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[龍笛の問い
あぁ、あの能なら京に居た時分に見たっけか。
……何だかこそばゆい感覚だったなぁ。
[己の討伐譚に尾鰭背鰭胸鰭やら諸々が付いて
元の話とは異なるような、そうでもないような
正に鵺を語るに相応しい物語になっていたな、と慨嘆する]
こそばゆい?
そんなもんなのか。
[龍笛が題材になった物語は幾つかあるのは知っているが、自分自身が物語になったことはない。
鵺の胸中を推し量るには、いささか経験が足りなかったようだ。
せやねんせやねん。ありますんよ!
大和猿楽結崎座の世阿弥さんの演目は
なかなかの人気がありますんよ?
うちも昔こっそり抜け出して薪能を──
敦盛さんのお話やないんやけど、平家のお話にもよぅお出まししてましてね。嗚呼勿論うちが出会うた清涼殿の一件もその手の書籍に……
伊豆の國ではそれはそれは畏れられた方ですんよぅ? お祭りまで──
[『能か何か……』の呟きに、きらきらした調べで蕩々と…ええ蕩々と]
きっとセンセやったら、詳しく知ってる思いますけどなぁ。
一度遊びに行ったらええ思いますんよ?
そういえば、青二才言われてましたなぁ。
九十九の、それも龍の笛つかまえて青二才やなんて、ほんまおもろい人ですなぁ…
【人】 門下生 一平太[おうまがどき、夕暮れ。その言葉は、物書きの題材にしようとしてた中にあって、それで知っている。] (72) 2011/09/14(Wed) 23時半頃 |
―――――。
[先生の家に遊びに行ったら?という提案。
返事はないが、なんかいやそうなかんじ。
……そりゃなぁ。
まぁ、当時の己と今の己じゃ、
別のあやかしって言っても良いくらいに、
変わり果てちまったってのもあるかもね。
[
へぇ、お志乃は随分、博識だねェ。
[鵺を描いた能に関して、活き活きと語る琴古主
……まぁ、人の子にしてみりゃあ
アレはアレで供養の心算なんだろうけどなぁ。
けど、そんなことで祟りが防げたら、厄神さんも形無しだわなァ。
妖しの刻……
かみさまの気配、薄くなったね。
お祭りきっと、まだ続くね。
[くすくすと無邪気な笑い声が響く
うん。わたしも、志乃に会いたいな。
何代目か忘れましたんやけど、
足利さんがまだ元気やった頃に
うちを弾いてた娘さんがなぁ、
そういうの好きやったんですよぅ。
愛好者というんでしたかねぇ?
うちもそうかもしれませんけれど。
ええ、所詮はヒトの作り話もありますし
あやかしへの鎮霊は、見えへんヒトの
自己満足のようなものですしなぁ……
せやけど、ヒトが奴延鳥さんに覚えた畏怖は
本物やからねぇ。
姿形が変わっても、歴史と心に残した
爪痕が褪せることはない思いますんよぅ?
あのね、わたしね。
朝をお里に連れて行きたいの。
お団子食べて、ずうっと一緒にいるの。
きっと、楽しいな。うれしいな。
[志乃の問いかけ
何ら躊躇う風のない声が、ごく楽しげに返る]
んー? 朝?
[そういえば、自らが異なる箏を奏でる前に、彼女の楽しげな歌声が隔世に響いてもいたか?
出会ったこともないヒトを思うほどには、情も深くないのは、やはり自身もあやかしの身故か。それよりも黄昏の美しくも可憐な歌声のなんとも綺麗で澄んだ賛歌を聞けば、それを遮ろうなどと思う事など露ほどもなく]
夕顔がそない嬉しそうに思うなんて
きっとええお友達なんやろな。
それに朝と夕
ええ響きや。
……喜んでくれるとええなぁ。
そうやって、歴史とやらに刻んだ爪痕こそが
いずれ真実の"鵺"になって、語られるのかねェ。
[琴古主の言
口にするのは別のこと]
お志乃は秋月の旦那と気が合いそうだなぁ。
……九十九ってのは、元の主に似るものなのかい?
あの旦那の眼鏡が化生したら、面白いことになるんだろうね。
[琴古主の言うセンセが、秋月のこととは知らないまま
九十九たちに向けて、何気なく問うた*]
……おや。
気のせいじゃなかったんだね。
[山から戻ってきた狐、里の様子を窺って言う]
さっき、一度山に入ったんだけどさ。
どうもあっちの方に、雷門の気が寄ってたから……もしかして、こっちにはいないんじゃないかと思ったんだよ。
──うん、夕の大切なお友だち。
[童女の歌う手毬歌。
それが響いていたなど露知らず、知っても変わることはなかったろうが]
朝がね、一緒にいればきっとお祭り終わらないの。
お祭りが終わるのは寂しいの。寂しいのきらい。
だから……
[言いさして、志乃から返る肯定にごく嬉しげに頷いた
うん。喜んでくれるかなあ…
[後ろの正面だぁれ?
童女の無邪気な声に、憧れに似た響きが乗った]
やれやれ、これであたしらも、本当に逢魔が刻の祭りを楽しめるってもんだ。
で、なんだって?
夕顔は、連れてきたい子がいるのかい?
そうだねえ……あまり大勢連れてきても、何だろうし。
いっぺんにひとりか、ふたりがいいところだろうさ。
[現世の里と隔世の里、繋ぐは昏く細い道]
夕顔がその子を連れてきたいんなら、任せるよ。
うわ、あれが二人……
[二人に増えた眼鏡のセンセイを想像し、嫌そうな声を出す。
さて、九十九それぞれによるんじゃないかなぁ。
俺は……主の姿を借りているけどな。
[眼鏡が化けることがあっても、そっくりにはならないことを祈る。]
朝顔か…
夕顔にとてもそっくりな子だな。ぴったりだ。
うん、ずっと一緒に遊べばいい。
朝顔を寂しくさせないよう、夕顔が傍についててやりゃいい。
そうすればきっと、喜んでくれるだろうさ。
うん、ありがとう。
わたし、朝をお里に連れてくね。
[狐の芙蓉のこたえに、こくんと頷く
連れて行けるのはひとりかふたり。今は他に興味などない]
───お里、賑やかになったら楽しいね。
[それでもそんな想像に、小さく無邪気な笑みを零した]
朝顔って、夕顔に似てるんだよね
[朝顔を見たことはないが、夕顔と似ているなら想像がつく。]
驚くかな、朝顔。
あやかしいっぱいいるし
[一人は朝顔にするとして、
もう一人連れていくのなら…?
候補はいるが、まだ機は熟していないような、
そんな奇妙な気分。
白粉と神隠しと。頭の中はそれに占められている。]
───うん。
[辰次の声に嬉しげに頷いて、ふと目を瞬く。
ならば、里に共に戻るのが良かろうか。
少しの時、思案するような沈黙が流れた
───…お里、朝と一緒に帰ろうかな。
[ぽつ。と呟く。
道を通れるのは、ひとりかふたり。
他にひとの子が通るならば通れはせぬ。
なれど通らぬならば、通れぬ道理もまたないもの]
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