人狼議事


194 花籠遊里

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─閑話・書斎にて─

[──花びらが水たまりにひらひらと舞い落ちては、水面を泳ぐ。
夢と現の狭間。覚醒せぬ思考はゆったりと遥か昔後ろへと遡る。

親の手の代わりに造花の吹雪をこの身に浴びていたのは十と少しの瀬。

生まれて間も無く異端だとこの色を嘆いた親が、唆されるまま少しの銭と引き換えに売り払い閉じ込められたその場所は、華美な装飾で造られた檻の中だった。

朝昼夜問わず、現れては食事を与えるために訪れる“飼い主”
必要以上に口を開くことは許されず、ただ脂ぎった富豪家の指にて媚びることをせがまれる。]


[それに嫌気が差したのはいつ頃か。
女中の同情心を煽って隙を見て脱走を試みた。

愛玩対象であった銀糸を少しばかり切り落とせば、物珍しさから門主も潜り抜けた。

右も左も分からないその場所を彷徨うことほんの少し。
頭上を見下ろす蒼白い月の美しさに唯々見惚れていた、そんな夜。

怒り狂う主人に腕を取られるまでつかの間の自由に焦がれるよう腕を満月へ伸ばしていた。]


[闇を切り裂いたのは怒号。
乱れた髪をほつれることも構わないというように引っ張られた先がこの遊郭。

年ももう二十近く男の愛玩としては歳を取りすぎていた玩具は、適当に売られては咲き乱れる瑞々しい花々を散らし、その代金を全てこの身につけさせた。

莫大な金。金の単価すらマトモに知らなかった青年から花へと変わり行くことも知らずに。

初めて世界にて見咎めた美しく根を下ろす花。
視線が合えば薄い桃色の花弁はそっと綻び、気づけば楼主に頷き──…*]



‘Tis better to have loved and lost

 than never to have loved at all.

[それは『愛』を知り、そして亡くなった。
 僕を育ててくださった、丁という『花』の言葉でした。]


[蝶が全て集まった。
館のそこかしこで羽ばたく音がいやに響く。そんな中、男も静かに今宵止まる花を値踏みする。

昨晩割れた藤色の鏡。
番いにされた朧月。

この二本は踏みしめられたのか。
はたまた、それとも、違う理由か。
まァそれも良し。それも花の本分だ。
男が知りたいのはその更に、奥。

おうや、おうや。
遊びを始めよう。
今日の夜が耽るのはとても早い。*]


― 地下への道 ―

[さて、早速銀月を曇らせてしまったが上等。

性質の悪い夜蛾は一歩、また一歩と踏み出し、
中庭で櫻の色を愛でる若い蝶目当てに寄り道。
語りかけるなど野暮は起こさぬが、
まるで悦楽先んじるよう、会釈を送った。


さて、彼が今宵、見ていない月は何処に隠れたか。
さて、彼が夢想抱いた花は、誰に購われたか。


聡い青年からしてみれば、想像は余りに容易かろう。
無論、この男の悪質さも、見れば知れる業深さ。]



[しかし、哀しいかな。

 花を伴わぬ蝶に、*地下の門扉は抜けられない。*]
 


[僕は誰に言い聞かせているのでしょう。

 傍にいる『蝶』に?
 傍に来ぬ『蝶』に?

 ………咲くことを拒む『櫻』に?]


[中庭彩るは秋の色。
 夕焼けのような橙色。

 秋に咲く櫻。

 自覚してしまう前に、眸を伏せましょう。
 僕はこの廓に咲いた『花』。
 散った『丁』の教えの元に。

 微笑み絶やさず色香を放つ、『花』の一輪であるために。]


 
 
[微笑むことなんて、今は出来そうにありませんでした。]
 
 


[早く散ってしまえば良い。
未だ散れぬというのならば、咲いて咲いて咲いて。
毟り取られてしまえば良い。
胸に救う種も何もかも。
痕を残さぬように全て。

全て 全て 夢であれば良かったのに。]**


── 追憶の一片 ──

[それは歳を遡ることいくつの事であったでしょう。

 ある日、新しい花見習いが来ると告げられることも無いままに
 突如この廓にやってきた一輪がありました
 何も知らず、何も判らぬまま
 髪を乱し乱されやってきた花は
 銀月の色を有した、淡藤の一輪でございます。

 僕には彼が、怯えているように見えたのです。
 何も知らぬ世界につれて来られ、困惑しているように見えたのです。

 眸が触れ合った気がしました。
 ですから僕は、安心させるようにと
 彼へ微笑んだ事を覚えています。]



 「大丈夫ですよ。」


[そういって、手をとり。
 小さな身体で彼を庇い立ち。
 『花』には『花』になるための規則があると教育係を買って出ました。

 『花』は美しくなければならないと
 ですから乱暴に扱わないでくださいと
 連れてこられた御方のその手を、無理やりに剥がしたことを覚えています。]



[――額に僅に浮き立った青筋を、黒の花はきっと見ていなかったことと願う。

秋風揺蕩う中庭にて。
気紛れに、偶然に花と共に添っていたならば、その先に見得た「影」に――何の意味が込められてか、下げられたその蝶頭には唯無性に熱を抱え。
彼が――そう、気儘な彼が、何の理由も無く自分へと”挨拶”をする筈が無いことなど、短い間に既に質など視え。
まさか実はとても真面目な性格でした、そんな事さえあり得ない。

ならばならばと思考の障害を取り除き、視えた其の先解った其の意味。
――あれは「挨拶」ではあるけれど、あくまで「挑発」の挨拶だと。]



 〜…本当に、遊び癖が酷いんだ…?

[巷に聴いたかの噂。派手な風貌派手な戯れ。
犬歯を魅せた唇は、軈て吐き捨てるように言葉を形作っては透明の声へ成る。

そうして遊び人の事実を遠回しに識り、頭に浮かべた朧の銀月。空の花籠。
じとりと服を滲ませた雫は、一体どんな意味を持ってか。
ただ月を追う理由を作る為にと――黒の花を誘い上げた。

そうして、夢物語でも、良いと。
夢の中だけでも、其の月を手中に入れられたのなら。其れだけで、自分は満足し得るのだろう。]

 ―――

[せめて月の代わりに自分が翅を差し出したならば。…否、されとてそれも、毒蝶を喜ばせるだけになるだろうか]


[その『花』が、手折られてしまうかもしれないのです。
 きっとそれを、花主さまは許しなどしないでしょう
 昨夜も一人、『花』が姿を消しておりました


 行方など、知れません。


 亀吉さんがそうならぬ為にも、お伝えしなくてはなりませんでした。
 もしもまだ、『夢物語』に終わらせられるのならと。
 余計なお世話を、焼いたのでございます。
 そこに、自戒を含めながら。

 僕自身へと、言い聞かせながら。]




[其の度にあの呪詛が
 『丁』の涙が
 中庭に植えた秋櫻が

 心を締め付けていくようでありました。]
 
 


─追憶の一片─

[生まれてこのかた外にあまり出たことのない青年は、一目見た瞬間桜の美しさに見惚れてしまっていた

手を取られながら向けられた言葉と笑み
困惑するより先に自身より頭二つ分は下の身体を見下ろして。

呆然と彼が自分の教育係を受けようと名乗り出てくれる様子を耳にしながらも双眸はただ射干玉色を捉え釘付けに。]

…アンタの名前は?

[敬う言葉を知らない世間知らずは、状況よりも先にその日見た花の名を請うて、取られた手に僅かばかり力を加えた。
それは、青年が花となる前の話。]


[ふわりと首筋から香る櫻は、あの時も香っていたでしょう。

 小さな身体を見下ろす、二つの眸。
 呆然としたような表情には、射干玉の眸を向けました。]


 僕は櫻子と申します。
 櫻の子と書いて、おうじです。


[力の加わった手に、そうともう片方の手を乗せました。
 体格が違えば、手の大きさも違うでしょう。
 片手では溢れてしまう彼の手を、両手でしっかりと包み込んだのです。]


[あゝ、それでも。
 追憶の一片にある頃の僕の眸と
 今し方向けた射干玉に、差異が無い事をと願います。

 淡藤の花を見詰めた射干玉は、悲しげに伏せられた事でしょう。

 呪詛に侵されつつある僕の心に蓋をして
 瞼を伏せて、僕は僕自身に見て見ぬ振りをしたのです。]


おう、じ……。

[貧しい家の出。そして主人の趣味から母国の読み書きさえ対して教わらなかった男は、ただ耳に捉えた音を繰り返す。

重なる手のひらに一つ、またふんわりと櫻の花弁が触れ合えば温かな感触に目を僅かに見開かせながらもやがて小さく瞳を伏せて]

……かめよし。

[確かそう呼ばれていた自身の名を告げれば、息を一つ吐き花は綻びを見せた。

それかまた花籠というだけで同じ檻の中であると知るのは、また少し後のこと。

その時ばかりは伝わる両の手の温もりと櫻の香りに破顔して喜んでいただろう。]


[それからどれほどの時を重ねただろうか。
片手で事足りるくらいの年数ではあるのだけれど。

花になるための規則や教養を伝えられ、八分咲きであっても人前にやっと出れるようになって数年。

愛も幸せも曖昧な記憶しかない花はそれでも、それなりに飽くことなく同じ日々を繰り出し。

それがあの豪奢な館の暮らしと繰り返しであることに気付いていながらも、その末路を知っていた彼は足先を外へ忍ばせることは無かった。

何故なら自分は花であるから。
青年であった頃のように自由な足は、蝶のような翅は無く。
あるのは根に絡み付くだけの蔦。

諦念から、慰めに魚を飼ったのはそれからのこと。
きらきらと輝く水面を揺らす金魚を眺めていると肩の力が抜ける。

それは自身と同一視することで慰めているのだと気付いていたけれども。それ以外の気持ちの昇華法など知る由も無く月を眺めていた昨夜の晩。

自身より少しばかり大きな手のひらに引かれて、『外』に連れられた。
花は花であることを、少しの間忘れてしまっていた。]


[けれどもそれも今日で終わり。
地に根を張り巡らせる己が自身を見やりながらごちる。

傷のついた手は、ありし日櫻の花に触れられていたその手。「花は美しくなければいけない」と告げられた片手でもあった。

微笑みを形どりながらも睫毛を微かに震わせる。

それは人の気配を感じる前であったけれども。]

…ちゃんと、咲きますから。

[掠れた声で囁いたのは、誰に対してでも無く。唯々口元には月を乗せた。]**


 亀吉、さん。

[僕は、銀花の名前を呟きます。
 あの頃は
 「とても佳いお名前ですね。」と、微笑みました。
 目出度いお名前だと教える事になるのは
 それから数日後の事になりましょう。

 今の刻、僕は緩やかにその瞼を閉じていました。
 微笑む事は難しく、悲しむ事も難しい。
 心に蓋をしてしまっているからか
 僕の表情は、どこかで迷子にでもなっているかのようでした。]


[『花』である僕は『外』を知らず。
 『花』でしかない僕は『花』以外にはなれません。

 『ふつうのしあわせ』を知っていれば
 『人』になる事が出来たのでしょうか。

 何も知らずに育った僕は
 毎夜、毎宵、『蝶』に望まれる事こそが『しあわせ』なのです。
 それ以外を求めてはならないのだと、謂い聞かされて育ちました。

 男と謂う性に生まれたにも関わらず
 殿方を満足させるためだけの、命です。

 それが僕の、『花』である理由なのでございます。]


[それならばどうして、あんな独り言を語散てしまったのでしょう?

 『外』の世界知る方なれば
 きっとその世界へ戻れるのではないかと。
 そして『外』の世界の方が
 幾分幸せなものではないかと僕は思っているのでしょうか。

 判りません。
 知りません。

 自覚(わ)かりたくなどありません。

 僕はそっと瞼を閉じます。
 『花』としてあるために。]


[悪辣なる男には数多の噂が纏わりつく。
購われた徒花は、行方知れずになっただとか、
大金に任せ、見世から見世を渡り歩いただとか。

当人に問いかけても箔がつくと嗤うばかりで、
根も葉もないと、花を喰らう。
手癖も手口も優美でなく、洗練でなく、作法を知らぬ。

そんな男の手に今宵堕ちたのは、花にしては未熟な銀月。
月下蝶を尻目に、夜蛾がひら、ひら、飛んだ。]


[本当に待っていたのは月ばかりではないけれど、
それは男が張り巡らせる誰も知らない秘密の姦計。

月下蝶に櫻花の君。
狙いままに下りくれば、同じ蝶にのみ届く音階で笑気を漏らす。]

 そう、物欲しそうにしなさんな。
 今宵の月輝は俺が買った。

[挑発の声色が伝える理。
望まれれば銀月は身体を開き、心を砕く振りする。
誰にでもこうして、蜜を与えるのだと思い知らせるように。]


[櫻の花と黒蝶の交わす囀りを。
毒蛾の漏らす笑気を。

僕はただ聴いていた。

花に留る蝶を演ずるならば慣れねばならぬのだろう。
毎夜訪れる夢が一度限りの誠であることに。
眠りに落ちて見る夢がそうであるのと同じように。]


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