裂いた]
やってくれるな...!
[幾筋もの、紅い切り傷から染み出る血を、ぐい、と袖で拭い、上空に舞い上がる蝶に向かって、じゃらん、と、錫杖を振ると、螺旋を描く焔が、蝶達を押し包み焼き尽くそうと迫っていく]
まぁ、そんな訳だから。
[礫が一つ飛んだ。
手で投げた訳ではない。
地面から直接、笛持つその手元を狙って]
そのまぶしいの、喰わせてよ。
お前の顔まで忘れちまう前にさ。
流石に簡単にゃ食ろうてくれんか。
[直線的な動きは威力が高いが、それ故に軌道は読まれやすい。
法泉にいくらかの傷は負わせた
ちぃっ!
散りぃ!!
[上空へ逃がした蝶を再度繰ろうとした矢先、錫杖から迸る螺旋の炎
パチンと音を立てて扇を閉じ、密集状態を解除しようと。
けれどひらり舞う蝶は駆ける炎の勢いと熱された気流に阻まれ半数が焔の檻に囚われた]
ほんっっっっっっま、面倒やなぁ!
[素材の不利は予測していたが、予想以上に厄介なことになりそうだ]
(ほんなら……地の利、生かすしか無いわなぁ)
[背水の陣、と言うわけではないのだが、華月斎の背後には清流がある。
どうにか使えないかと思案しながら、頭上に掲げたままの閉じた扇を空気を打つように振り下ろし、法泉を指し示す位置で止めた]
穿つ!!
[焔の檻から逃れた半数の蝶を纏まりの無いままに法泉へと降らせる。
その後は蝶を繰るのを止め、懐から再び半紙を引き抜き細かく千切り出した]
……悪いけど。
そう言われて、はいそうですか、って頷く事はできないな。
[地面から飛ぶ礫。
こちらも一歩下がって、袖振る仕種で左の腕を払う。
刹那、空間に舞い散るのは流れる紅葉。
その流れが礫を弾くのに合わせ、右手の笛を頭上へと差し上げる]
そも、忘れる前に、ちゃんと向き合えるようにしてやるっての……!
[宣と共に、笛を振り下ろす。
優美さと鋭さを併せ持つ動きは衝撃波を生み出し、それは甲高い音を立てて一平太へと真っ直ぐ、駆けた。*]
[焔の螺旋は蝶に届いたが、半数ほどが焼け残り、まだひらりひらりと空に舞う。小さな鬼火を飛ばして追おうとしてみるが、生き物と同じく意思持つもののように躱されて、思わずぼやきのような声が漏れた]
面倒は、どっちじゃ!
[言った端から、逃げ惑っているように見えた蝶達が、ばらばらと、降ってくる]
ええい、鬱陶しい!!
[視界と動きを阻む、優美な蝶に痺れを切らし、錫杖の焔を柄まで纏わせ、薙ぎはらい、焼き払う、いくらか火の粉が坊主自身にもかかったが、構ってはいられなかった]
【人】 落胤 明之進……そう、だね。 (85) 2014/02/20(Thu) 00時半頃 |
良いけど。
返事はどうあれ、やったもん勝ちだしなぁ。
[散る紅葉に弾かれ、礫はあっさりと勢いを失して。
弾き損ねた笛が頭上へ掲げられる。
それが振り下ろされ、衝撃波を生み出すところまで見て―― 屈んだ。
当然それだけで避けられるものでは無かっただろうが]
うん、だから遠慮しとくって。
[ぼこりと、固く踏み固められた筈の土が盛り上がり。
甲高い音
泥は一瞬で崩れ落ちるけれども、その後ろの主への被害は防いで]
[衝撃波をいなした後で、一度崩れた筈の泥人形は再度形を成す。
先よりも一回り程大きな姿で。
子供が作ったかのように雑で、動くたびに泥がぼろぼろ零れていたが、気にした様子も無い。
その異様に長い腕をひと振るいし、笛の主を弾き飛ばそうと動く*]
[指示を失った蝶は焔に払われる度
その間に新たに千切った半紙の一部を、両肩に居た狐狸へと咥えさせる。
更には懐から人型の紙人形を引っ張り出し、背後へと投げ放った]
流されるんやないで。
[狐狸と紙人形はぴょいぴょいと川へと近付いて行く。
紙人形には視認の難しい細い絹糸が伸び、華月斎と繋がっていた]
蝶が嫌やったら……蟹でも焼くかぁ?
[パンッ、と扇を振り開き、懐から蟹の紙人形を引き抜く。
痛みの治まらぬ左手でそれを法泉へと投げつけ、華月斎自身もまた近付かんと前へ。
蟹は大きな鋏を開閉しながら、錫杖に組み付かんとす*]
[漸く蝶が燃え尽きて、息をつく暇もなく、華月斎の投げた蟹が錫杖へととりつこうとする。
その前に彼が何をやっていたかは、蝶に阻まれて目にすることが適わなかったから、坊主の注意は蟹と、その後に続いて迫ってきた手妻師自身にだけ向いていた]
喰えぬ蟹なぞ、つまみにもならんわ。
[生臭らしい言葉を吐いて、錫杖を一度地に突き立てて手を離すと、組みついてきた蟹はそのままに放置して]
オン・アギャナウェイ・ソワカ!
[両手で印を結び、火天真言を唱えれば、蝶を焼いた焔がそのまま、小さな無数の火の玉となって、華月斎自身に向かって飛来する*]
……意地張りめ。
そこで、遠慮するなっ……!
[泥人形によって阻まれる衝撃波
崩れる様子にくるり、と笛を回して持ち変えつつ、次の一手を、と。
動くより先、現れたのは、一回り大きな泥人形。
……なっ……!
[突然の事に、紅葉の守護は間に合わぬ。
せめて飛びのいて避けるを試みたものの間に合わず、長い腕が身体を打ち据え、吹き飛ばされた]
……ん、のっ……。
[どうにか受身を取り、数度転がってから起き上がり。
片膝ついた姿勢で数度咳き込み、き、と泥人形を睨みつけた]
やった者勝ちには一理、ある、な。
……なら尚更、やりたい事を押し通すだけ、だっ!
[元より、引く気などはない。
闇を鎮め、最終的には光をも鎮めて、同じ『刻』を刻み、生きる。
その選択肢は、捨てられない]
秋の夕空 光らせ走る
稲田に恵み 齎す君よ
その迅き猛るを しばし魅せぬか
[ぽつ、と紡ぐは即興歌。
笛に宿すは、迅雷の速さと鋭く穿つその力]
……っせい!
[たん、と地を蹴り、泥人形へ近づくために一気にかける。
繰り出す突きの一閃は泥人形まで届かずとも、迅雷の如き衝撃を放ち、その身と、その先に立つものを穿たんとする。*]
[放った人型と狐狸の準備が終わるまでには時間が掛かる。
それまでは限られた手で凌がねばならない]
酒しか頭に無いんかい。
[生臭坊主らしい言葉
その手には細い絹糸が握られていて、蟹の甲羅へと繋がっていた。
引くことにより法泉の体勢を崩そうとしたのだが、錫杖を離されてしまったために不発に終わり。
鋏を開いた蟹は引いた反動でふわりと宙を舞った]
げっ!
[腕を引く動作のために反応が遅れ、蝶を火種とした火の玉が華月斎へと迫り繰るのを防ぎ損ねる]
ぐ、ぅ ああっ!
[いくつかは宙に舞った蟹へとぶつかり、いくつもの焦げを作り出して。
残る火の玉に対しては開いた扇を顔へと翳してその箇所だけは直撃を避けた。
代わりに晒されている腕には火傷を、着物には焦げ跡と焼け穴を作り為す。
ひりつく痛みが身体のあちこちを苛み始めた]
くぅっ!!
[飛来する火の玉の最後辺りは扇を振り払うようにして。
いくらか肩で息をしながら法泉へと視線を投げる]
……あん時ゃ綺麗や思うたのになぁ。
実際は……ほんまおまえみたいやわ。
[外見とは裏腹の苛烈さ。
目の前の男の本性を見ているかのよう]
はぁっ!!
[身体は痛むが引けはしない。
間合いを詰めるべく一歩踏み出す前に、右手の扇を目の前で小さく一振り。
すると掌に握られていた千切られた半紙がいくつか宙を舞う。
返す手でもう一度扇を振ると、舞った枚数だけ蝶がひらりと舞い上がった。
流れる動きのまま扇を頭上で一度円を描くように流した後、法泉へと送り出すように扇を振り下ろす。
扇の周りに纏わりついていた蝶は螺旋を描きながら法泉へと迫り、その後を華月斎が追った。
同時、左手で拳を作り、後方へと引く*]
嗚呼、うん。
言い方が良くなかったな、ごめんなぁ。
[吹き飛ばされる光を、人形の陰からちらと見やる]
改めて、お断りさせてもらうよ。
[地面に転がって止まるのを待って、掴んで引きずり寄せてしまおうと片腕をそちらへ伸ばさせ]
…… 、
[けれども大きな分、動きは鈍いもの。
急な動きには反応できずに、伸ばした腕の脇をすり抜けられてしまった。
その直後、放たれる一閃
っ く、
[地面に転がるのは、今度は此方の番。
受け身は取れずに強かに身体を打つその前で、泥人形は両膝をつき――形を失う。
大量の泥はそのまま、明之進の上に降ろうとしていた**]
昨日切らしてから呑んでおらぬからな、調子が悪いわ!
[酒しか、と言われれば、否定もせずに、そう答えて、蟹がふわりと糸に引かれるのを目にして、眉を寄せる]
これも手妻か、ほんに次から次と、よう考えるもの…!
[しかし細工は躱せた、と、安堵に浸る間もなく、襲いかかる火の玉を満身創痍になりながらも凌いでみせた華月斎が眼前まで迫ってくる]
蝶もお前も、大概じゃ…人の事が言えた義理かよ!
[華やかに軽やかに、舞い踊り飛び回るその姿は、相争う今でも変わらぬ、だが譲らぬ意思と、真っすぐに迫るその心根は、かつても今も変わらぬまま、坊主の中の闇を暴き貫く眩しさを持っている]
[厭わしいその光を、喰らい尽くしたいと願うのは、闇星なのか、それとも、夢幻の焔を烈火と変えた、己自身の闇なのか]
おおうっ!
[気合いを発して踏み込んできた華月斎の扇が目前で翻る。
一度手放した錫杖に手を伸ばし、坊主は、両手でぐるりと回した。
来るのが蝶ならば、再び焼き払うのみ、と、焔の渦を作り出そうとした時、華月斎が拳を引くのを見て、僅かの間、動きが止まる*]
【人】 落胤 明之進[まっくらなのは、嫌だから、と。 (98) 2014/02/20(Thu) 10時半頃 |
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