103 善と悪の果実
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………――――
[どうしてこの人は、こうして僕を“何度も”撫でるんだろう。 この邸に来て、二度目。 彼が覚えているかは知らないけれど、あの日にも、きっと。
掛けられる言葉は無い。 それは不安でたまらなくて。 子供に戻ってしまったんだろうか。 僕は23歳の、子供の形だけを持つ大人の筈なのに。
この人が、手を握るから。 この人が、頭を撫でるから。
僕は──、何が、欲しかったんだろう?]
(56) anbito 2012/10/01(Mon) 03時半頃
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[差し出された手に、恐る恐る手を伸ばした。 暖かな右手を、その手に指に絡める。 彼が目を閉じるなら、僕が目を開けて手を引こう。
暗闇の向こう側。 光があるかなんて知れないけれど。 真っ黒な眸は、きっとこの為に与えられたものなんだ。
楽園に背を向けて、僕らはきっと扉をくぐった―――……**]
(57) anbito 2012/10/01(Mon) 03時半頃
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――遠い未来の想像:あたたかなてのひら――
おかあさーーーん!!
[少年は走っていた。 秋に染まる草原の中を。 黒い眸に、浅黒い肌、秋色の髪を風に揺らして。
土に汚れてよれよれになったシャツ。 きっと、こんなに汚してっておかあさんに怒られる。 でもそんな時、守ってくれる大きな手がある事を少年は知っていた。]
おとうさーーーん!!
[走る。 飛びつくようにジャンプすれば、きっと抱きとめてくれる温もりがあるだろう。 擦り寄って顔を上げれば、頭に添えられる手。 それはどこか懐かしい。]
(58) anbito 2012/10/01(Mon) 03時半頃
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[少年の右足には輝く銀のプレート。 そこに刻まれた文字は―――――………**]
(59) anbito 2012/10/01(Mon) 03時半頃
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―扉をくぐる前―
……………。
[怯えた姿はどこにあるだろうか。 鈍い銀の運命に結ばれた相手を、烏は探す。 見えずとも、声は届くだろう。 大人びた音が唇を動かした。]
ジョセフ殿。 “僕”はいつでも、貴方を見ていますよ。
[僕という暗闇は憎悪、悪夢、嫉妬、色々な姿となって。 怯える彼をただ只管に見守っているだろう。
…――例え怯えからとしても、闇を退ける力があったのなら。
いや、これは僕が口にしたって無意味なものだ。 だから笑って見せた。 嘲うのでなく、年相応の、それで。]
(60) anbito 2012/10/01(Mon) 04時半頃
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いずれまた逢いましょう、愛しい人。
銀の運命は断ち切れなど…しないのですから。
[子供らしさの無い言葉を別れの挨拶にして。
綺麗な歌声の重なる中、僕は楽園を飛び去った**]
靴磨き トニーは、メモを貼った。
anbito 2012/10/01(Mon) 04時半頃
/*
……大好きだよ?
可愛い、可愛い、ポーチュラカ。
[ちゅう]
/*
にゃ、にゃあああ!!!(*ノノ)
私のほうが
ずっと、ずーっと
兄様のこと好きですわ!!
(ぎゅう)
/*
こうして、ぼくの赤ボッチ率が果てしなく上がっていくんだ。
[すねた**]
ジョセフどのは、やはりすてきだなぁ、ほくほく。
まだ一店舗めだからまじめにお仕事にもどるよ!
/*
ふふ、素直な子は好きですよ。
[ポーチュラカ様、なでなでなで]
…烏様には、ジェフ様がいるではありませんか!
赤には引き込むことが、できませんでしたけれども!
もう少し、お話しする時間が取れればなぁ、と。
烏様に対しては、本当にもだもだなのです。
守る って…
[伸ばした手は、赤い手は黒蝶の翅へと伸ばされ
羽ばたこうとするそれを、逃しはしない、と握り締めた]
――扉をくぐる前に――
[烏の背を追い掛ける目に、殺意と怯えが消え去ることはない。
輪廻の環に囚われるまで。
何度でも何度でも、この運命を抱くのだろう。
扉の向こう側に消える背に、羨望を抱くことは出来ず。
―――女を、子供を手に掛けて。
今はまだ沈んでゆくばかりの輪廻だ。]
その目。 刳り貫いてしまえば、良かった。
[震える口唇が、小さく呟いた。]
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