25 花祭 ― 夢と現の狭間で ―
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己の醜さを愛でるか?
なかなか面白い趣向よ。
触れてつまらぬ顔ならどうしてくれようか
[こちらもクスクスと愉快気に哂い零す]
……私を運べるほどにははわかっている。
研ぐに慣れても、切るに慣れぬなら逆に呼べ。
獣狩の舞なら幾度も舞った。
[主の好んだ武舞の動作は、
時に太刀を、時に鉾を獣の血で赤く染め上げた]
退屈な宴はもう座した、適慮向かう
[舞台の上にいた時、興が乗ったのは本当だが
こうして狩に思いをはせればそれは色褪せて
包帯の奥、紅が更なる朱をと*瞬いた*]
つがいで飼うのが無理ならば、共に血肉となってもらうも一興か。
それならば、彼岸でも共にあれようて。
主にはぐれた花の如く、迷い出る事もなかろう。
この手を離れて行くならば
たれかの元へたどり着く前に
そう、いっそその翼を手折り――縊り殺してしまえばいい
[少年の自覚は無きままに
浮かぶほの暗い朱]
[遺しておきたいものと
食らってしまいたいものと
己の感覚にとってそれらは違うもの]
…傍に置くに値しないなら、ただ食えばよいまでの事。
[そうして、生きているのだから]
[屋敷の構造を把握しながら
通信を介し、雇い主であるセンターに
極秘裏で屋敷の封鎖と
豚狼を捕らえる手はずを整えていく。]
――シュレーゲルは今は宴で最後の愉しみといったところだ
彼を狩るのも任せてもらおうか?
……わかってる、情報を吐くのなら殺さぬよう自重する
[打ち合わせる間、聞こえる声は愉しげに
さて、今度の狩りでは幾つの獣を狩れるのか*]
ん?
仕事熱心だな。
ああ、ヘマをしないのならやってくれ。
[そして、少し間をおいて]
そうだ。殺すなよ。
……何故……?
人に害なす獣、殺すのが当然であろう?
害をなして殺されぬなど……
[聞こえた声に返すのは心底わからぬと言う声]
獣を殺さねば、獣に殺された人々の無念は晴らせん
[低く告げる声は*暗い*]
なるほどな。
言いたいことはわからんでもない。
お前はお前だしな。
[暗い声に少し、声はまっとうになる。]
じゃあ、言い直そう。
殺されるな。
身体だけじゃない、心もな。
[そして、しばし沈黙したあと]
とっておきを貸してやるから。
[そう告げた。*]
…肉を。
[食らいたいと願う。
あのように追い立てられては、たまらない]
[子を為して大成するか、食い殺されるか、二つに一つ。
それゆえ高嶺を名乗れぬ花は、2つと居らぬ高嶺の花と。]
…食ってみたい男でも、見つかったか。
[不意に投げてみる声。
特に目的があるわけではないが。
花祭に出入りする関係、
あの人食い花とは何度か面識もある。
当然、共に"食事"をしたことも、だ]
…乾様も、お父上同様…血は争えぬようで。
このまま色に狂うなら、容易に手の内に落ちましょう。
[嬌声に混じって聞こえる囁き声。]
良い体つきをしておりますし…寺にて節制しておられるのなら、味の面ではあなたのお気に召すのでは?
乾?
…ああ、あの色坊主の。
[小さくわらう。
引き締まった、と聞けば幾らかは
興味があった]
脂身が多いのは好かん。
わたしは悪食ですから…脂のしっかり乗ったものも嫌いではありませんよ。
それに…祭りにて喰らうはただのエサではないのですから。
[子息を送り込んできた家のいくつかは秘密裏に、その子ではない世継ぎを望んでいる場合もある。
当人たちはおそらく知るまい。]
[熱が身を侵食していく
満月が
近い
少年は夢うつつ
真っ赤に染まった先を垣間見る]
肉を――…喰らい、種を植えつけて
[裏の路地で
望まず生まれ、捨てられる子供たち
この世界に何故、底辺と呼ばれる其れ等があるのか
知っている
知っていた]
壊す
この世の理
[遠くに会話を聞きながら
さらに深く、夢の奥へと堕ちていく**]
…わかっている。
[食うだけではない。
その言葉がどういう意味なのか]
…ああ、もうすぐか。
[さざめくような声。
もうすぐ、またひとつ人喰らいの花が咲く]
……イアンの心は主が亡くなった時に、
既になくなっております。
[ぽつり、そう零せど、すぐに小さく笑って]
なんて……殺されるようなへまはいたすまい。
[取って置きのの言葉には嬉しそうに笑みが零れる]
……殺すな等とおっしゃるから
太刀を拒否されるのではないかと危惧しました。
今、受け取りに参ります。
お時間よろしければ、部屋にお帰りください
ああ戻る。
だが、こころはな、なくならぬよ。
それにそういうことを奴は望まないと思うがな。
[それはさりげに、実は知っていること、告げた。]
……なくならなくても……いりません
それに……主の真意は今となってはわかりません……
[高峰の言葉同様に、主の意思を推測する言葉へは
そうとだけ零した]
――其は、幾多の言霊
其は、この世ならぬ鳥のうた
それから
其は、この私よ
愚かなロビン
[つかの間の歌は
途切れ
脳裏で
哂うこえが
する]
そうか。
じゃ、しばらくは、俺に預けておけ。
仕事中は、以心伝心しておかないとだからな。
[さらりと]
…………
[預けておけといわれて、はいそうですかと
言えるほど人に甘える性分でもなく
仕事も絡めば露に拒絶するほど頑なでもなく
返事に窮して俯く]
……先程触れて確かめるとも
申し上げましたし
[そう言って自分が軽口で交わした約束を
律儀に守ることを口にしながら話題をそらした]
[親は天性の誘惑者だった。
何故彼が裏町に居たのか、知る事は結局無く
教わった事といえば満月の夜毎行われる――
多才な芸妓を持つ花と
その稽古を身につけたのは少年なれど
型どおり
譜面どおりの所作
毒花咲かずしては凡才に留まる
噂のロビンは、少年の内で眠る朱いろの花
芽吹くときは、もうあと僅か]
お前は、本当に正直なんだな。
まぁ、いい。
[冗談交じりの件を、また新たに口にしたときは、小さく息をついて…。]
無理せずともよい。
俺なんぞ見なくても触らなくてもよい。
お前の手と目を大事にしてやれ。
[一途な花というものを感じている。]
……そのように、育てられております
[主を知っているならば、主が信仰する神と教義
それも主を通して知っているだろうと]
……無理を、しているつもりはありませんが……
[大事にしろ、そう言われても
大事にする意味を失っている青年は
頷くも否定も出来ず
また返事に窮しそれだけを零す]
ああ、そうだな。お前は何も悪くない。
亡くした主のため、すべてを込めていくのは、花として幸せなのかもしれん。
ああ、そのとおりだ。
余計なことばかりを言ってすまないな。
まぁ、気にするな。
[本当に見えぬのならば、だが、
見えて見ぬのなら、それは、何かが違うと思った。
そして、その事実は、ひさびさに気分を落ち込ませるものだったが、気にしても仕方ない。]
…………はい。
[眼前の仕事仲間の口にする言葉に
青年は何度も返事を窮し]
……例え、あの人が望まなくても
それでも私の咲き方です。
私が選んだ以上、私が悪くないとは申し上げられません
……が、おっしゃるとおり幸せだとは、思います。
[それでも、外を眺める刷衛を紅で見据えながら
静かにそうと告げて
例え己が目を塞ぐ様子が
他者の気を塞いでも……己に積はないとは言わないが
曲げることはない]
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